東急8090系電車のソースを表示

{{鉄道車両
|車両名=東急8090系・8590系電車
|社色=#ee0011
|画像=Tokyu8090Gradation-LED-1.jpg
|画像説明=8090系（大井町線用の5両編成）<br />（2008年3月28日 / 尾山台 - 等々力間）
|編成=田園都市線用10両編成<br/>大井町線用5両編成
|起動加速度=8590系：3.3km/h/s<br />8090系：3.0
|営業最高速度=田園都市線110km/h<br />大井町線95
|設計最高速度=120
|減速度（常用最大）=3.5
|減速度（非常）=4.5
|編成定員=10両：1,424人・5両：704人
|車両定員=先頭車136（座席48）人<br />中間車144（座席54または51）人
|全長=20,000<!-- 各項目のカンマは消さないこと -->
|全幅=2,800
|全高=4,100
|車両重量=[[動力車|電動車]]31.5 - 34.0t<br />[[付随車]]26.5 - 28.5t<!-- 車両の改造などで現行と異なる場合あり -->
|軌間=1,067
|電気方式=[[直流電化|直流]]1,500V（[[架空電車線]]方式）
|主電動機=[[複巻整流子電動機|直流複巻電動機]] 130kW
|歯車比=5.31
|駆動装置=[[中空軸平行カルダン駆動方式]]
|台車=軸バネ式[[空気バネ]]台車<br />TS-807B形・TS-815D・E形
|制御装置=[[界磁チョッパ制御]]方式
|ブレーキ方式=[[回生ブレーキ]]併用[[電気指令式ブレーキ|電気指令式空気ブレーキ]]（ATC連動形）
|保安装置=田園都市線用：[[自動列車制御装置#東急田園都市線|東急新CS-ATC]]・[[自動列車制御装置#新CS-ATC|東京メトロ新CS-ATC]]<br />大井町線用：[[自動列車制御装置#東急東横線、目黒線、大井町線 (ATC-P)|ATC-P]]<!-- ATSは現在は使用されていない -->
|製造メーカー=[[東急車輛製造]]
|備考=上記は8590系を含む現行車両のデータ。
}}

'''東急8090系電車'''（とうきゅう8090けいでんしゃ）は、[[1980年]]（[[昭和]]55年）[[12月27日]]に営業運転を開始した[[東京急行電鉄]]の[[通勤形車両 (鉄道)|通勤形電車]]。

本項では、'''8590系'''と呼ばれる前面[[貫通扉]]付の先頭車両についてもあわせて記述する。

解説の便宜上、本項では東急線内での[[渋谷駅|渋谷]]・[[大井町駅|大井町]]寄り先頭車の[[鉄道の車両番号|車両番号]]+F（Formation=[[編成 (鉄道)|編成]]の頭文字）を編成名として記述（例：クハ8093以下5両編成=8093F）する。

== 概要 ==
8090系は、[[1978年]]（昭和53年）に試作された[[東急8000系電車|8000系]]・デハ8400形<ref>8401・8402。登場時は8000系の編成に組み込まれていた。その後デハ8200形8281・8282を経て8254・8255に改番された。</ref>の実績に基づき、[[有限要素法]]を用いた[[コンピュータ]]解析による車体設計がなされ、必要な[[強度]]と[[剛性]]を保ったまま、従来の[[オールステンレス車両]]より、車体で約24%（約2t）、編成全体で約8[[パーセント|%]]の重量を軽減することに成功した、[[日本]]初の量産ステンレス軽量車体を採用した車両である。

1980年から[[1985年]]にかけて8両編成10本80両を、また[[1988年]]から[[1989年]]にかけて、将来の[[東急東横線|東横線]]と[[横浜高速鉄道]][[横浜高速鉄道みなとみらい21線|みなとみらい線]]との[[相互直通運転|直通運転]]を見越して組成を組み替えるための先頭車10両<ref name="RP749-212">[[#金子・焼田749|『鉄道ピクトリアル』2004年7月臨時増刊号（通巻749号）p.212]]</ref>の、計90両が[[東急車輛製造]]で製造された。前者は809X番もしくは808X番の車両番号を持ち'''8090系'''と呼ばれ、後者は859X番もしくは869X番の車両番号を持ち'''8590系'''と呼ばれる。また、先頭車のみのグループである8590系の編成は、中間車として組み込まれている8090系も含め、8590系と呼ばれることがある<ref name="tokyu-world">交通新聞社「東急電鉄の世界」28ページ記事。</ref> 。

