縮景園のソースを表示

{{公園
|名称 = 縮景園
|英語名称 = 
|画像 = [[ファイル:20100722 Hiroshima Shukkeien 4273.jpg|300px]]
|画像キャプション = 
|国 = 
|都市 = [[広島県]][[広島市]][[中区 (広島市)|中区]]上幟町2-11
| 緯度度 =34 |緯度分 =23 |緯度秒 =59.0
| 経度度 =132 |経度分 =28 |経度秒 =2.9
|分類 = [[庭園]]（[[都市公園]]）{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=10}}
|面積 = 4.76 ha{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=10}}
|前身 = 
|開園 = 元和6年（1620年）以降（藩邸として）<br />昭和15年（1940年）（県の公園として）
|運営者 = 
|年来園者数 = 179,917 人（2010年度）{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=25}}
|現況 = 
|設備・遊具 = 
|駐車場 = なし
|バリアフリー = 
|建築家と技術者 = 
|告示 = 1956年4月20日（[[都市公園法]]）{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=10}}
|事務所 = 
|事務所所在地 = 
|アクセス = 
|備考 = 1940年7月12日名勝指定{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=10}}
|公式サイト = [http://shukkeien.jp/ 縮景園]
}}
'''縮景園'''（しゅっけいえん）は、[[広島県]][[広島市]][[中区 (広島市)|中区]]上幟町にある[[庭園]]。

== 概要 ==
国の[[名勝]]、[[日本の歴史公園100選]]。施設は県が管理する{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=10}}。

[[元和 (日本)|元和]]6年（1620年）、[[広島藩]]浅野氏初代藩主である[[浅野長晟]]が命じて作らせた藩主の別邸（[[大名庭園]]）が起源であり、歴代浅野氏から寵愛を受け現在まで拡幅し、1940年（昭和15年）浅野氏が広島県に寄贈し現在に至る。最初の作庭は[[上田重安|上田宗箇]]によるものだが、現在の庭園の原型は[[清水七郎右衛門]]を始めとする後の大改修により造園されたもので、1900年台初期[[明治]]末期頃に現在のものとなったものの、1945年[[広島市への原子爆弾投下]]により荒廃、1970年代までに再建された<ref name="hnavi4383">{{Cite web|url=http://www.hiroshima-navi.or.jp/sightseeing/rekishi_bunka/kokuho_bunkazai/4383.php|title=縮景園|publisher=ひろしまナビゲーター|accessdate=2014-04-12}}</ref><ref name="shukkeienh">{{Cite web|url=http://shukkeien.jp/history.php|title=縮景園の歴史|publisher=縮景園|accessdate=2014-04-12}}</ref>{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。

広島市内中心部付近にあり、[[太田川]]水系[[京橋川]]沿いにあり、その河口から約6.4km上流に位置する{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=12}}。西側に[[広島城]]、京橋川を挟んで東側に[[広島駅]]がある。周辺は緑が多く、京橋川上流側に東部河岸緑地が整備されている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=15}}。南西は[[広島県立美術館]]に、南東は[[広島市立幟町中学校]]・広島市長公館に隣接しており、元々縮景園の敷地の一部であった<ref name="ph41454">{{Cite web|url=http://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/41454.pdf|title=広島県の歴史絵はがきと観光資料|format=PDF|publisher=広島県立文書館|accessdate=2014-04-12}}</ref><ref name="hpm20100824102346895">{{Cite web|url=http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=20100824102346895_ja|title=ヒロシマの記録１９５３　１月|publisher=ヒロシマピースメディア|accessdate=2014-04-12}}</ref>。

広島における戦前の名所絵葉書の中でも、ここを撮影したものは特に多い<ref name="ph41454" />。

== 名称 ==
縮景とは、各地の景勝を聚め縮めて表したことを意味し、あるいは[[中華人民共和国|中国]]の[[西湖 (杭州市)|西湖]]周辺の風景を縮めて表したことによると言われる<ref name="shukkeienh" />{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。名付け親は[[林羅山]]とも言われている。これは、2代藩主[[浅野光晟]]の依頼に応じて作った詩の序文に以下のものがあるためである{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。
{{quotation|縮海山于其地　聚風景於此楼（海山をその地に縮め　風景をこの楼に聚む）}}
正徳3年（1713年）、5代藩主[[浅野吉長]]は邸内の山・池・建物・橋・島などに[[雅名]]を付け、藩の儒員で[[堀杏庵]]の曾孫である[[堀南湖]]に『縮景園記』を作らせた<ref name="hnavi4383" />。縮景園の名が出てくる最古の資料はこの縮景園記であり、少なくとも1700年代初頭にはこの名前が使われていたと推測されている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。その他、古い資料では7代藩主[[浅野重晟]]時代に藩儒として活躍した[[頼春水]]が命名したとするものもあるが<ref name="kindaindl991470" />、上記の通り現在では否定されている。

