愛知電気鉄道のソースを表示

{{基礎情報 会社
|社名               = 愛知電気鉄道
|英文社名           = 
|ロゴ               = 
|画像               = 
|画像説明           = 
|種類               = [[株式会社]]
|市場情報           = 
|略称               = 
|国籍               = {{JPN}}
|本社郵便番号       = 
|本社所在地         = [[愛知県]][[名古屋市]][[南区 (名古屋市)|南区]]熱田東町字新宮坂34<ref name="ndl2957462" />
|設立               = [[1910年]]（明治43年）11月21日
|業種               = [[:Category:かつて存在した日本の鉄道事業者|鉄軌道業]]
|事業内容           = 旅客鉄道事業、他
|代表者             = 代表取締役社長 [[藍川清成]]
|資本金             = 14,869,175円（払込額）
|発行済株式総数     = 
|売上高             = 
|営業利益           = 1,629,052円
|経常利益           = 427,795円
|純利益             = 
|純資産             = 
|総資産             = 36,119,636円
|従業員数           = 723名
|決算期             = 
|主要株主           = 
|主要子会社         = [[#自動車事業|愛電自動車]]・[[知多鉄道]]、他
|関係する人物       = 
|外部リンク         = 
|特記事項           = 上記データは[[1934年]]（昭和9年）下半期<ref name="meitetsu1961_p190-192" />。[[1935年]]（昭和10年）8月1日付で名岐鉄道と合併。
}}
{| {{Railway line header|collapse=yes}}
{{UKrail-header|路線概略図|#ddd}}
{{BS-table}}
{{BS-colspan}}
:[[File:BSicon STR.svg|{{BSpx}}]]：愛知電鉄および傍系・関連会社線&nbsp;&nbsp;&nbsp;[[File:BSicon uSTR.svg|{{BSpx}}]]：他社局線
1935年8月現在
<!--&nbsp;は位置を合わせるための措置です。外さないでください。-->
{{BS8-2|||||||||<hr />|<hr />}}
{{BS8-2|||extCONTg|||||||||&nbsp;[[名古屋地下鉄道]]（[[未成線|未成]]）|}}
{{BS8-2||uSTR|O2=POINTERr|extSTR|uSTR|O4=POINTERl|||||||[[名古屋市電|市電]]：熱田線&nbsp;|&nbsp;[[鉄道省]]：[[東海道本線]]}}
{{BS8-2||uSTR|O2=HUB63|extKBHFe|O3=exKBHFa|P3=HUB25|uHST|O4=HUB82|||||||熱田駅前駅（仮称）&nbsp;|&nbsp;[[熱田駅]]}}
{{BS8-2|uSTRq|uSTR|O2=uKHSTr|P2=HUB83|exSTR|uSTR|exCONTg|||||&nbsp;↑東陽町線<small>（未成）</small>|市電：築港線&nbsp;}}
{{BS8-2||uHST|O2=HUB84|exSTR|O3=HUB25|uSTR|O4=HUB25|KBHFxa|O5=HUB82|||||&nbsp;[[神宮前駅]]|愛電前電停&nbsp;}}
{{BS8-2|uSTRq|uSTRrf|exSTR|O3=POINTERl|uSTR|KRWgl|KRW+r||||&nbsp;金山線<small>（未成）</small>|市電：熱田線&nbsp;}}
{{BS8-2||STRrg|xKRZhl|umKRZh|KRZhr|STRrf|||↓'''[[名鉄常滑線|常滑線]]'''&nbsp;|&nbsp;↓'''[[名鉄名古屋本線|豊橋線]]'''}}
{{BS8-2||eBHF|exSTR|uSTR|KRWl|KRW+r|||''秋葉前駅''&nbsp;||-1919}}
{{BS8-2||eKRWg+l|exKRWgr|uSTR||BHF|O6=HUB84|uKHSTl|O7=HUB82|||&nbsp;[[堀田駅 (名鉄)|堀田駅]]||市電：東郊線}}
{{BS8-2||BHF|exSTR|O3=POINTERl|uSTR||eABZlf|exSTRlg||伝馬町駅&nbsp;|&nbsp;市内乗入線<small>（未成）</small>}}
{{BS8-2||DST|exSTR|uSTR||STR2|exSTR|O7=STRc3|P7=POINTERl||分岐点&nbsp;|||&nbsp;旧線}}
{{BS8-2|KDSTl|ABZrf|exSTR|uSTR||STRc1|xABZg+4||山崎川貨物支線 山崎川駅&nbsp;||}}
{{BS8-2||exKSTRaq|O2=BHF|exABZql|uemKRZ|exSTR2+r|exSTRc3|BHF||[[大江駅 (愛知県)|大江駅]]&nbsp;|&nbsp;[[本笠寺駅|笠寺駅]]}}
{{BS8-2|KBHFl|ABZrf||uSTR|exSTRc1|exSTR2+4|O6=POINTER+1|STR|O7=exSTRc3||'''[[名鉄築港線|築港線]]''' [[東名古屋港駅]]&nbsp;|&nbsp;市内乗入線<small>（未成）</small>}}
{{BS8-2|STRc2|exKSTRaq|O2=BHF3|exSTRq|uemKRZ|exSTRq|exSTRq|O6=exSTRc1|P6=POINTERu|exSTRrf|O7=eABZg+4||[[名和駅 (愛知県)|名和村駅]]&nbsp;|&nbsp;大高線<small>（未成）</small>}}
{{BS8-2|BHF+1|STRc4||uSTR|||BHF||[[太田川駅]]&nbsp;|&nbsp;[[鳴海駅]]}}
{{BS8-2|KRWgl|KRW+r||uKRWgl|uKRW+r||BHF|||&nbsp;[[有松駅|有松裏駅]]|[[知多鉄道]]→&nbsp;}}
{{BS8-2|BHF|STR|uKRW+l|uKRWr|uSTR||STR||[[尾張横須賀駅]]&nbsp;}}
{{BS9-2|d|O1=eABZlf|d|O2=exlCONTfq|HST|uSTR|WDOCKSa|uSTR|exKRW+l|eKRWgr||半田線<small>（未成）</small>→&nbsp;||右：[[知多半田駅]]／|&nbsp;←[[一ツ木駅|一ツ木]] - [[重原駅|重原]]短絡線<small>（計画）</small>}}
{{BS8-2|BHF|STR|uKBSTe|O3=WDOCKSc2|WDOCKSm|uSTR|exSTR|eBHF||[[大野町駅]]&nbsp;|&nbsp;''新知立駅（仮）''|右：[[武豊港駅]]／|-1923}}
{{BS8-2|KBHFxe|STR|WDOCKSl|O3=WDOCKSa|WDOCKSe|O4=WDOCKSr|uSTR|exSTR|O6=uSTRrg|mKRZo|uSTRlg|[[常滑駅]]&nbsp;|||&nbsp;[[名鉄三河線|三河鉄道]]}}
{{BS8-2|exCONTf|STR|WDOCKSm|uSTRrg|O4=WDOCKSc4|uKRZu|uSTRrf|BHF|uSTR|O8=KBHFa|↓内海線<small>（未成）</small>&nbsp;|&nbsp;[[東知立駅|新知立駅]]／右：[[三河知立駅|知立駅]]||}}
{{BS8-2||KHSTe|O2=WDOCKSc2|WDOCKSm|uSTR|uSTR||KRWg+l|uSTR|O8=KRWr||&nbsp;知立連絡線|[[河和駅]]&nbsp;}}
{{BS8-2|WDOCKSm|WDOCKSm|WDOCKSr|O3=WDOCKSe|uSTR|uSTR||DST|uSTRlf||&nbsp;[[知立信号所|分岐点]]|[[三河湾]]&nbsp;|三河鉄道→}}
{{BS8-2|WDOCKSe|O1=WDOCKSr|uKBSTl|O2=WDOCKSc4|P2=uSTRc2|uABZq3|uSTRrf|uSTR||BHF|||&nbsp;[[新安城駅|今村駅]]|新川口駅&nbsp;}}
{{BS8-2|uKBSTl|O1=uSTRc2|uABZ1+3r|uSTRc4|O3=kABZc2|kSTRq+l|umKRZu|STRq|STRrf|O7=STR2|STRc3|||大浜口駅&nbsp;|&nbsp;←[[碧海電気鉄道]]}}
{{BS8-2|uSTR+1|uSTRc4|kSTRg+l||uSTR||STRc1|BHF+4||&nbsp;[[岡崎公園前駅|西岡崎駅]]}}
{{BS8-2|uSTR||STR||uHST|O5=HUB84|uKHSTl|O6=HUB64|uSTRq|mKRZo|||[[岡崎駅]]&nbsp;|&nbsp;岡崎駅前駅／三鉄：[[名鉄岡崎市内線|岡崎線]]→}}
{{BS8-2|uSTR||STR2|STRc3|uSTR2|uSTRc3|O6=KBHFa|P6=HUB83||BHF|↓'''[[名鉄西尾線|西尾線]]''' [[岡崎駅前駅|岡崎新駅]]&nbsp;|&nbsp;[[東岡崎駅]]}}
{{BS8-2|uSTR||STRc1|STR+4|uSTRc1|STR|O6=BRIDGE2+4u|P6=uSTR2+4|uSTRc3|STR}}
{{BS8-2|uSTR||exSTRrg|eKRZ+l|STRq|STRrf|O6=uSTRc12|uSTR3+4|STR}}
{{BS8-2|uKRWl|uKRW+r|exBHF|BHF||uSTR+1|uSTRc4|STR|左：''（旧）西尾駅''／[[西尾駅]]&nbsp;||}}
{{BS8-2|KBHFl|umKRZo|eABZqlr|ABZgr+xr||uSTR||BHF|[[名鉄平坂支線|平坂線]] [[港前駅]]&nbsp;|&nbsp;[[本宿駅 (愛知県)|本宿駅]]}}
{{BS8-2|uKRW+l|uKRWr||STR||uSTR||STR}}
{{BS8-2|uHST|exSTRrg|KBHFxl|STRrf||uSTR||STR|[[吉良吉田駅]]&nbsp;||左：三河吉田駅／}}
{{BS8-2|uSTR|exKDSTe|||uSTRc2|uSTR3|STRc2|STR3|''吉田港駅''&nbsp;||-1928 吉田臨港線}}
{{BS8-2|uKHSTe|||uSTRc2|uSTR3+1|uSTRc4|O6=STRc2|STR3+1|STRc4|||[[三河鳥羽駅]]&nbsp;}}
{{BS8-2||uSTRrg|uSTRq|uSTRr+1|uSTRc4|O5=STRc2|ABZ1+3xf|STRc4|uSTRrg||||&nbsp;[[豊川鉄道]]→}}
{{BS8-2||uHST|||BHF+1|xSTR+c4||uHST||&nbsp;[[国府駅 (愛知県)|国府駅]]|[[蒲郡駅]]&nbsp;|／右：[[豊川駅]]}}
{{BS8-2||uSTR2|uSTRc3||BHF|exSTRlf|exCONTfq|uSTR||&nbsp;[[伊奈駅]]／豊川線<small>（未成）</small>→}}
{{BS8-2||uSTRc1|uSTR+4||ABZg2|STRc3||ukSTRgr}}
{{BS8-2|||uSTR||mABZrg|O5=STRc1|uSTRq|O6=KBHF4|ukSTRqr|ukABZc4||&nbsp;[[小坂井駅]] [[名鉄小坂井支線|小坂井線]]||}}
{{BS8-2|||uSTR||DST|||||&nbsp;[[平井信号場|平井信号所]]}}
{{BS8-2|||uSTR||KBHFxe|O5=HUB81|||||&nbsp;吉田駅}}
{{BS8-2|||uHST|O3=HUB84|HUB74|exSTR|O5=HUB72|uKHSTl|O6=HUB82|uABZrf||||[[豊橋駅]]&nbsp;|&nbsp;[[豊橋鉄道|豊橋電軌]]：[[駅前停留場]]}}
{{BS8-2|||uSTR|uKHSTa|O4=HUB83|exSTR|O5=POINTERl||uSTR||||[[豊橋鉄道渥美線|渥美電鉄]]：[[新豊橋駅]]&nbsp;|&nbsp;遠三鉄道（未成）}}
{{BS8-2||uSTRq|uKRZu|uABZqr|xmKRZ|uSTRq|uSTRrf||||←渥美電鉄&nbsp;|}}
{{BS8-2|||uSTR||exSTR|||||||}}
{{BS8-2||WDOCKSr|uWBRÜCKE1|WDOCKS|exSTR||||||[[浜名湖]]&nbsp;|}}
{{BS8-2|||uSTR||exSTR|O5=uSTRrg|uKHSTr||||||&nbsp;[[遠州鉄道奥山線|浜松鉄道]]：[[奥山駅]]}}
{{BS8-2|||uSTR||uHST|||||||&nbsp;[[気賀口駅|気賀駅]]}}
{{BS8-2|||uHST|uKHSTl|exSTR|O5=uSTRrf||||||[[浜松駅]]&nbsp;|&nbsp;[[遠州浜松信号場|東田町駅]]}}
{{BS8-2|||uSTR||exCONTf|||||||&nbsp;静岡方面延長線（却下線）}}
|}
|}