広義の8000系に含まれる車両であるが、外観の違いやこのグループのみで編成を組むことから、区別されることが多い。

== 構造 ==
20[[メートル|m]]級4扉車体で、東急のステンレス車では初めて側面に赤帯を2本通した。コルゲートを廃したため、ひずみ防止に車体断面は車体上部を内傾させ裾を絞った卵形とした。また、外板は0.8[[ミリメートル|mm]]から1.5mmと0.7mm厚くした。正面は非貫通構造の3面折妻とし、[[前照灯]]は角型となり、[[尾灯]]と一体化し車体下部に設置した。クハ8090形の前面の窓ガラスは当初、3枚を連続で固定していたが、後に破損時の交換を容易にするために個別に固定するように改造した。また、前照灯は赤帯の下に取り付けられていたが、3次車から赤帯の位置に上がった<ref>宮田道一・焼田健『日本の私鉄 東急』 [[保育社]] 1997年（平成9年）6月30日 p.21</ref>。

主回路制御方式は8000系と同様の[[界磁チョッパ制御]]だが、制御段数を増やして乗り心地の改善を図った。[[主制御器|制御器]]は[[日立製作所]]製のMMC-HTR-20F（直列15段・並列13段・弱め界磁無段階）で、[[起動加速度]]は2.7[[メートル毎秒毎秒|km/h/s]]（7両編成時）である。

[[鉄道車両の台車|台車]]は軸ばね式[[空気バネ|空気ばね]]台車のTS-807B形（[[動力車|電動車]]）とTS-815B形（[[付随車]]、新製時）で、ともに新製時から[[一体圧延車輪#波形圧延車輪|波打車輪]]を採用し、走行音の低減を図っている。基礎ブレーキは動力台車が[[踏面ブレーキ]]構造で、付随台車も同様の構造であった。ただし、8097F以降の付随台車は基礎ブレーキを[[ディスクブレーキ]]構造としたTS-815D形が採用され、後にTS-815B形もディスクブレーキ化改造を実施し、TS-815E形に変更された。

大井町線に転属した8090系の全編成と8590系の8691F・8692F・8693Fは[[集電装置|パンタグラフ]]を菱形（PT42形）からシングルアーム式に交換した。このうち8691Fは[[廃車 (鉄道)|廃車]]された8000系8003Fで使用していたものを流用し、8692Fと8693Fは新品を搭載した。

大井町線所属の8590系の前面の帯は、2006年3月18日からの同線⇔[[東急田園都市線#大井町線直通列車|田園都市線直通急行]]の運転開始に伴い、誤乗防止のために赤色から赤色→黄色のグラデーションに変更し、また大井町線を表す認識[[シール|ステッカー]]も側面を含めて貼付した<ref>2008年3月28日より大井町線内で[[東急大井町線#急行|急行運転]]が開始され、大井町線直通急行はすべて大井町線の急行用車両である[[東急6000系電車 (2代)|新6000系]]で運行されるようになった。</ref>。なお、側面の赤帯は従来のままである。さらに、大井町線所属の8090系8081F - 8089F<ref>8090系はMT比3M2Tであり、4M1Tの8500系や8590系より加速性能が劣るため直通急行の運用にはほとんど就かず、予備車の役割を果たしていた。</ref>も2006年4月下旬より順次8590系（8691F・8692F）と同様の帯色とステッカーに変更した。この際に[[東急大井町線#各駅停車|各駅停車]]運用時の種別表示を無表示から「各停」に変更した。また、8693Fは8月の転入と同時に帯色を変更した<ref>2008年には8091F - 8099Fも変更された。</ref>。なお、田園都市線用8590系の帯色は変更されていない。

計画当初は、前面形状に丸みを持たせたデザイン案が2種類程度出されていた。しかし、コスト低減のために切り妻以外は考えるなという電鉄上層部の意向から切妻に近い形にせざるを得ず、丸みあるデザインは却下された。当初は「9000系」という仮称であった<ref>『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』1993年4月号（交友社）より</ref>。

== 運用 ==
'''[[東急田園都市線|田園都市線]]用10両編成（8590系）'''
[[渋谷駅|渋谷]] - [[中央林間駅|中央林間]]間および[[直通運転]]先の[[東京地下鉄]]（東京メトロ）[[東京メトロ半蔵門線|半蔵門線]]渋谷 - [[押上駅|押上]]間で朝夕[[ラッシュ時]]を中心に運用されている。[[東武伊勢崎線|東武線]]乗り入れ装備は設置されていない。