なお、造営当時の正式名称は「泉水屋敷」で、明治から戦中までは「'''泉邸'''（せんてい）」であり、縮景園の名が正式名称となったのは戦後からである<ref name="hnavi4383" />{{Sfn|原爆戦災誌|p=341}}。戦前まで地元住民から「御泉水」とも呼ばれていた{{Sfn|原爆戦災誌|p=341}}。

海外、特に[[キリスト教]]圏では「Asano Park」の名でも知られている。これは後述のとおり被爆後この地に滞在した[[イエズス会]]神父達による回顧録によって定着したものであり、例えば[[米国戦略爆撃調査団]]の報告書や[[タイム (雑誌)|タイム誌]]の記事に引用された[[ヨハネス・ジーメス]]神父著『The Atomic Bombing of Hiroshima』<ref>{{Cite web|publisher=the War Time Journal|url=http://www.wtj.com/archives/hiroshima.htm|language=英語|title=The Atomic Bombing of Hiroshima by Father Johannes Siemes|accessdate=2014-05-13}}</ref>や、著名な被爆体験記である{{仮リンク|ジョン・ハーシー|en|John Hersey}}著『{{仮リンク|ヒロシマ (ジョン・ハーシー)|en|Hiroshima (book)|label=ヒロシマ}}』にこの名が登場する。

== 園内 ==
[[ファイル:20100722 Hiroshima Shukkeien 4379.jpg|300px|right|thumb|濯纓池と跨虹橋と清風館]]
{{See|[http://shukkeien.jp/garden.php 縮景園公式ホームページ]}}
池泉廻遊式庭園<ref name="shukkeienh" />{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。入り口は南端に位置する。

中央に「濯纓池」と呼ばれる池を配しそれを「跨虹橋」によって東西に二分、その池を基準に北・東・西に小山を築き[[宗箇山]]・[[二葉山]]・[[弥山 (広島県)|弥山]]などの[[借景]]としている<ref name="hnavi4383" />{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。主要建物は、跨虹橋の南に位置する「清風館」で、その他[[茶室]]や[[四阿]]を備える{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。

植生は、少なくとも4,826本の樹木があると言われている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=47}}。うち、[[被爆建造物|被爆樹木]]つまり戦前からある樹木が3本でその他は戦後に植えられたもの{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=47}}。構成は、3m以上の常緑広葉樹が全体の35.3%、それ以下の常緑広葉樹が32.5%と過半数を常緑[[広葉樹]]が占めている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=50}}。主要樹木としては、[[クロマツ]]6.9%、[[イロハモミジ|ヤマモミジ]]2.7%、[[クスノキ]]2.5%、[[ソメイヨシノ]]2.0%など{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=50}}。

水源は、園の北に位置する京橋川から引いた河川水と、園内3箇所ある井戸の揚水からなる{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=33}}。この周辺の京橋川の水質は[[環境省]]の[[水質汚濁]]に係る[[環境基準]]において「A類型」（[[生物化学的酸素要求量|BOD]]75%値 2.0mg/l以下）{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=16}}。また京橋川全体で[[汽水域]]にあたることから、[[水素イオン指数]]に淡水と海水が混ざり合った特徴がでている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=17}}。

