東富士欽壹のソースを表示

{{Otheruses|昭和20年代に活躍した横綱の'''東'''富士|平成15年3月場所初土俵の'''富士'''東|富士東和佳|}}
{{Infobox 力士
|名前 = 東富士 欽壹
|画像 = [[File:Azumafuji 1950 Scan10025-2.JPG|300px]]
|説明 = 1950年大相撲夏場所で3回目の優勝<br>記念撮影で賜杯を持つ
|四股名 = 東富士 欽壹
|本名 = 井上 謹一
|愛称 = キン坊・幕下三羽烏・大将<br/>怒濤の寄り身・動く富士山
|生年月日 = [[1921年]][[10月28日]]
|没年月日 = {{死亡年月日と没年齢|1921|10|28|1973|7|31}}
|出身 = 東京市下谷区<br/>（現・[[東京都]][[台東区]]）
|身長 = 180cm
|体重 = 178kg
|BMI = 54.94
|所属部屋 = [[富士ヶ根部屋]]→[[高砂部屋]]
|得意技 = 左四つ、寄り、上手出し投げ
|現在の番付 = 引退
|最高位 = 第40代[[横綱]]
|生涯戦歴 = 335勝137敗1分1預54休(46場所)
|幕内戦歴 = 261勝104敗1分1預54休(31場所)
|優勝 = 幕内最高優勝6回<br/>十両優勝1回<br/>幕下優勝1回
|賞 = 
|初土俵 = [[1936年]]1月場所
|入幕 = [[1943年]]5月場所
|引退 = [[1954年]]9月場所
|引退後 = [[プロレスラー]]・金融業
|他の活動 = 
|趣味 = 
|備考 = 
|作成日時 = [[2014年]][[8月16日]]
}}
'''東富士 欽壹'''（あずまふじ きんいち、[[1921年]][[10月28日]] - [[1973年]][[7月31日]]）は、[[東京市]][[下谷区]]（現・東京都台東区）出身の元[[大相撲]][[力士]]・元[[プロレスラー]]・実業家。本名は'''井上 謹一'''（いのうえ きんいち）。

== 来歴 ==
=== 初土俵～入幕 ===
子供時代から巨躯・怪力で、大人に交じって家業の鉄工所を手伝っていたことから“下谷に怪童あり”と評判になる。その評判を聞きつけた[[富士ヶ根]]（元[[小結]]・[[若湊義正|若湊]]）が勧誘して入門させ、[[1936年]]1月場所に[[初土俵]]を踏む。しかし、緊張から鍛え上げられた力を発揮できずに[[前相撲]]を通過して[[番付]]に載るまで2年を要したが、[[幕下]]時代から大横綱・[[双葉山定次]]に目をかけられ、「キン坊、来い」と呼ばれては猛稽古で鍛えられた。

双葉山定次の猛稽古によって順調に力を付け、[[1943年]]5月場所に[[新入幕]]を果たす。[[1944年]]1月場所7日目には双葉山の土俵入りで[[露払い]]（[[太刀持ち]]は[[前田山英五郎|前田山]]）を務めた。その後もたちまち上位にあがり、新[[関脇]]の[[1944年]]11月場所では東西の編成替えで初めて双葉山と敵方になり、6日目に双葉山を[[上手投げ]]で破って恩を返した<ref>これは結果的に、双葉山が土俵に上がっての最後の敗戦にもなった。</ref>。

=== 戦時中 ===
[[第二次世界大戦]]中の一時期、[[出羽海部屋]]に身を寄せて巡業や稽古を共にした。そのまま移籍の話も持ち上がり、当人も[[出羽海]]側もそのつもりだったが、[[高砂 (相撲)|高砂]]一門の総帥である前田山が認めず、半ば脱走するように出羽海部屋を去らなくてはならなかった。しかし、これが背景を知らない出羽海の力士との間に遺恨を残すことになり、これも本場所で実力を発揮しきれなかった一因と考えられている。

[[1945年]]6月場所（7日間制）、[[大関]]・[[佐賀ノ花勝巳|佐賀ノ花]]、横綱・[[羽黒山政司|羽黒山]]を破って6勝1敗。1敗は6日目、朝からの雨で相撲は中止と決め付けて<ref>空襲で天井に穴のあいた[[両国国技館|国技館]]での開催であったため、雨が降ると雨漏りのため順延となった。</ref>昼間から酒を飲み、中止ではないと知って慌てて駆けつけ平幕の[[十勝岩豊|十勝岩]]に[[うっちゃり]]に敗れたもの。この失態があって優勝は全勝の[[備州山大八郎|備州山]]にさらわれたものの、前場所の9勝1敗（優勝同点）に続く好成績で、関脇を2場所で通過、戦後最初の場所となった[[1945年]]11月場所で大関に昇進する。

