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管弦楽法
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{{Redirect|オーケストレーション|コンピュータ|オーケストレーション (コンピュータ)}} {{Portal クラシック音楽}} '''管弦楽法'''(かんげんがくほう)とは、音楽上のアイディアを、最も合理的かつ効果的な方法で管弦楽団で表現する手段を深く研究する学問である<ref>{{Cite book|和書|author = 伊福部昭|authorlink = 伊福部昭|coauthors = |translator = |editor = 池野成、石丸基司、今井聡、ほか|others = |title = 完本 管絃楽法|origdate = 2008-03-16|edition = 初版 第4刷|date = 2012-10-31|publisher = 音楽之友社|location = 東京都新宿区神楽坂6-30|series = |language = 日本語|isbn = 978-4-276-10683-3|volume = |page = 3|pages = |chapter = 第1章|quote = |ref = }}</ref>。 <!-- 出典のない定義 - '''管弦楽法'''(かんげんがくほう)は、[[オーケストラ]](管弦楽)の[[楽譜]]を書くための技法のことである{{要出典|date=2013年2月}}。 [[オーケストラ]]に限らずさまざまな[[楽器]]編成の[[アンサンブル]]の楽譜を書くことを'''オーケストレーション'''([[英語]]:Orchestration)という{{要出典|date=2013年2月}}。管弦楽法とはそのための技法のことである{{要出典|date=2013年2月}}。また、管弦楽法のことを「オーケストレーション」ということがある。「オーケストレーション」の語には管弦楽法の意味が含まれるからである。 オーケストレーションにあたっては、単に演奏できればいいというだけでなく、演奏や練習がなるべく容易でありながら作曲者や演奏者の意図が十分かつ効果的に伝えられることも求められる。--> <!--論拠?→どの音楽大学でも、時間と経費の問題からか「管弦楽法」をメソッド化して教えることはあまりなされていない。--> == 管弦楽法の要素 == 管弦楽法は主として、[[楽器法]]と[[編曲]]法に分けられる。また、それらを支える基礎技法が必要である。その他、様々な作曲家のスコアを分析することも推奨される。 ===基礎技法=== 管弦楽法の基礎技法として、 *[[記譜法]]、[[音程]]、[[移調]]などの[[楽典]] *[[読譜]]、[[聴音]]、[[ソルフェージュ]]などの[[音楽基礎技法]] *[[スコアリーディング]]と[[総譜記譜法]] *[[和声学]] *[[対位法]] *[[楽式]] *[[ピアノ]]演奏技術 が挙げられる。 ===楽器法=== オーケストラに使われる各[[楽器]]についての知識である。 *[[音域]] **楽器の音域の限界 **常用音域 **音域による音色、音量、奏法の違い **[[移調楽器|実音と記音]] *奏法と奏法にかかる記譜法 **[[運指]] **[[呼吸]] **[[運舌]]、[[運弓]] **様々な奏法 ***弦楽器の弓奏(アルコ)と[[ピチカート]] ***[[弱音器]] ***楽器特有の奏法([[ホルン]]の[[ゲシュトプフト]]など) ***[[特殊奏法]] *[[持ち替え]] *一般的演奏者の疲労と限界について ===編曲法=== 旋律を複数の楽器が[[ユニゾン]]や[[オクターブ]]でなぞるときの効果について、また、和声学的にさまざまな[[声部]]を組み合わせるときの方法についての知識である。 *楽器編成 *楽器の組み合わせ **[[弦楽器]]同士の組み合わせ **[[管楽器]]同士の組み合わせ **弦楽器と管楽器の組み合わせ **管楽器と[[打楽器]]の組み合わせ **その他の組み合わせ *セクションごとの合奏の特質 **[[弦楽合奏]] **[[木管合奏]] **[[金管合奏]] **それらの組み合わせ *旋律奏と伴奏 *オーケストラの様々な習慣についての知識 - オーケストラは多くの人間の集まりである。オーケストラを効率よく運営するための様々な習慣がある。そのことを無視してオーケストレーションは成り立たない。 *オーケストラの中の独唱・合唱について ==管弦楽法の歴史== {{節stub}} === 中世~バロック期 === 管弦楽法の歴史は、オーケストラの歴史と同じだけ古い。[[中世西洋音楽|中世]]から[[ルネサンス音楽|ルネサンス期]]頃の音楽は、特に[[教会音楽]]においては声楽が主導的であり、合唱など多声部の声楽曲の各パートを、適した音域の楽器に割り当ててなぞるというような声楽に従属した伴奏形式が多かった([[モテット]]形式)。[[オルガン]]に加えて、[[ヴィオラ・ダ・ガンバ]]、サックバット([[トロンボーン]]の前身)、[[リコーダー]]、[[ツィンク]]などが、古くから声楽とともに用いられた代表的な楽器である。一方、[[器楽曲]]は主に世俗音楽の分野で発展していったが、公的儀礼といえばおしなべて宗教的であった時代、教会音楽で管弦楽法と高度な[[ポリフォニー|多声音楽]]が発展したのに対して、世俗音楽は小規模なアンサンブルが多く、古典音楽というより[[民族音楽|民俗(民族)音楽]]的なものであった。 [[バロック音楽]]の時代には、それまで世俗音楽で独奏楽器として用いられていた[[ヴァイオリン]]が飛躍的に改良されて、ヴィオラ・ダ・ガンバに代わって弦楽合奏の高音域に取り入れられ、ヴァイオリン中心の弦楽合奏を核とするオーケストラの基本形が出来上がった。バロック期前半の[[ヴェネツィア楽派|ヴェネツィア教会音楽]]では、古くから用いられてきたサックバットを加えた管弦楽が発達し、バロック中期以降のイタリアでは特に世俗音楽の分野でヴァイオリン音楽が非常に発達した。