=== 主要庭景 ===
* 濯纓池（たくえいち） - 面積8,020m<sup>2</sup>×平均水深1m{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。敷地の20%を占める{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=29}}。
* 跨虹橋（ここうきょう） - 天明6年（1786年）竣工、石製[[アーチ橋]]と陸橋からなる園内でも数少ない戦前からある建造物。長さ27.4m×幅2.1mで主要部分は[[花崗岩]]で出来ている。7代藩主[[浅野重晟]]が2度も作りなおさせたと伝わっている。[[日本百名橋]]（番外）の一つ<ref name="shukkeienh" />{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=69}}。
;南側エリア
* 清風館（せいふうかん） -  1964年建築、建築面積178.23m<sup>2</sup>、木造平屋建ての[[寄棟造]]・[[こけら葺|柿葺]]、東側に[[火灯窓|花頭窓]]がある数寄屋造の茶室。園のほぼ中央に位置する、園内最大の建物。園内その他建物はこの清風館を基準に配置が決められたと考えられている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=72}}。
* 清風池（せいふういけ） - 1964年頃新設{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=33}}。
;東側エリア
* 迎暉峰（げいきほう） - 園内最高峰の小山で標高約10m。樹木がほぼなく、かつてはここから遠方の広島湾の島々を望むことができたと伝えられている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=21}}。
* 悠々亭（ゆうゆうてい） - 1969年再建、建築面積11.10m<sup>2</sup>、木造平屋建てで[[入母屋造]]・[[茅葺]]の四阿。かつてはここで茶会や歌会が行われていた{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=72}}。
* 有年場（ゆうねんじょう） - 4枚の小[[水田]]。江戸時代、五穀豊穣を祈って藩主が田植をしていた。毎年6月田植え祭り（茶会）が行われている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=21}}。
* 香菜圃（こうさいほ） - 茶畑。江戸時代、藩内の有名品種が植えられていた。現在のものは1958年復元されたものであり、毎年5月茶摘茶会が行われている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=21}}。
;北側エリア
* 祺福山（きふくさん） - 標高約5.8m。頂上には戦前まで稲荷神社社殿があった{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=21}}。
* 踏雲橋（とううんきょう） - 祺福山の北側にある[[木橋]]。『縮景園記』ではこの付近が最も古色蒼然と評されている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=21}}。
* 明月亭（めいげつてい） -  1974年再建、建築面積43.16m<sup>2</sup>、木造平屋建てで寄棟造・茅葺の数寄屋造りの茶室。水屋の窓に牛舎の車輪が特徴的な建物{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=72}}。
* 慰霊碑 - 広島原爆関連のもの
;西側エリア
* 丹楓林（たんぷうりん） - 小丘陵。[[カエデ]]などの紅葉樹が植えられていたことに由来する{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=21}}。
* 夕照庵（せきしょうあん） -  1970年再建、建築面積7.60m<sup>2</sup>、木造平屋建てで入母屋造・茅葺の茶室{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=72}}。
* 超然居（ちょうぜんきょ） -  1970年再建、建築面積7.45m<sup>2</sup>、木造平屋建てで寄棟造・茅葺の四阿。園内最大の島にあり観瀾橋および洗心橋の2つの橋で結ばれている{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=72}}。
<gallery>
ファイル:HiroshimaShukkeien7309.jpg|跨虹橋
ファイル:HiroshimaShukkeien7264.jpg|清風館の花頭窓
ファイル:Shukkeien Path Bridges.JPG|手前から映波橋、昇仙橋、望春橋。左向こうに悠々亭がある。
ファイル:HiroshimaShukkeien7320.jpg|夕照庵
ファイル:20100722 Hiroshima Shukkeien 4387.jpg|池の北西端から超然居方向を撮影。左に清風館が見える。
ファイル:20100722 Hiroshima Shukkeien 4347.jpg|濯纓池と超然居（左側）
ファイル:HiroshimaShukkeienYokihiLantern7331.jpg|楊貴妃型石燈籠。清風館からみて西側にある。
ファイル:Shukkeien atomic bombing.JPG|原爆被災説明板
</gallery>

=== 備考 ===
* 上記の通り街中にあることから園内の木々の隙間からビルが見える。
* 昔、濯纓池から南に向かって小川が流れ出ており、その一つが「[[流川 (広島市)|流川]]」と呼ばれていた{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=12}}。現在は川自体は存在していないが地名として残っている。
* 文化4年（1807年）、[[牛田 (広島市)|牛田]]の清水谷から竹管を用いて園内への飲料水用の導水装置が作られた<ref name="shukkeienh" />。これは広島城下における歴史上最初の水道とも言われている。
* 現在の[[広島県立美術館]]および[[広島市立幟町中学校]]の敷地は元々は縮景園敷地であった。
** 現在の美術館敷地は、元々泉邸敷地だったところへ1913年（大正2年）10月浅野家所蔵の古美術品を一般公開する国内初の私立美術館「観古館」が建てられた。ただ被爆により焼失したため、1960年代に県立美術館と[[広島県立図書館]]が建ち、1990年代に図書館は移転し美術館は新館として施設拡幅している<ref name="shukkeienh" /><ref name="ph41454" /><ref>{{Cite web|date=2013-10-10|url=http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=20131010102954562_ja|title=浅野家ゆかり　「観古館」開館１００年　広島で名品展|publisher=中国新聞|accessdate=2014-04-12}}</ref>。
** 幟町中学校は戦後に新設された学校であり、1948年（昭和23年）から旧縮景園敷地の一部を含めた現在地で校舎を建設している<ref name="hpm20100824102346895" /><ref>{{Cite web|url=http://www.noborichou-j.edu.city.hiroshima.jp/syoukai/enkaku.html|title=本校の沿革|publisher=幟町中学校|accessdate=2014-04-12}}</ref>。