[[1946年]]の巡業で右足に重傷を負い、これ以降、この後遺症で成績が不安定となる。[[1948年]]5月場所で初優勝し、10月場所は関脇・[[増位山大志郎|増位山]]との[[優勝決定戦 (相撲)|優勝決定戦]]に敗れたものの、場所後に[[吉田司家]]から最後の横綱免許を授与された。

=== 横綱昇進後 ===
[[File:Azumafuji vs Tochinishiki 1953-10-29.jpg|thumb|300px|right|東富士（左）が上手投げで栃錦を破った瞬間（1953年10月29日・秋場所11日目）]]
[[1951年]]9月場所で優勝を果たした際に、[[力道山]]のオープンカーを借りて優勝パレードを個人的に行った（これが大相撲における優勝パレードの始まりで、[[1952年]]1月場所以降は[[日本相撲協会]]の公式行事として行われている）。この場所は、途中で急性肺炎による高熱に悩まされ、11日目から3日間[[土俵入り]]を休み、12日目の大関・[[吉葉山潤之輔]]との一番では「こんな病身で相撲なんか取って死んでも知らんぞ」と医師に言われるも「命に関わっても文句は言わぬ」と誓約書を出して出場、[[水入り]]を挟む2度の[[物言い]]の末に吉葉山の了承を得て、勝負預りとなる死闘を演じた末の優勝だった。

[[1954年]]9月場所、大関・[[栃錦清隆]]が連続優勝で横綱昇進を問われることになったが、当時はすでに東富士と[[千代の山雅信]]・[[鏡里喜代治]]・吉葉山の4横綱がおり、前例のない5横綱時代が実現してしまう。このために栃錦の昇進は見送られかけたが、その気配を察した東富士は自ら引退を申し出たと言う。栃錦もこれを察し「どうか引退しないでください」と東富士に伝え、東富士も最初は考えたが「栃錦からの申し出で、逆に気持ちが吹っ切れた」と語っている。

=== プロレス転向 ===
引退後は年寄・[[錦戸]]を襲名したが、高砂一門での派閥争いを嫌って1954年12月に廃業した。錦戸は[[双見山又五郎]]の所有者名義だったが、それを知らずに襲名してしまったために[[羽黒山政司|立浪]]から苦情がつき、一門間での争いにも巻き込まれた。その人柄を惜しんだ時津風（元横綱[[双葉山定次|双葉山]]）が角界に残れるよう便宜を図ろうとしたが、現在よりさらに一門同士の隔たりが大きかった時代で、双葉山の令名をもってしても叶わず、[[引退相撲]]も行われなかった。

まだ断髪もしないまま今後を模索していた頃、力道山に誘われて[[プロレス]]に転向した。力道山の伝手でハワイでレスラー修業を積み、デビュー早々に力道山と組んでハワイ・タッグ選手権を獲得した。[[1955年]]10月には各団体の主力が参加した「ウェート別日本選手権」のヘビー級部門で[[山口利夫]]を破って優勝する役柄を演じ、日本ヘビー級王者・力道山への挑戦権を獲得した形になったが、力道山対東富士の選手権試合は実現せず、結局は力道山に脇役として使われ、終わってしまった。

=== 晩年 ===
プロレス引退後はアパート経営を経て[[フジテレビジョン|フジテレビ]]・[[TBSテレビ]]などの相撲解説者を担当し、銀座で[[消費者金融|サラリーマン金融]]「ファイナンス・フジ」を設立して社長を務め、銀座を中心に名古屋・仙台・札幌・静岡に支店を出した。[[1973年]][[7月31日]]、結腸[[癌]]のため死去。{{没年齢|1921|10|28|1973|7|31}}。

== 評価 ==
「怒涛の寄り」と形容された速攻相撲の実力者だった。速攻に加え、ヒジを[[おっつけ]]て全体重を乗せるようにして打つ上手出し投げは、東富士ならではの強烈なものだった。しかし、全勝も連続優勝もなく「東富士時代」と呼べる一時代は築けずに終わった。物事に執着のない性格にくわえ、師匠の[[前田山英五郎|高砂]]との不和などが、実力を発揮しきれなかった背景と考えられている。しかし、初優勝以来6年間は毎年1回優勝しており、[[羽黒山政司]]らとともに[[栃錦清隆]]・若乃花幹士時代（栃若時代）までの相撲界を支えた功績は大きい。