一方フランスでは新たに改良された楽器である[[オーボエ]]と[[ファゴット]]が加えられた。バロック中期頃には、他にもフラウト・トラヴェルソ([[フルート]])や[[トランペット]]、[[ホルン]]、[[ティンパニ]]など、現代の管弦楽でも使われる楽器の原型が形成され、続々と管弦楽に取り入れられた。また、しばらくはヴァイオリンと並んで弦楽合奏の中・低音部にはヴィオラ・ダ・ガンバや[[ヴィオローネ]]が用いられたが、[[ヴァイオリン]]の技術を応用した[[ヴィオラ]](ヴィオラ・ダ・ブラッチョ)、[[チェロ]]、[[コントラバス]]が生まれて、次第に取って代わっていった。 バロック音楽でも教会音楽は重要な位置を占めたが、宮廷や裕福市民層を中心として世俗音楽も発達し、相互の影響も盛んに行われた。上記や[[チェンバロ]]のような新しい楽器の管弦楽への導入は、世俗音楽の分野に担うところが大きい。大規模な管弦楽はやはり声楽曲を中心に発展し、対して器楽曲は比較的小編成の[[室内楽]]が多いという傾向は続いたが、声楽曲でも管弦楽は声楽パートに対して強い独自性を持つようになった。 この時代は[[オルガン]]、[[チェンバロ]]や[[リュート]]などの和音楽器がバスの旋律と和音を奏で、合奏の主導を担った。これを[[通奏低音]]といい、初期[[古典派音楽|古典派]]の時代まで管弦楽に欠かせないものであった。また、バロック後期には鍵盤楽器を通奏低音ではなく旋律楽器の一つとして管弦楽と組み合わせることも始まった。 === 古典派音楽 === [[18世紀]]末、[[フランツ・ヨーゼフ・ハイドン|ハイドン]]・[[ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルト]]の時代になって、徐々に通奏低音の用いられない管弦楽が演奏されるようになってくる。また、[[クラリネット]]がオーケストラで定席を占めるようになり、現在の通常のオーケストラの最小編成である「二管編成」が整うことになる。この時代の金管楽器と打楽器(この時点では[[ティンパニ]])はまだ音量の増幅に主眼があった。ティンパニは既に交響曲やオペラの途中で音を変えさせている。 20世紀初頭の[[新古典主義音楽]]では、この時代の初期の管弦楽法が模倣された。そのようなものとして、[[セルゲイ・プロコフィエフ|プロコフィエフ]]の『[[交響曲第1番 (プロコフィエフ)|古典交響曲]]』がよく知られている。 === グルック === [[クリストフ・ヴィリバルト・グルック|グルック]]は、オペラ作品の中で大胆な楽器使用を行った。1779年にパリで初演された『アウリスのイフィゲニア』(''Iphigénie en Aulide'' )には、[[シンバル]]、[[トライアングル]]、2本の[[ピッコロ]]などが使用されている。彼の理念は[[ガスパーレ・スポンティーニ|スポンティーニ]](『[[ヴェスタの巫女]] 』で、初めてオーケストラでバスドラムを使用した)やベルリオーズに受け継がれていくことになる。 === ベートーヴェン === [[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン|ベートーヴェン]]は楽器の使用方法について、いくつかの画期的な改革を行っている。 その筆頭がティンパニの使用方法である。従来、1対(2個)のティンパニは、楽曲で使用される音階の第1音と第5音(主音と属音:ハ長調でドとソ)に調律する習慣であったが、ベートーヴェンは初めてこれを破った。[[交響曲第7番 (ベートーヴェン)|交響曲第7番]]の第3楽章(ヘ長調)では、第1音であるファと第6音のラを用いた(この音はトリオのニ長調の属音である)。次の[[交響曲第8番 (ベートーヴェン)|交響曲第8番]]の第4楽章(ヘ長調)では、主音ファのオクターブの調律を行い、これを効果的に使っている。[[交響曲第9番 (ベートーヴェン)|交響曲第9番]]の第2楽章(ニ短調)でもファのオクターブ調律が見られるが、ファはその第3音にあたり、ついにティンパニは主音からも解放されたことになる。また、ティンパニは楽曲のリズムやアクセントの補強のために用いられ、主に楽曲のフォルテの部分で活躍する楽器であったが、[[交響曲第4番 (ベートーヴェン)|交響曲第4番]]の第1楽章展開部に見られるような ''pp'' のロールや、同第2楽章終結部の ''pp'' でのソロ、[[交響曲第5番 (ベートーヴェン)|交響曲第5番]]の第3楽章の終結部分のように、この楽器の弱音での表現力の可能性を開いた。 次に、オーケストラの中で同じベースラインを担当していたチェロとコントラバスをそれぞれ独立させて使用したこと。このことにより、チェロは旋律楽器としての可能性が開けた。また、コントラバスは、[[交響曲第3番 (ベートーヴェン)|交響曲第3番]]の第2楽章の冒頭の装飾音のように独自の存在感を示すことが可能になった。 さらに、使用楽器の拡大。木管楽器ではピッコロや[[コントラファゴット]]を、金管では3本のホルンや[[トロンボーン]]、打楽器ではバスドラム、シンバル、トライアングルといった楽器を交響曲に導入した。ただし、これらの楽器はベートーヴェン以前からもオーケストラで用いられていたものである(モーツァルト『[[魔笛]]』でのトロンボーンなど)。 ベートーヴェンの書法はさらに、[[カール・マリア・フォン・ウェーバー|ウェーバー]]で3個のティンパニ、[[フランツ・シューベルト|シューベルト]]、[[ロベルト・シューマン|シューマン]]、[[フェリックス・メンデルスゾーン|メンデルスゾーン]]、[[ヨハネス・ブラームス|ブラームス]]によって受け継がれた。 === 初期ロマン派 === 初期[[ロマン派音楽|ロマン派]]にはオーケストレーションの拡張の試みが徐々に行われていたが、同時に楽器の性能そのものも徐々に向上していったため、現代のオーケストラにおいては特に音量バランスにおいて作曲者が当時意図した響きとは異なるかもしれないことがままある。