== 歴史 ==
=== 前史 ===
[[安土桃山時代]]、[[毛利輝元]]により[[広島城]]が築城され開かれた城下町は、[[関ヶ原の戦い]]以降入封した[[福島正則]]により更に整備されていく。

そもそも現在の広島市中心部は毛利氏による築城以前においては、太田川下流域の広島[[三角州]]内にあった何もない[[中州]]の一つであった。広島城を中心とした現在の[[基町]]とその北の[[白島 (広島市)|白島]]は当時は独立した中州であり、その2つを分断していた川は毛利氏による築城以降は"城北川"と呼ばれるようになる。そして、福島氏により城北川の両端は堰き止められ広島城の北側外堀として整備された。つまり、現在のこの地はその城北川と京橋川合流部の下流南側に位置していた<ref name="shirouya19">{{Cite web|publisher=広島城公式|url=http://www.rijo-castle.jp/rijo/pdf/sirouya19.pdf|format=PDF|title=しろうや!広島城 第19号|accessdate=2014-04-12}}</ref>。

江戸時代に描かれた毛利氏時代の町割絵図『芸州広嶋城町割之図』には、この地は寺社地として描かれている<ref name="shirouya19" />。つまり寺の跡に造園されたことになるが、寺の来歴などの詳細は不明。

江戸時代に入り正則が転封すると、[[元和 (日本)|元和]]5年（[[1619年]]）この地は[[浅野長晟]]が治め以降浅野氏による藩制が続く<ref name="hnavi4383" />。

=== 浅野氏の別邸として ===
{{Vertical_images_list
|寄せ=右
|幅= 250px
| 1=Gaikan Hiroshima-shishi map-02.jpg| 2=『[[寛永]]年間広島城下絵図』（1955年作成）。この時点での御泉水屋敷の敷地が描かれている。
| 3=Hiroshima map circa 1930.PNG| 4=1930年ごろの広島市地図。「泉邸」が記載されている。
}}
長晟は入封翌年である元和6年（[[1620年]]）、[[家老]]で茶人でもあった[[上田重安|上田宗箇]]に別邸建設を命じ造られたのがこの泉水屋敷である。つまり、1620年は竣工年ではなく着工年である<ref name="shukkeienh" /><ref name="hnavi4383" />{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。

当時は小さな庭園であったが（右地図参照）、歴代浅野氏藩主の寵愛を受け、次第に拡大していく<ref name="hnavi4383" />。
;天明改修
:[[宝暦]]8年（[[1758年]]）宝暦の大火（あるいは広島大火災）で城下は灰燼に帰した<ref name="shukkeienh" />。以降7代藩主[[浅野重晟]]により城下の再構築が行われ、その一環として[[天明]]3年（[[1783年]]）重晟は京都から庭師[[清水七郎右衛門]]を呼び寄せ新作に近い大改修を行った<ref name="shukkeienh" />。天明8年（1783年）完成{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。[[文化 (元号)|文化]]元年（[[1804年]]）、重晟は[[頼春水]]・[[梅園太嶺]]・[[岡岷山]]らに命じ園内の名勝・建物34景に中国風の号を付けさせ、更に文化3年（[[1806年]]）春水に『縮景園記』[[加藤定斎]]に『縮景園之和歌』作成を命じた<ref name="shukkeienh" />。
;文政改修
:8代藩主[[浅野斉賢]]時代、父である重晟時代からの藩財政改善策を引き継いで推し進めたことが実り、歴代藩主の中でも最も藩財政が安定していた時期であった<ref name="rijocastlesub4jyosyu">{{Cite web|publisher=広島城博物館 |title =歴代城主|url =http://www.rijo-castle.jp/rijo/sub4jyosyu.html|accessdate = 2014-04-15}}</ref>。それを背景に斉賢は積極的な文化・教育政策を進め<ref name="rijocastlesub4jyosyu" />、その一環として[[文政]]13年（[[1830年]]）大改修が行われた{{Sfn|保存管理計画書|2012|p=20}}。
この2回の大改修の間にも、[[寛政]]12年([[1800年]])、文化元年([[1804年]])、文化5年([[1808年]])と改修が行われている<ref name="hnavi4383" />。また9代藩主[[浅野斉粛]]以降、[[天保の大飢饉]]や大きな行事・事業が重なって広島藩の財政は逼迫するようになる<ref name="rijocastlesub4jyosyu" />。

