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村山七郎
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'''村山 七郎'''(むらやま しちろう、[[1908年]] - [[1995年]])は、[[日本]]の[[言語学者]]。[[茨城県]]生まれ。[[順天堂大学]]教授、[[ルール大学]](旧[[西ドイツ]])客員教授、[[九州大学]]教授を経て[[京都産業大学]]教授。 [[日本語の起源]]が、[[アルタイ諸語]](特に[[ツングース諸語]])と[[オーストロネシア語族|オーストロネシア諸語]]([[w:Austronesian languages]])の[[混合言語]]に起源するという説を展開した。 == 人物== [[1942年]]から[[1945年]]に[[フンボルト大学ベルリン|ベルリン大学]]でアルタイ諸語(主に[[モンゴル文語]])、[[アルタイ]][[比較言語学]]を、[[ニコラス・ポッペ]]の下で学んだ。[[テュルク諸語]]・[[モンゴル]]諸語・[[ツングース諸語]]が一つの同じ[[祖語]]から発生したとする[[アルタイ語族説]]は、[[フィンランド]]の言語学者 [[グスターフ・ラムステッド|G. ラムステット]]によって学説としての基礎が与えられたが、ポッペは、アルタイ語族説の発展と普及に最も大きな影響力を与えた言語学者である。また、[[デニス・サイナー]]は「[[東方学]]」(2002)所収の「[[常設国際アルタイ学会]](PIAC)の四十五年――歴史と回想」の中で、1995年には「二人の偉大な日本人アルタイ学者、[[服部四郎]]と村山七郎が亡くなった。」と述べている。[[2003年]]に[[国際日本文化研究センター]]より刊行された『日本語系統論の現在』([[アレキサンダー・ボビン]]/[[長田俊樹]] 共編)の冒頭にも、「This book is dedicated to the four scholars who contributed the most to the study of the origins of the Japanese language in the 20 the century: Hattori Shiro,Samuel E. Martin, Murayama Shichiro,and Osada Natsuki.」(本書を20世紀における[[日本語]]の起源・系統研究に最も貢献した服部四郎、[[サミュエル・E・マーチン]]、村山七郎、[[長田夏樹]]の4人の先達に捧ぐ。)とある。村山のアルタイ学、日本語の起源・系統研究への寄与の大きさを端的に示したものと言えるだろう。 ==学歴== *[[1942年]]-[[1945年]] ベルリン大学にアルタイ諸語、[[アルタイ比較言語学]]を学ぶ。 ==職歴== *順天堂大学教授 *ルール大学(旧西ドイツ)客員教授 *九州大学文学部教授 *京都産業大学外国語学部教授 ==半生== 敗戦を[[ベルリン]]で迎えた村山は、帰国後、アルタイ学者としての研究活動を開始した。この時期の業績として、[[成吉思汗碑文]]の解読、[[契丹文字]]の解読の試みが挙げられる。また、[[古代日本語]]の[[代名詞]]や[[動詞活用]]システムがアルタイ系言語起源であること、いわゆる「[[有坂秀世]]の[[音節]]結合法則」とアルタイ諸語[[w:Altaic languages]]に見られる[[母音調和]]の比較など、アルタイ比較言語学の立場から[[日本語の系統]]問題について積極的な提言を行った。また朝鮮最古の歴史書「[[三国史記]]」から、いわゆる[[高句麗語]]を抽出し、それが顕著に高い比率で日本語と類似することを指摘した。 村山は、1960年前半までは日本語の系統を、19世紀以来の通説に従いアルタイ起源とみなしていたが、一方で、[[古代日本語]]の主要語彙はアルタイ起源では説明できないという見解に達していた。60年代後半以降、日本語と[[オーストロネシア諸語]]との関係を論じたロシアの言語学者、E. [[ポリワーノフ]]の一連の論文(1918~1925)、[[泉井久之助]]による日本語とオーストロネシア祖語の比較研究(1952)などの影響を受け、1970年代前半から、ポリワーノフの説を発展させた一連の著書・論文を発表し始める。