例えば[[ロベルト・シューマン|シューマン]]の諸作品や[[フレデリック・ショパン|ショパン]]の2つのピアノ協奏曲などのオーケストレーションは現代において過小評価する論調も見られるが、これは当時の楽器の性能を考えると必ずしも悪い例ではなく、[[古楽器|時代楽器]]のオーケストラで演奏すると現代のオーケストラよりもすっきりまとまって響くこともある。 === フランス革命 === フランス革命の式典として、野外や教会で大規模な音楽が演奏された。ナポレオン時代の1800年には革命記念日に合わせ、[[エティエンヌ=ニコラ・メユール|メユール]]が三つの管弦楽団と合唱団から成る『1800年7月14日の国民歌』を、9月22日の共和政樹立宣言の記念日に合わせ、[[ジャン=フランソワ・ル・シュウール]]は、さらに大規模な編成の『ヴァンデミエール1日の歌』を作ったが、このような祝祭的な性格の巨大編成の作品は、ル・シュウールの弟子ベルリオーズに受け継がれることとなった。 === ベルリオーズ === 最初の管弦楽法の大家は、[[19世紀]]初頭の[[エクトル・ベルリオーズ|ベルリオーズ]]である。ベルリオーズは楽器と楽器の組み合わせによって新しい音色を生み出すことや、オーケストラの規模の拡大に目を向けた。代表作『[[幻想交響曲]]』では[[ハープ]]、4本のファゴット、[[コーラングレ]]、[[コルネット]]、[[オフィクレイド]]、複数のティンパニ奏者、鐘など、フランスのオペラ座で使用されていた楽器を登場させている。また、『[[レクイエム (ベルリオーズ)|レクイエム]]』では、12本のホルン、ティンパニ8対(奏者10人)、シンバル10を含むオーケストラと合唱に加え、別働隊として36人からなる金管楽器の[[バンダ (オーケストラ)|バンダ]]という大規模な編成を要求している。 ベルリオーズが1844年に著した『管弦楽法』(原題:『現代楽器法および管弦楽法大概論』 ''Grand traité d'instrumentation et d'orchestration modernes'' )も諸外国に紹介され、後世の作曲家に影響を与えた。後述の[[リヒャルト・シュトラウス]]は、この書に注釈と新たな譜例(ワーグナーおよび自作)を加えた改訂版を1905年に出版している。 ベルリオーズの管弦楽法はフランス系の作曲家のみならず、ロシアの[[ピョートル・チャイコフスキー|チャイコフスキー]]・イタリアの[[ジュゼッペ・ヴェルディ|ヴェルディ]]・ドイツの[[リヒャルト・ワーグナー|ワーグナー]]などに受け継がれる。 === 楽器の発達とオーケストレーション === 産業革命が進展した19世紀前半には楽器製造産業が興隆し、[[ベーム式]]の木管楽器や、ヴァルブやピストンを備えた金管楽器(オフィクレイドは廃れ[[チューバ]]が取って代わる)など、今日使用されている管楽器の原型となるシステムが確立されたまた、[[アドルフ・サックス]]の考案による[[サクソフォン]]や[[サクソルン]]などの新しい楽器も登場した。この時期に金管楽器は飛躍的に演奏能力が向上したが、作曲家の間に定着するまでにはしばらくの時間がかかった。ワーグナーも、初期の『[[リエンツィ]]』(1840年)などの作品では旧式と新式の管楽器を併用している。その一方で、[[ジャコモ・マイアベーア|マイヤベーア]]などフランスのグラントオペラで活躍した作曲家は、それまで使用されなかった楽器の導入や新しい奏法の開発に挑戦し、その用例のいくつかはベルリオーズの『管弦楽法』に譜例付きで紹介されている。 === ワーグナー === 次に[[リヒャルト・ワーグナー|ワーグナー]]が登場する。彼は、管弦楽を巨大に拡張した。『[[ローエングリン]]』で完全な三管編成にして3和音を、『[[ニーベルングの指環]]』で四管編成、特に金管楽器を4つのセクションに分け4和音を同じ音色で、それぞれのセクションが充実した和声を出すことができるようにした。ここでは[[ワーグナーチューバ]]が考案され、後に[[アントン・ブルックナー|ブルックナー]]、[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]、[[アルノルト・シェーンベルク|シェーンベルク]]、[[ベルント・アロイス・ツィンマーマン|B・A・ツィンマーマン]]らに引き継がれる。[[バストランペット]]も当時では新しい楽器であった。 === リムスキー=コルサコフ === [[ニコライ・リムスキー=コルサコフ|リムスキー=コルサコフ]]は、色彩的な管弦楽法の大家である。<ref group="chushaku">しかし、彼は『管弦楽法原理』の序文で「オーケストレーションに上手下手は無い。それは作品の魂の一つだ。色彩的な曲を書く作曲家がオーケストレーションが上手いということになれば、ブラームスは下手な作曲家ということになってしまう。」というようなことを述べている。</ref>その作品もさることながら、著書『管弦楽法原理』が後世の作曲家に与えた影響は多大であり、その中には[[モーリス・ラヴェル|ラヴェル]]、[[クロード・ドビュッシー|ドビュッシー]]なども含まれる。極めて教科書的オーソドックスなリムスキー=コルサコフによって、管弦楽の全ての楽器が対等な地位を得るに至ったとされる。 直弟子であった[[オットリーノ・レスピーギ|レスピーギ]]や[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]も、それぞれが管弦楽法の大家として知られる。特に、ストラヴィンスキーはリムスキー=コルサコフの理論を受け継ぎつつも、『[[火の鳥 (ストラヴィンスキー)|火の鳥]]』、『[[ペトルーシュカ]]』などにおいてさらに色彩的な技法を開拓し、これらを『[[春の祭典]]』によって昇華させた。 === ドビュッシー === [[クロード・ドビュッシー|ドビュッシー]]はひとつひとつの楽器の特性を十分に生かすことに主眼を置き、新たな音響を作り出した。