先頭車の前面に東武線に入線できない編成であることを示す丸いKマークを貼付している。

2012年（平成24年）3月17日に実施された[[ダイヤグラム#ダイヤ改正|ダイヤ改正]]以降は原則として東武線非直通運用である34K - 44K<!--これ以外の午前/午後/終日運用に就くケースもあり-->運用に就く。日中を通して終日運用されることは無く、平日の朝夕ラッシュ時の運用のみとなっていた。なお、土休日は朝と夜に東武線非直通運用が存在する。2013年（平成25年）3月16日の[[ダイヤグラム#ダイヤ改正|ダイヤ改正]]より、平日の34Kが終日運用となり、35Kも昼の入庫後直ぐに出庫となる運用となった。

'''[[東急大井町線|大井町線]]用5両編成'''
[[大井町駅|大井町]] - [[溝の口駅|溝の口]]間および田園都市線溝の口 - [[鷺沼駅|鷺沼]]間で運用されていた。その後、東横線で使用されていた9000系の転属による置き換えが進み、2013年5月をもって8090系の営業運転は終了した<ref name="Fan2013-8-154">交友社「鉄道ファン」2013年8月号154頁POST「5/24.東急8099編成、恩田工場へ回送される」記事。</ref> 
。{{要出典範囲|そして8590系も同年6月をもって運用を終了し、大井町線の8090系と8590系は運用終了となった|date=2013年6月|ソートキー=鉄}}。

== 歴史 ==
=== 8090系の製造 ===
[[ファイル:Tokyu 8090 approaching Tamagawa En.jpg|thumb|240px|東横線を走る8090系<br />（1988年8月 / 新丸子 - 多摩川園間）]]
1980年に東横線に最初の投入が行われる。1次車（8000系12-1次車）1本 (8091F) は7両編成（Tc2-M2-M1-T- M2-M1-Tc1〈[[MT比]]4M3T〉）だった。

[[1982年]]2月に製造された2次車（8000系13次車）2本（8093F、8095F) が8両編成（Tc2-<span style="text-decoration:underline">''M''</span>-M2-M1-T-M2-M1-Tc1〈5M3T〉）で投入される。1次車も [[1983年]]に1両（8491）を増結して8両編成となった。

[[1984年]]12月から1985年4月にかけて4次車（8000系16次車）として5本（8097F・8099F・8081F・8083F・8085F）が製造される。これにより車両番号の下2桁は90番台を使い切ったことから80番台が付与された。4次車では機器配置の見直しおよび編成順序の変更（Tc2-M2-M1-T-<span style="text-decoration:underline">''M''</span>-M2-M1-Tc1）、低[[操縦席|運転台]]構造から高運転台構造への変更が行われた。なお、従来車も後に変更されている。

1985年には5次車（8000系17次車）2本（8087F・8089F）が増備され、8090系の製造はこれですべてとなる。

=== 8590系の製造による組成変更 ===
[[ファイル:Tokyu8090.jpg|thumb|240px|大井町線を走る8090系<br />（2005年10月2日 / 尾山台 - 九品仏間）]]
[[ファイル:Tokyu8590.jpg|thumb|240px|東横線を走る8590系<br />（2005年7月24日 / 都立大学 - 自由が丘間）]]
[[ファイル:Tokyu8590-2.jpg|thumb|240px|田園都市線を走る8590系<br />（2007年8月16日 / 市が尾）]]
[[ファイル:Tokyu8590Gradation.jpg|thumb|240px|大井町線を走る8590系<br />（2006年10月15日 / 尾山台 - 九品仏間）]]

1988年9月から1989年2月にかけて、将来のみなとみらい線との直通運転に備え、編成出力を上げることを目的としてMT比を従来の5M3Tから6M2Tに増強するため、組成変更を実施した<ref name="RP749-212"/>。地下鉄乗り入れに必要な前面貫通式とし、また[[制御車|制御電動車]]としたデハ8590形（M1c）とデハ8690形（M2c）を各5両新製。従来の8両編成から3両 (M1-M2-T) ずつ抜き、先頭車2両に抜いた3両×2を組み合わせた、8両編成5本を新たに組成した<ref name="RP749-213">[[#金子・焼田749|『鉄道ピクトリアル』2004年7月臨時増刊号（通巻749号）p.213]]</ref>。

また、従来の編成から3両抜かれて残った5両編成は大井町線に転用された<ref name="RP749-212"/>。

この8両編成を特に'''8590系'''と呼んで区別することがある。8590系は当初より[[車内放送|自動放送装置]]と電動[[ワイパー]]を採用し、[[東急9000系電車|9000系]]に準じた構造にもなっている。8500番台になったのは先頭車が電動車であるという[[東急8500系電車|8500系]]の要素が入っているためである。営業運転開始時は同線の[[東急東横線#急行|急行]]専用（平常時）だったが、[[2001年]]3月28日のダイヤ改正で[[東急東横線#特急（東横特急）|特急]]から[[東急東横線#各駅停車|各駅停車]]までの全[[列車種別|種別]]に充当されるようになった。