その手法は、[[上代日本語]]と[[琉球語]]の比較から[[日本祖語]]の[[内的再構]]を行い、O. [[デンプウォルフ]]によって再構されたオーストロネシア祖語と比較して[[音韻対応]]を設定するという、歴史・比較言語学の正統的な方法論に沿ったものである。 古代日本語における、[[基礎語彙]]を含む相当数の語彙(総計して約240語の語彙が比較されている)がオーストロネシア起源であるとし、また、[[助詞]]「の」や[[連濁]]現象が、オーストロネシア諸語に広く見られる[[音挿入|リンカー]](繋辞) na/ng に起源すること、[[接頭辞]](た走る、ま白、か細し、など)もオーストロネシア起源と推定されること、オーストロネシア語族を特徴付ける[[前鼻音化]]と呼ばれる特異な形態[[音韻論]]的現象の痕跡が[[古代日本語]]に残存すると見られることを根拠に、オーストロネシア語の影響は、語彙だけでなく、[[統語]]・[[形態論]]的な要素にも及んでいると主張した。 その一方で、[[動詞]]や[[形容詞]]などの[[用言]]の[[活用]]システムや、[[語順]]、代名詞などの主要な[[文法]]要素はアルタイ起源とする見解を維持し、日本語は「アルタイ・ツングース系言語を骨子とした南島(オーストロネシア)語である」と主張した(1976)。また[[大野晋]]の[[タミル語起源説]]を痛烈に批判した(1982)。90年以降の最晩年には、[[アイヌ語]]とオーストロネシア祖語との比較研究に取り組み3冊の著書を出版した(1992-1995)。 村山の見解は海外にも良く知られており、日本語の系統を論じた米国・ロシアなどの言語学者の著書・論文にも多く引用されている。日本語がオーストロネシア語を基層として形成された混合言語であるとする説は、[[崎山理]]や[[板橋義三]]([[九州大学]])によって継承されている。 村山の行なった比較例のいくつかについては、[[国語学]]者と、(特に海外の)言語学者から批判を受けているが、言語学の観点から最大の論議を呼ぶのは、そもそも混合言語なるものが存在するかについてであろう。系統論を前提とする伝統的な比較言語学は混合言語の存在を認めないが、近年になって、[[ピジン]]・[[クレオール]]語の先駆的な研究者であったH. [[シューフハルト]]の混合言語を認める見解を再評価する動きが見られることは、村山説に有利な傾向と言えるかもしれない。 果たして日本語の系統あるいはその起源が解明され得るものなのか、現状では日本の言語学者間では悲観的(あるいはシニカル)な見解が圧倒的に強いが、もし将来、この難問に関してなんらかのコンセンサスが得られるものとすれば、それは村山説の可否に関する結論が得られた後のことであると思われる。 ==著書== ===単著=== *『漂流民の言語』(次男・村山秀世の霊にささげる)吉川弘文堂 1965年 *『日本語の研究方法』弘文堂 1974年 *『日本語の語源』 弘文堂 1974年 *『国語学の限界』 弘文堂 1975年 *『日本語系統の探求』[[大修館書店]] 1978年 *『琉球語の秘密』 弘文堂 1981年 *『日本語の起源と語源』[[三一書房]] 1981年 *『日本語タミル語起源説批判』 三一書房 1982年 *『アイヌ語の起源』 三一書房 1992年 ===共著=== *『日本語の起源』 ([[大林太良]]と共著) 弘文堂 1973年 *『原始日本語と民族文化』([[国分直一]]と共著) 弘文堂 1976年 ===訳書=== *『日本語研究』(E.D.[[ポリワーノフ]]) 弘文堂 1976年 ===訳書監修=== *韓国語の系統 ([[金芳漢]]著 大林直樹訳) 三一書房 1985年 *「韓国語の歴史」 ([[李基文]]著 藤本幸夫訳)大修館書店 1975年 ===論文=== *「古代日本語における代名詞」 言語研究 No.15 1950年 *「高句麗語資料および若干の日本語・高句麗語[[音韻対応]]」1962年( 第46回 日本言語学会大会) *「日本語及び高句麗語の数詞 -日本語系統問題によせて- 」国語学 48 1962年 *「日本語[[動詞活用]]起源についての覚え書き」[[和泉書院]](「日本語の系統・基本論文集」所収)(初出1975年) *Altaische