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{{Otheruses||千葉県銚子地方の郷土料理|海草 (食品)}} '''海草'''(かいそう、{{lang-en-short|Seagrass}})は、[[水草]]の一種で、[[海域]]に生育する[[種子植物]]のこと。 [[藻類]]である「'''[[海藻]]'''」と[[同音異義語]]であるため、しばしば両者の混同を招く場合があり、区別の観点から海草を「うみくさ」と呼ぶこともある。 [[画像:Zostera marina.jpeg|250px|thumb|日本で一般的な海草であるアマモ]] == 特徴 == ;生育環境 海域の中でも比較的浅い沿岸域の[[内湾]]や[[干潟]]、[[汽水域]]、[[礁池]](イノー)などに生育する。多くの種は乾燥に弱く干潮でも海水に浸っている潮下帯以下を好むが、[[コアマモ]]のように乾燥に強く[[潮間帯]]に生育する種もいる。 ;形態 海草類は全て[[単子葉植物]]であり、[[根]]、[[茎]]、[[葉]]の区別がある。茎(根茎)は[[地下茎]]として匍匐する種が多く、葉を水中にのばす[[根]]は砂泥の中にしっかりと根を広げる。従って、大部分の種は砂泥底域に生育するが、スガモやエビアマモなどは岩礁域に生育するものもおり、これらは[[根]]を岩盤の窪みや割れ目に入り込ませ、[[地下茎]]を会場に発達させ固着する<ref name="syokubutsu">矢部徹、生嶋功 「海草の生態」『朝日百科 植物の世界119 植物の生物地理10 水圏の植生・極限の植生』岩槻邦男ら監修、朝日新聞社、1996年、298-299頁。</ref>。葉はウミショウブやボウバアマモのように細長いタイプと、ウミヒルモ属のような小判型のタイプがある。基本的には光合成を行う器官であるが、アマモは海水中の[[栄養塩]]を葉で取り込むことがわかっている<ref>飯泉仁(1989)「海草類の栄養塩類の取り込みについて」 月刊海洋、21(6); 317-321pp.</ref>。[[気孔]]は退化している。 ;生態・生活史 海草類は多年草である。種子植物であり[[花]]を咲かせ[[種子]]により増える。また、地下茎を分枝させて増える[[栄養繁殖]]を行う種もある。アマモやリュウキュウスガモなどは種子繁殖と栄養繁殖の両方で増えるが、熱帯性のリュウキュウアマモやベニアマモ、ボウバアマモなどは結実が悪く、ほとんどが栄養繁殖により増える。開花は、熱帯性のリュウキュウスガモで9-1月(10月が最盛期)<ref>[http://www.kaikyokan.com/cgi/fish0/209.htm 海響館ホームページ]リュウキュウスガモの花</ref>、ボウバアマモが7-9月、ウミショウブが6-9月<ref>[http://d.hatena.ne.jp/aglassofwater/20070701/p1 コップ水の日記]ウミショウブの花</ref>、温帯性のコアマモが1-6月<ref>[http://www-es.s.chiba-u.ac.jp/kominato/choshi/algae/kaisou/kusa/koamamo/koamamo.htm 海草図鑑 コアマモ]コアマモの花・種子など</ref>に観察されている<ref name = "touma">当真武 「琉球列島の海草‐I. 種類と分布」 『沖縄生物学会誌』37号、1999年、75-92頁。</ref>。結実はリュウキュウスガモで7、8月を除く周年、ウミショウブが8-11月及び1月に観察されている<ref name = "touma"/>。 == 進化 == 海草類は他の種子植物と同様に一旦[[陸上植物]]として陸域に適応した後に、再び海域に生活の場を戻したが、これは陸上で発達させた根や(地下)茎を利用して、海藻類の生育していない不安定な砂地に適応したと考えられている<ref>横浜康継 「水の植物の世界」『朝日百科 植物の世界11 植物の生物地理1 地球の植物世界』岩槻邦男ら監修、朝日新聞社、1996年、28頁。</ref>。 {{節スタブ}} == 海草と海藻の違い == 海草と藻類である海藻はともに海域に生育するため、しばしば混同されることがあるが、種子植物である海草と比較して海藻は根・茎・葉の区別がなく、一部のものにはそれらしい分化が見られるがはっきりと異なるのは根の構造のみである。海藻の根は栄養吸収のための器官ではなく、岩に固着するためのものである(このため仮根とも呼ばれる)。海藻の大部分は岩上に生え、砂泥底には匍匐茎状の形態を発達させて砂泥底に適応している緑藻の[[イワズタ]](イワヅタ)類や小型のものを除いてほとんど生えない。従って、この両者は生育する環境が異なる。海藻は波あたりの強い岩礁海岸に多く生育し、海草は波の当たらない内湾や[[干潟]]のような環境に生育する。ただし、北方系の[[スガモ]]や[[エビアマモ]]は波あたりの強い岩礁にも固着して生育することができる。 == 分類と分布 == 世界には[[アマモ科]](Zosteraceae)、[[ポシドニア科]](Posidoniaceae)、[[ベニアマモ科]](シオニラ科、Cymodoceaceae)、[[トチカガミ科]](Hydrocharitaceae)、[[イトクズモ科]](Zannichelliaceae)、[[カワツルモ科]](Ruppiaceae)の6科(このうちトチカガミ科以外を[[ヒルムシロ科]]にまとめる場合がある)に60種程度の海草類が確認されている<ref>大場達之・宮田昌彦 『日本海草図譜』 北海道大学出版会発行、2007年、IISBN 4-8329-8175-1。</ref><ref>笠原勉 『[http://www.mlit.go.jp/kowan/handbook/08-3hen2shou02.pdf 海草類]』 「[http://www.mlit.go.jp/kowan/handbook/ 順応的管理による海辺の自然再生]」 国土交通省港湾局監修、海の自然再生ワーキンググループ著、2007年、221頁。</ref><ref name = "okinawa">沖縄県文化環境部自然保護課編 『[http://www3.pref.okinawa.jp/site/contents/attach/16608/The%20story%20of%20the%20Dugong_.pdf ジュゴンのはなし -沖縄のジュゴン- (第2版)]』 沖縄県文化環境部自然保護課発行、2008年、16頁。</ref>。[[熱帯]]から[[寒帯]]まで分布しており、多くの種は熱帯域・亜熱帯域に分布するが、スガモやアマモの仲間は温帯域から寒帯域に分布する。 === 日本の海草類 === 日本には5科10属28種30亜種(4雑種を含む)の海草類が分布していると考えられている<ref>大場達之・宮田昌彦 『日本海草図譜』 北海道大学出版会発行、2007年、IISBN 4-8329-8175-1。なお、引用文献では30種となっているが、この中に2亜種、4雑種が含まれているためここでは上記のように表現した。</ref>。下記に大場・宮田(2007)における日本産海草類のリストを記載する<ref>科の順は大場・宮田(2007)に準じ、属・種はアルファベット順とした。</ref>。 日本は[[暖流]]と[[寒流]]が交わるため海草類とっては好適な条件にあり多くの種が分布している。[[本州]]周辺海域でよく見られる海草類は[[アマモ属]]で、[[アマモ]]とより小型の[[コアマモ]]が多く、いずれも細長い葉をしている。他に丸い葉で小型の[[ウミヒルモ]]などが知られている。[[北海道]]周辺では[[スガモ]]が見られる。また、[[南西諸島]]は日本の中でも海草類の多様性が高く、[[マツバウミジグサ]]、[[リュウキュウスガモ]]、[[ボウアマモ]]、[[ウミショウブ]]などの多くの種が様々な場所で見られ、5科9属18種の生育が確認されている<ref name = "okinawa"/>。 カワツルモ科はWorld Atlas of Seagrasses(Spalding et al. 2003)で海草類として扱われるようになり、コアマモをアマモ属''Zostera''から''Nanozostera''とすることが報告されているなど、新発見や新たな提案がなされている<ref>相生啓子 『日本沿岸の海草群落』 「植物群落モニタリングのすすめ 自然保護を生かす『植物群落レッドデータ・ブック』」 [[日本自然保護協会]]編集、文一総合出版発行、2005年、53頁、ISBN 4-8299-1064-X。</ref>。ウミヒルモ属''Halophila''については分類学的研究が進んでおり、以前にはウミヒルモ ''H. ovalis'' しか知られていなかったが、1995年に沖縄県の[[泡瀬干潟]]でトゲウミヒルモ ''H. decipiens'' (以前にはヒメウミヒルモも含められていた)が新たに記録され<ref>Kuo, J. (1995) "[http://ci.nii.ac.jp/naid/10018069910/ Occurrence of ''Halophila decipiens'' Ostenfeld (Hydrocharitaceae) in Okinawa Island, Japan]" Aquat. Bot., 51; 329-334pp.</ref>、2006年には同地より2種の新種(ホソウミヒルモ、ヤマトウミヒルモ)の発見と、ヒメウミヒルモやオオウミヒルモなどの日本新産が記録されている<ref>Uchimura, M. ''et al''. (2006) "[http://ci.nii.ac.jp/naid/110006141339/ A Taxonomic Study of the Seagrass Genus ''Halophila''(Hydrocharitaceae) from Japan: Description of a New Species ''Halophila Japonica'' sp. nov. and Characterization of ''H. ovalis'' Using Morphological and Molecular Data.]" Bulletin of the National Science Museum. Series B, Botany, 32(3); 129-150pp.