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承和の変
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'''承和の変'''(じょうわのへん)は、[[平安時代]]初期の[[842年]]([[承和 (日本)|承和]]9年)に起きた[[廃太子]]を伴う政変。[[藤原氏]]による最初の他氏排斥事件とされている事件である。 == 概要 == [[823年]]([[弘仁]]14年)、[[嵯峨天皇]]は譲位し、弟の[[淳和天皇]]が即位した。ついで皇位は、[[833年]]([[天長]]10年)嵯峨上皇の皇子の[[仁明天皇]]に伝えられた。仁明天皇の[[東宮|皇太子]]には淳和上皇の皇子[[恒貞親王]](母は嵯峨天皇の皇女[[正子内親王 (嵯峨天皇皇女)|正子内親王]])が立てられた。嵯峨上皇による大家父長的支配のもと30年近く政治は安定し、皇位継承に関する紛争は起こらなかった。 この間に[[藤原北家]]の[[藤原良房]]が嵯峨上皇と[[皇太后]][[橘嘉智子]](檀林皇太后)の信任を得て急速に台頭し始めていた。良房の妹[[藤原順子|順子]]が仁明天皇の中宮となり、その間に[[文徳天皇|道康親王(後の文徳天皇)]]が生まれた。良房は道康親王の皇位継承を望んだ。道康親王を皇太子に擁立する動きがあることに不安を感じた恒貞親王と父親の淳和上皇は、しばしば皇太子辞退を奏請するが、その都度、嵯峨上皇に慰留されていた。 [[840年]](承和7年)、淳和上皇が崩御する。2年後の[[842年]](承和9年)7月には、嵯峨上皇も重い病に伏した。これに危機感を持ったのが皇太子に仕える[[春宮坊]]帯刀舎人[[伴健岑]]とその盟友[[但馬国|但馬]][[国司|権守]][[橘逸勢]]である。彼らは皇太子の身に危険が迫っていると察し、皇太子を東国へ移すことを画策し、その計画を[[阿保親王]]([[平城天皇]]の皇子)に相談した。阿保親王はこれに与せずに、逸勢の従姉妹でもある檀林皇太后に健岑らの策謀を密書にて上告した。皇太后は事の重大さに驚き[[中納言]]良房に相談した。当然ながら良房は仁明天皇へと上告した。 7月15日、嵯峨上皇が崩御。その2日後の17日、仁明天皇は伴健岑と橘逸勢、その一味とみなされるものを逮捕し、六衛府に命じて[[平安京|京]]の警備を厳戒させた。皇太子は直ちに辞表を天皇に奉ったが、皇太子には罪はないものとして一旦は慰留される。しかし、23日になり政局は大きく変わり、[[近衛府|左近衛少将]][[藤原良相]](良房の弟)が近衛府の兵を率いて皇太子の座所を包囲。出仕していた[[大納言]][[藤原愛発]]、[[中納言]][[藤原吉野]]、[[参議]][[文室秋津]]を捕らえた。仁明天皇は詔を発して伴健岑、橘逸勢らを謀反人と断じ、恒貞親王は事件とは無関係としながらも責任を取らせるために皇太子を廃した。藤原愛発は京外追放、藤原吉野は[[大宰権帥|大宰員外帥]]、文室秋津は[[出雲国|出雲]]員外守にそれぞれ左遷、伴健岑は[[隠岐国|隠岐]](その後出雲国へ左遷)、橘逸勢は[[伊豆国|伊豆]]に流罪(護送途中、[[遠江国]]板築にて没)となった。また、[[春澄善縄]]ら恒貞親王に仕える[[東宮職]]・春宮坊の役人が多数処分を受けた。 事件後、藤原良房は大納言に昇進し、道康親王が皇太子に立てられた。 通説において、承和の変は藤原氏による他氏排斥事件の初めで、良房の望みどおり道康親王が皇太子に立てられたばかりでなく、名族伴氏([[大伴氏]])と[[橘氏]]に打撃を与え、また同じ藤原氏の競争相手であった藤原愛発、藤原吉野をも失脚させたとされている。が、承和の変の最大の意味は、[[桓武天皇]]の遺志に遠因をもつ、嵯峨、淳和による兄弟王朝の迭立を解消し、嵯峨-仁明-文徳の直系王統を成立させたことであろう。なお仁明天皇は同年4月以後、内裏の修理を理由として当時恒貞親王が居住していた冷然院内に滞在しており、天皇の警護を名目として院内に滞在していた天皇側の兵が、いつでも皇太子を囲むことが出来る状況下にあり、皇太子の側で天皇に対する呪詛がおこなわれているとか、謀略の企みがあるなどという噂がさかんに流れていたともいう。 しかし良房が、この事件を機にその権威を確立し昇進を重ね、遂に人臣最初の[[摂政]]・[[太政大臣]]までのぼり、藤原氏繁栄の基礎を築いたことは事実である。 == 変で処罰された人物 == {| class="wikitable" width="100%" |- !家系 !氏名 !官位など !