またオーケストラをいくつかの群に分けて別々のリズムや動きを担当することにより、多層的とも[[遠近法]]的とも言える立体的なオーケストレーションを生み出した。これは初期の『[[牧神の午後への前奏曲]]』の特に中間部で[[嬰ハ長調]]の主題が出てくる部分で効果的に聴こえるほか、オペラ『[[ペレアスとメリザンド (ドビュッシー)|ペレアスとメリザンド]]』や『[[海 (ドビュッシー)|海]]』など様々な場面で見ることが出来る。 === リヒャルト・シュトラウス === [[リヒャルト・シュトラウス]]は管弦楽法の大家としてよりも、「管弦楽技法」の大家として著名である。初期の[[交響詩]]を始め、中期の[[交響曲]]や後期の[[オペラ]]などにおいて、物事をオーケストラで描写する実力を如実に示した。そのピアノ譜によるデッサンを弾くのは難解ではあるが、オーケストラで音を出す段階になると、比較的容易で効果的な色彩管弦楽法を見せてくれる。 === ラヴェル === [[モーリス・ラヴェル|ラヴェル]]は「管弦楽の魔術師」という異名をとるほどの管弦楽法の大家であった。ラヴェルの管弦楽法は繊細・合理的であり、模範的な管弦楽法とされている{{要出典|date=2011年7月}}。 ラヴェルは、『[[ボレロ (ラヴェル)|ボレロ]]』においては音色の組み合わせを徹底的に追求し、管弦楽から全く新しい音色を得ることに成功している。編曲にも秀で、自作のピアノ曲を管弦楽曲に編曲したほか、[[モデスト・ムソルグスキー|ムソルグスキー]]のピアノ組曲『[[展覧会の絵]]』を管弦楽曲に編曲したものもラヴェルの実力が遺憾なく発揮されている。 === 新ウィーン楽派 === [[新ウィーン楽派]]([[アルノルト・シェーンベルク|シェーンベルク]]、[[アルバン・ベルク|ベルク]]、[[アントン・ヴェーベルン|ヴェーベルン]])の3人は、小中規模の作品を好んだ。初期には例えばシェーンベルクの2つの『[[室内交響曲]]』などが挙げられる。時には[[ウィンナ・ワルツ]]を、また時には彼ら自身に限らず当時生まれたばかりの新しい音楽を、それらの中規模のアンサンブルのために編曲して演奏した(たとえばドビュッシーの『[[牧神の午後への前奏曲]]』をシェーンベルクは10人編成に編曲して、彼自身の企画による現代音楽の試演会で取り上げている{{要出典|date=2011年7月}})。これらは[[第一次世界大戦]]後の金のなくなった世相を反映した現代音楽において、中規模のアンサンブルが好んで取り上げられることになる下地を作った{{要出典|date=2011年7月}}。[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]の『[[兵士の物語]]』などもその一環である{{要出典|date=2011年7月}}。 また特に[[アントン・ヴェーベルン]]は、一つの旋律を複数の楽器が一音や数音ずつ順次担当していく「[[音色旋律]]」という考え方を提唱した{{要出典|date=2011年7月}}。ヴェーベルンは[[ヨハン・セバスチャン・バッハ|バッハ]]の『[[音楽の捧げ物]]』による『リチェルカータ』(バッハ本来の楽譜の題名は「リチェルカーレ」)を管弦楽に編曲してこの試みを実践した後、自作の『[[交響曲 (ヴェーベルン)|交響曲]]』OP.21などに応用させている。この方法は形を変えて[[オリヴィエ・メシアン|メシアン]]の『[[トゥランガリーラ交響曲]]』などに受け継がれている{{要出典|date=2011年7月}}。 === その他の近代 === [[バルトーク・ベーラ|バルトーク]]は特に管弦楽の名匠とはされていないが、打楽器そのものやその他の楽器による打楽器的な奏法、特に弦楽器に多く見られる現代的な特殊奏法、「夜の音楽」と呼ばれる独特な音響色彩の探求などで注目を集める。[[セルゲイ・プロコフィエフ|プロコフィエフ]]の管弦楽法はかなりの中間色を使ったあいまいでデリケートな色彩の配合で特徴がある。[[アラム・ハチャトゥリアン|ハチャトゥリアン]]の管弦楽はどちらかというとポピュラー音楽嗜好であり、[[ドミートリイ・ショスタコーヴィチ|ショスタコーヴィッチ]]や[[カール・ニールセン]]はそれまで一度もなかった楽器の原色配置で独特の個性を出している。 === 現代 === 現代においては、それまでの慣習にとらわれない新たな要求がオーケストラに求められることも多い。 [[カールハインツ・シュトックハウゼン|シュトックハウゼン]]は、3つのオーケストラが同時に演奏する『[[グルッペン]]』を作曲した。これはオーケストラに空間配置という新たな考えを提唱した。これは現代ではもはや珍しいものではなくなり、例えば[[ドナウエッシンゲン音楽祭]]では多くの作曲家が毎年のように多群のオーケストラのための新作を初演している。最も金管楽器や一部の木管楽器のみを増強して会場の別の位置に用いる「[[バンダ (オーケストラ)|バンダ]]」(バンド)と呼ばれる手法は以前からあるもので、[[エクトル・ベルリオーズ|ベルリオーズ]]『[[レクイエム (ベルリオーズ)|レクイエム]]』、[[オットリーノ・レスピーギ|レスピーギ]]『[[ローマの松]]』(第4部「アッピア街道の松」)、[[レオシュ・ヤナーチェク|ヤナーチェク]]『[[シンフォニエッタ (ヤナーチェク)|シンフォニエッタ]]』、オペラ、[[グスタフ・マーラー|マーラー]]の交響曲などに見られる。 [[セリエル音楽]]に於いては管弦楽法、特に楽器法の機能が無視され、ピアニッシモの高音トランペットやフォルテッシモのフルートの最低音などが意図的に規則に厳格に従って書かれるが、この場合は楽器法や管弦楽法の無知によるものではない。 [[トーン・クラスター]]技法のように多くの音程をオーケストラに求める場合は、楽譜が何十段にも及ぶこともある。[[ヤニス・クセナキス|クセナキス]]の『[[メタスタシス]]』や[[リゲティ・ジェルジュ|リゲティ]]の『[[アトモスフェール]]』では、管楽器のみならず弦楽器奏者の一人ひとりにまで別の動きを求めている。