氷床のソースを表示

{{出典の明記|date=2012年6月15日 (金) 13:06 (UTC)}}

'''氷床'''（ひょうしょう、[[英語]]：[[wikt:en:ice sheet|ice sheet]] <ref>本来は[[日本語]]の「氷」も英語の "ice" も「[[凝固]]（凍結）した[[水]]」のことであるが、[[天文学]]では、[[ドライアイス]]（凝固した[[二酸化炭素]]）など水以外の[[分子#分子の形態|低分子]][[物質]]の[[固体]]も「氷」と呼ばれる。本項でも天文学に準じて表現する。</ref>）とは、[[地球型惑星]]など地表面がある[[天体]]の、地表部を覆う[[総面積]]5万[[平方キロメートル|km&sup2;]]以上の[[氷]]塊（地球の場合は[[氷河]]）の集合体である。氷床は[[氷棚]]や（狭義の）氷河より大きな規模のものを指す。対して、5万km&sup2;以下の氷塊は[[氷帽]]と呼ばれ、周囲の氷河を涵養している。

なお、[[太陽系]]内の地球型惑星で氷床が存在するのは[[地球]]と[[火星]]のみである。太陽系外の地球型惑星ではまだ確認されていないが、存在しないということは考えられない。
以下、本項では地球の氷床と火星の氷床に分けて解説する。

== 概要 ==
{{multiple image
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 | header    = 南極氷床
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 | footer    = 
 | image1    = Antarctica 6400px from Blue Marble.jpg
 | width1    = 260
 | caption1  = [[南極氷床]]は[[南極大陸]]中央部を覆う<br />[[ザ・ブルー・マーブル]]撮影時に撮られた南極大陸の[[衛星画像]]。
 | image2    = Antarctica.svg
 | width2    = 260
 | caption2  = 南極大陸の地図<br />大陸中央部を覆う一続きの白い部分が[[南極氷床]]であるが、南極氷床は、広大な[[東南極氷床]]と、[[南極横断山脈]]で区切られて[[南極半島]]まで伸長する[[西南極氷床]]とで構成されている。
 | image3    = 2007 eiskante-mather hg.jpg
 | width3    = 260
 | caption3  = 南極大陸にある{{仮リンク|プリズ湾|en|Prydz Bay}}内の Mather Island にて、断面を見せる氷床
}}
{{multiple image
 | align     = right
 | direction = vertical
 | header    = グリーンランド氷床
 | header_align = center
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 | footer    = 
 | image1    = Greenland ice sheet AMSL thickness map-en.svg
 | width1    = 200
 | caption1  = [[グリーンランド]]の図説<br />白い部分の全てが氷床（{{仮リンク|グリーンランド氷床|en|Greenland ice sheet}}）である。
}}
氷床とは、降り積もった[[雪]]が徐々に固められ、圧密されていくものが、さらなる[[降雪]]によって層を重ねて成長し、形成されてゆく[[氷]]塊の一種である<ref name="Sasaki 2012">
[[放送大学]]講義 『物質環境科学II』 第12回「天体の運動と気候変動」（2012年6月25日放送分）、佐々木晶[http://guas-astronomy.jp/Supervisors/s-sasaki.html]（[[惑星科学|惑星科学者]]、[[国立天文台]]教授）。</ref>。そのため、深部では形成当時の大気や様々な環境成分が内部に閉じ込められており、これを採取した[[氷床コア]]は過去の記録として学術的価値の高い研究対象となっている<ref name="Sasaki 2012" />。なお、[[日本]]の場合、氷床コアの本格的採取は、[[南極氷床]]上にあって氷の厚さ約3,000[[メートル|m]]になる場所に設営された[[ドームふじ基地]]（[[高さ#地理|標高]]3,810m）で行われている<ref name="Sasaki 2012" />（その他、詳しくは該当項目「[[氷床コア]]」を参照のこと）。

== 地球の氷床 ==
[[現世 (地球科学)|現世]]の[[地球]]における[[大陸]]配置は、長い[[地質時代]]の中にあって[[地球寒冷化|寒冷化]]しやすい状況にあり、したがって、氷床もまた形成されやすい[[環境]]になっていると言うことができる<ref name="Sasaki 2012" />。まず第一に、[[パンゲア大陸]]のような[[超大陸]]の形成時代とは違い、陸塊が分断されている現世にあっては[[暖流]]が極域まで到達しやすい大陸配置（地球全体が温まりやすい大陸配置）にはなっていない<ref name="Sasaki 2012" />。
また、[[気温]]差の影響を[[水域]]より強く受ける[[陸]]部が多く分布する[[北半球]]は、それらが高[[緯度]]地域に多く集まっているために[[氷河]]が形成されやすく、ひとたび形成された氷河は氷が持つ特性ゆえに[[太陽光]]を反射して気温を低下させ、さらなる氷河の形成を促す<ref name="Sasaki 2012" />。一方、[[南半球]]は、[[海域]]が大部分を占めていて温度変化が小さいとは言え、[[南極大陸]]が[[南極]]地域を占有している上にその周囲を冷たい[[南極環流]]が巡って暖流の流入を遮断しているため、極域（[[南極圏]]）に限っては氷が氷を生むと同時に暖気を寄せ付けない特殊な環境となっている<ref name="Sasaki 2012" />。

