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水中翼船
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[[画像:水中翼船 金星01.jpg|thumb|300px|right|半没型水中翼船 「金星」([[呉市海事歴史科学館|大和ミュージアム]])]] [[画像:Hayate02s3200.jpg|thumb|300px|right|全没型水中翼船 「疾風」([[神戸海洋博物館]])]] '''水中翼船'''(すいちゅうよくせん)、または、'''ハイドロフォイル'''(Hydrofoil) とは、推進時に発生する水の[[抗力|抵抗]]を減らす目的のため、船腹より下に「水中翼」(すいちゅうよく)と呼ばれる構造物を持った[[船]]。 == 概要 == いわゆる[[排水量|排水型]]と呼ばれる、[[船舶工学#船体規模|喫水]]線以下の船体が水中に沈み込む方式の船は、速度に関係なく[[浮力]]を得ることができるが、水による大きな抗力から逃れることはできない。また抗力は[[速度]]の[[冪乗|二乗]]倍で増加し、[[プロペラ#船のプロペラ|プロペラ]]([[スクリュー]])推進の場合は[[エンジン|機関]]の出力を大きくしても40[[ノット]]あたりで頭打ちとなる。また、全長に対し全幅を極端に狭くする必要もあり、船の最大の利点でもある積載性をも殺ぐ結果となる。そこで、さらなる高速化を求めた結果、水との接触面を極端に少なくでき、抵抗を[[揚力]]に結びつける効果の高い水中翼船が開発された。 低速で水上を航行する際には船体を水面下に浸けて航行するが、高速航行をする際には、[[仰角]]のつけられた水中翼から得られる揚力で海面上に船体を持ち上げ、水中翼のみが水中に浸っている形になる。 水中翼船には構造や推進方式が様々あり、構造上の分類では、高速航行時に水中翼の一部が水面上に出る'''半没翼型水中翼船'''と、水中翼の全てが水面下にある'''全没翼型水中翼船'''とに大まかに分けられる。全没翼型水中翼船には、単胴型と双胴型がある。単胴型の全没翼型水中翼船の代表的なものに[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[ボーイング|ボーイング社]](日本では[[川崎重工業]]の子会社・[[川重ジェイ・ピイ・エス]]がライセンスを取得)の「[[ボーイング929|ジェットフォイル]]」がある。また、双胴型の全没翼型水中翼船には、[[三菱重工]]が開発した「スーパーシャトル400」があり、「レインボー2」が[[隠岐汽船]]に就航していた(2013年11月30日に退役)。 全没翼型は半没翼型と比較して安定性に劣るとされている。これは、「半没翼型の場合は特に水中翼の制御をしなくてもある程度の振動を伴いつつではあるが安定した浮上がなされるのに対し、全没翼型ではそのような自律的フィードバックが期待できないこと」「半没翼型に設けられている水中翼には大きな上反角が付けられ、横揺れに対する復元力が確保されていること」による。但し、近年ではコンピュータによる水中翼の能動的な制御技術が確立されたことにより、全没翼型でも安定性を確保できるようになっている。 全没翼型の安定性が確保されると、後述のような半没翼型のデメリットが浮き彫りになったこともあり、敢えて半没翼型を選択するユーザーが少なくなり、現在では全没翼型が主流となっている。 この他に、[[日立造船]]の「[[スーパージェット]]」等に見られる、[[双胴船]]体の間に前後各1枚の全没型水中翼を装備し、双胴船の2つのハルの浮力と全没型水中翼による揚力の両方よって船体を支持するハイブリッド船型を採用した'''翼付双胴船'''などがあるが、厳密には全てを水中翼の揚力で支持する水中翼船には含まれないであろう。「スーパージェット」の場合、船体重量の約8割を水中翼の揚力により、残りの約2割を船体の浮力により支えている。推進方式では主としてプロペラによるものと、[[ウォータージェット推進|ウォータージェット推進式]]によるものがある。 === 人力水中翼船 === 人力でのスクリュー駆動による水中翼船は、オール等による手漕ぎ船よりも速い事が明らかになった事から<ref>「人力水中翼艇」[[日経サイエンス|サイエンス]]、[[1987年]][[2月]]号、[[日本経済新聞社]]など</ref>、競技等の目的で人力水中翼船が製作されるようになった。 == 歴史 == [[ファイル:Forlanini Idroplano-Forlani Hydrofoil 1910.jpg|thumb|[[マッジョーレ湖]]で試験中のフォルラニーニの水中翼船(1910年)]] === プロトタイプ === 水中翼で水の抵抗を減らすというアイデアは19世紀半ばから知られていたが、それが有効になるほどの推進方法がなかった。