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'''生体膜'''(せいたいまく)とは[[細胞]]や細胞小器官の有する、その外界との境界の膜のことで、特有の構造を持つ。厚さ7~10nm。種類は以下のようなものがある。 *[[真正細菌]]の[[細胞膜]] *[[古細菌]]の細胞膜 *[[真核生物]]の細胞膜 *[[リソソーム]]膜 *[[ミトコンドリア]]内膜、外膜 *[[小胞体]]膜 *[[ゴルジ体]]膜 *[[核膜]] *[[シナプス小胞]]膜 ==構成成分== 主成分は[[タンパク質]]および[[脂質]]であり、その存在比は生物やその器官によって異なる。構成している脂質は[[リン脂質]]が主体であるが、[[ステロイド]]も重要な構成要素である。動物細胞においては[[コレステロール]]が、植物細胞においては[[シトステロール]]がかなりの割合で存在する。また細胞標識として[[糖脂質]]も存在しており、ここから膜の外面に向けて糖鎖が突き出している。 リン脂質の種類としては、グリセロール骨格を有するグリセロリン脂質とスフィンゴシン骨格を有するスフィンゴリン脂質に大分される。グリセロール脂質の中では、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンなどが主である。スフィンゴリン脂質の中では、スフィンゴミエリンが主である。ちなみに、生体膜が単に細胞の内外を隔てる物理的な壁でしかないならば、生体膜がこのようにさまざまな脂質から構成されている必要はないのであるが、実際には数十種類の脂質から構成されている点は興味深いとされている。これら脂質は、それぞれが生体膜上で何らかの機能発現をしていると考えるのが通常である。 ==役割== 生体膜の役割としては以下のようなものがある。 #外界との境界として内部物質の流出を防ぐ #[[酵素]]による物質代謝 #[[受容体]]による情報の感受 #[[輸送体]]による[[選択透過性]]、[[能動輸送]]および[[促進拡散]] #[[免疫]]特性の発現 ほかにも多くの役割があるが、生体エネルギー変換([[呼吸鎖複合体]]、[[光合成]]など)などをになう重要な酵素群は膜に位置している場合が多い。 ==歴史== *[[1935年]] DanielliとDavsonによって『細胞膜は'''[[脂質二重層|脂質の二重層]]'''からなり、[[疎水性|疎水基]]([[炭化水素]])は膜の内側へそれぞれ配向して、外側はタンパクによって被覆されている』というモデルを提唱した。 *[[1960年]] Robertsonによって観察された'''三重層'''構造([[疎水性|親水基]]、疎水基、親水基の順)がすべての細胞の細胞膜、核、ミトコンドリア、ゴルジ体など膜を有する器官に存在することを指摘し、この三重層を'''単位膜'''と呼称した。この三重層はDanielliとDavsonの提唱したモデルと一致するとも予想した。 *[[1972年]] SingerとNicolsonが'''流動モザイクモデル'''を提唱した。 ==流動モザイクモデル== 1972年にSingerとNicolsonによって提唱された生体膜モデルである。彼らの主張は『生体膜は脂質二重層の中にタンパク質がモザイク状に入り混じっており、タンパク質はその中を浮遊して[[拡散]]によって移動している』というものである。 このモデルは脂質の配向のみならず、膜タンパクの疎水部分は膜の内側に、親水部分は膜の外側に配置されるということも支持する。また、その挙動は完全に固定されたものではなく、タンパク自身が移動することはおろか膜内における[[コンフォメーション]]変化をも支持しており、これらの現象は[[一分子細胞生物学|一分子観測]]などの技術を用いて観察されている。 膜の流動性メカニズムについては[[脂質二重層]]を参照。 ==関連用語== *[[細胞膜]] *[[電子伝達系]] *[[ATP合成酵素]] *[[バクテリオロドプシン]] [[Category:細胞生物学|せいたいまく]] [[Category:生化学|せいたいまく]]
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