現存する地球上の氷床は、[[南極大陸]]にある[[南極氷床]]と[[グリーンランド]]にある{{仮リンク|グリーンランド氷床|en|Greenland ice sheet}}のみであるが、[[最終氷期]]の最寒冷期においては、上記のものに加えて、[[北アメリカ]]に{{仮リンク|ローレンタイド氷床|en|Laurentide ice sheet}}が、[[ヨーロッパ]]北部に{{仮リンク|スカンジナヴィア氷床|en|Scandinavian ice sheet}}が、[[南アメリカ]]は[[チリ]]の[[パタゴニア]]に{{仮リンク|パタゴニア氷床|en|Patagonian ice sheet}}が発達していた。

氷床は表面は寒冷であるが、その底部は暖かく[[融解]]し、融解水が氷床の流動を促している。この過程は氷床内部に速い流れの水路を作っている。

現在の極域の氷床は、[[地質学]]的に見れば比較的新しい。
[[南極氷床]]は、[[新生代]][[暁新世]]前期に初めて形成された以来、おそらく数回にわたって形成と消滅、前進と後退を繰り返したであろう[[氷帽]]に起源すると考えられている。そのような状況は以後も長らく続いたが、[[中新世]]初頭（[[アキタニアン]]）にあたる約2300万年前になると[[南極大陸]]と[[南アメリカ大陸]]を辛うじてつないでいた[[地峡]]がついに切れて[[ドレーク海峡]]が開かれ、南極大陸が完全に他と切り離された孤立大陸になった結果、急激な[[気候変動]]が始まった。周囲で[[南極環流]]が生じて[[暖流]]が届かず急速に[[寒冷化]]する時代の到来によって氷帽は氷床へと成長してゆき、同世の中期（[[ランギアン]]）にあたる約1500万年前には大陸のほとんどが氷床で埋め尽くされた。
一方、[[グリーンランド]]の場合、新生代前期を通して氷床はほとんど無かったが、鮮新世後期以降、グリーンランド氷床が急激に形成されて、新生代の[[北半球]]で最初の大陸氷床となった。グリーンランドには、氷床が発達する前に生息していた[[植物]]の[[化石]]が非常に良好な保存状態で発見されている。<!--これはゆっくり形成された南極氷床と全く異なることを示している。|※論拠が曖昧。矛盾してはいないか。南極大陸も「急速に」寒冷化したと解説されることが多いので、数値で比較すべき。
-->
=== 現存する氷床 ===
; {{Anchor|南極氷床}}
: [[南極氷床]]は、地上で最も大きな氷塊であり、面積は1400万km&sup2;、体積は3000万km&sup2;である。地球表層の90[[パーセント|%]]ほどの[[淡水]]がこの氷床に固定されており、万が一[[融解]]すれば海水準は61.1m上昇するだろうと言われている<ref name="IPCC">{{Cite web |author= |date=2001 |title=IPCC Third Assessment Report - Climate Change 2001 - Complete online versions |url=http://www.grida.no/publications/other/ipcc_tar/?src=/climate/ipcc_tar/wg1/412.htm |work=Other - Publications - Arendal - (official website) |publisher=[[国際連合環境計画|UNEP]]/GRID |language=en |accessdate=2012-06-15}}</ref>。[[東南極氷床]]は陸塊の上に発達しているが、[[西南極氷床]]では底部は2,500m海面下であり、氷床が無いものと仮定すれば[[西南極]]は海面下となる。これは氷の重みで[[地殻]]が沈んだものと言われている（[[スカンディナヴィア]]ではかつてあった氷床が[[最終氷期]]の終焉期を境に消滅したため、その後は現在に至るも沈降した分だけ[[隆起]]し続けている）。

; {{Anchor|グリーンランド氷床}}
: {{日本語版にない記事リンク|グリーンランド氷床|en|Greenland ice sheet}} は、グリーンランドの面積の82%を占めている。もし融解すれば7.2m海面が上昇するであろうと言われている<ref name="IPCC" />。

=== かつて存在した氷床 ===
陸塊が誕生して以来の[[地球史年表|地球の長い歴史]]を見渡せば、全ての陸部が氷床化したと仮説される[[スノーボールアース]]時代は言うまでもなく、そのほかにも決して少なくない数の氷床が存在したであろうが、それらのほとんどはよく知られていない。あるいは、存在を確かめられていない。ここでは[[新生代]]後期氷河時代（現在も続いているとされる最新の[[氷河期]]）の到来以降に形成された氷床のうち、今は消滅してしまっている（あるいは、[[地質時代]]的現在は消滅期にあたる）ものについて解説する。