[[明治]]以降、最後の藩主であり大名[[華族]]となった[[浅野長勲]]の別邸として利用され、「泉邸」と呼ばれるようになった<ref name="hnavi4383" />。

明治後期の[[日清戦争]]時、[[広島大本営]]が設置された際には「大本営副営」（[[明治天皇]]の宿泊所）となった<ref name="shukkeienh" />。ただ記録によると、明治天皇は大本営にずっと篭もって指揮をとっており、泉邸に行幸したのは[[1894年]]（明治27年）11月6日の一度きりであった<ref name="kindaindl991470">{{Cite book|和書|author =志熊直人|editor=広島県庁|year =1899|title =広島臨戦地日誌|url=http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991470/1|accessdate=2014-05-13}}</ref>。この時に[[天覧試合]]<ref name="kindaindl991470" />が行われ[[浅野一摩]]や[[高橋赳太郎]]らが出場している。

また同年11月22日には嘉仁皇太子親王（後の[[大正天皇]]）が、翌[[1895年]]（明治28年）3月31日には[[昭憲皇太后]]がこの地へ行啓している<ref name="kindaindl991470" />。その他、この時期に広島で開催された[[第7回帝国議会]]の閉会日である1894年10月22日には、議会出席した[[貴族院 (日本)|貴族院]]・[[衆議院]]両院議員と両院高官全員に、明治天皇からこの地で酒が振る舞われている（天皇は出席せず）<ref name="kindaindl991470" />。

=== 県の庭園として ===
{{ external media
| topic = [[アメリカ国立公文書記録管理局]]が所有する米軍撮影写真
| align  = 
| width  = 250px
| image1 = [http://www.japanairraids.org/wp-content/uploads/2010/09/Hiroshima-aerial-A3389.jpg Hiroshima aerial A3389] 京橋川から南方向を撮影。
| image2 = [http://www.japanairraids.org/wp-content/uploads/2010/09/Hiroshima-aerial-A3377.jpg Hiroshima aerial A3377] 上空より。写真上やや右側が縮景園
}}
[[1913年]]（大正2年）からは一般にも開放され観覧できるようになり、[[1940年]]（昭和15年）には浅野家から広島県に寄付され、同年7月12日国の[[名勝]]に指定された<ref name="shukkeienh" /><ref name="hnavi4383" />。

[[太平洋戦争]]中、ここには日系女子学生による1班約15人からなる、[[大日本帝国陸軍]][[第2総軍 (日本軍)|第2総軍]]短波傍受班「特情班」が置かれていた<ref>{{Cite web|date=1995-04-02|url=http://www.hiroshimapeacemedia.jp/mediacenter/article.php?story=20120221171655858_ja|title=検証　ヒロシマ　１９４５～９５　＜１１＞　在米被爆者|publisher=中国新聞|accessdate=2014-04-12}}</ref>。

[[1945年]]（昭和20年）[[8月6日]][[広島市への原子爆弾投下]]、[[爆心地]]から約1.35kmに位置したこの園は壊滅的な打撃を受けた<ref>{{Cite web|url=http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1111487617757/index.html|title=原爆被災説明板　--縮景園--|publisher=広島市|accessdate=2014-04-12}}</ref>。縮景園は空襲時の市民の避難先に指定されていたため、被爆直後の園内は多くの被災者であふれた{{Sfn|原爆戦災誌|p=84}}{{Sfn|原爆戦災誌|p=222}}{{Sfn|原爆戦災誌|p=341}}。当時の惨状は、家族とともに避難していた[[原民喜]]の小説『[[夏の花]]』や、[[幟町天主公教会]]から一時避難していた[[フーゴ・ラッサール]]以下[[イエズス会]]神父が書いた回顧録などに描かれている。