=== 8590系の田園都市線への一時的な転用 ===
[[1997年]]（平成9年）3月25日の東横線ダイヤ改正に伴う運用減により、8694Fと8695Fが田園都市線に転属した。8694Fは8695Fから2両を組み込んで8M2Tの10両編成とし、同年8月21日から営業を開始した。この際には半蔵門線へも乗り入れ、8590系では初の地下鉄乗り入れとなった。6両編成となった8695Fは予備車となり、営業運転は一度も行われなかった。

また、2001年（平成13年）3月28日に東横線ダイヤ改正に伴う運用減により、8693Fが田園都市線に転属した。同編成は4両を8695Fに提供して予備車となり、営業運転は行われなかった。一方、10両編成となった8695Fは同年5月25日から運行を開始し、約3年半ぶりの営業運転復帰となった。

[[2003年]]（平成15年）、田園都市線への[[東急5000系電車 (2代)|5000系]]投入に伴い8693F - 8695Fが1997年までと同様の8両編成3本に組み替えられ、東横線に復帰し、[[2004年]]（平成16年）2月1日、ようやく当初の計画どおりにみなとみらい線への直通運転を開始した<ref name="RP749-213"/>。

=== 8590系の大井町線転用とそれにともなう中間車廃車 ===
東横線への5050系投入により、[[2005年]]（平成17年）8月に8691Fが[[長津田車両工場]]に入場して大井町線向けに転用改造され、5両編成（M2c-M1-T-M2-M1c）となった。そして8003Fの代替として同年11月24日に大井町線で運行を開始した。Mc車は補助電源装置である[[静止形インバータ]]（SIV）設置のためHS-20G型[[圧縮機|空気圧縮機]]（CP）を撤去し、代わりにM2車にHB-2000型CPを搭載した。また、パンタグラフもシングルアーム式のものに交換した。この転用改造で余剰となった3両（サハ8391・デハ8291・デハ8191）は保留車となった。

[[2006年]]（平成18年）にはさらなる東横線への5050系投入により、8692Fと8693Fは8691Fと同様の改造（パンタグラフ交換については転属後に実施）と5両編成化を行って大井町線に転属したほか、8694Fと8695Fは10両編成として田園都市線に転属した。これにより、2005年度発生分と合わせて5両が余剰車となり、このうち4両が2007年3月26日付けで8090系初の廃車となった。

8692Fは2006年3月に長津田車両工場に入場し、同年3月27日に大井町線で営業運転を開始し、同年3月18日に実施されたダイヤ改正による運用増に対応した。その後、同年10月にシングルアーム式パンタグラフに交換された。

8693Fは2006年6月29日に長津田車両工場へ回送し、同年8月11日の昼間に[[梶が谷駅|梶が谷]] - 中央林間間で[[試運転]]を実施し、同年8月14日から大井町線で営業運転を開始した<ref name="RAIL FAN660">鉄道友の会「RAIL FAN」No.660記事「2006年度　東急総決算」参照。</ref> 。その後、同年11月にシングルアーム式パンタグラフに交換された。

8694Fは2006年8月1日に[[長津田検車区]]経由で鷺沼へ[[回送]]した。同月下旬には長津田へ回送し、田園都市線向けの転用改造を施工した上で同年8月28日にデハ8195とデハ8295を組み込んで10両編成とし、同年10月31日から田園都市線・半蔵門線で運行を開始した<ref name="RAIL FAN660"/>。なお、[[自動列車停止装置#東武鉄道TSP式（多変周式・パターン照査型）|東武形ATS]]は準備工事のみで本体は取り付けられていないため、丸いKマークが貼付されている。

8695Fは2006年7月31日に長津田へ回送した後、同年8月9日にデハ8199・デハ8299を組み込み10両編成とした。組み込んだ車両は同年7月末に車両点検を実施した。田園都市線向けの転用改造を施工した上で（こちらも東武形ATSは準備工事は行われたが取り付けられていない）同年9月中旬に丸いKマークを貼付して田園都市線に再復帰し、同年9月25日から運用を開始した<ref name="RAIL FAN660"/>。

田園都市線用の8694F・8695Fとも自動放送装置を備えている。また方向幕を[[2007年]]（平成19年）4月5日のダイヤ改正時に[[東急田園都市線#準急|準急]]対応のものへ交換した。

余剰車は元8691Fのサハ8391・デハ8291・デハ8191、元8692Fのサハ8393、元8693Fのサハ8395の5両であり、これらは長津田検車区の片隅にまとめて留置されたが、デハ8291・サハ8391・サハ8393・サハ8395の4両は2007年3月26日付けで、デハ8191は2008年6月9日付けで廃車除籍（解体）された。