'''愛知電気鉄道'''（あいちでんきてつどう）は、[[1910年]]（[[明治]]43年）に設立され、[[愛知県]][[名古屋市]]を拠点として主に県南東部において鉄軌道事業を展開した[[鉄道事業者]]である。

[[1935年]]（[[昭和]]10年）8月に名岐鉄道と合併して消滅したが、愛知電気鉄道が敷設・運営した路線は前記合併により成立した[[名古屋鉄道|現・名古屋鉄道]]（名鉄）において基幹路線の一翼を形成した<ref name="meitetsu1961_p139" />。現・名鉄発行の『名古屋鉄道社史』においては、名岐鉄道と並んで名鉄の前身事業者における二大主流と評される<ref name="meitetsu1961_p139" />。

== 概要 ==
愛知電気鉄道は、古くより発展した商工地帯でありながら公共交通の便に恵まれなかった[[知多半島]]西岸地域と名古屋市を結ぶ鉄道路線を敷設・運営する目的で<ref name="meitetsu1961_p139" />、1910年（明治43年）に設立された<ref name="meitetsu1961_p143" />。

当初は、[[1913年]]（[[大正]]2年）3月に開通した<ref name="RP473_p68-69" />、後に常滑線（現・[[名鉄常滑線]]）と称される路線を運営する局地的な事業者であったが<ref name="RP370_p149" />、[[1922年]]（大正11年）より名古屋市と県東部の主要都市である[[豊橋市]]を直結する豊橋線（後の[[名鉄名古屋本線]]の一部）の建設に着手し<ref name="RP473_p74" />、[[1927年]]（昭和2年）6月に全線開通を迎えた<ref name="RP473_p74" />。また県東部幡豆地方の城下町であった西尾町を中心とした鉄道路線網を有した[[名鉄西尾線|西尾鉄道]]を吸収合併し<ref name="RP473_p72" />、さらに傘下事業者として[[知多鉄道]]・[[碧海電気鉄道]]を設立し路線を敷設するなど<ref name="RP473_p74" />、主に県南東部において多くの鉄道路線網を有する事業者となった<ref name="RP473_p74" />。

昭和初期の経済不況により一時は経営危機に直面し<ref name="meitetsu1961_p184" />、景気回復とともに危機的状況を脱した後は<ref name="meitetsu1961_p185" />、同時期に政府主導で推進された地域交通事業者の統合の時流に沿う形で名古屋財界より名岐鉄道との[[合併 (企業)|合併]]を打診された<ref name="RP473_p74-75" />。当初は愛知電気鉄道・名岐鉄道とも合併に消極的であったが、名古屋政財界人の仲介による折衝を経て合併に合意<ref name="RP473_p74-75" />、両社は名岐鉄道を存続会社として1935年（昭和10年）8月1日付で合併した<ref name="RP473_p74-75" />。同日をもって愛知電気鉄道は解散し、保有資産は名岐鉄道改め現・名古屋鉄道へ継承された<ref name="meitetsu1961_p196-197" />。