[[1949年]]（昭和24年）[[広島平和記念都市建設法]]施行により復旧開始し、[[1951年]]（昭和26年）復旧途中ではあったが「縮景園」と改称され再開園した<ref name="shukkeienh" />{{Sfn|原爆戦災誌|p=341}}。本格的な復旧工事は[[1962年]]（昭和37年）から始まり、[[1970年代]]にほぼすべて完了している<ref name="hnavi4383" />。

なお被爆当時この園内で命を落とした被爆者の遺体の大部分は火葬されたものの、いくつかは火葬されず園内の丘に埋葬された<ref name="chugoku20050728">{{Cite web|date=2005-07-28|url=http://www1.chugoku-np.co.jp/abom/05abom/syukkeien/syukkeien3.html|title=縮景園の８．６ 遺族の思い|publisher=中国新聞|accessdate=2014-04-13}}</ref>。被爆直後に縮景園を訪れた朝日新聞の[[松本栄一 (カメラマン)|松本栄一]]カメラマンは、被爆して枯れた木の根元に遺体が埋葬された旨を記した立札を撮影しており、この写真にもとづいて発掘調査が実施され[[1987年]]（昭和62年）64柱の遺骨が発見された<ref name="chugoku20050728" /><ref>{{Cite web|date=2013-07-12|url=https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=531907776862365&id=116949048358242|title=【縮景園原爆犠牲者慰霊供養式】が開催されました。|publisher=縮景園Facebook|accessdate=2014-04-12}}</ref>。その場所には現在慰霊碑が建立されている<ref name="chugoku20050728" />。

== 交通 ==
{{See|[http://shukkeien.jp/info.php 縮景園公式ホームページ]}}
*[[広島電鉄白島線]]・[[縮景園前停留場|縮景園前停留所]]から徒歩2分<ref name="hnavi4383" />
*[[広島駅]]から徒歩10分<ref name="hnavi4383" />

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考資料 ==
* 『縮景園史』　広島県教育委員会、1983年
* 『広島県の地名』（日本歴史地名大系 第35巻） [[平凡社]]、[[1982年]]
* 小学館ウィークリーブック『日本庭園をゆく12：山陽・山陰の名園 岡山後楽園・縮景園・常栄寺』[[2005年]][[12月27日]]号
* {{Cite web|author = 広島県環境県民局|title = 名勝縮景園保存管理計画書|url =http://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/81755.pdf|format = PDF|date = 2012-04|accessdate = 2014-04-12|ref={{sfnRef|保存管理計画書|2012}}}}
* {{国指定文化財等データベース|401|2330|縮景園}}
* [http://www.rcc.net/prewar-film/hcity_content.htm ひろしま戦前の風景] - 中国放送(RCC)。戦前の映像がある。
* [http://www.nhk.or.jp/hiroshima/hibakumap/spot/TR-0025.html クロマツ・イチョウなど　(縮景園（しゅっけいえん）内)] - NHK広島
* {{Cite book|和書|author = 広島市|title = 広島原爆戦災誌|origdate = 1971
|url = http://a-bombdb.pcf.city.hiroshima.jp/pdbj/bookdownload/sensai0.pdf|format = PDF
|edition = 改良版|date = 2005|accessdate = 2014-04-12|ref={{sfnRef|原爆戦災誌}}}}

== 関連項目 ==
*[[日本国指定名勝の一覧]]
*[[広島藩の庭園]]
*浅野家と関係深いもの
** [[広島城]]
** [[広島県立美術館]] - 浅野家の私立美術館「観古館」の跡に建てられたもの
** [[広島市立中央図書館]] - 前身は浅野家の私立図書館「浅野図書館」
* [[御便殿 (広島市)]]

== 外部リンク ==
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{{広島市の主要な公園}}
{{広島県の被爆橋梁}}
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[[Category:広島県の観光地]]
[[Category:広島県にある国指定の名勝]]
[[Category:広島藩]]
[[Category:広島市中区の歴史]]
[[Category:広島市の観光地]]
[[Category:広島県の被爆建造物]]
[[category:日本庭園]]
[[Category:中区 (広島市)]]