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'''湯起請'''(ゆきしょう)とは、主に[[裁判]]の際に、二人の内どちらの主張が正しいかを審理する方法。'''湯立'''(ゆだて)とも呼ばれている。 == 概要 == 湯起請の方法は、まずあらかじめ審理を受ける者二人が、それぞれ自分の主張が事実であると、当事者の前で誓う([[起請文]]を作成する場合もある)。その上で、神に審議を問うという形で、二人が同時に熱湯の中に入った石を取り出して神棚に安置し、その後当日もしくは数日後に、焼けただれ(これを「失」と称する)の少ない者の主張が正しいと判断する方法である。ただし、当日の他行・不参、石の取り出し及び棚への安置の失敗による取り落としなどがあれば、直ちに「失あり」とされて敗訴となった。なお、両方とも火傷の程度が同じである場合には、双方折半の神意の表れと解された。主に[[境相論]]などの民事的な訴訟で行われたが、各種犯罪の嫌疑者個人に対して行われた例も存在する。 古代の盟神探湯を継承したと考えられているが、[[律令法]]時代にはこうした手法は存在しない。盟神探湯の復活と言う形で室町時代前期頃から行われたとみられているが詳細は不明であるが、当初は民間で行われていたと考えられている。<!-- 始まった時代は私には正確には不明です。御存じの方は加筆をお願いします -->強制的な拘束や[[拷問]]などを行わずに「神の意思」の名のもとで当事者の合意を得られる方法として広く行われたが、あくまでも双方の証人・証文などの証拠類を揃えて吟味した結果でも事実の成否が確定できない場合などに限定されていた。また、実際に湯起請を行うことを決めるだけで訴訟当事者に心理的圧迫を与えられ、証拠があやふやな当事者の訴訟取下などの早期解決に至らせる間接的な効力も有した。 [[応永]]32年([[1425年]])に朝廷の内侍所で湯起請が行われたことが『[[薩戒記]]』に記載され、『[[看聞御記]]』にも[[永享]]3年([[1431年]])に湯起請が行われたことが記されている。また、永享11年の[[室町幕府]]の[[意見書]]でも「湯起請の失の深浅は、[[牓示]]姧曲の多少による」とされ、不当な主張をすれば湯起請の結果に反映されるとして、境相論の解決法として有効とみなしていた。なお、室町幕府においても湯起請には作法があり、まず神前に当事者、[[奉行衆]]・公人などの幕府側、[[巫女]]もしくは[[陰陽師]]が集まり、巫女のお祓いの後に神前に湯を沸騰させ、予め引かれた籤の順番に当事者の代表各1名(取手)が起請文を書いて焼いた灰を飲み込んだ後に湯中の石を取り上げて神棚に置いた。取手は以後3日間、湯起請が行われた神前(通常は神社)に留めて置かれ、3日目に奉行衆立会いのもとで双方の取手の火傷の調査が行われ、一方に火傷が現れた場合には「失あり」とされ、当該の取手及びその陣営の虚偽とみなされて敗訴、双方に火傷が現れた場合には双方ともに不正ありとして当該物件(境相論の場合は土地)を幕府が収公、反対に双方に火傷が出なかった場合にはいずれも「失なし」として中分による新たな取り決めが結ばされた。なお、当事者の一方が湯起請の呼び出しに3回応じない場合には、「[[召文違背]]」を理由とした敗訴が確定した。 [[江戸時代]]初期迄、行われていたと考えられている。しかし、江戸時代中期になると、[[公儀]]による訴訟体制の整備や合理的な考え方をする人が増え湯起請が正しいと考える当事者は少なくなったため、この方法は廃れていった。その一方で、湯起請は地域においては水と火の神聖・呪性を重視し、精進潔斎を行って湯を沸かして神に献じて参列した人々も浴びることで生命の再生・浄化と息災を願うという[[湯立]]の風習に変化して各種神事に取り入れられるようになった。 == 参考文献 == *植田信広/大藤時彦「湯起請」(『国史大辞典 14』(吉川弘文館、1993年) ISBN 978-4-642-00514-2 *千々和到「湯起請」(『日本史大事典 6』(平凡社、1994年) ISBN 978-4-582-13106-2) *武井正弘「湯起請」(『日本民俗大辞典 下』(吉川弘文館、2000年) ISBN 978-4-642-01333-8) *清水克行「日本神判史」 (中公新書) ISBN978-4-12-102058-1 == 関連項目 == *[[盟神探湯]] *[[火起請]] *[[湯立]]-[[湯立神楽]] {{DEFAULTSORT:ゆきしよう}} [[Category:日本の中世法]] [[Category:日本の手続法]] [[Category:日本の近世法]]
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