== 歴史 ==
以下、主に鉄道事業者としての愛知電気鉄道について詳述する。

=== 前史 ===
[[ファイル:Kiyonari aikawa nagoya.jpg|thumb|right|200px|藍川清成]]
愛知県の南西部に位置する知多半島は、東岸地域については[[鉄道省#鉄道院|鉄道院]]によって敷設された[[武豊線]]によって名古屋市と結ばれていたものの<ref name="meitetsu1961_p139" />、古代より[[常滑焼]]など窯業を中心として発達した商工地帯であった西岸地域については鉄道路線が存在せず、明治年間末期においても名古屋方面への客貨輸送は1日数便の馬車ないし船便のみに頼る状況であった<ref name="meitetsu1961_p139" />。

そのため、半島西岸地域の有力者より半島西岸から名古屋方面に至る鉄道路線敷設計画が立案され<ref name="meitetsu1961_p140" />、地元の大手電力会社であった[[名古屋電燈]]の顧問弁護士で、同社の取締役も務めた[[藍川清成]]<ref name="ndl1054267_p32" />を中心とする計7名の発起人により<ref name="meitetsu1961_p140" />、名古屋市近郊の[[愛知郡]][[熱田町]]より呼続・鳴海・大高・横須賀を経て半島西岸沿いに[[知多郡]][[常滑町]]へ至る、[[私設鉄道法]]による[[複線|複線]]の電気鉄道「知多電気鉄道」が[[1906年]]（明治39年）12月に免許申請された<ref name="RP473_p68-69" />。事業計画内容は発起人のうち、かつて[[名古屋電気鉄道]]の経営に携わった経歴を持つ小山朝佐・林友二らによって作成されたが<ref name="meitetsu1961_p140" />、この免許申請は却下され、実現しなかった<ref name="RP473_p68-69" />。

その後計画が進展しなかったことから、藍川は当時の愛知県知事であった[[深野一三]]や名古屋電力の常務取締役であった[[兼松煕]]ら地元政財界の要人に援助を要請し<ref name="meitetsu1961_p140" />、兼松よりかつて[[甲武鉄道]]にて取締役を務めた[[岩田作兵衛]]を紹介された<ref name="meitetsu1961_p140" />。岩田は[[雨宮敬次郎]]らに代表されるいわゆる「[[甲州財閥]]」の1人で<ref name="RP473_p88" />、雨宮とともに甲武鉄道のほか[[青梅線#青梅鉄道・青梅電気鉄道|青梅鉄道]]・川越鉄道（後の[[西武鉄道#西武鉄道（旧）|旧・西武鉄道]]）・[[京浜急行電鉄|京浜電気鉄道]]など数多くの私有鉄道の敷設運営に携わった実業家であった<ref name="RP473_p88" />。

出生地が[[岐阜県]][[稲葉郡]][[下羽栗村]]であったという地縁から藍川の要請を受諾した岩田は<ref name="meitetsu1961_p140" />、知多電気鉄道計画は建設費を削減することによって十分採算が取れると判断し<ref name="RP473_p88" />、計画を[[軌道条例]]による[[単線]]の電気軌道に変更するとともに<ref name="RP473_p88" />、元[[関西鉄道]]社長の[[田中新七]]らを新たに発起人に加え<ref name="meitetsu1961_p140" />、岩田自身が発起人総代となり[[1909年]]（明治42年）9月に特許を出願した<ref name="meitetsu1961_p140" />。同年10月には発起人総会を開催、社名を「知多電車軌道」（資本金100万円）とし<ref name="meitetsu1961_p140" />、創立委員長には岩田が、創立委員には田中・兼松ら3名がそれぞれ就任した<ref name="meitetsu1961_p141" />。

創業に当たっての事務手続きは進捗したものの、特許申請については当時行政側において私有鉄道の準拠法として軌道条例に代わって[[軽便鉄道法]]の施行が計画されていたことによって停滞したため<ref name="meitetsu1961_p142-143" />、同法が施行された1910年（明治43年）8月3日付で知多電車軌道の軌道条例による特許出願を軽便鉄道法による免許申請へ変更する旨届け出て<ref name="meitetsu1961_p142-143" />、同年9月23日に熱田町新宮坂より常滑町へ至る鉄道路線が免許された<ref name="RP624_p103" />。敷設免許が下りたことを受けて、1910年（明治43年）11月21日に会社創立総会が名古屋商工会議所において開催された<ref name="meitetsu1961_p143" />。総会においては、従来「知多電車軌道」とされた社名について、将来的に事業範囲を知多半島のみならず名古屋市を中心として県南東部にかけて広く展開することを念頭に'''愛知電気鉄道'''と変更することを決定<ref name="RP473_p68-69" />、初代社長には岩田が、取締役には兼松・田中ら6名が就任し、藍川は監査役に就任した<ref name="meitetsu1961_p143" />。

=== 常滑線の建設から開通まで ===
[[File:Aichi Electric Railroad Tokoname Line map.svg|250px|thumb|right|常滑線路線図]]
会社設立を終えたことから、愛知電気鉄道（以下「愛電」と記す）は各種資材の手配を進め、熱田 - [[常滑駅|常滑]]間を4つの工区に分割して建設を開始した<ref name="meitetsu1961_p145" />。当初電力については自社にて発電所を建設する構想であったが、後に名古屋電燈より電力供給を受ける形に計画を変更した<ref name="meitetsu1961_p145" />。

[[1911年]]（明治44年）に、4つの工区のうち第一工区に相当する熱田 - [[名和駅|名和村]]間について、構想段階における呼続・大高経由の大回り経路から常滑街道沿いの短絡経路へ変更することとし<ref name="meitetsu1961_p145-146" />、同年5月に変更願を提出し6月に認可された<ref name="meitetsu1961_p145-146" />。この経路変更に伴って新たに用地買収の必要が生じ、第一工区のうち地権者との交渉が難航した熱田 - 伝馬町間については<ref name="meitetsu1961_p145-146" />、同様に用地買収が難航した第四工区に相当する[[大野町駅|大野町]] - 常滑間とともに着工を後回しとし<ref name="meitetsu1961_p145-146" />、伝馬町 - 大野町間の建設を優先して施工した<ref name="meitetsu1961_p145-146" />。

伝馬町 - 大野町間の建設は順調に進み、[[1912年]]（明治45年）2月上旬に監督官庁による審査を通過し<ref name="meitetsu1961_p146-147" />、同年2月18日に開通した<ref name="RP624_p103" />。暫定的に起点駅となった伝馬町は、300 mほどの徒歩連絡によって名古屋電気鉄道市内線（後の[[名古屋市電]]）の熱田伝馬町停留場と接続しており、名古屋市内中心部への連絡運輸が行われた<ref name="meitetsu1961_p146-147" />。開通後2月28日までの10日間は運賃を半額としたこともあって利用客が殺到し、開業初日のみで乗客2,600人が利用し、運賃収入は210円にのぼった<ref name="meitetsu1961_p146-147" />。同年3月3日には県知事・地元実業家・大株主など地元政財界の要人を中心に500名を招待して開業祝賀会を開催し<ref name="meitetsu1961_p147-148" />、花火の打ち上げや[[相撲|奉納相撲]]が行われるなど盛況を博した<ref name="meitetsu1961_p147-148" />。

伝馬町 - 大野町間開業後の営業成績は好調で<ref name="meitetsu1961_p147-148" />、春季には観光目的の団体客の需要などもあり、当初導入された8両の[[電車]]のみでは需要をまかない切れなくなったことから<ref name="meitetsu1961_p147-148" />、愛電は4両の電車（[[付随車]]）を追加導入して従来単行（1両）運転を基本とした列車を一部2両編成とし、増加する輸送需要に対応した<ref name="meitetsu1961_p147-148" />。

