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{{otheruses||色のひとつを意味する灰|灰色}} '''灰'''(はい)は、[[草]]や[[木]]、[[動物]]などを[[燃焼|燃やした]]あとに残る[[物質]]。 古来より有用な[[化学物質]]として広く用いられてきた。また、[[象徴]]としても[[世界]]の様々な[[文化]]、[[伝承]]に登場する。 ==成分== [[生物]]は、[[骨]]などを除けば、主に[[有機物]]から構成されている。ほとんどの有機物は、[[元素]]として[[炭素]]、[[水素]]、[[酸素]]、[[窒素]](および[[硫黄]]、[[リン]])から構成されている。これらの元素は[[熱|高温]]でかつ十分に[[酸素]]を供給して[[焼却]]すると、[[完全燃焼]]して[[二酸化炭素]]や[[水蒸気]]などの[[気体]]となって散逸する。一方、体内に微量に含まれている[[無機質]]、特に[[金属元素]]([[カリウム]]、[[カルシウム]]、[[マグネシウム]]などの[[化合物]]類)は燃焼しても気体にはならず、[[固体]]として後に残る。これが'''灰'''である。 灰の主成分[[元素]]はカリウムやカルシウム、マグネシウムであり、微量の[[アルミニウム]]、[[鉄]]、[[亜鉛]]、[[ナトリウム]]、[[銅]]などの金属元素([[ミネラル]])や[[プラント・オパール]]由来の[[珪酸]]も含まれる(含まれる元素は燃やすものによって左右される)。これらは[[酸化物]]や[[炭酸塩]]として存在しており、通常は[[水]]に溶かすと強い[[アルカリ性]]を示す(具体的な性質については[[炭酸カリウム]]などを参照)。 ただし、温度が十分に高くなかったり、酸素供給量が不十分であったりすると、有機物が完全に分解せずに残ることがある。特に[[塩素]]が存在する場合は焼却灰の中に微量の[[ダイオキシン]]が含まれることが判明し、一時期問題となった。 また、[[食物]]を燃やしてできる灰の[[水溶液]]の[[水素イオン指数|pH]]を測定し、それによって食品を[[酸性食品とアルカリ性食品]]に分類する[[学説]]がある。 [[石油]]や[[石炭]]などの[[化石燃料]]を燃焼させて出来る灰には、[[ゲルマニウム]]や[[バナジウム]]などの金属が大量に含まれる場合があり、これらの[[原料]]として利用される。 ==用途== 灰は手軽に入手できる有用な[[化学物質]]として、古来より様々に用いられてきた。灰の中に含まれる[[炭酸カリウム]]は助燃[[触媒]]であり、消し[[炭]]や燃えさしは[[着火]]しやすい。このため[[薪]]を燃やすときには必ずこれらを保存して焚き付けに用いる。この現象は、薪炭を使う機会の少ない現代の家庭でも、[[角砂糖]]に灰をなすりつけたものとそうでないものを用意して着火[[実験]]をしてみると、容易に体験できる。 [[石鹸]]は、[[動物]]の[[肉]]を[[焚き火]]で焼いた後、灰が[[泡]]立つようになったのがきっかけで発見されたといわれる。これは灰のアルカリ性によって動物の[[脂肪]]が[[加水分解]]され、脂肪酸塩が生成したためである。 また、[[山菜]]などの[[あく抜き]]には[[灰汁]]を使用する。アルカリ性があく抜きを促進するためである。[[灰持酒]]を醸造する際、[[雑菌]]の[[繁殖]]を抑えるため灰のアルカリ性の性質が利用されている。[[小学校]][[理科]]の課程においては、灰汁は代表的なアルカリ性の[[液体]]として顔を出す。 灰中に含まれている[[金属]]元素は、[[媒染]]においても重要な役割を果たす。灰の原料とする[[植物]]によって含有[[成分]]が微妙に異なるため、[[発色]]に影響するといわれる。 灰の主成分は[[アルカリ金属]]塩であるため、[[ケイ砂]]のような[[二酸化ケイ素]]を多く含む[[砂]]と共に高温で[[加熱]]すると[[ケイ酸塩]]を生成し、比較的低温で[[融解]]して冷却するとガラス状に固まる。これにより、[[ガラス]]の原料や、[[焼き物]]の[[釉薬]](うわぐすり)として利用されている。 灰は[[カリウム]]を多く含むため、古くから[[肥料]]としても利用されてきた。現在でも地域によっては[[森林]]を焼き、その[[草木灰|灰]](草木灰)を肥料として農業を行う[[焼畑農業]]が行われている。 その他にも[[植物|草木]]灰に含まれるアルカリ性と細かい[[珪酸]]分を利用し、[[茶碗]]等の器物の[[洗浄]]や、作成したての汚染されていない灰で[[人体]]の洗浄剤や[[傷|傷口]]の[[消毒]]剤にも用いられてきた(現在でも[[インド]]をはじめとする[[開発途上国]]の[[山間部]]、[[村落]]部など多くの[[未開発地域]]ではいまだに用いられている)。