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'''祭服'''(さいふく)とは # [[祭祀]]の際に[[神官]]などが着る服。 # キリスト教[[聖職者]]の[[衣装]]のこと。本記事で詳述する。 ---- [[File:Maxim of Bulgaria.jpg|thumb|right|120px|[[ブルガリア正教会]]の[[マクシム (ブルガリア総主教)|マクシム]][[総主教]]。頭に[[ミトラ (宝冠)]]を着用し、胸には[[パナギア]]をかけ、右手には手持ち[[十字架]]、左手には[[権杖]]を持っている。]] [[画像:Visita di Papa Benedetto XVI a Genova - 2008-05-18 - Primo piano di Benedetto XVI.jpg|thumb|right|120px|[[教皇|ローマ教皇]][[ベネディクト16世 (ローマ教皇)|ベネディクト16世]]。頭に[[ミトラ (司教冠)]]を着用している。]] '''キリスト教における祭服'''は、キリスト教聖職者が[[奉神礼]]・[[典礼]]・[[礼拝]]のときに使用するための衣装のことである。 [[西方教会]]では[[キャソック]]、[[アルバ (衣服)|アルバ]]、[[カズラ]]、[[ストラ]]、[[カッパ・マグナ]]など。[[正教会]]では[[ステハリ]]、[[エピタラヒリ]]、[[オラリ]]、[[ポルーチ]]、[[フェロン]]、[[サッコス]]など。 教派によって用いる祭服の形状は異なる。特に[[西方教会]]と[[東方教会]]の相違は大きい。[[正教会]]における祭服は、西方教会のものとかなり外観が異なっている。起源が同じものであると考えられ、首からかける帯であるというところには共通点があるといった[[ストラ]](西方教会)と[[エピタラヒリ]](正教会)のような例もあるが、多くは見た目には殆ど異なったものとなっている。例えば同じ[[ミトラ]]でも、西方教会の[[ミトラ (司教冠)]]と、正教会の[[ミトラ (宝冠)]]とでは、形状は同じ名称を持つ冠とは思えないほど全く違う形状をとっている。以下、教派毎にその祭服と、祭ごとに用いられる祭服の色の特徴を詳述する。 == 西方教会 == === [[カトリック教会]]における位階と祭服 === ==== 司祭服 ==== '''司祭服'''(しさいふく)とは、[[教会 (キリスト教)|教会]]の[[司祭]]が[[祭儀]]([[ミサ]])のときに着用する衣装のこと。[[アルバ (衣服)|アルバ]]、[[ストラ]]、[[カズラ]]などがある。 ==== 司教服 ==== '''司教服'''(しきょうふく)とは、[[司教]]が祭儀のときに使用するための衣装のこと。司教のみが着服および携帯することが許されているもので、司教用の[[カズラ]]、[[カッパ]]・[[マグナ]]、[[司教杖]]、[[ミトラ (司教冠)|ミトラ]]などがある。 ==== 祭服の色目 ==== [[カトリック教会]]では4色の祭服(彩色が施されているのは[[カズラ]]という外套のようなもの)がある。色は「赤」、「白」、「緑」、「紫」。色は季節および[[祝日]]によって変更される。これは、教会の暦である「[[典礼暦]]」をビジュアル的に表現するために決定された。決定された時期は文献によると1100年代となっている。祭服のみならず、聖堂内で用いられる布等が同様の色合いで統一されることがある。 祭服に採用された色についての意味は次のようになっている。 ;赤 :[[殉教]]の色。[[イエス・キリスト|主イエス]]の受難日([[聖金曜日]])や、神に捧げられた尊い[[聖人]]([[殉教者]])のための祝日に着用する。 ;白 :純真を表す色。主イエスが降誕したとされる「[[クリスマス]]」、主イエスが復活したとされる「[[復活祭]]」に着用する。また、[[葬儀]]に着用することも勧められる。 ;緑 :年間を通して着用される。この色には上記のような特別な意味はなく、典礼暦の祝日ではない主日や週間に着用される。 ;紫 :[[改悛]]、後悔の色。アドヴェント([[待降節]])や、[[四旬節]]に着用される。また、[[葬儀]]にも使用されることがある。 ;黒 :悲しみを表す色。葬儀に着用することができ、カトリック教会の現教会法では[[11月2日]]にのみ使用されるが、白が代用される場合がある。 ;ばら色(ピンク) :喜びを表す色。使用日の入祭唱冒頭句、ガウデーテ(羅:Gaudete-喜べ):待降節第3主日(喜びの主日)と、レターレ(羅:Laetare-歓喜せよ):四旬節第4主日(バラの主日)に由来する。 :(ばら色は、待降節第三主日および四旬節第四主日に用いることができる。「ローマ・ミサ典礼書の総則」第308項f) === 聖公会・プロテスタント諸派の祭服と祭色 === [[聖公会]]と[[ルーテル教会]]の祭ごとの色は、カトリック教会のものと類似する。また、聖公会の祭服は特にカトリック教会のものと似通っている部分が多い。ただし、カトリックでいうカズラをチャジブル、ストラをストールと呼ぶなど、英国教会の流れを汲んでいることから英語発音になっている物が多い。 <br>ただし訳語については聖公会は[[司教]]ではなく[[主教]]が用いられるため、カトリック教会の「司教杖」に相当する主教が保持する杖には「牧杖」または「パストラルスタッフ」の呼び名が当てられる。 なお、[[プロテスタント|プロテスタント教会]]では、祭服(おもに[[ガウン]]と呼ばれている)の色には特に規定はない事が多い。そもそも特定の祭服を用意しない教会もある。