既開業区間の業績好調を受けて、愛電は熱田より名古屋市中心部に近い東陽町（現在の[[中区 (名古屋市)|中区]]東陽町）に至る「東陽町線」をはじめとする4路線の敷設を計画<ref name="meitetsu1961_p145" />、1912年（明治45年）より順次敷設免許を申請した<ref name="meitetsu1961_p149" />。次いで、未開業区間の熱田 - 伝馬町間および大野町 - 常滑間の着工準備に取り掛かった<ref name="meitetsu1961_p149-150" />。前者の区間については[[熱田駅]]にて行う予定であった国鉄との貨物列車の連帯運輸や、前述した東陽町線建設構想の都合から、愛電の熱田駅（[[神宮前駅]]）を[[東海道本線]]の東側に建設することとした<ref name="meitetsu1961_p149-150" />。そのため、路線を神宮前手前で東海道本線を[[跨線橋]]にて乗り越す構造とする必要が生じたが<ref name="meitetsu1961_p149-150" />、跨線橋の建設には多額の費用を要し、さらに用地買収が難航したため工事日数がかかることが想定されたことや、東陽町線の敷設免許が遅れたことなどから<ref name="meitetsu1961_p149-150" />、跨線橋手前の秋葉前まで暫定的に延伸する方針が決定した<ref name="meitetsu1961_p149-150" />。

1912年（明治45年）8月1日に伝馬町 - 秋葉町間が開通し<ref name="RP624_p103" />、さらに大野町 - 常滑間については難航した用地買収問題が解決したことに伴って1912年（明治45年）7月に着工、翌[[1913年]]（大正2年）3月29日に開通した<ref name="RP624_p103" />。常滑への路線延伸に伴って6両の電車を増備したほか、前述した貨物列車の運用開始に備えて貨車を30両新製した<ref name="meitetsu1961_p151" />。

残る神宮前 - 秋葉前間については、1913年（大正2年）2月に東陽町線の敷設免許が下りたことを受けて、同年5月より着工した<ref name="meitetsu1961_p151" />。この工事費用には50万円の借入金を充当したが<ref name="meitetsu1961_p152" />、[[盛土|築堤]]の造成や跨線橋の建造・設置に多額の費用を要したことから、わずか0.6 kmの区間に約23万円の工事費用を要し<ref name="meitetsu1961_p152" />、当時の年間収益が20万円程度であった愛電にとっては社運を賭けた大事業と評されるものであった<ref name="meitetsu1961_p152" />。1913年（大正2年）8月に線路の敷設および駅施設の建設が完了し<ref name="meitetsu1961_p152" />、同年8月31日の神宮前 - 秋葉前間の開通をもって、当初の計画路線であった神宮前 - 常滑間29.5 [[キロメートル|km]]が全線開通した<ref name="RP624_p103" />。また、同年9月には愛電神宮前と国鉄熱田を結ぶ貨物連絡線が開通し、同年12月より直通連帯運輸が開始された<ref name="meitetsu1961_p152" />。

=== 経済不況による経営危機 ===
愛電は既存路線の延伸と同時に、前述した東陽町線のほか、熱田より有松・知立方面へ至る「有松線」<ref name="meitetsu1961_p145" />・[[尾張横須賀駅|尾張横須賀]]より分岐して知多郡[[半田町]]へ至る「半田線」<ref name="meitetsu1961_p145" />・常滑より知多郡[[内海町 (愛知県)|内海町]]へ至る「内海線」<ref name="meitetsu1961_p145" />の計4路線の敷設免許を申請し、内海線は1912年（大正元年）8月に<ref name="meitetsu1961_p150" />、半田線は同年12月に<ref name="meitetsu1961_p150" />、東陽町線および有松線は翌1913年（大正2年）2月にそれぞれ免許された<ref name="meitetsu1961_p151" />。同時にこれら新規路線の建設費用に充当するため、1913年（大正2年）5月に新株を発行して資本金を200万円に増資した<ref name="meitetsu1961_p151" />。

しかし、同時期に顕著となりつつあった経済不況の影響によって新株の未払込金徴収は遅滞し<ref name="meitetsu1961_p151" />、そのため前述した神宮前 - 秋葉町間の建設費用を借入金にて賄わざるを得ない状況に陥った<ref name="meitetsu1961_p152" />。さらに神宮前 - 常滑間全線開通後の路線収益は建設に要した費用に対して到底見合うものではなく、計画路線を全て着工することは資金的に困難となった<ref name="meitetsu1961_p153" />。そのため、名古屋市内への乗り入れにあたって名古屋電気鉄道など他事業者との調整に時間を要することが予想された東陽町線については一旦建設計画を休止し、地元住民より要望の高かった有松線・半田線の着工を優先することとした<ref name="meitetsu1961_p153" />。

[[ファイル:Tosuke Fukuzawa2.jpg|thumb|right|200px|福澤桃介]]
両路線の建設資金調達に尽力した矢先、名古屋市の[[中村遊廓|旭遊廓]]の移転問題に絡む[[汚職|疑獄事件]]が発生し、兼松ら3名の愛電取締役が関与していたことが発覚<ref name="meitetsu1961_p153-155" />、兼松と常務取締役の安東敏之の2名が[[詐欺罪]]で起訴される事態が生じた<ref name="Asahi20080731" />。これにより、不況に加えて会社に対する不信感から株価が急落するなど、愛電を取り巻く環境はさらに厳しさを増していった<ref name="Asahi20080731" />。1913年（大正2年）5月から同年11月にかけて、兼松を始めとする役員の大半が辞任したことを受け、同年12月に監査役であった藍川のほか、伊藤由太郎{{refnest|group="人物"|名古屋の素封家である伊藤家第14代当主、元貴族院議員<ref name="ndl983167_p59-60" />。}}・井深基義の計3名が取締役に就任、経営の建て直しを図った<ref name="meitetsu1961_p153-155" />。

さらに翌[[1914年]]（大正3年）には、かねてから健康状態悪化により出社もままならない状態であった社長の岩田作兵衛が辞意を表明した<ref name="RP473_p89" />。藍川らは翻意に努めたものの岩田の辞意は固く、協議の結果、後任として当時名古屋電燈の常務取締役であった[[福澤桃介]]を招聘することで合意した<ref name="RP473_p89" />。福澤との交渉には名古屋電燈の監査役であった当時から親交の深かった藍川があたり<ref name="meitetsu1961_p155-156" />、福澤も藍川の申し出を承諾して、1914年（大正3年）8月16日に開催された臨時の株主総会において岩田の子息である岩田新之助とともに取締役に選出され<ref name="meitetsu1961_p155-156" />、同月19日の役員会において正式に取締役社長に就任した<ref name="meitetsu1961_p155-156" />。

福澤体制となった直後、愛電は半田線の建設を中止し、有松線の建設に注力することを決定した<ref name="meitetsu1961_p156" />。半田線は測量を終え境界標を設置し、敷設する[[軌条]]（レール）を入手する段階まで準備が進められていたが<ref name="meitetsu1961_p155-156" /><ref name="ndl1020258" />、新株の未払込金徴収遅滞などにより資金調達の見込みが全く立たなかったことに加えて<ref name="meitetsu1961_p156" />、半田線は鉄道院武豊線と競合する路線であることから、沿線人口が多く収益が期待できる有松線を優先して建設すべきとする意見が社内で大勢を占めたことによるものであった<ref name="meitetsu1961_p156" />。しかし、同時期には不況による経営悪化が加速度的に進行し、新規借入金を以前の借入金返済に充当せざるを得なくなるなど[[自転車操業]]状態に陥り<ref name="meitetsu1961_p156" />、既に入手した軌条を有松線建設分のみを残して転売し資金を捻出することまで行われた<ref name="meitetsu1961_p156" />。結局、東陽町線は[[1915年]]（大正4年）6月に<ref name="meitetsu1961_p156" />、内海線は同年11月に<ref name="meitetsu1961_p156" />、半田線は同年12月にそれぞれ免許が失効し<ref name="meitetsu1961_p156" />、いずれも実現しなかった。

=== 経営再建と有松線の開通 ===
その後愛電は、[[地方鉄道補助法|軽便鉄道補助法]]に定められた「収益金が建設費の5 %に満たない場合は補助金を交付する」に基いて政府に補助金の給付を申請し<ref name="meitetsu1961_p156-157" />、鉄道院による審査を経て1914年（大正3年）下半期より補助金の交付が認められた<ref name="meitetsu1961_p156-157" />。