特に後者のリゲティは演奏者にとって無理のない自然な動きを要求しており、この動きの集合が「[[ミクロ・ポリフォニー]]」と呼ばれ、結果として全体の音の雲のように聞こえる効果を持つ。またクセナキスは大編成の管弦楽の奏者を会場のいたるところに不特定に配置する試みも行っている(『[[テレテクトール]]』および『[[ノモス・ガンマ]]』)。[[ポーランドの現代音楽|ポーランド楽派]]と呼ばれる作曲家たちは大胆な音響集合をオーケストラに要求する作品を次々と作り出し、彼らの間で共通する「騒音主義」的な作風を生み出した。 またオーケストラの練習時間などの慣習、特殊奏法の未熟さ、譜面の読みの専門化、また経済事情により充分な解釈による満足な演奏が得られないとして、一部の作曲家は通常のオーケストラよりも一回り小さい室内管弦楽のアンサンブルのために作曲することを好む。[[ピエール・ブーレーズ]]や[[ジェルジ・リゲティ]]などにその傾向が見られる。[[アンサンブル・アンテルコンタンポラン]]、[[ロンドン・シンフォニエッタ]]、[[アンサンブル・モデルン]]、[[アンサンブル・レッシェルシェ]]、[[クラングフォールム・ウィーン]]など、現代音楽専門の室内管弦楽アンサンブルも多く存在する。彼らは普通のオーケストラの奏者よりも現代音楽共通の語法に非常に精通している。ソロ楽器のための現代音楽では頻繁に求められるそれぞれの楽器の特殊奏法も、通常のオーケストラでは奏者の習熟度不足で満足に演奏できなかったり慣習上忌避されるがこれらのアンサンブルでは難なくこなすことから、彼らの団体に対して作曲する場合においては、特殊奏法はもはや共通の楽器法・管弦楽法の手段となっている。また大家のみならず若手や中堅の作曲家もこれらのアンサンブルのための編成の曲を多く書くことによって、現代ではもはや通常のオーケストラとは別にこれらのアンサンブルのような室内管弦楽規模のレパートリーも標準のものとなりつつある。 また[[電子音楽]]による電子音響技術をオーケストラと併用して用い、新しい音色の混合効果を用いることももはや珍しくはない。初期にはシュトックハウゼンが[[エフェクター#音程の変化|リングモジュレーター]]などを多用したほか、現在では[[IRCAM]]を初め、生楽器の演奏をリアルタイムに電子音響に反映させるライブエレクトロニクス技術も日々発達している。 == 楽器 == {{節stub}} 以下、管弦楽の各楽器に関する概説を述べる。詳細は各楽器の記事を参照のこと。 === 弦楽器 === 管弦楽においては、[[ヴァイオリン属]]の弦五部(第1・第2[[ヴァイオリン]]、[[ヴィオラ]]、[[チェロ]]、[[コントラバス]])が使用される。それぞれの人数はフルの四管編成に於いては16・14・12・10・8が一般的と言われているが、各楽団や曲によって変化する。例えば二管編成に於いてはその半分が普通である。ヴァイオリン属の楽器で弦五部以外の編成が取られることは希である。<!--記憶が不確か→[[フォーレ]]の[[レクイエム (フォーレ)|]]の通常演奏に用いられる版では、ヴァイオリンが1部しかない。[[リヒャルト・シュトラウス]]の『エレクトラ』は、ヴァイオリン3部、ヴィオラ3部(うち1つはヴァイオリン奏者が第4ヴァイオリン持ち替え)、チェロ2部、コントラバスという編成である。[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]の『[[詩篇交響曲]]』では、弦楽器はチェロとコントラバスのみが使用される。[[ベルント・アロイス・ツィンマーマン]]の『ロワ・ウブ』や『[[レクイエム]]』などの管弦楽部分では複数のコントラバスのみが良く使われる。!--> また[[ピッツィカート]]をはじめ、コル・レーニョ(ベルリオーズ『[[幻想交響曲]]』第5楽章など)、スル・ポンティチェッロ([[アントニオ・ヴィヴァルディ|ヴィヴァルディ]]「ヴァイオリン協奏曲集『[[四季 (ヴィヴァルディ)|四季]]』より『冬』第2楽章など」)、[[フラジオレット]]などによって音色を変化させることも多く用いられる。弱音器を用いることも多い。これらは集団である弦楽器群に対し一斉に同じ奏法あるいは弱音器という音色変化を求めるため、各弦楽器のソロが同じ特殊奏法をする場合に比べてオーケストラ全体の効果はとても大きい。 [[弦楽合奏]]も参照。 === 木管楽器 === 管弦楽で使用される中心的な[[木管楽器]]は、[[フルート]]・[[オーボエ]]・[[クラリネット]]・[[ファゴット]]の4種類である。楽曲やオーケストラの規模を表す「n管編成」という言葉は、それぞれの木管楽器奏者がn人いるということを意味している(持ち替えによって楽器を3本使用した場合でも、奏者が2人なら2管編成である<ref group="chushaku">伊福部昭、『管絃楽法』(音楽之友社 1993年) 27頁</ref>)。標準的な編成は2管編成から4管編成である。2管編成においては、それぞれの2番奏者が同族楽器である[[ピッコロ]]・[[コーラングレ]]・[[バスクラリネット]]もしくは[[小クラリネット]]・[[コントラファゴット]]に持ち替える場合がある。3管編成になると、一人の奏者がこれらの同族楽器を専門的に担当することが一般的である。 ただし、管弦楽の編成が確立する以前の古典派の時代においては、2管編成であってもフルートが1本であったり、フルート、オーボエ、クラリネットのいずれかを欠いている楽曲も多数存在する。例えば、モーツァルトの後期の交響曲である38番~41番には完全な2管編成のものはない。これより少し後に作曲されたハイドンの99番以降の交響曲は標準的2管編成である。 フランスでは独特な慣習のために、2管編成であってもファゴット(バソン)は4本が標準編成であった。このため、フランスの作品ではベルリオーズの『幻想交響曲』やドビュッシーの『[[海 (ドビュッシー)|海]]』のように、4管編成でないにも関わらず、ファゴット族の楽器が4本必要な楽曲が存在する。 