</ref><ref>Kuo, J. ''et al''. (2006) "[http://ci.nii.ac.jp/naid/110006318345/ Seagrasses of the Genus Halophila Thouars (Hydrocharitaceae) from Japan]" Acta phytotaxonomica et geobotanica, 57(2); 129-154pp.</ref>。それ以外にも、大場・宮田(2007)は2亜種、4雑種を新亜種・新雑種として報告している(下記のリストの*が付いているもの)。 * Zosteraceae [[アマモ科]](Potamogetonaceae [[ヒルムシロ科]]に含む場合もある) ** ''Phyllospadix'' [[スガモ属]] *** ''P'' x ''choshiensis'' [[ヒメスガモ]]* *** ''P. iwatensis'' [[スガモ]] *** ''P. japonicus'' [[エビアマモ]] ** ''Zostera'' [[アマモ属]] *** ''Z. asiatica'' [[オオアマモ]] *** ''Z. caespitosa'' [[スゲアマモ]] *** ''Z. caulescens'' [[タチアマモ]] *** ''Z. marina'' [[アマモ]] *** ''Z. japonica'' [[コアマモ]] **** subsp. ''austroasiatica'' [[ナンカイコアマモ]]* * Cymodoceaceae [[ベニアマモ科]](シオニラ科)(Potamogetonaceae ヒルムシロ科に含む場合もある) ** ''Cymodocea'' [[ベニアマモ属]](リュウキュウアマモ属) *** ''C. rotundata'' [[ベニアマモ]] *** ''C. serrulata'' [[リュウキュウアマモ]] ** ''Halodule'' [[ウミジグサ属]] *** ''H.'' x ''linearifolia'' [[ホソニラウミジグサ]]* *** ''H. pinifolia'' [[マツバウミジグサ]] *** ''H.'' x ''serratifolia'' [[マツニラウミジグサ]]* *** ''H. tridentata'' [[ホソバウミジグサ]] *** ''H. uninervis'' [[ウミジグサ]](ニラウミジグサ) ** ''Syringodium'' [[シオニラ属]](ボウバアマモ属) *** ''S. isoetifolium'' [[シオニラ]](ボウバアマモ) * Hydrocharitaceae [[トチカガミ科]] ** ''Enhalus'' [[ウミショウブ属]] *** ''E. acoroides'' [[ウミショウブ]] ** ''Halophila'' [[ウミヒルモ属]] *** ''H. decipiens'' [[トゲウミヒルモ]] *** ''H. nipponica'' [[ヤマトウミヒルモ]] **** subsp. ''notoensis'' [[ノトウミヒルモ]]* *** ''H. major'' [[オオウミヒルモ]] *** ''H. minor'' [[ヒメウミヒルモ]] *** ''H. ovalis'' [[ウミヒルモ]] *** ''H. okinawensis'' [[ホソウミヒルモ]] *** ''H.'' x ''tanabensis'' [[タナベウミヒルモ]]* **''Thalassia'' [[リュウキュウスガモ属]] *** ''T. hemprichii'' [[リュウキュウスガモ]] * Zannichelliaceae [[イトクズモ科]](Potamogetonaceae ヒルムシロ科に含む場合もある) ** ''Zannichellia'' [[イトクズモ属]] *** ''Z. palustris'' [[イトクズモ]] * Ruppiaceae [[カワツルモ科]](Potamogetonaceae ヒルムシロ科に含む場合もある) ** ''Ruppia'' [[カワツルモ属]] *** ''R. maritima'' [[カワツルモ]] *** ''R. cirrhosa'' var. ''truncatifolia'' [[ヤハズカワツルモ]]<ref>環境省が2007年に公表した新しい[[維管束植物レッドリストの変遷 (環境省)|維管束植物レッドリスト]]では、ヤハズカワツルモ(''Ruppia occidentalis'')とネジリカワツルモ(''Ruppia cirrhosa'')の2種が掲載されている。</ref> === 世界の海草類 === {{節スタブ}} == 海草藻場 == '''海草群落'''(海草が密生している場所)を'''海草[[藻場]]'''(かいそうもば、Seagrass bed)と呼び、その中でも[[アマモ属]]が繁茂する場所を'''アマモ場'''(アジモ場、''Zostera'' bed)と呼ぶ。