これにより下落する一方であった株価が急騰したことを受け<ref name="meitetsu1961_p156-157" />、愛電は当時約5,000株ほど存在した未払込株についてこの機会に払込を完了させるべく尽力した<ref name="meitetsu1961_p156-157" />。最終的に3,356株の失権株が発生したため<ref name="meitetsu1961_p156-157" />、これらは有松線建設を要望した鳴海町・有松町在住の有力者に引き受けを要請し受諾され、1915年（大正4年）9月に払込が完了した<ref name="meitetsu1961_p156-157" />。さらに発行済株式のうち3,000株について買入消却することとし、同年12月に10万円の借入金を資金として50円払込株を1株平均35円で買い入れ、15万円の減資を実施した<ref name="meitetsu1961_p156-157" />。

これらに加えて役員報酬全廃や社内余剰品の売却など経費削減に努め経営再建に尽力した結果<ref name="meitetsu1961_p158-159" />、[[第一次世界大戦]]勃発による景気の急速な回復の影響もあり、愛電の経営状態は危機を脱した<ref name="RP473_p68-69" />。また同時期には名古屋 - 豊橋間を結ぶ高速電気鉄道の建設を画策する尾三電気鉄道の活動が活発となったため<ref name="meitetsu1961_p158-159" />、同社への対抗の必要性から愛電は地元有力者であった[[有松・鳴海絞り|有松絞り]]業者の竹田嘉兵衛を取締役に迎えるとともに、長らく棚上げとなっていた有松線の着工を急ぐこととした<ref name="meitetsu1961_p158-159" />。

当初、有松線は小型の[[二軸車 (鉄道)|4輪単車]]が運行可能な程度の簡易な規格とする計画であったが<ref name="meitetsu1961_p158-159" />、将来的な岡崎・豊橋方面への路線延長を念頭に、より大型の[[ボギー台車|2軸ボギー車]]が運行可能な規格に設計を改め<ref name="meitetsu1961_p158-159" />、1915年（大正4年）11月に着工された<ref name="meitetsu1961_p158-159" />。有松線は元より地元住民から敷設を強く要望されていた路線であったため、用地買収は順調に進み<ref name="meitetsu1961_p158-159" />、[[1917年]]（大正6年）3月に神宮前 - 笠寺（現・[[本笠寺駅|本笠寺]]）間が<ref name="RP624_p103" />、同年5月には笠寺 - 有松裏（現・[[有松駅|有松]]）間が開通し、神宮前 - 有松裏間9.7 kmが全線開通した<ref name="RP624_p103" />。また有松線の開通を機に、神宮前 - 常滑間の路線名称を「常滑線」とした<ref name="meitetsu1961_p158-159" />。

1916年（大正5年）頃より、日本国内の経済界は[[大戦景気 (日本)|大戦景気]]と呼ばれる好景気となり<ref name="meitetsu1961_p160-161" />、愛電では同年夏季に[[新愛知|新愛知新聞社]]と提携して購読者を対象とした優待乗車券を発行し<ref name="meitetsu1961_p160-161" />、[[新舞子駅|新舞子]]・大野町など常滑線沿線の海水浴場への旅客誘致を図った<ref name="meitetsu1961_p160-161" />。同年夏季は好天にも恵まれ、8月の輸送実績は前年比で3倍強を記録する盛況となった<ref name="meitetsu1961_p160-161" />。また、同時期は貨物輸送についても需要が急増し、常滑の主要産業である土管・土器類の出荷量が過去最大となり<ref name="meitetsu1961_p160-161" />、荷主の需要に対して貨車が不足したため急遽貨車を15両増備して対応した<ref name="meitetsu1961_p160-161" />。これらの好材料により愛電の業績は著しく改善され、1917年（大正6年）上半期を最後に補助金交付を返上し、同年下半期には6 %の株主配当を行うに至った<ref name="meitetsu1961_p160-161" />。

なおこの間、1917年（大正6年）6月に開催された役員会において、福澤は他業の多忙を理由に社長を辞任して相談役に退く旨を表明、後任には当時常務取締役であった藍川を推薦した<ref name="Asahi20080731" />。藍川は岩田・福澤の2代にわたって社長を補佐して経営に携わり、その手腕は多くの信頼を得ていたことから<ref name="meitetsu1961_p160-161" />、全会一致で選任され愛電の3代目社長に就任した<ref name="Asahi20080731" />。

=== 多角経営化と常滑線の改良 ===
折からの好景気によって愛電の鉄道路線収入は増加の一途を辿ったが、元来鉄道事業は公益性が高く利潤を追い求める事業ではないことから<ref name="meitetsu1961_p162-163" />、愛電においては経営の多角化によって一層の増収を図る経営方針が定められた<ref name="meitetsu1961_p162-163" />。折りしも名古屋市内を中心に他社の[[乗合バス]]事業が好成績を上げており、また当時大都市近郊の大手私鉄事業者の一部が手がけた土地販売・住宅開発や遊園地の運営などについても、鉄道事業者が取り組むべき指針を示すものと位置付けられた<ref name="meitetsu1961_p162-163" />。

そのような情勢下で開催された[[1918年]]（大正7年）12月の定期株主総会においては、会社定款の営業目的に自動車事業を追加した<ref name="meitetsu1961_p162-163" />。さらに翌[[1919年]]（大正8年）12月の定期株主総会において、定款に土地住宅開発事業を追加するとともに<ref name="meitetsu1961_p162-163" />、常滑線の複線化・有松線の延伸・[[名鉄築港線|築港線]]の建設など鉄道関連事業資金および土地住宅経営資金を調達する目的で、資本金を185万円から500万円に増資することが決議された<ref name="meitetsu1961_p162-163" />。増資にあたっては、名古屋電燈が新規発行株のうち20,000株を引き受けて愛電の筆頭株主となり<ref name="meitetsu1961_p162-163" />、同社から副支配人の青木義雄{{refnest|group="人物"|豊橋電燈取締役、のち名古屋電燈取締役<ref name="ndl913388_p119" />。}}が送り込まれ、愛電の常務取締役に就任した<ref name="meitetsu1961_p162-163" />。

常滑線は開通以来年々輸送量が増加して線路容量が逼迫し、従来単線であった路線の複線化など設備の改良の必要性に迫られていた<ref name="meitetsu1961_p163-164" />。しかし、1919年（大正8年）10月には新舞子付近において列車同士の正面衝突事故が発生し<ref name="meitetsu1961_p163-164" />{{refnest|group="注釈"|この事故の当該車両は5号車と15号車とされ<ref name="RP248_p64-65" />、いずれも末尾5の車両であったことから、以降愛電および愛電の子会社が導入した電車の[[鉄道の車両番号|車両番号]]において末尾5は[[忌み数]]として一切用いられなくなった<ref name="RP248_p64-65" />。}}、事故原因が保安設備の不備に起因するものであったことから、保安設備改良を先行することとした<ref name="meitetsu1961_p163-164" />。改良工事に際しては、[[閉塞 (鉄道)#自動閉塞方式|自動閉塞方式]]による[[日本の鉄道信号#信号現示の種類と現示方式|二位色灯式信号機]]を常滑線全線に導入した<ref name="meitetsu1961_p163-164" />。

次いで複線化事業に着手したが、常滑線は建設当初より複線分の用地を確保していたため工事は順調に進み<ref name="meitetsu1961_p163-164" />、[[1920年]]（大正9年）10月の[[古見駅|古見]] - 大野町間の複線化完成を皮切りに順次工事が進捗した<ref name="meitetsu1961_p163-164" />。複線化工事に際しては軌条を従来の25 - 30 [[キログラム|kg]]軌条から37 kg軌条に交換し、重軌条化を推進した<ref name="meitetsu1961_p163-164" />。また複線化工事の進捗と並行して、輸送力増強のため[[1921年]]（大正10年）から翌[[1922年]]（大正11年）にかけて8両の電車を導入したが<ref name="meitetsu1961_p163-164" />、当時の同業他社における郊外路線用電車は2軸ボギー構造が主流となっていたことから、これら8両の電車は愛電初の2軸ボギー車として設計・製造された<ref name="meitetsu1961_p163-164" />。