比較的新しい時代(1844年)に考案された[[サクソフォーン]]は、音の大きさや際立った音色ゆえにオーケストラの中に定席を占めることはなかったが、[[ジョルジュ・ビゼー|ビゼー]]『[[アルルの女]]』、[[モーリス・ラヴェル|ラヴェル]]『[[ボレロ (ラヴェル)|ボレロ]]』、ラヴェル編曲による[[モデスト・ムソルグスキー|ムソルグスキー]]『[[展覧会の絵]]』(「古城」)、[[ジャック・イベール|イベール]]交響組曲『パリ』(室内管弦楽編成でサクソフォーンはクラリネットと持ち替え)、[[アンドレ・ジョリヴェ|ジョリヴェ]]『[[オンド・マルトノ協奏曲]]』(第2楽章)、[[モーリス・デュリュフレ|デュリュフレ]]『[[3つの舞曲]]』(第3曲「タンブーラン」)、[[セルゲイ・プロコフィエフ|プロコフィエフ]]『[[キージェ中尉]]』『[[ロメオとジュリエット (プロコフィエフ)|ロメオとジュリエット]]』など、フランスやロシアの作品において使用されることがあった。その多くはソロ楽器としての使用であるが、[[アルテュール・オネゲル|オネゲル]]の『[[火刑台上のジャンヌ・ダルク]]』では3本、リヒャルト・シュトラウスの『[[家庭交響曲]]』では4本のサクソフォーンが、セクションとして使われている。 === 金管楽器 === [[金管楽器]]は、3管編成では、[[ホルン]]4・[[トランペット]]3・[[トロンボーン]]3(テナー2+[[バストロンボーン|バス]]1)・[[チューバ]]1が標準である。また1管編成では各1ずつ、4管・5管編成になるとそれぞれの楽器の数が増えたり様々な金管楽器が追加されたりすることが多い。また、巨大な編成ではホルン6~8、チューバ2(テナー+バス)などという編成も、そう珍しくはない。 フランスでは、パリ・オペラ座において、ナチュラル式のトランペット2本と、ピストン式の[[コルネット]]2本を併用する慣習があった。このことは、ベルリオーズ『幻想交響曲』をはじめ、[[レオ・ドリーブ|ドリーブ]]の『[[コッペリア]]』・『[[シルヴィア (バレエ)|シルヴィア]]』、ドビュッシー『海』などのフランスの作品に影響を与えている。また、ワーグナーは、パリ・オペラ座でも上演を想定して、『リエンツィ』・『さまよえるオランダ人』などをこの編成で作曲している<ref group="chushaku">小鍛冶邦隆、『管弦楽法(ベルリオーズ/R.シュトラウス)』(音楽之友社)、「監修者による解題」</ref>。 。 現在では特殊な金管楽器として、[[フリューゲルホルン]]、[[ユーフォニアム]]などが挙げられる。吹奏楽では[[スーザフォン]]が用いられることもある。ワーグナーやブルックナーなどが後期に用いた[[ワグナーチューバ|ワーグナーチューバ]]は、ホルンと共通するマウスピースで演奏可能なことから、ホルン奏者の持ち替えで用いられる。また[[ジュゼッペ・ヴェルディ|ヴェルディ]]のオペラ『[[アイーダ]]』では、トランペットの柄がまっすぐで長い「アイーダ・トランペット」([[ファンファーレ・トランペット]])と呼ばれる特殊なトランペットが舞台上で用いられる。 通常音色のほか、弦楽器と同じように[[弱音器]]も多く用いられる。ホルンにはストップ奏法(ドイツ語で[[ゲシュトップフト]])も頻繁に要求される。現代では弱音器の種類は豊富であり、特にトランペットのワウワウミュート、およびその芯管をはずしたハーマンミュートは、通常のストレートミュートとは区別されて用いられる。[[武満徹]]がこれらのミュートの差異を好んでオーケストラ内で使い分けた。 === 打楽器 === ほぼ定席を得ている[[ティンパニ]]は2管編成で1対(2台)、3管編成で4台まで、4管編成になると2対以上になることが多い。それ以外に、曲によっては多くの種類の打楽器が使用される。大きく分けて鍵盤打楽器とその他の打楽器に分かれ、しばしば使用されるものは、前者が[[グロッケンシュピール]]・[[シロフォン]]など、後者が[[シンバル]]・[[トライアングル]]・[[タンブリン]]・[[カスタネット]]・[[スネアドラム|小太鼓]]・[[バスドラム|大太鼓]]・[[チューブラーベル]]・[[タムタム]]など。[[伊福部昭]]の『[[日本狂詩曲]]』のように、10人近くの打楽器奏者を必要とする曲もある。そのほか太鼓類と金属打楽器と木質打楽器に分ける習慣もある。ティンパニ奏者は通常ティンパニのみを担当し、その他の打楽器奏者が他の多くの打楽器を担当するのが習慣だが、現代の特に室内管弦楽においては、ティンパニ奏者も他の打楽器に持ち替える事もある。 === 鍵盤楽器 === 管弦楽において使用される[[鍵盤楽器]]は、主に[[ピアノ]]・[[オルガン]]・[[チェレスタ]]である。 [[ピアノ]]は、管弦楽においては当初[[ピアノ協奏曲]]における独奏楽器と位置づけられていたが、[[エクトル・ベルリオーズ|ベルリオーズ]]が[[レリオ、あるいは生への復帰]]で2台のピアノを使用したことに始まり、[[カミーユ・サン=サーンス]]の[[交響曲第3番 (サン=サーンス)|交響曲第3番]]「オルガンつき」や[[動物の謝肉祭]]、[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]のバレエ音楽『[[ペトルーシュカ]]』などの楽曲で効果的に使用されており、現在では管弦楽の1パートとしての地位が確立されている。 [[チェンバロ]](ハープシコード)は[[バロック音楽|バロック]]や[[古典派音楽|古典派]]前期までの[[通奏低音]]の伴奏には用いられたが、それ以降では使われることは稀になった。しかし近現代においては再び使用されている。 オルガンは[[西方教会]]の[[教会音楽]]のなかに確固たる地位を占める楽器であり、西方教会においてはほとんどの教会が所持しているほか(ただし無伴奏声楽を聖歌の原則とする[[正教会]]には当て嵌まらない)、オーケストラの演奏が可能な中規模以上の教会ではグランドオルガンという多彩な音色と音量が得られる楽器が設置されていることも多い。