=== 大井町線用車両の外観変化 ===
大井町線用8090系は2007年9月から2008年3月までに全編成の前面と側面[[方向幕|行先表示器]]の行先表示部分が字幕式から白色[[発光ダイオード|LED]]に、前面と側面行先表示器[[列車種別|種別]]表示部分が[[フルカラー]]LED、前面運行番号表示器が三色LEDにそれぞれ交換された<ref name="RAIL FAN671">鉄道友の会「RAIL FAN」No.671記事「2007年度　東急総決算」参照。</ref> 。[[通過標識灯|急行灯]]はLED化の際に撤去し、その部分は塞がれた。

これらの表示器は[[東急2000系電車|2000系]]と同一で、[[書体]]はすべて[[ゴシック体]]である。表示方法は2000系と同様で、日本語⇔ローマ字の交互表示を行っている。ただし、初期に交換された8085F - 8089Fはしばらくの間、2000系のような表示を行っておらず、日本語とローマ字を併記している関係で、書体は2000系と比較すると細くなっていた。

また、8083Fは、一時期前面：併記・側面：交互表示の組み合わせとなっていた。これらの編成は2008年3月までに全ての表示器が交互表示タイプに変更された<ref name="RAIL FAN671"/>。また、2006年度に前面赤帯で存置された8091F - 8099Fは、2008年3月上旬にグラデーション帯に交換された<ref name="RAIL FAN671"/>。

なお、前面帯は赤帯時代は前照灯・尾灯サイズに合わせていたが、グラデーション変更後は赤帯よりも太めになっている。これは8590系も同様である。初期車の8091F - 8095Fは前照灯・尾灯の一部にかかるのみとなっている。

=== 8090系の廃車、および秩父鉄道への譲渡 ===
[[ファイル:Chichibu railway 7502 20110531.jpg|thumb|240px|秩父鉄道7500系（2011年5月31日 / 秩父鉄道　波久礼 - 樋口間）]]
8090系は前述の8590系導入により、5両編成10本が東横線から大井町線に転配されて運用に就いていた。

[[2009年]]度には8091Fが2009年（平成21年）5月に運用を離脱し、長津田車両工場へ回送された<ref name="RAIL FAN708">鉄道友の会「RAIL FAN」No.708記事「2009年度　東急総決算」（東急電車研究会）参照。</ref> 。その後、デハ8292とデハ8491は廃車・解体処分となった。残った先頭車2両とデハ8192は改造工事の上、[[2010年]]1月に[[秩父鉄道]]に譲渡されて同社の[[秩父鉄道7500系電車|7500系]]となった（車両番号は7501+7601+7701）<ref name="RAIL FAN708"/>。

2010年度には8083Fが2010年5月に、8085Fが2010年6月に運用を離脱した<ref name="RAIL FAN709">鉄道友の会「RAIL FAN」No.709記事「2010年度　東急総決算」（東急電車研究会）参照。</ref> 。その後は8093Fが2010年9月に、8087Fが2011年1月に運用を離脱した<ref name="RAIL FAN709"/>。いずれも運用離脱後は長津田車両工場へと回送され、デハ8290形とデハ8490形は解体とし、残った先頭車2両とデハ8190形は改造の上、秩父鉄道へ譲渡した<ref name="RAIL FAN709"/><ref>交通新聞社「鉄道ダイヤ情報」2012年1月号私鉄車両のうごき記事参照。</ref>。

2011年度は8095Fが2011年9月に、8089Fが2012年3月に運用を離脱した<ref name="RAIL FAN715">鉄道友の会「RAIL FAN」No.715記事「2011年度　東急総決算」参照。</ref> 。
2012年度には8590系にも離脱が始まり<ref name="RAIL FAN721">鉄道友の会「RAIL FAN」No.721記事「2012年度　東急総決算」参照。</ref> 、2012年9月に8692Fが、2013年2月に8693Fが、同年3月には8097Fが運用を離脱した<ref name="RAIL FAN721"/>。2012年度末時点では8090系は8099Fと8081F、8590系は8691Fが残った<ref name="RAIL FAN721"/>。

大井町線に最後まで残存した8090系2編成にはどちらも2013年5月初旬より、それまで前面の「大井町線」ステッカーが貼られていた位置にヘッドマークが貼り付けされた<ref name="Fan2013-8-146">交友社「鉄道ファン」2013年8月号146頁POST「5/1～、東急8090系に、さよならマーク」記事。</ref> 。8081Fでは両端の先頭車に「FINAL RUN 8090系」<ref name="Fan2013-8-146"/>、8099Fでは溝の口側（8080号車）に「ありがとう8090系 二子玉川乗務区」<ref name="Fan2013-8-146"/>、大井町側（8099号車）側に「さようなら 大井町線 8090系」となっている<ref name="Fan2013-8-146"/>。