一方、[[名古屋港]]東岸の[[埋立地]]開発を目的として敷設が計画された築港線は<ref name="meitetsu1961_p164" />、常滑線の[[大江駅]]より分岐して埋立六号地に至る1.9 kmの貨物支線として1920年（大正9年）6月に敷設免許を取得した<ref name="meitetsu1961_p164" />。愛電は当時空き地であった六号地に豊国セメント（現・[[三菱マテリアル]]）を始めとする工場を誘致することに成功し<ref name="meitetsu1961_p164" />、前愛電社長の福澤桃介が社長を務める名古屋桟橋倉庫より鉄道用地の提供を受けて[[1923年]]（大正12年）2月に着工<ref name="meitetsu1961_p164" />、翌[[1924年]]（大正13年）1月に大江 - 西六号（現・[[東名古屋港駅|東名古屋港]]）間が開通した<ref name="RP624_p103" />。築港線の1924年（大正13年）下半期における貨物輸送量は43,000 [[トン|t]]で同期の愛電の全貨物輸送量の約23 %にのぼり、売上高25,000円は鉄道事業収入全体の約17 %を占めた<ref name="meitetsu1961_p164" />。

=== 豊橋線の建設から開通まで ===
[[File:Aichi Electric Railroad Toyohashi Line map.svg|400px|thumb|right|豊橋線路線図]]
さらに愛電は、計画が頓挫した東海道電気鉄道より継承した[[地方鉄道法]]に基づく[[日本の許認可一覧|路線免許]]<ref name="meitetsu1961_p168" />を利用して、既存の有松線を延長する形で[[1921年]]（大正10年）5月より神宮前 - 吉田（現・[[豊橋駅|豊橋]]）間62.4 kmを結ぶ豊橋線の建設に着手した<ref name="Wakuda1981_p77-79" />。

==== 東海道電気鉄道の設立とその頓挫 ====
<!--{{See also|東海道電気鉄道}}-->
東海道電気鉄道は、前記尾三電気鉄道の後身であり、尾三電気鉄道当時に[[御器所村]]（現在の[[名古屋市]][[昭和区]]）から[[下地町 (愛知県)|下地町]]（現在の[[豊橋市]]下地町）までの免許を取得した後、前愛電社長の福澤桃介を創立委員長に迎えて会社を設立した<ref name="RP816_p159-160" />。同社は最終的には東京 - 大阪を結ぶ長大な高速電気鉄道線の建設構想を抱いており<ref name="RP816_p159-160" />、また福澤が愛電の筆頭株主である名古屋電燈の社長を兼務していたことや、福澤と藍川との人的関係から、構想実現の後には愛電は同社へ吸収合併されるとの観測がなされていたという<ref name="meitetsu1961_p167" />。

しかし、東海道電気鉄道における最大の資本提供者で、過去に[[日本電気鉄道]]（東京 - 大阪間電気鉄道敷設を計画）の計画も推し進めていた[[安田善次郎]]が1921年（大正10年）9月に暗殺されたことによって資金繰りが行き詰まり、同社の計画は頓挫した<ref name="RP816_p159-160" />。同社は愛電のほか、愛電と同じく名古屋電燈が筆頭株主となっていた[[美濃電気軌道]]に対して、救済合併の申し入れを行った<ref name="meitetsu1961_p167" />。この申し入れに対して、美濃電気軌道は受け入れを断ったものの、愛電は数度の交渉の後に承諾し<ref name="meitetsu1961_p167" />、1921年（大正10年）12月に合併仮契約が締結され、翌[[1922年]]（大正11年）7月8日付で愛電は東海道電気鉄道を吸収合併した<ref name="meitetsu1961_p167" />。この救済合併には、福澤と藍川の人的関係を背景として東海道電気鉄道の計画線免許承継による路線建設計画を続行する意図が愛電側にあったものと指摘される<ref name="RP816_p159-160" />。

以上の経緯によって、東海道電気鉄道の保有していた免許線は愛電によって保有されることとなり<ref name="meitetsu1961_p167" />、豊橋線はその敷設計画に基いて建設が決定したものである<ref name="meitetsu1961_p167-168" />。また前記合併を機に、愛電は資本金を15,152,500円（うち払込資本金4,575,000円）と大幅に増資し<ref name="meitetsu1961_p167-168" />、当時の東海地方において有数の大規模事業者となった<ref name="meitetsu1961_p167-168" />。

==== 豊橋線の概要 ====
豊橋線は、本格的な都市間高速電気鉄道を目指した東海道電気鉄道の計画を継承し<ref name="meitetsu1961_p166-167" />、愛知県の県都である名古屋市と、同県東部の主要都市である豊橋市を直線主体の線形で結び、全体として[[鉄道省]]の[[東海道本線]]と完全に競合する経路が選択された<ref name="RP816_p159-160" />。

神宮前から[[矢作川]]付近までは概ね東海道本線と並行するが、それ以東は矢作川を渡って[[岡崎市|岡崎]]の市街地へ到達し<ref name="meitetsu1961_p169" />、ここから豊橋まで[[本宿駅 (愛知県)|本宿]]・[[名電赤坂駅|赤坂]]・[[国府駅 (愛知県)|国府]]と内陸寄りの集落を結ぶ経路を採る<ref name="meitetsu1961_p171" />。このため若干経由地は異なるものの、直進して矢作川を渡らず川沿いに南下し、[[蒲郡駅|蒲郡]]から海岸沿いに豊橋に至る経路を選定した東海道本線と比較して、豊橋線はより忠実に[[東海道|旧東海道]]をトレースする経路を選定した<ref name="meitetsu1961_p168" />。そのため、東海道本線の敷設ルートから外れ、かねてより鉄道路線網の整備を切望した鳴海（[[鳴海宿]]）・知立（[[池鯉鮒宿]]）など旧宿場町を出自とする各自治体を中心として、豊橋線の建設は大いに歓迎を受けた<ref name="RP473_p74" /><ref name="meitetsu1961_p168" />。

各種設備については、400馬力級電動車による[[表定速度]]60 [[キロメートル毎時|km/h]]での高速運転を念頭に速達性を最重視した仕様とした<ref name="RP816_p153-154" />。線形は[[名電赤坂駅|愛電赤坂]] - 平井信号所間約8 kmを一直線とするなど全体的に直線的な線形とし<ref name="RP771_p182" />、勾配は[[知立駅|知立]]以東では最大16.7 [[パーミル|&permil;]]に設定した<ref name="RP771_p182" />{{refnest|group="注釈"|第二次世界大戦前の日本の郊外電気鉄道では、最急勾配は33 &permil;とするのが一般的で<ref name="ndl1169576_p129-130" />、蒸気機関車を使用する鉄道でも通常は25 &permil;から40 &permil;までと定められていた<ref name="ndl1169576_p129-130" />。}}。使用する軌条（レール）は[[ドイツ国|ドイツ]]より輸入した75ポンドレール（37 kg軌条相当<ref name="meitetsu1961_p173" />）を敷設<ref name="RP816_p153-154" />{{refnest|group="注釈"|アウグスト・ティッセン製鉄所において1924年11月に製造されたレールを使用した<ref name="RP816_p153-154" />。75ポンドレールは日本では1904年の日露戦争後、輸送量が増大したことに対応し、国鉄での採用が1906年に始まった<ref name="RHM40_p77" />。そのため、1914年（大正3年）の東京駅開業時<ref name="JIHO796_p29" />をはじめ、豊橋線建設の時点で国鉄の幹線系統においては普及が進んでいたが、そうした幹線系統においても側線などには60ポンド（30 kg）レール以下の軽い軌条を採用する例が少なくなかった<ref name="JIHO796_p29" />。1915年（大正4年）の時点では「普通の60封度、軌条」という記述が業界紙で使用されており<ref name="JIHO922_p34" />、豊橋線全通直前の1925年に鉄道省大臣官房研究所が編纂した分岐器の明細図では37 kgレールと30 kgレールに対応する図のみが掲載されていて、100ポンド（50 kg）レールの掲載はない<ref name="ndl932292_p1-18" />。}}、[[矢作橋駅|矢作橋]] - 東岡崎間については将来的な[[標準軌]]（1,435 mm軌間）への改軌を念頭に軌道中心間隔を3.9 mと大きく取り<ref name="RP771_p182" />{{refnest|group="注釈"|軌道中心間隔は1,067 mm軌間の地方鉄道では条件によらず3.35 m以上、国鉄でも停車場外で3.6 m以上と定められていた<ref name="ERH1962_p28" />。}}、信号機として三位色灯式自動信号機を導入するなど<ref name="RP624_p71" />、高速運転に適する、当時としては極めて高規格の路線として建設された<ref name="meitetsu1961_p174" />。