== エピソード ==
[[Image:Azumafuji handprint.JPG|thumb|200px|right|国技館辺に展示されている東富士の手形]]
* 入門した富士ヶ根部屋では、伝統的に[[四股名]]に「富士・冨士」が付くが、通常は上に付いて「冨士東」になる予定だった。しかし、富士ヶ根の期待の大きさを表すものとして逆の四股名になっている。現在でもこの伝統は、当時の富士ヶ根部屋を吸収した高砂部屋に継承されている<ref>例えば[[富士錦猛光]]に[[富士櫻栄守]]。ちなみに両者は[[富士山]]がある[[山梨県]]出身。</ref>。2014年現在、幕内には[[富士東和佳]]（[[足立区]]出身）が在籍するが、これは[[玉ノ井部屋]]の「東」を継承した四股名であり、東富士との関係は一切無い。
* 最初の東京出身横綱で「[[江戸っ子]]横綱」と呼ばれた。気風の良い人柄で知られ、それにまつわるエピソードは数多い。当時は[[二所ノ関一門]]と高砂一門で合同巡業を打つことが多く、[[若乃花幹士 (初代)|若乃花幹士]]を可愛がった。若乃花によれば「巡業中に自分（東富士）を倒したら一番ごとに1万円やる」と発破をかけられたという。当時の1万円は大変な高額で、それを自分の身銭から出す懐の大きさに打たれ、若乃花は横綱昇進後も東富士の態度を手本にした。
* 横綱昇進のころ、[[灰田勝彦]]・[[別所毅彦]]と3人で義兄弟の契りを結ぶ交友もあった。
* [[1947年]]6月場所の初めての[[優勝決定戦 (相撲)|優勝決定戦]]に出場したが、同じ決定戦に出場した前田山とは複雑な上下関係があり、抽選では何とか当たらない様にと祈ったが、一回戦で前田山とあたり敗退している。
* [[横綱土俵入り]]は巨体だけに迫力と貫禄に満ち、「鼻息が桟敷まで聞こえる」とも言われた。
* [[男女ノ川登三]]の付き人をしていた頃、男女ノ川の大好物だった[[ジャガイモ]]をこっそり食べた。しかし、ジャガイモの減りに敏感だった男女ノ川はすぐに見抜いて「こらキン坊、一つ食っただろ!」と怒られたという。

== 主な成績 ==
=== 通算成績 ===
* 通算成績：335勝137敗1分1預54休 勝率.710
* 幕内成績：261勝104敗1分1預54休 勝率.715
* 大関成績：51勝15敗 勝率.773
* 横綱成績：172勝74敗1分1預50休 勝率.699
* 幕内在位：31場所
* 横綱在位：20場所
* 大関在位：6場所
* 三役在位：2場所（関脇2場所、小結なし）

=== 各段優勝 ===
* 幕内最高優勝：6回(1947年5月場所、1948年1月場所、1950年5月場所、1951年9月場所、1952年5月場所、1953年9月場所)
: 優勝同点：3回（上位優勝の時代に1回、優勝決定戦での敗北2回）
: 優勝次点：2回
* 十両優勝：1回（1943年1月場所）
* 幕下優勝：1回（1941年5月場所）

=== 場所別成績 ===
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※1949年1月場所は、引き分けが1。また1951年9月場所は、預かりが1あり。

== 脚注 ==
<references />

== 関連項目 ==
* [[横綱一覧]]

== 外部リンク ==
{{sumodb|3850|東富士 欽壹}}

{{歴代横綱|第40代|1949年1月-1954年9月}}
{{歴代大関|第177代|1945年11月-1948年10月}}
{{DEFAULTSORT:あすまふし きんいち}}
[[Category:東京都出身の大相撲力士]]
[[Category:富士ヶ根部屋]]
[[Category:高砂部屋]]
[[Category:大相撲出身のプロレスラー]]
[[Category:日本プロレスに所属したプロレスラー]]
[[Category:力道山]]
[[Category:1921年生]]
[[Category:1973年没]]
[[Category:東京都出身の人物]]
[[Category:相撲解説者]]
[[Category:横綱]]