<gallery widths="180" style="font-size:90%;">
ファイル:8080 sayonara headmark.JPG|8080号車に貼り付けされたヘッドマーク
ファイル:8099 sayonara headmark.JPG|8099号車に貼り付けされたヘッドマーク
ファイル:Tkk 8081F.JPG|8081Fの両先頭車に貼り付けされたヘッドマーク
</gallery>

=== 富山地方鉄道への譲渡 ===
2013年7月11日、[[富山地方鉄道]]は[[東急テクノシステム]]から8590系電車を購入し、富山地方鉄道モハ17480形として2013年11月から営業運転を開始すると発表した。[http://response.jp/article/2013/10/18/208779.html]
<!--2010年度の5169F以降の投入による廃車・譲渡改造等の動きは検証可能性を満たす文献以外からは絶対に記述禁止。これを無視した場合には記述は除去されます。-->
{{-}}
[[ファイル:Mc17482_chitetsu.JPG|thumb|240px|富山地方鉄道17480形<br />（2014年3月28日 / 富山地方鉄道　電鉄富山）]]
富山地方鉄道17480形編成

第一編成　モハ17481（デハ8592）-モハ17482（デハ8692）

第二編成　モハ17483（デハ8593）-モハ17484（デハ8693）

さらに部品取り用としてデハ8181が譲渡された。

=== 所属線区の変遷 ===
* 東横線 - 大井町線 ： 8691F・8692F
* 東横線 - 田園都市線（営業運転なし） - 東横線 - 大井町線 ： 8693F
* 東横線 - 田園都市線 (1)  - 東横線 - 田園都市線 (2) ： 8694F・8695F
*: 注： (1) と (2) では中間車の連結車両が一部異なる
{{-}}

== 編成表 ==
東横線運用当時・1985年5月1日現在<ref>宮田道一『私鉄の車両4 東京急行電鉄』保育社 p.149<!--日付は書籍刊行日--></ref>
:←渋谷
*8091-◇8491-8291-◇8191-8391-8292-◇8192-8092
*8093-◇8492-8293-◇8193-8392-8294-◇8194-8094
*8095-◇8493-8295-◇8195-8393-8296-◇8196-8096

*8097-8297-◇8197-8394-◇8494-8298-◇8198-8098
*8099-8299-◇8199-8395-◇8495-8280-◇8180-8080
*8081-8281-◇8181-8396-◇8496-8282-◇8182-8082
*8083-8283-◇8183-8397-◇8497-8284-◇8184-8084
*8085-8285-◇8185-8398-◇8498-8286-◇8186-8086


{{注意|編成表は、特定日の全車両の組成が記載された資料に基づいて編集して下さい。個別の編成が転配・除籍される毎に表に反映させることはおやめ下さい。|section = 1}}
* 2011年9月30日現在<ref>交通新聞社「鉄道ダイヤ情報」2012年1月号私鉄車両のうごき。</ref>
* 全車が[[長津田検車区]]に所属
{|style="border-spacing:2em 0em; margin:1em; text-align:left; font-size:80%;"
|-
|colspan="3"|
; 凡例
|-
|style="vertical-align:top;"|
* CONT：主制御器（1C8M）
* cont：主制御器（1C4M）
* SIV：冷房用電源（[[静止形インバータ]]）170kVA
* '''SIV''':静止形インバータ 10kVA（{{Color|#0000EE|青字車両}}：100kVA）
|style="vertical-align:top;"|
* MG：[[電動発電機]]140kVA
* CP：HB-2000型[[圧縮機|空気圧縮機]]
* '''CP'''：HS-20型空気圧縮機
* ◇:[[集電装置|パンタグラフ]]
* '''＜''':シングルアームパンタグラフ
* '''太字車号'''・[車]：車椅子スペース
|style="vertical-align:top;"|
* 車号の前の[[アルファベット]]
** A=1980年度投入
** B=1981年度投入
** C=1983年度投入
** D=1984年度投入
** E=1985年度投入
** F=1988年度投入
|}