==== 建設開始から全線開通に至るまで ====
[[ファイル:Aichi Elc Rly Type DEN7 EMU No 3080.png|thumb|right|250px|豊橋線全線開通時に導入された電7形]]
豊橋線建設は東海道電気鉄道正式合併に先立つ1922年（大正11年）5月より開始された<ref name="meitetsu1961_p168-169" />。

経路上の碧海郡知立町においては[[名鉄三河線|三河鉄道]]の知立駅（現・[[三河知立駅]]）へ乗り入れる計画であったが<ref name="meitetsu1961_p168-169" />、同社との協議がまとまらなかったことから愛電は三河鉄道知立駅の共同使用を諦め<ref name="meitetsu1961_p168-169" />、三河鉄道の路線とは立体交差で接続して、交差部付近に愛電の新知立駅（後の[[東知立駅]]）を設置する形に計画を変更した<ref name="meitetsu1961_p168-169" />。この設計変更によって工事が遅れたため、新知立駅予定地西方に仮設の駅を設置して暫定開業することとし、[[1923年]]（大正12年）4月1日に有松裏 - 新知立（仮）間9.2 kmが開通した<ref name="RP624_p103" />。

その後、同年6月1日に新知立（仮） - 西岡崎（現・[[岡崎公園前駅|岡崎公園前]]）11.4 kmが開通し<ref name="RP624_p103" />、この時新知立駅を本来の予定地へ移転した。同年8月8日には西岡崎 - [[東岡崎駅|東岡崎]]間1.3 kmが開通<ref name="RP624_p103" />、この段階では路線名称を「岡崎線」とした<ref name="meitetsu1961_p168-169" />。

東岡崎以東に関しては、東海道電気鉄道により既に一部区間において測量が行われていた<ref name="meitetsu1961_p171-172" />。また、経路の途中に位置する[[宝飯郡]][[御油町]]より分岐して、宝飯郡[[牛久保町]]に至る路線（仮称「豊川線」）が新たに計画された<ref name="meitetsu1961_p171-172" />。これは日本三大稲荷の一つである[[豊川稲荷]]への参拝客需要を見込んだものであり、1923年（大正12年）8月23日付で敷設免許を取得した<ref name="RP624_p103" />。ただし、同路線の詳細な経路や、豊橋線においても終点となる吉田駅の場所選定などが不透明な状況であったことから<ref name="meitetsu1961_p171-172" />、経路の確定した東岡崎 - [[御油駅|御油]]間の建設を先行させることとし、[[1924年]]（大正13年）4月より建設に着手した<ref name="meitetsu1961_p171-172" />。

その後、吉田駅への乗り入れについては、[[豊川鉄道]]の[[小坂井駅]]付近において同社路線と接続し、線路を共用して吉田へ至ることを計画し、豊川鉄道と乗り入れ交渉を行った<ref name="meitetsu1961_p172" />。当初豊川鉄道側は難色を示したが<ref name="meitetsu1961_p172" />、愛電の豊川線（仮）が開通した後には、従来名古屋より省線を利用して豊橋（吉田）経由で豊川鉄道線に乗車した豊川稲荷参拝客の大半が、乗り換えなしで直行する愛電へ流出するとの予測に対して危機感を抱き、後に協調姿勢に転じた<ref name="meitetsu1961_p172" />{{refnest|group="注釈"|豊橋市を中心とする地域鉄道網・経済圏の形成を目指していた豊橋の政財界にとって、豊橋を迂回する愛電の豊川線計画は受け入れ難いものであった。結果、豊川鉄道の倉田藤四郎は愛電の豊川線計画を陽動だと気付いていながらも、線路供用案を協議せざるを得なくなった<ref name="meitetsu1994_p142" />。}}。協議の結果、愛電は御油 - 小坂井間を建設、小坂井より豊川鉄道の[[豊川駅|豊川]]まで直通運転を行うこととし<ref name="meitetsu1961_p172" />、また吉田駅の乗り入れについては、愛電の要望通り両社で線路を共用することが[[1925年]]（大正14年）4月に決定した<ref name="meitetsu1961_p172" />。

御油以東の経路が確定したことから建設は急ピッチで進められ<ref name="meitetsu1961_p172" />、中途経路決定が遅れたことによる用地買収の遅れなどもあったものの、[[1926年]]（大正15年）4月1日に東岡崎 - 小坂井間26.1 kmが開通した<ref name="RP624_p103" />。同日より神宮前 - 豊川間の直通列車が運行されたほか、小坂井駅における対面乗り換えによる豊橋方面への連絡運輸も行われた<ref name="meitetsu1961_p172" />{{refnest|group="注釈"|その後豊川線（仮）については、豊川鉄道との連絡運輸開始によって建設意義を失ったため1928年（昭和3年）5月に免許を返納した<!--井戸田IIIp.219には5月10日に「失効」とある。失効後に返納？--><ref name="meitetsu1961_p744" />。}}。

残る豊橋（吉田）方面への路線については、1926年（大正15年）5月24日に宝飯郡下地町より豊橋市に至る路線の敷設免許を取得<ref name="meitetsu1961_p173" />、[[国府駅|国府]] - 小坂井間に伊奈信号所（現・[[伊奈駅]]）{{refnest|group="注釈"|伊奈信号所（駅）の新設時期、また駅への昇格時期については諸説存在する。''詳細は[[伊奈駅#歴史]]を参照''}}を新設して分岐し、同じく新設する[[平井信号場|平井信号所]]にて豊川鉄道線と合流、従来の豊川鉄道線の北側に愛電による単線構造の新線を敷設して両社で共用し、複線運転を行うこととした<ref name="meitetsu1961_p173" />。

[[1927年]]（昭和2年）6月1日に伊奈信号所 - 吉田間5.0 kmが開通し、約5年の工期を経て豊橋線は神宮前 - 吉田間62.2 kmの全線が開通した<ref name="RP624_p103" />、総建設費は約1,600万円にのぼり、これは当時の資本額を超え、総資産額の約6割に相当する巨額であった<ref name="meitetsu1961_p174" />。

愛電は全線開通と同時に豊橋線のダイヤ改正を行い<ref name="meitetsu1961_p173" />、神宮前 - 吉田間に主要駅にのみ停車する急行列車を60分間隔で設定、うち1往復を東岡崎・伊奈の2駅にのみ停車する特急列車とし<ref name="meitetsu1961_p173" />、これらの優等列車には全線開通時に導入した新型車両[[愛知電気鉄道電7形電車|電7形]]を充当した<ref name="RP473_p172" />。特急は神宮前 - 吉田間を63分（表定速度59 km/h）、急行は同区間を72分（同52 km/h）で結び<ref name="meitetsu1961_p173" />、当時の東海道本線の普通列車が熱田 - 豊橋間に110分を要していたことと比較して大幅な所要時分短縮を実現した<ref name="meitetsu1961_p173" />。また、これら優等列車の表定速度は当時の私鉄路線において最速とされた阪神急行電鉄（現・[[阪急電鉄]]）[[阪急神戸線|神戸線]]の普通列車の51 km/hを上回り<ref name="meitetsu1961_p173" />、日本国内の私鉄路線において運行される列車では最速を記録した<ref name="meitetsu1961_p173" />。

=== 既存路線の改良 ===
[[ファイル:Aichi Elc Rly Type DEHA3300 EMU No 3303.png|thumb|right|250px|超特急「あさひ」に充当されたデハ3300形]]
愛電は岡崎線（豊橋線）の延伸工事と並行して、既開業区間・路線についても複線化および軌道強化による軸重上限の引き上げ<ref name="Wakuda1981_p77" /><ref name="RP816_p211" />、さらに従来直流600 Vであった[[架線]][[電圧]]の直流1,500 Vへの昇圧を順次実施した<ref name="RP473_p74" />。