宗教曲として[[ガブリエル・フォーレ|フォーレ]]や[[モーリス・デュリュフレ|デュリュフレ]]の『[[レクイエム]]』など、宗教曲以外でも[[カミーユ・サン=サーンス|サン=サーンス]]の[[交響曲第3番 (サン=サーンス)|交響曲第3番]]「オルガンつき」、[[リヒャルト・シュトラウス]]の交響詩『「[[ツァラトゥストラはこう語った (交響詩)|ツァラトゥストラはかく語りき]]』などで効果的に用いられる。 === 撥弦楽器 === 管弦楽において使用される[[撥弦楽器]]は、主に[[ハープ]]、[[マンドリン]]、[[ギター]]、[[バンジョー]]、[[ツィター]]などである。このうち最も一般的な楽器はハープである。 ハープは[[マリー・アントワネット]]が愛奏したように、古典期から既に独奏楽器としての地位を得ているが、演奏会用純音楽としてオーケストラにハープが編入され特徴的な活躍を見せるのは、[[ロマン派音楽|ロマン派]]初期の[[エクトル・ベルリオーズ|ベルリオーズ]]の『[[幻想交響曲]]』第2楽章が最初期の例である。[[リヒャルト・ワーグナー|ワーグナー]]は同時に6台ものハープを要求し、音量を補強した。またダブルアクション・ハープの発明により、近代以降ではより頻繁に使用されるようになった。また近代ではハープは2台が組になり交互に演奏することで、より拡張的な書法を見せることも多い。また通常音色だけでなく叩いたり擦ったりハーモニクス奏法も他の楽器と組み合わせるのに好んで用いられる。 ツィターは[[オーストリア]]の民族楽器であり、[[ヨハン・シュトラウス2世]]などの[[ウィンナ・ワルツ]]で編入楽器として用いられた。ただしソリストとして特徴的に扱われ、伴奏に回ることは少ない。 [[バンジョー]]も同様の理由で狂詩曲的な扱いであることが多く、ヨーロッパよりは楽器の生まれた南北アメリカ大陸の作曲家に使用例が多い。珍しい例では[[キューバ]]に滞在した[[ハンス・ウェルナー・ヘンツェ]]の交響曲第6番で用いられている。 === 打弦楽器 === 管弦楽において使用される[[打弦楽器]]は、主に[[ツィンバロム]]である。[[ツィンバロム]]は[[バルトーク・ベーラ|バルトーク]]や[[コダーイ・ゾルターン|コダーイ]]など、主に[[ハンガリー]]の作曲家によって用いられる。[[クロード・ドビュッシー|ドビュッシー]]の『[[レントより遅く]]』にも使用例があるが、これは元々ピアノ小品からの編曲で、ピアノ原曲にはないソロパッセージが冒頭に出てくるもので、機会音楽的なものであると伺える。[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]、[[ジェルジ・クルターグ|クルターグ]]、[[ピエール・ブーレーズ|ブーレーズ]]、[[アンリ・デュティユー|デュティユー]]の作品にも使用例がある。 === 声 === 管弦楽と声楽は、古くから[[オペラ]]において同時に使用されていたが、人の声が「楽器」の一種として管弦楽に取り入れられたのは、原則として近代以降である。[[クロード・ドビュッシー]]の『[[夜想曲 (ドビュッシー)|夜想曲]]』第3曲「海の精(シレーヌ)」のほか、[[モーリス・ラヴェル|ラヴェル]]の『[[ダフニスとクロエ (ラヴェル)|ダフニスとクロエ]]』、[[グスタフ・ホルスト|ホルスト]]の『[[惑星 (組曲)|惑星]]』終曲「海王星」、[[カール・ニールセン]]の[[交響曲第3番 (ニールセン)|交響曲第3番『広がり』]]第2楽章などが知られる。これらは全て母音のみの[[ヴォカリーズ]]唱法が用いられる。 === 電子楽器 === 管弦楽において[[電子楽器]]・[[電気楽器]]が使用されることも近代以降では多い。 主にフランスの作曲家が[[オンド・マルトノ]]を好んでオーケストラ内で用いた。[[アルテュール・オネゲル]]の『[[火刑台上のジャンヌ・ダルク]]』や[[シャルル・ケックラン]]の『燃ゆる茂みなどがその初期の試みとして挙げられる。[[オリヴィエ・メシアン]]は『神の現存のための3つの小典礼楽』をはじめ、代表作『[[トゥランガリーラ交響曲]]』ではピアノと並んでソリストとして、そしてオペラ『[[アッシジの聖フランチェスコ]]』においては3台のオンド・マルトノを使用している。 [[エレクトリックギター|エレキギター]]や[[エレキベース]]は主に[[映画音楽]]などの劇伴音楽やポピュラー音楽などにおいてオーケストラあるいは[[吹奏楽]]の中で使われるが、例えば[[ヘルムート・ラッヘンマン]]のオペラ『[[マッチ売りの少女]]』などのような作品の中でも用いられている。 オーケストラの生演奏に合わせて録音された音源を同時に演奏することも行われる。その最初期の例としては[[オットリーノ・レスピーギ|レスピーギ]]の交響詩『[[ローマの松]]』において、[[サヨナキドリ|ナイチンゲール]]の鳴き声を用いたことが挙げられる。現代においては例えば[[エイノユハニ・ラウタヴァーラ]]の「鳥とオーケストラのための協奏曲『北極詩篇(極北の歌)』」では全編において鳥の声の録音テープがオーケストラの演奏と同時に再生される。 シュトックハウゼンが多用したように、オーケストラ全体の音色をマイクで入力し、リングモジュレーターなど初期の[[シンセサイザー]]で変調・加工してスピーカーから出力し、オーケストラと共に用いることもある。 電子音響技術とオーケストラが密接に結びついた例として、[[IRCAM]]の研究があげられる。演奏行為と密接に結びつく電子音楽の活用の試みが行われており、これをライブエレクトロニクスと称する。初期には4Xというコンピュータが使われ、[[ピエール・ブーレーズ]]はこの技術を用いて代表作の一つ『レポン』を作曲している。 1970年代はコンピュータ技術の支援による音響の分析結果に基づく生楽器のオーケストレーションの作品が多く生まれた。