; 8090系 大井町線用（廃車発生前の時点・全車両が営業運転を終了<ref name="Fan2013-8-154"/>）
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:80%; margin:1em 0em 1em 3em;"
|-
| style="background-color:#ccc; width:12em;"|&nbsp;
| colspan="5" style="background-color:#fc6;"|{{TrainDirection|大井町|二子玉川・溝の口・<small>鷺沼・長津田・中央林間</small>}}
!rowspan="4"|運用離脱時期
|-
! 号車
| style="width:6em;"|1
| style="width:6em;"|2
| style="width:6em;"|3
| style="width:6em;"|4
| style="width:6em;"|5
|-
! 形式・車種
|'''クハ8090'''<br />(Tc2)
|'''デハ8490'''<br />(M)
|'''デハ8290'''<br />(M2)
|'''デハ8190'''<br />(M1)
|'''クハ8090'''<br />(Tc1)
|-
! 搭載機器・車内設備
| SIVorMG || cont || '''SIV''',CP,CP || CONT,[車] || &nbsp;
|-style="border-top:solid 3px #999;"
! rowspan="10"|車号
| A8091 || ＜A8491 || A8292 || ＜A'''8192''' || A8092 || 2009年5月<ref name="RAIL FAN708"/>
|-
| B8093 || ＜B8492 || B8294 || ＜B'''8194''' || B8094 || 2010年9月<ref name="RAIL FAN709"/>
|-
| B8095 || ＜B8493 || {{Color|#e00|B8296}} || ＜B'''8196''' || B8096 || 2011年9月<ref name="RAIL FAN715"/>
|-
| D8097 || ＜D8494 || {{Color|#00e|D8298}} || ＜D'''8198''' || D8098 || 2013年3月<ref name="RAIL FAN721"/>
|-
| D8099 || ＜D8495 || D8280 || ＜D'''8180''' || D8080 || 2013年5月<ref name="Fan2013-8-154"/>
|-
| D8081 || ＜D8496 || {{Color|#e00|D8282}} || ＜D'''8182''' || D8082 || 2013年5月<ref>「[http://railf.jp/news/2013/05/17/120000.html 東急8090系8081編成が長津田工場へ]」交友社『鉄道ファン』railf.jp </ref>
|-
| D8083 || ＜D8497 || D8284 || ＜D'''8184''' || D8084 || 2010年5月<ref name="RAIL FAN709"/>
|-
| D8085 || ＜D8498 || D8286 || ＜D'''8186''' || D8086 || 2010年6月<ref name="RAIL FAN709"/>
|-
| E8087 || ＜E8499 || E8288 || ＜E'''8188''' || E8088 || 2011年1月<ref name="RAIL FAN709"/>
|-
| E8089 || ＜E8490 || {{Color|#00e|E8290}} || ＜E'''8190''' || E8090 || 2012年3月<ref name="RAIL FAN715"/>
|}

::デハ8290・8298（青字）は100kVA-SIV（新型）を、デハ8282・8296（赤字）は100kVA-SIV（旧型）を設置。
{{-}}
; 8590系 大井町線用
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:80%; margin:1em 0em 1em 3em;"
|-
| style="background-color:#ccc; width:12em;"|&nbsp;
| colspan="5" style="background-color:#fc6;"|{{TrainDirection|大井町|二子玉川・溝の口・<small>鷺沼・長津田・中央林間</small>}}
!rowspan="4"|運用離脱時期
|-
! 号車
| style="width:6em;"|1
| style="width:6em;"|2
| style="width:6em;"|3
| style="width:6em;"|4
| style="width:6em;"|5
|-
! 形式・車種
|'''デハ8690'''<br />(M2c)
|'''デハ8190'''<br />(M1)
|'''サハ8390'''<br />(T)
|'''デハ8290'''<br />(M2)
|'''デハ8590'''<br />(M1c)
|-
! 搭載機器・車内設備
| SIV || CONT || SIV || CP,CP,[車] || CONT
|-style="border-top:solid 3px #999;"
! rowspan="3"|車号
| F8691 || ＜B8193 || B8392 || B'''8293''' || ＜F8591 || <!-- キチンと出典しない限り書いてはいけません -->
|-
| F8692 || ＜D8197 || D8394 || D'''8297''' || ＜F8592 || 2012年9月<ref name="RAIL FAN721"/>
|-
| F8693 || ＜D8181 || D8396 || D'''8281''' || ＜F8593 || 2013年2月<ref name="RAIL FAN721"/>
|}