無論上記にもあるように[[ダイオキシン]]等[[有害物質]]に[[汚染]]されていないことが前提であるため、[[現代社会]]では[[保健]]衛生上の観点から、高温でよく[[焼却]][[処理]]した草木灰以外は人体に用いるのは避けたい。 ==[[シニフィエ]]== 灰は[[実用]]上の役割とは別に、[[宗教]]、[[芸術]]などの題材としても多方面で登場する。 [[灰色]](グレー)は善とも悪ともわからないうやむやな状態の[[メタファー]]とされることが多い。これは[[善]]や[[正義]]の象徴である[[白]]と、[[悪]]の象徴である[[黒]]の中間的な色であるためであろう。 また、[[火葬]]された[[人間]]の灰([[遺灰]])は、[[遺骨]]とともに宗教的に重要視されることがある。[[ガンジス川]]に遺灰を流す行為は有名であり、また日本においても[[散骨]]が行われつつある。また、[[キリスト教]]では[[四旬節]]のはじめの日を[[灰の水曜日]]と称し、灰を用いた[[儀式]]を行う。またそれとは別に、宗派によっては[[聖人]]の遺灰が聖灰として保存されることがある。 一方、灰は単に生命の終わったものではなく、新しい生命を生み出すもの、としての意味を持つことがある。これは上記'''用途'''の着火しやすいことからきたものと思われる。 [[不死鳥]]は自らを[[炎]]の中で燃やし、その灰の中から再生するといわれる。また、[[日本]]の[[民話]]「[[はなさかじいさん]]」においては、飼い[[イヌ|犬]]の墓の横に植えられた木で作った臼が燃やされて残った灰をまくことで枯れ木に[[花]]が咲くという描写がある。童話[[シンデレラ]]は[[世界]]中に分布する灰かぶり姫の物語の一類型であるが、その中で灰は[[現世|この世]]と[[来世|あの世]]を仲介する[[象徴]]であると[[分析]]されている(『人類最古の哲学』[[中沢新一]]ISBN 4-062582-31-7)。[[現代]]においても、[[サティヤ・サイ・ババ]]の出す灰(ビブーティ)を万[[病気|病]]を治す「聖なる灰」として[[信仰]]をする人達が存在する。 世界の中で宗教で使われる灰は、[[アフリカ]]では[[戦士]]に強い動物の灰を体に塗ったり([[マサイ]]での討ち倒した[[ライオン]]の灰を擦り付ける等:現在では[[自然保護]]の観点によりほとんど行われていない。)、[[アルメニア]]人は[[2月13日]]に燃やされた[[聖火]]の灰を[[厄除け]]として[[屋根]]の上や[[畑]]にまく[[習慣]]がある。更に[[イギリス]]では[[洗礼者ヨハネ|聖ヨハネ]]の[[祝日]]([[6月24日]])に[[篝火]]の灰を畑にまき、日本でも[[八雲御抄]]には灰を使った占いがある。 また日本各地では、[[海難事故]]で亡くなったとされる[[船幽霊]]などは、塩類豊富な場で[[成仏]]できなかったため、『清めの[[塩]]』では[[効果]]が無いとされる。それゆえこのような『清めの塩』では祓い清められない存在を祓う為、『清めの灰』としてなるべく薪のみの灰の[[純度]]の高いものを用いる。→※[[船幽霊]][[ミサキ]]の項を参照。 ==関連項目== * [[塩基]] * [[アルカリ]]、[[カリウム]] - どちらも[[ラテン語]]あるいは[[アラビア語]]で「植物の灰」を意味するqali、kalijanに由来する。 * [[火山灰]] - [[火山]]の噴出物の1つ。木灰などとは成分が異なる。 * [[死の灰]] - [[核兵器]]が爆発する際に放出する[[放射性物質]]の俗称。 * [[シャーロック・ホームズ]] - [[タバコ]]の灰について論文を書いたりもしている[[探偵]]。 * [[灰皿]] - 灰を入れる[[皿]]。 * [[灰とダイヤモンド]] - [[ポーランド]]の[[小説]]、あるいは[[灰とダイヤモンド (映画)|この小説を原作にした映画]]。また、この題名は他の分野でもよく使用されている。 * [[花火|へび花火]] - 灰の形がおもしろい花火。 * [[あしたのジョー|矢吹丈]] - [[ボクシング]][[漫画]]『あしたのジョー』の主人公。 * [[フライアッシュ]] - [[石炭]]灰の一種。 [[category:化学物質|はい]] [[category:材料|はい]]
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