中でも[[スペクトル楽派]]と呼ばれる一群の作曲家たち、特に[[ジェラール・グリゼー]]の代表作『音響空間』が挙げられる。 1980年代にはコンピュータや電子キーボード楽器のMIDI制御によるテープ録音を伴い、シンセサイザーの各種エフェクトなどを経て奏者の任意のタイミングによって再生し、アンサンブルやオーケストラと共演するという試みが多く行われた。[[カイヤ・サーリアホ]]や[[ジョナサン・ハーヴィ (作曲家)|ジョナサン・ハーヴェイ]]などの作品にそれらの技術使用が見られる。 1990年代以降はリアルタイム音響制御ソフトMax/MSPにより、ライブエレクトロニクスはより身近なものとなった。IRCAMを中心として多くの作曲家がこの技術を用いており、ソロ、室内管弦楽(主に[[アンサンブル・アンテルコンタンポラン]]の演奏会では多く用いられる)からオーケストラやオペラに至るまで、ライブエレクトロニクス技術は幅広く用いられている。近年では特に前述のサーリアホが2つのオペラ『遥かな愛』(2000年)と『アドリアナ・マーテル』(2006年)において、それぞれ合唱を舞台裏に配置し、マイクで拾った音を元に会場全体の多くのスピーカーに空間配置して移動音響として用いるなど、あからさまな電子音響だけではなく様々な場面で管弦楽においてライブエレクトロニクス技術が援用されている。 ==編曲法== 管弦楽法の学習としては、まずそれぞれの楽器の特徴を知ることが大事だが、それらの楽器を複数組み合わせることによって、初めて管弦楽やアンサンブルにおける複数の楽器を有効に使いこなすことが出来る。これらはそれぞれの楽器にとって無理なく演奏できることはもちろん、音色を打ち消すようなことなく(意図的である場合を除く)それぞれの響きが最大限効果的に発揮されるよう、いくつかの特徴的な配置についても作曲家は熟知しておくことが望ましい。 ===楽器の組み合わせ=== 木管楽器(場合によっては金管楽器も含む)に対して推奨とされるいくつかの特徴的な組み合わせがある。これらは通常、下から順にファゴット、クラリネット、オーボエ、フルートの順で積み重ねられ、これを「積み重ね法」と言う。対して、二管編成以上の場合、内声部の楽器に対し上下の外声部に違う楽器を当て嵌めることにより、この積み重ね法とは異なる音色を得ることも出来る。これを「囲い込み」と言う。また密集配置の和音には4つの楽器を混ぜないなど、慣習として忌避される書法もある。これは三管編成以降は徐々になくなっていく。 ===音色混合=== 同一オクターブの同音を2つ以上の楽器で演奏することで、単一のソロ楽器にはない複雑な音色を生み出すことが出来る。最も有名な例は、[[フランツ・シューベルト|シューベルト]]の[[交響曲第7番 (シューベルト)|交響曲第7番]](旧第8番)「未完成」の冒頭で[[オーボエ]]と[[クラリネット]]が同一メロディを奏する場面であろう。 フレーズの出だしの一音のみに別の楽器を絡ませることによって、音色の発音の瞬間を通常とは異なる印象にすることが出来る。[[ハープ]]、[[弦楽器]]のピッツィカート、[[打楽器]]は特によく使われるほか、稀に[[金管楽器]](例えば[[ホルン]]の[[ゲシュトップフト|ストップ奏法]]でのスタッカートなど)がこれを担うこともある([[モデスト・ムソルグスキー|ムソルグスキー]]/[[モーリス・ラヴェル|ラヴェル]]編曲『[[展覧会の絵]]』第2曲「小人」など)。フレーズの区切りなどである音色から別の音色へメロディを受け渡す場合にも有効であり、またフレーズのいくつかを音色の似た違う楽器が順次担当していくことによって徐々に音色を変化させるような用いられ方もある([[アントン・ヴェーベルン|ヴェーベルン]]の音色旋律のアイデア、[[望月京]]の『カメラ・ルシダ』など)。 == 参考文献およびリンク == *管弦楽法の教本としては、以下のものが歴史的名著として知られる。 **[[エクトル・ベルリオーズ|ベルリオーズ]]/[[リヒャルト・シュトラウス]]補筆『管弦楽法』([[音楽之友社]] 2006年) **[[伊福部昭]]『管絃楽法』(音楽之友社 改訂版2008年) **[[ウォルター・ピストン]]『管弦楽法』(音楽之友社) **[[ゴードン・ジェイコブ|ゴードン・ヤコブ]]『管弦楽技法』(音楽之友社) **[[ニコライ・リムスキー=コルサコフ|リムスキー=コルサコフ]]『管弦楽法原理』(Alexander Books, ISBN 0939067730)(英語版) **[[シャルル・ケクラン|ケクラン]]『管弦楽法』(原文フランス語。日本語版絶版) *以下は、[[デスクトップミュージック|DTM]]の視点から管弦楽法について実践的に解説したものである。 **原田宏美『DTMで学ぶオーケストレーション入門』(音楽之友社 2002年) **侘美秀俊『DTMによるオーケストレーション実践講座』(音楽之友社 2005年) *その他、以下の書籍も参考になる。 **[[アラン・ルヴィエ]]『オーケストラ』([[白水社]] [[文庫クセジュ]]) **[[佐藤賢太郎]][http://www.wisemanproject.com/education-orchestrationtip-by-KentaroSato.html 『Orchestration』]ハリウッドでも活躍している作編曲家である佐藤が執筆を計画している書籍計画。「アイデア1つから、一人の作曲家が実際にオーケストラ曲として完成するまでのプロセスを通して管弦楽法を教える」というアプローチをとっている。表記は英語。Mp3で例が聞ける。 == 注釈 == <references group="chushaku" />{{脚注ヘルプ}} == 出典 == <references /> {{DEFAULTSORT:かんけんかくほう}} [[Category:音楽理論]] [[Category:音楽用語]] [[Category:編曲]]
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