; {{Anchor|スカンジナヴィア氷床}}
: {{日本語版にない記事リンク|スカンジナヴィア氷床|en|Scandinavian ice sheet}} は、[[ブリテン諸島]]北部（[[アイルランド]]北部および[[イギリス]]北部）から[[スカンジナヴィア半島]]を経て[[ロシア]]西部に至る地域に存在していた氷床である。約2万年前のピーク時には数千mを超える厚さがあった。この氷床は[[フィンランド]]や[[スウェーデン]]が起源地となっていて、流れ出た岩石や[[迷子石]]の種類を調べることによって判明した。[[北ヨーロッパ]]の現在の[[地形]]はこのときの[[氷河]]作用によって形成されたものが多く、[[ノルウェー]]の[[フィヨルド]]、[[スコットランド]]の湖沼群、[[モレーン]]の丘などがその代表例と言える。氷河によって丘が削り取られた結果、[[ヨーロッパ]]でなだらかな波状地形が見られる。約2万年前以降はゆっくり縮小し、7000年前頃には一部の山岳氷河を残して消滅した。
; {{Anchor|ローレンタイド氷床}}
: {{日本語版にない記事リンク|ローレンタイド氷床|en|Laurentide ice sheet}} は、現在の[[カナダ]]と[[アメリカ合衆国]]の北半分を覆う巨大な氷床で、氷河の跡は[[五大湖]]や[[氷河湖]]として見られる。
; {{Anchor|パタゴニア氷床}}
: {{日本語版にない記事リンク|パタゴニア氷床|en|Patagonian ice sheet}} は、現在の[[チリ]]の[[パタゴニア]]地方にある。

== 火星氷床 ==
{{multiple image
 | align     = right
 | direction = vertical
 | header    = 火星氷床
 | header_align = center
 | header_background = #DEB887
 | footer    = 
 | image1    = Mars NPArea-PIA00161 modest.jpg
 | width1    = 260
 | caption1  = 火星北[[極圏]]にある、火星[[極冠]]<br />深く刻まれた谷が縞模様を成す中央部の氷床と、周辺部に散在する[[氷帽]]から成る。[[バイキング1号]]によって[[1998年]]6月に撮影された画像。
}}
[[火星]]上の氷床および[[極冠]]も、地球上のそれと同じく、[[降雪]]などによって[[大気]]中から水分が徐々に地表部に蓄積され、圧密され続けることによって成長し、形成されたものと考えられている<ref name="Sasaki 2012" />。また、北極冠の表面250mほどの氷の成層構造が過去およそ500万年にわたる[[気候変動]]を微細に記録していることが分かってきた<ref name="Sasaki 2012" />。

火星の氷床は'''火星氷床'''（英語：Martian ice sheet, etc.）とも呼ばれ、過去およそ500万年の間（[[火星探査|探査]]で判明している期間中）には高[[緯度]]地域以外に伸長している時期があったとは言え、現存するものは全て[[極冠]]に含まれるため、'''火星極冠'''（英語：Martian ice cap, Polar ice cap of Mars）と半ば同義のようにも扱われる。火星にある「氷」の主成分が[[氷]]（[[凝固|凍結]]した[[水]]）と[[ドライアイス]]（凍結した[[二酸化炭素]]）のいずれであるかを巡って過去に長く論争されてきており<ref name="Sasaki 2012" />、「氷床」とは呼んでも但し書きを要するものであったが、[[20世紀]]末前後に行われた[[マーズ・サーベイヤー計画]]による[[火星探査|探査]]の結果、二酸化炭素はごくわずかに表層部10m程度を覆うのみであってほとんどは水で形成されていることが判明している<ref name="Sasaki 2012" />。

火星は平均的な[[軌道離心率]]が0.1前後と大きいため、[[日射量]]の振れ幅もまた大きく、[[俯瞰]]で見たとき[[縞]][[模様]]に見える、氷床に深く刻まれた[[谷]]（■右の画像を参照）はこれによって形成されたと見られている<ref name="Sasaki 2012" />。この谷をさらに拡大して見ると、細かな[[断層]]を形成していて、それらは過去500万年の日射量・軌道離心率・[[自転軸]]傾斜角の変化によく対応していることも分かってきている<ref name="Sasaki 2012" />。日射量が多くなると水分の蒸発が進み、結果として氷中での[[塵]]の蓄積が増大することが考えられるし、日射量の増大によって火星全体で[[砂嵐]]の発生頻度が上がり、その結果として他地域から運ばれてくる塵の蓄積も推定される<ref name="Sasaki 2012" />。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
<!--
== 参考文献 ==
-->
== 関連項目 ==
{{Wiktionary|en:ice sheet}}
<!--{{Commonscat|Ice sheet}}-->
* [[氷床コア]]
* [[氷河]]　/　[[氷帽]]
* [[極冠]]
* [[氷河期]]　/　[[最終氷期]]
* [[海水準変動]]
<!--
== 外部リンク ==
-----
[[w:en:Ice sheet|英語版]]17:17, 4 Mar 2005 から抜粋して翻訳。|※のちの加筆を考慮していない（加筆しようがない）出典表記のため、コメントアウトとし、暫定的に無効化します。-->

{{雪氷学}}

{{デフォルトソート:ひようしよう}}
[[Category:雪氷現象]]
[[Category:氷河]]
[[Category:地形]]
[[Category:極地]]
{{Geo-stub}}
{{Polar-stub}}
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