処罰内容 |- |[[皇族]] |[[恒貞親王]] |[[皇太子]] |廃太子 |- |皇族 |[[広根王]] |[[正六位|正六位上]]・舎人正 |[[壱岐国#国司|壱岐権守]]に[[左遷]] |- |[[藤原北家]] |[[藤原愛発]] |[[正三位]]・[[大納言]] |解官の上で京外追放 |- |藤原北家 |[[藤原貞守]] |[[従五位|従五位下]]・[[春宮坊|春宮坊亮]] |[[越後国#国司|越後権守]]へ左遷 |- |[[藤原式家]] |[[藤原吉野]] |正三位・[[中納言]] |[[大宰帥|大宰員外帥]]へ左遷 |- |藤原式家 |[[藤原近主]] |従五位下・春宮坊大進 |[[伯耆国#国司|伯耆権介]]に左遷 |- |藤原式家 |[[藤原正世]] |従五位下・[[刑部省|刑部少輔]] |[[安芸国#国司|安芸権介]]に左遷 |- |藤原式家 |[[藤原貞庭]] |正六位上・春宮坊少進 |[[佐渡国#国司|佐渡権掾]]に左遷 |- |藤原式家 |[[藤原正岑]] |[[正七位|正七位上]]・[[兵部省|兵部少丞]] |[[因幡国#国司|因幡権掾]]に左遷 |- |[[藤原南家]] |[[藤原秋常]] |従五位下・[[少納言]] |[[石見国#国司|石見権守]]に左遷 |- |藤原南家 |[[藤原岑人]] |正六位上・[[民部省|民部大丞]] |[[越中国#国司|越中権掾]]へ左遷 |- |[[藤原氏]] |[[藤原高直]] |従五位下・春宮坊大進 |[[駿河国#国司|駿河権介]]へ左遷 |- |藤原氏 |[[藤原粟作]] |正六位上・[[勘解由使|勘解由判官]] |[[日向国#国司|日向権掾]]に左遷 |- |藤原氏 |[[藤原安成]] |[[正八位|正八位上]]・[[治部省|治部少丞]] |[[丹波国#国司|丹後権掾]]に左遷 |- |[[伴氏]] |[[伴健岑]] |春宮坊帯刀舎人 |[[隠岐国#国司|隠岐国]]へ[[流罪]] |- |[[橘氏]] |[[橘逸勢]] |従五位下・[[但馬国#国司|但馬権守]] |[[本姓]]剥奪の上で[[伊豆国]]へ流罪。護送途中に死亡 |- |橘氏 |[[橘真直]] |従五位下・[[肥後国#国司|肥後介]] |[[筑後国#国司|筑後権介]]に左遷 |- |橘氏 |[[橘田舎麻呂]] |従五位下 |流罪 |- |橘氏 |[[橘末茂]] |正六位上・[[京職|左京少進]] |[[飛騨国#国司|飛騨権守]]へ左遷 |- |橘氏 |[[橘清蔭]] |正六位上・[[主殿寮|主殿助]] |[[加賀国#国司|加賀権介]]へ左遷 |- |橘氏 |[[橘忠宗]] |[[従七位|従七位上]] |流罪 |- |[[文室氏]] |[[文室秋津]] |[[正四位|正四位下]]・[[参議]] |[[出雲国#国司|出雲員外守]]に左遷 |- |[[清原氏]] |[[清原岑越]] |正六位上 |流罪 |- |[[紀氏]] |[[紀永直]] |正六位上・民部少丞 |[[伊予国#国司|伊予権掾]]に左遷 |- |紀氏 |[[紀貞嗣]] |正六位上・左京大進 |[[上総国#国司|上総権掾]]次いで[[尾張国#国司|尾張権掾]]へ左遷 |- |紀氏 |[[紀春常]] |[[正七位|正七位上]]・[[内舎人]] |[[下野国#国司|下野権掾]]へ左遷 |- |[[坂上氏]] |[[坂上新継]] |正六位下・[[主馬署|主馬首]] |[[能登国#国司|能登権掾]]へ左遷 |- |坂上氏 |[[坂上当岑]] |正七位上・[[主蔵監|主蔵正]] |[[豊後国#国司|豊後権掾]]に左遷 |- |[[丹墀氏]] |[[丹墀縄足]] |正六位上・[[主膳監|主膳正]] |[[薩摩国#国司|薩摩権掾]]に左遷 |- |丹墀氏 |[[丹墀時永]] |正七位上・少判事 |[[豊前国#国司|豊前権掾]]に左遷 |- |その他 |[[善道真貞]] |[[従四位|従四位下]]・[[東宮学士|東宮坊学士]] |[[備後国#国司|備後権守]]に左遷 |- |その他 |[[春澄善縄]] |従五位下・東宮坊学士 |[[周防国#国司|周防権守]]に左遷 |- |その他 |[[山口稲床]] |正六位上・春宮坊大属 |[[安房国#国司|安房権目]]へ左遷 |- |その他 |[[滋原道成]] |正六位上・春宮坊少属 |[[肥前国#国司|肥前権少目]]へ左遷 |- |その他 |[[上毛野貞継]] |正六位上・[[主工署|主工首]] |[[対馬国#国司|対馬権守]]次いで[[土佐国#国司|土佐権掾]]に左遷 |- |その他 |[[三善氏吉]] |正六位上 |流罪 |- |その他 |[[淡海豊守]] |正六位下・[[主殿署|主殿首]] |[[大隅国#国司|大隅権掾]]に左遷 |- |その他 |[[朝野清雄]] |正六位下・春宮坊少属 |丹後権目へ左遷 |- |その他 |[[御船蓑継]] |従七位上 |流罪 |- |} == 参考文献 == * [[保立道久]]『平安王朝』 [[岩波書店]]<[[岩波新書]]>、1996年、ISBN 4-00-430469-5 * 遠藤慶太『平安勅撰史書研究』(皇學館大学出版部、2006年) ISBN 4-87644-131-6 == 関連項目 == *[[日本史の出来事一覧]] *[[両統迭立]] *[[安和の変]]:藤原氏による最後の他氏排斥事件 {{DEFAULTSORT:しようわのへん}} [[Category:平安時代の事件]] [[Category:842年]]
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