::8193・8197・8181は東横線所属時に[[車椅子スペース]]を設置した。ただし大井町線では2号車は車椅子スペースとしては案内していない。 

{{-}}
; 8590系 田園都市線用
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:80%; margin:1em 0em 1em 3em;"
|-
| style="background-color:#ccc; width:12em;"|&nbsp;
| colspan="10" style="background-color:#9f9;"|{{TrainDirection|押上・渋谷|中央林間}}
|-
! style="width:12em;"|号車
| style="width:6em;"|1
| style="width:6em;"|2
| style="width:6em;"|3
| style="width:6em;"|4
| style="width:6em;"|5
| style="width:6em;"|6
| style="width:6em;"|7
| style="width:6em;"|8
| style="width:6em;"|9
| style="width:6em;"|10
|-
! style="width:12em;"|形式・車種
|'''デハ8690'''<br />(M2c)
|'''デハ8190'''<br />(M1)
|'''サハ8390'''<br />(T)
|'''デハ8290'''<br />(M2)
|'''デハ8190'''<br />(M1)
|'''デハ8290'''<br />(M2)
|'''デハ8190'''<br />(M1)
|'''サハ8390'''<br />(T)
|'''デハ8290'''<br />(M2)
|'''デハ8590'''<br />(M1c)
|-
! style="width:12em;"|搭載機器・車内設備
| '''CP''' || CONT || SIV,[車] || CP || CONT || CP || CONT || SIV || CP,[車] || CONT
|-style="border-top:solid 3px #999;"
! rowspan="2"|車号
| F8694 || ◇D8185 || D'''8397''' || B8295 || ◇B8195 || D8283 || ◇D8183 || D8398 || D'''8285''' || ◇F8594
|-
| F8695 || ◇E8189 || E'''8399''' || D8299 || ◇D8199 || E8287 || ◇E8187 || E8390 || E'''8289''' || ◇F8595
|}
::8185と8189は東横線に復帰後（田園都市線在籍時は車椅子スペースの設置を行っていない）、車椅子スペースを設置した。ただし田園都市線では2号車は車椅子スペースとして案内していない。 
{{-}}

== 付記 ==
[[ファイル:Tokyu 8090 Train Simulator 2014.jpg|thumb|250px|電車とバスの博物館の8090系シミュレーター]]
* 東京急行電鉄[[スタンプラリー]]PART10 - 12のストーリーに登場するキャラクター「電車くん」は8090系がモデルである。（漫画：[[三鷹公一]]）
* [[電車とバスの博物館]]に8090系の[[シミュレーション|運転シミュレータ]]が設置されている。車両番号は8090号で実車では5次車に当たるが、4次車登場前に製造されたため、前照灯の位置は3次車に準じている。計器類は実車はATC対応のため換装されているが、シミュレータは当時のままとなっている。同シミュレータでは田園都市線中央林間→[[二子玉川駅|二子玉川]]間の運転が可能。
{{-}}

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{reflist|2}}

== 参考文献 ==
* 金邊秀雄 「東京急行電鉄8090系軽量ステンレス車」『[[鉄道ピクトリアル]]』1981年3月号（通巻387号）、[[電気車研究会]]。
* 金辺秀雄 「東急8090系車両の概要」『電気車の科学』1981年1月号（通巻393号）、電気車研究会。
* 荻原俊夫 「新車ガイド 軽くなって新登場 東急ステンレスカー8090系」『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』1981年3月号（通巻239号）、[[交友社]]。
* 荻原俊夫 「東急8090系モデルチェンジ車」『鉄道ピクトリアル』1985年3月号（通巻444号）、。
* 荻原俊夫 「東京急行電鉄8000系16次車（8090系モデルチェンジ車）」『鉄道ピクトリアル』1985年5月臨時増刊号（通巻448号）新車年鑑1985年版、鉄道図書刊行会。
* 川口雄二 「東京急行電鉄8090系（デハ8590・8690形）」『鉄道ピクトリアル』1989年5月臨時増刊号（通巻512号）新車年鑑1985年版、鉄道図書刊行会。
* {{Citation | last1 = 宮田 | first1 = 道一 | last2 = 杉山 | first2 = 裕治 | year = 2009 | title = 東急おもしろ運転徹底探見 | publisher = JTBパブリッシング | isbn = 978-4-533-07650-3}}
* {{Cite journal|和書|author=金子智治・焼田健 |year=2004 |month=7 |title=東京急行電鉄現有車両プロフィール 2004 |journal=鉄道ピクトリアル |issue=749 |pages= 212-213 |publisher=電気車研究会 |ref = 金子・焼田749}}

== 関連項目 ==
{{commonscat|Tōkyū 8090 series}}
[[秩父鉄道7500系電車|秩父鉄道7500系・7800系]]
{{東京急行電鉄の車両}}
{{富山地方鉄道の車両}}

[[Category:東京急行電鉄の電車|8090けいてんしや]]
[[Category:1980年製の鉄道車両|とうきゆう電8090]]
[[Category:東急車輛製造製の電車|とうきゆう8090]]
{{リダイレクトの所属カテゴリ
|redirect1=富山地方鉄道17480形電車
|1-1=富山地方鉄道の電車
|1-2=他社から譲り受けた鉄道車両
}}