Komponenten der japanischen Sprache (in Altaic Languages)1975 Budapest *Tungusica-Japonica (in Altaische Jahrbuecher Bd. 48) 1976 == 関連人物== *国内(言語学関連):[[有坂秀世]]、[[池上二良]]、[[泉井久之助]]、[[板橋義三]]、[[大野晋]]、[[崎山理]]、[[服部四郎]]、[[松本克己]] *国外:[[ニコラス・ポッペ]] [[w:Nicholas Poppe]]、[[ポリワーノフ]][[w:Polivanov]]、[[デンプウォルフ]]、[[シューハルト]]、[[グスターフ・ラムステッド|ラムステット]][[w:Ramstedt]]、[[サミュエル・E・マーチン]][[w:Samuel E. Martin]] ==関連施設等(日本語の起源・系統研究に関係する諸語研究) == *[http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~r16749/gengo/index.htm 北海道大学大学北方文民族言語学研究室] ([[ツングース]]諸語やモンゴル諸語、[[シベリア]]などの[[北方諸民族]]の言語を研究) *[http://www.l.chiba-u.ac.jp/japanese/eura/ 千葉大学文学部ユーラシア言語文化論講座] (アイヌ語や[[ニヴフ]]語などを含む北方諸民族の言語や文化を研究) *[http://ryukyu-lang.lib.u-ryukyu.ac.jp/ 琉球語音声データベース] ([[琉球語]]諸方言の辞典と音声データベース [[琉球大学]]提供) など ==関連組織等== *[http://wwwsoc.nii.ac.jp/lsj2 日本言語学会] *[http://www.tohogakkai.com/index.htm 東方学会] *[http://www.bibl.u-szeged.hu/~clio/html/ligeti/piac.htm 常設国際アルタイ学会(PIAC)] ==日本語の起源・系統研究(ネット上)== *[http://homepage3.nifty.com/rosetta_stone/wissenshaft/wissenshaft.htm 学問の部屋] *[http://members.e-omi.ne.jp/ichhan-j/ 日本語の起源] *[http://www.dai3gen.net/index.html 日本古代史とアイヌ語] など ==関連項目、参考資料== *[[w:Altaic languages]](アルタイ諸語) *[[w:Mongolian languages]](モンゴル諸語) *[[w:Tungusic languages]](ツングース諸語) *[[w:Turkic languages]](テュルク諸語) *[[w:Altai]](アルタイ) *[[w:Ainu]](アイヌ) *[[w:Ryukyuan languages]](琉球諸語) *[[w:Austronesian languages]])(オーストロネシア諸語) *[[言語学]] *[[日本語学]] *[[国語学]] *[[文化人類学]] *[[社会人類学]] *[[民族学]] *[[民俗学]] *[http://www1.elsevier.com/homepage/sal/ellei/data/classified/e.html BIOGRAPHIES - The Encyclopedia of Language and Linguistics Electronic Index] {{DEFAULTSORT:むらやま しちろう}} [[Category:日本の言語学者]] [[Category:日本語学者]] [[Category:九州大学の教員]] [[Category:京都産業大学の教員]] [[Category:順天堂大学の教員]] [[Category:茨城県出身の人物]] [[Category:1908年生]] [[Category:1995年没]]
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