20世紀に入って相次いで水中翼船のプロトタイプが製作されるようになった。 1899年から1901年にかけて、イギリスの船舶設計者[[ジョン・アイザック・ソーニクロフト]]が、弓形の水中翼をつけた船の設計を研究した。1909年、[[ジョン・アイ・ソーニクロフト・アンド・カンパニー・リミッテッド|ソーニクロフトの会社]]で弓形水中翼と60馬力(45kW)のエンジンを装備した全長6.7mのボート ''Miranda III'' を建造。その後継機である ''Miranda IV'' は35ノット(65km/h)を記録した<ref>{{cite web | title=Musthorn1| author= [http://www.hovercraft-museum.org/ hovercraft-museum.org]|authorlink = | url= http://www.hovercraft-museum.org/musthorn1.html | accessdate= 2009-09-09}}</ref>。 イタリアの発明家[[エンリコ・フォルラニーニ]]は1898年から水中翼船の研究を開始し、1906年には[[マッジョーレ湖]]での試験航行で68km/hを記録した<ref>Diego Brozzola. 1999. [http://www.aerei-italiani.net/Forlanini.htm Aerei Italiani - "Il mio Idroplano"] (Italian) 2009-12-10閲覧</ref>。 [[ファイル:Bell HD-4.jpg|thumb|right|HD-4]] アメリカ人で水中翼船を研究していたウィリアム・E・ミーチャムは、1906年3月の''[[サイエンティフィック・アメリカン]]''誌上で水中翼の基本原理を解説した。[[アレクサンダー・グラハム・ベル]]は水中翼船を重要な発明と考えており、この記事を読んでから水中翼船のスケッチを描き始めた。1908年夏、彼は[[フレデリック・ウォーカー・ボールドウィン]]と共に水中翼船の実験を開始した。ボールドウィンはフォルラニーニの成果を研究し、その設計に基づいた模型での試験を開始した。その後ボールドウィンとベルは軍用の水中翼船の開発に関わることになる。1910年から1911年にかけてベルとボールドウィンは世界旅行に出て、イタリアでフォルラニーニに会った。彼らは[[マッジョーレ湖]]上でフォルラニーニの水中翼船に試乗している。ボールドウィンはこのときのことを、飛んでいるように滑らかな乗り心地だったと述べている。[[ノバスコシア州]]バデックに戻ると、様々なデザインを試し、最終的に HD-4 を完成させた。[[ルノー]]製エンジンを採用して最高時速87km/hを達成し、加速も素早く、操縦が容易で安定性もよかった。ベルがアメリカ海軍にこれを報告すると、260kW(350馬力)のエンジンを2機入手できることになった。1919年9月9日、HD-4は船舶速度の世界最高記録114km/hを達成。この記録は約10年間破られなかった。HD-4の実物大レプリカがバデックの Alexander Graham Bell National Historic Site に展示されている。 === 客船としての利用の始まり === [[ファイル:Raketa 234.jpg|thumb|right|Raketa型水中翼船]] [[ファイル:Hydrofoil starboard view SaintPetersburg.JPG|thumb|right|Meteor型水中翼船]] [[ファイル:Draagvleugelboot Karla.jpg|thumb|right|Voskhod型水中翼船]] [[ドイツ]]では、[[第二次世界大戦]]以前から戦中にかけて、フォン・シェルテル男爵が水中翼船を開発していた。戦後、シェルテルのチームはロシアに連行された。しかしロシアではドイツ人が高速船の建造に関われなかったため、シェルテルは[[スイス]]に移り、そこでシュプラマル (Supramar) という会社を創業した。1952年、シュプラマルは世界初の商用水中翼船 PT10 "Freccia d'Oro"(金の矢)を作り、スイスと[[イタリア]]の国境線上にあるマッジョーレ湖に浮かべた。PT10は半没型で乗客32名を乗せ、35ノット(65km/h)で航行できた。1968年、バーレーン生まれの銀行家 Hussain Najadi がシュプラマルを買収し、日本、香港、シンガポール、イギリス、ノルウェー、アメリカ合衆国に営業を拡大した。