しかし構成種を厳密に区別せずに[[アマモ場]]と呼ぶこともあるので留意する必要がある。 海藻の群落である(海藻)藻場と同じく沿岸域に分布するが、海草藻場が成立するのは、一般的には砂地であり、[[海藻]]は固着できない。海草藻場に海中の浮遊物や海草自体が由来となる有機物の蓄積し、ゴカイ等の底生生物や魚類などの生息・繁殖の場となる<ref name="syokubutsu"/>。また、小型の稚仔魚等の隠れ場としての機能も有する。[[ジュゴン]]や[[アオウミガメ]]等のように直接海草類を食べる動物もいる。また、分解者の活動も活発であり、[[水質]]浄化の機能も有している。 == 人間との関係 == === 利用 === 海草藻場は多くの海産生物の生息・繁殖の場となっているため、[[漁業]]や[[レクリエーション]]の場として利用される。陸地からの汚濁した水質の浄化も期待されている。 日本では、[[アマモ]]を[[堆肥]]([[モク採り]])や塩の製造([[藻塩焼き]])<ref name="syokubutsu"/>として利用するなど、直接的に海草類を利用する例もある。 また、鳥居にスガモやエビアマモを巻きつける等の海神行事にも用いられる<ref name="syokubutsu"/>。 === 人間活動の影響 === 海草類は沿岸域に生育するため[[埋立]]や水質汚染などの影響を受ける。直接生育地が埋め立てられなくても、埋立に伴い[[海流]]が変化し、砂泥が流され、底泥環境が変化するなどの間接的な影響もある。また、[[地球温暖化]]による海水温の上昇により海草群落の減少も知られている。 === 保全 === 日本産の海草類のうち5科17種が2007年に公表された環境省の[[維管束植物レッドリストの変遷 (環境省)|維管束植物レッドリスト]]に掲載されている(このうちネジリカワツルモは上記の大場・宮田(2007)のリストでは認めていない)。保全対策として[[泡瀬干潟]]などで行われている大規模な埋立事業の代替措置として海草群落の移植が行われている。 * アマモ科(4種) ** オオアマモ - 絶滅危惧II類 ** タチアマモ - 絶滅危惧II類 ** エビアマモ - 準絶滅危惧 ** スゲアマモ - 準絶滅危惧 * ベニアマモ科(5種) ** ベニアマモ - 準絶滅危惧 ** リュウキュウアマモ - 準絶滅危惧 ** マツバウミジグサ - 準絶滅危惧 ** ウミジグサ - 準絶滅危惧 ** シオニラ - 準絶滅危惧 * トチカガミ科(4種) ** ウミショウブ - 絶滅危惧II類 ** ヒメウミヒルモ - 絶滅危惧II類 ** ウミヒルモ - 準絶滅危惧 ** リュウキュウスガモ - 準絶滅危惧 * イトクズモ科(1種) ** イトクズモ - 絶滅危惧II類 * カワツルモ科(3種) ** ネジリカワツルモ - 絶滅危惧IA類 ** ヤハズカワツルモ - 絶滅危惧IA類 ** カワツルモ - 準絶滅危惧 == 脚注 == {{reflist}} == 関連項目 == * [[水草]] * [[海藻]] * [[干潟]] ** [[泡瀬干潟]] == 参考文献 == * 相生啓子 『日本沿岸の海草群落』 「植物群落モニタリングのすすめ 自然保護を生かす『植物群落レッドデータ・ブック』」 [[日本自然保護協会]]編集、文一総合出版発行、2005年、51-57頁、ISBN 4-8299-1064-X。 * 大場達之・宮田昌彦 『日本海草図譜』 北海道大学出版会発行、2007年、IISBN 4-8329-8175-1。 * 笠原勉 『[http://www.mlit.go.jp/kowan/handbook/08-3hen2shou02.pdf 海草類]』 「[http://www.mlit.go.jp/kowan/handbook/ 順応的管理による海辺の自然再生]」 国土交通省港湾局監修、海の自然再生ワーキンググループ著、2007年、221-234頁。 * 環境省報道発表資料 『[http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8648 哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物I及び植物IIのレッドリストの見直しについて]』、2007年8月3日。 * 当真武 「琉球列島の海草‐I. 種類と分布」 『沖縄生物学会誌』37号、1999年、75-92頁。 * 八杉竜一ら編 『岩波生物学辞典 第4版』 岩波書店、1996年、181-182頁、ISBN 4-00-080087-6。 * 矢部徹、生嶋功 「海草の生態」『朝日百科 植物の世界119 植物の生物地理10 水圏の植生・極限の植生』岩槻邦男ら監修、朝日新聞社、1996年、298-299頁。 {{DEFAULTSORT:かいそう}} [[Category:海草|*]] [[de:Seegras]]
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