ただし、カトリック教会の[[典礼]]や[[東方教会]]の[[奉神礼]]を取り入れるなどしている教会の中には、カトリック・聖公会・[[正教会]]と同様の祭服・祭色を採用している教会も稀に存在する。 == 東方教会 == === 正教会における祭服 === [[ファイル:Orthodoxe Bishops gr1.JPG|thumb|right|260px|[[ギリシャ正教会]]の[[主教]]達。祭服を着た手前の5人の内、向って最も右側の人物は[[輔祭]]。[[奉神礼]]時にのみ着用する祭服を完装している。奉神礼が終わった直後に写真撮影などの為に祭服を直ぐには解かない事は珍しく無いが、奉神礼が終われば直ぐに祭服を解くのが基本である。左手に持つ杖は奉神礼時に用いる[[権杖]]。]] 正教会の祭服は華やかに彩られるものが多いが、こうした祭服は基本的に[[奉神礼]]の際のみに着用され、奉神礼以外の場面で着用するのは写真撮影時などに限られる。 正教会においては、[[輔祭]]以下の[[奉神礼]]における祭服を着用する奉仕者は[[奉神礼]]の開始の際に、[[至聖所]]に居る最も上位の司祭以上の[[神品 (正教会の聖職)|神品]]から祝福を得てから、「我が霊は主の為に楽しまん」([[日本正教会]]訳)などの文言で始まる各種祝文(祈祷文)を唱えつつ着用する。着用する祭服ごとに唱える祝文は異なる。[[司祭]]と[[主教]]は祝福を得ないところ以外は、祈祷文を唱えつつ着用するところは同じである。 主教の場合は聖堂に入堂の直後に、祭服着用を聖堂中央で行う「主教着衣式」が、[[聖歌]]が[[詠隊]]によって歌われる中で行われることがある。 ==== 正教会における祭色 ==== [[ファイル:ArkkipiispaLeo.png|thumb|right|160px|[[レオ (フィンランド大主教)|フィンランド大主教レオ]]。[[リヤサ]]を着用し、[[主教|主教品]]が[[奉神礼]]を行う時以外に着用する標準的な服装をしている。ただし日常生活においては、[[クロブーク]]はより簡略な帽子に代えられる。殆ど一般の[[修道士]]と異なるところは無いが、首にかけている[[パナギア]]と呼ばれる丸い飾りは、主教のみが着用するものである。左手に持つ杖は奉神礼時以外に用いられるものであり、[[権杖]]とは形状が異なる。([[ヘルシンキ]]の[[生神女就寝大聖堂 (ヘルシンキ)|生神女就寝大聖堂]]にて撮影)]] [[正教会]]においても祭服のみならず、[[聖堂]]に使用されている布の色も祭色に統一される事がある。ただしこんにちみられるような豊富な祭色の種類は、中世以降、西方教会の影響によって採用されたものというのが定説である。それまでも祭色は正教会にもあったが、より色数が少ないものであったとされている。特に色の豊富なバリエーションは[[ロシア正教会]]で整備されていった。ただし、これらの祭色は厳密に遵守される事が求められているものでは全くなく、小さな教会では予算上の問題の制約から、最も頻繁に用いる金色と、[[大斎 (東方正教会)|大斎]]に用いる紫色のみを用意しているだけの所も珍しく無い。 また、西方教会とは色のパターンにおいて多くが異なる。以下に基本的なものを挙げるが、ロシア正教会ではさらに[[生神女]]の祭日に関する色に明青色と暗青色を使い分けたり、黒色を使うなど、ギリシャ系正教会に比べてバリエーションが豊かに存在する。また、地域によって使う色の慣習が異なる場合もある、以下に挙げる色はあくまで一例である。 ;白銀色 :[[復活大祭]]、[[昇天祭]]、[[顕栄祭]]、[[神現祭]]、[[埋葬式]]に用いられる。 ;金色・黄色 :[[イエス・キリスト |イイスス・ハリストス]]、[[預言者]]、[[使徒]]、[[成聖者]]に関わる祭日に用いる。全ての祭日に用いる事が出来、各種の祭日色に合わせた布類・祭服が揃っていない場合、金色を以て代える事が多い。 ;明青色 :[[生神女]]に関する祭日に用いる。生神女の純粋性を表す。 ;赤色 :[[十字架]]に関連する祭、[[致命者]]の記憶日、[[復活大祭]]の祭期に用いる。 ;緑色 :[[ペンテコステ|五旬祭]](聖神降臨祭)、[[聖枝祭]]に用いる。 ;紫色 :[[大斎 (東方正教会)|大斎]](おおものいみ)、特に大斎の[[主日]]に用いる。 ;黒色 :ロシア系の正教会での習慣。[[大斎 (東方正教会)|大斎]]平日に用いられる。ただし大斎の平日にも紫色を使う事もある。[[埋葬式]]にも用いられる事があるが、埋葬式には白色が用いられる事が一般的。 == 参考図書 == *八木谷涼子『知って役立つキリスト教大研究』 新潮OH!文庫 ISBN 978-4-10-290133-5(4-10-290133-7) ==外部リンク== *[http://yagitani.jpn.cx/kurihon/index.htm くりホン キリスト教教派の森] *[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/vestment.htm 正教会の祭服 その意味と機能 正教時報連載 コンスタンティン桝田尚神父] **[http://www.orthodox-jp.com/nagoya/boushi.htm 王冠(ミトラ)、円帽子(カミラフカ)、修道帽(クロブーク)、球帽子(スクフィヤ)] *[http://www.orthodoxjapan.jp/tebiki/katachi03.html 聖器物や祭服] - [[日本正教会]]公式サイト {{DEFAULTSORT:さいふく}} [[Category:キリスト教の服装・祭服・装身具|*]]
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