アメリカの[[ジェネラル・ダイナミクス]]がライセンス提供を受け、国防総省は[[スーパーキャビテーション]]についての海軍の研究開発プロジェクトを委託した。日本では[[日立造船]]がシュプラマルからライセンス供与を受けた。他にも[[経済協力開発機構|OECD]]各国の海運業者や造船業者がライセンスを取得した。 1952年から1971年にかけて、シュプラマルは PT20、PT50、PT75、PT100、PT150 といった水中翼船を設計。これらはいずれも半没型だが、PT150は前方の水中翼が半没型で後方の水中翼が全没型だった。シュプラマルの設計に基づいた水中翼船は200艘以上建造されており、特にイタリアの Rodriquez が建造したものが多い。 同じ頃、[[ソビエト連邦]]でも水中翼船の改良が進み、冷戦中の1980年代まで様々な水中翼船型の[[フェリー]]や川船が建造された。例えば、Raketa(1957年)、さらに大型の Meteor や小型の Voskhod などがある。ソ連時代の水中翼船の改良に最も貢献した人物として [[ロスチスラフ・アレクセーエフ]] がいる。彼は1950年代に高速水中翼船を開発し、後に水中翼船の経験と[[地面効果]]の原理を組み合わせて[[エクラノプラン]]を生み出した。 1961年、[[スタンフォード研究所]]は「アメリカ国内や海外での水中翼船による旅客輸送の経済的実現可能性」と題した研究報告を行った<ref>{{cite web | title=The Economic Feasibility of Passenger Hydrofoil Craft in U.S. Domestic and Foreign Commerce. | author=[[スタンフォード研究所|SRI International]] | url= http://ntlsearch.bts.gov/tris/record/tris/00026416.html | date=1961 | accessdate=9 September 2009}}</ref>。アメリカ国内初の水中翼船の商用航路は、1961年、ニュージャージー州アトランティック・ハイランドからマンハッタン南部の商業地区までを結ぶ航路で、Harry Gale Nye, Jr. の North American Hydrofoils が運営した<ref>{{cite web | title=Enterprise| author=[http://www.foils.org/ foils.org]| authorlink = |url= http://www.foils.org/gallery/enterpr.htm | accessdate=9 September 2009}}</ref>。 === 軍用 === [[ファイル:Sparviero DN-ST-84-03940.jpg|thumb|right|220px|イタリア海軍スパルヴィエロ級ミサイル艇]] 高速艇としての軍用利用も検討されてきていたが、実用化され始めたのは1960年代以降のことである。カナダ海軍がHMCSブラドールを取得したが、1隻のみの就役に終わっている。ソ連海軍は熱心に整備を進め、[[チューリャ型魚雷艇]]、[[マトカ型ミサイル艇]]などが建造されている。アメリカ海軍においても、[[ペガサス級水中翼ミサイル艇]]を1977年から1993年にかけて運用している。イタリア海軍は[[スパルヴィエロ級ミサイル艇]]を建造し、海上自衛隊もそれを基に[[1号型ミサイル艇]]3隻を就役させていた。 == 日本国内の水中翼船 == 日本では[[1960年代]]に商業用半没型水中翼船が相次いで登場している。[[新明和工業]]の小型船(約15人乗)、[[三菱造船]]下関の小型・中型船(80人乗)、[[日立造船]]神奈川の小型~大型船(130人乗)がそれである。 とりわけ、シュプラマル社のライセンス契約により水中翼船を建造していた日立造船神奈川は、型式PT20(70人乗)やPT50(130人乗)を中心に50隻ほどの水中翼船を生産し、これらは[[瀬戸内海]]を中心に運航された。代表的な運航会社として、[[瀬戸内海汽船]]、[[石崎汽船]]、[[阪急汽船]]、[[名鉄海上観光船]]等がある。また[[東海汽船]]による東京湾横断航路でも使われていたため首都圏でも見ることができた。 しかし、低燃費で高速航行が可能な反面、[[波]]<!--{{要出典|date=2011-9}}[[水面波]]-->の影響を受け乗り心地が悪い上に維持コストが高く、水中翼の接触を防ぐ専用の[[岸壁|接岸施設]]のない港に入港することができない等の欠点があり、次第に他の[[高速船]]やジェットフォイルにシェアを奪われていった。 [[1999年]][[5月9日]]、石崎汽船の[[松山港|松山]]~[[尾道港|尾道]]航路の最終運航を以って、半没型水中翼船は国内定期航路から姿を消した。この航路で1997年12月まで活躍した「金星」([[1966年]]日立神奈川製、PT20)が、[[広島県]][[呉市]]で[[2005年]](平成17年)に開館した海事博物館([[大和ミュージアム]])に屋外展示保存されている。 その後日本国内では[[ボーイング929|ジェットフォイル]]が多く利用されている。これは、高速[[軍艦|軍用艇]]向けに開発された技術を民間移転したもので、折りたたみ式の水中翼を持つ水中翼船の一種であり、[[コンピュータ]]による姿勢制御装置を持ち、耐荒天性能や乗り心地を改善している。 [[海上自衛隊]]は[[1993年]]から[[1995年|95年]]にかけて、全没型水中翼式の[[1号型ミサイル艇]](PG)3隻を建造した。これもジェットフォイルをベースとした[[イタリア海軍]]の[[スパルヴィエロ級ミサイル艇]]をタイプシップとしたものである。 == 主なメーカー == * [[川崎重工業]]神戸工場 ** [[ボーイング929|川崎ジェットフォイル]] * [[三菱重工業]]下関造船所 ** 三菱スーパーシャトル400 == 航行航路・保有会社 == [[画像:Tokaikisen-niji.jpg|thumb|300px|東海汽船セブンアイランド虹(伊豆大島元町港)]] [[File:20091105-TurboJET Urzela.jpg|thumb|300px|[[TurboJET]] ''鉄星'' JetFoil]] * [[佐渡汽船]] ** 「ぎんが」(BJ15)・「つばさ」(KJ01)・「すいせい」(KJ10)(川崎) * [[東海汽船]] ** 「セブンアイランド愛」(BJ17)・「セブンアイランド虹」(BJ19)・「セブンアイランド夢」(BJ20)(川崎) * [[隠岐汽船]] ** 「レインボー2」(三菱) * [[JR九州高速船]] ** 「[[ビートル (高速船)|ビートル]]」(KJ05)・「ビートル2」(KJ08)・「ビートル3」(KJ03)・「ビートル5」(KJ14)(川崎) * [[九州郵船]] ** 「ヴィーナス」(KJ09)・「ヴィーナス2」(BJ26)(川崎) * [[九州商船]] ** 「ぺがさす」(KJ04)・「ぺがさす2」(KJ07)(川崎) * [[鹿児島商船]]([[いわさきコーポレーション]]) ** 「トッピー1」(KJ02)・「トッピー2」(KJ12)・「トッピー3」(KJ13)・「トッピー7」(BJ11)(川崎) * [[コスモライン (鹿児島県)|コスモライン]]([[市丸グループ]]) ** 「ロケット」(KJ15)・「ロケット2」(BJ23)・「ロケット3」(KJ06)(川崎) * [[TurboJET]]([[香港]]~[[マカオ]]) ** [[ボーイング929|BJ]]*13:「水星」・「木星」・「土星」・「金星」・「銀星」・「鐵星」・「東星」・「錫星」・「天皇星」・「帝皇星」・「海皇星」・「幸運星」・「帝后星」 ** [[PS30]]*1:「北星」 ** [[Foilcat]]*2:「日星」・「祥星」 == 脚注・出典 == {{脚注ヘルプ}} {{reflist}} == 関連項目 == {{commonscat|Hydrofoils}} * [[テクノスーパーライナー]] * [[パワーボート]] *: スポーツとしての船の競争([[パワーボート]]レース)では、水中翼(ハイドロフォイル)は、使用を禁じられている。これは、水中翼が船の高速化および安定化に極めて有効なものであるがゆえに、結果として水中翼の有無や設計がレース結果を決めてしまう可能性があるためである。 == 外部リンク == * [http://www.kjps.co.jp/ 川重JPS] * [http://www.jrbeetle.co.jp/ JR九州高速船(Beetle)] - [http://www.jrbeetle.co.jp/beetle/mechanism/index.html ビートルのメカニズム] * [http://www.toppy.jp/ 鹿児島商船(トッピー)] * [http://www.sadokisen.co.jp/ 佐渡汽船] * [http://www.cosmoline.jp/ コスモスライン(ロケット)] {{公共交通}} {{tech-stub}} {{ship-stub}} {{デフォルトソート:すいちゆうよくせん}} [[Category:水中翼船|*]] {{Link GA|ru}}
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