岡崎線については、1925年（大正14年）6月に神宮前 - 東岡崎間の架線電圧を1,500 Vへ昇圧し、以降の開通区間については当初より架線電圧を1,500 V仕様とした<ref name="meitetsu1961_p171" />。複線化工事は、1924年（大正13年）4月に有松裏 - [[矢作橋駅|矢作橋]]間、同年10月には有松線として開業した区間に相当する[[鳴海駅|鳴海]] - 有松裏間が順次完成した<ref name="meitetsu1961_p170" />。この段階で、鳴海以東では矢作橋 - 東岡崎間のみ単線で残されたが、同区間についても1926年（大正15年）4月の東岡崎 - 小坂井間開通と同日に複線化工事が完成し<ref name="meitetsu1961_p748" />、鳴海 - 小坂井間は全線複線区間となった<ref name="meitetsu1961_p748" />。

その後、神宮前 - 鳴海間の単線区間についても段階的に複線化工事および急曲線区間の改良工事を実施した<ref name="meitetsu1961_p174" />。1927年（昭和2年）12月に鳴海 - [[東笠寺駅|東笠寺]]間、1930年（昭和5年）4月に[[呼続駅|呼続]] - 笠寺（現・[[本笠寺駅|本笠寺]]）、同年7月に[[堀田駅 (名鉄)|堀田]] - 呼続間の工事がそれぞれ完成し<ref name="meitetsu1961_p174" />、豊橋線は神宮前 - 堀田間・笠寺 - 東笠寺間の2区間を除いて全線複線化された<ref name="meitetsu1961_p174" />。

複線区間延伸および急曲線区間改良後の1930年（昭和5年）9月20日に実施されたダイヤ改正<ref name="RP473_p172" />においては、神宮前 - 吉田間の特急の所要時分は3分短縮されて60分となり、急行も同区間の所要時分が2分短縮されて70分となった<ref name="meitetsu1961_p180-181" />。さらに特急と同一の停車駅設定ながら、特急よりも3分速い57分（表定速度65.7 km/h）で神宮前 - 吉田間を結ぶ[[名鉄特急#超特急「あさひ」|超特急「あさひ」]]が新設された<ref name="RP473_p172" />。超特急「あさひ」には当時の愛電における最新型車両であった[[愛知電気鉄道デハ3300形電車|デハ3300形]]が充当され<ref name="RP473_p172" />、運行時には前頭部に朝日（[[日章|旭日]]）と波のイラストが入った長方形の大型ヘッドマークが掲出された<ref name="meitetsu1961_p180-181" />。

常滑線については、前述の通り1920年（大正9年）10月より段階的に複線化を推し進めてきたが<ref name="meitetsu1961_p163-164" />、1925年（大正14年）6月の[[柴田駅|柴田]] - 名和村（現・[[名和駅_(愛知県)|名和]]）間の複線化工事完成をもって、両端区間である神宮前 - 伝馬町間および大野町 - 常滑間を除く全区間が複線化された<ref name="meitetsu1961_p163-164" />。架線電圧の1,500 V昇圧は[[1929年]]（昭和4年）1月に実施され、愛電の幹線路線は架線電圧1,500 V仕様で統一された<ref name="meitetsu1961_p179" />。

=== 事業者合併および子会社設立による路線網拡大 ===
{{See also|碧海電気鉄道|知多鉄道|名鉄西尾線#歴史}}
[[File:Aichi Electric Railroad Nishio Line map.svg|300px|thumb|right|西尾線（西尾鉄道）路線図]]
愛電が豊橋線計画を推進した1922年（大正11年）当時、[[幡豆郡]][[西尾市|西尾町]]から[[碧海郡]][[明治村 (愛知県碧海郡)|明治村]]を経由し、豊橋線の経路の中途に位置する碧海郡[[矢作町]]までを結び、愛電の[[宇頭駅]]において接続する鉄道路線を敷設する計画が地元より持ち上がった<ref name="meitetsu1961_p313-314" />。愛電は地元有力者と折衝の末、資本金の5割を出資して資本参加することを決定<ref name="meitetsu1961_p313-314" />、その後起点を矢作町から碧海郡今村町（現在の[[安城市]]）の今村駅（現・[[新安城駅]]）へ変更し、1925年（大正14年）に'''碧海電気鉄道'''が設立された<ref name="RP624_p105" />。資本金は100万円、社長は愛電社長の藍川が兼務し、本社は愛電本社内に設置された<ref name="meitetsu1961_p313-314" />。

1926年（大正15年）7月に今村 - [[米津駅|米津]]間11.8 kmが開通し<ref name="RP624_p105" />、当初は架線電圧を愛電豊橋線と共通の直流1,500 Vとした。その後段階的に延伸工事が実施され、[[1928年]]（昭和3年）10月の碧電西尾口（仮） - [[西尾駅|西尾]]間3.4 kmの開通をもって全線開通した<ref name="RP624_p105" />。終点の西尾では後述する愛電西尾線（旧西尾鉄道線）と接続し<ref name="meitetsu1961_p313-314" />、西尾線[[吉良吉田駅|吉良吉田]]まで直通運転を行うため、全線の架線電圧を西尾線と共通の直流600 Vに降圧した<ref name="meitetsu1961_p313-314" />。

次いで愛電は、幡豆郡西尾町を拠点として吉良吉田・岡崎方面へ路線網を有した'''西尾鉄道'''を1926年（大正15年）12月1日付<ref name="RP624_p103-104" />で吸収合併した。

西尾鉄道は1910年（明治43年）2月に西三軌道として設立され<ref name="RP624_p103-104" />、1916年（大正5年）2月までに岡崎新 - 西尾 - 吉良吉田間22.6 kmおよび西尾 - [[港前駅|港前]]間4.0 km（愛電への継承後「[[名鉄西尾線|西尾線]]」と呼称）の各路線を順次開通させた事業者である<ref name="RP624_p103-104" />。全線とも軌間762 mm（[[狭軌#特殊狭軌|特殊狭軌]]）の非電化路線であり<ref name="RP473_p72" />、蒸気機関車牽引による客貨輸送を行った<ref name="RP473_p72" />。同社は1923年（大正12年）頃より電化による動力近代化を計画したが<ref name="RP473_p72" />、同時期には前述碧海電気鉄道の創業や、同社と同じく幡豆地方に路線を有する三河鉄道の電化計画などが持ち上がる一方<ref name="RP473_p72" />、同社路線は施設の老朽化対策などに追われて電化計画は停滞、路線の競争力低下による存続の危機が懸念される状況に陥った<ref name="RP473_p72" />。1926年（大正15年）に至り、西尾鉄道は愛電からの合併提案を受諾し合併が実現した<ref name="RP473_p72" />。

合併後、愛電は西尾線の電化および軌間拡幅工事に着手した<ref name="RP473_p72" />。電化工事に用いる変電機器一式は前述した岡崎線の架線電圧1,500 V昇圧に際して不要となった600 V対応機器を転用し<ref name="meitetsu1961_p178-179" />、また急曲線が存在した西尾駅付近の路線については新線への切り替えによる曲線改良工事を実施、西尾町の都市計画と協調し西尾駅を新線上へ移転した<ref name="meitetsu1961_p178-179" />。1928年（昭和3年）9月に西尾駅の移転と西尾 - 吉良吉田間・西尾 - 港前間の電化・路線改良が完成し<ref name="meitetsu1961_p178-179" />、同年10月の碧海電気鉄道線の西尾延伸開通に伴って相互直通運転が開始された<ref name="RP473_p72" />。残る西尾 - 岡崎新間については、各所に点在した急曲線の改良とともに、常滑線の架線電圧1,500 V昇圧に際して不要となった600 V対応機器を転用して電化工事が実施され<ref name="meitetsu1961_p178-179" />、1929年（昭和4年）4月に完成した<ref name="RP473_p72" />。

さらに、愛電が過去に資金的な問題から計画を断念した、常滑線より分岐して知多半島東岸地区へ至る路線<ref name="meitetsu1961_p155-156" />が、大正年間末期に地元有力者によって再度計画され<ref name="RP370_p149" />、1926年（大正15年）11月に常滑線[[太田川駅|太田川]]より半島東岸南部の河和に至る路線の敷設免許が交付された<ref name="RP624_p105" />。愛電は指導協力の要請を受諾する形で同社の資本金300万円のうち100万円を引き受けて資本参加し<ref name="meitetsu1961_p302-303" />、1927年（昭和2年）11月に'''知多鉄道'''が設立された<ref name="RP624_p105" />{{refnest|group="注釈"|同社は正式設立前の社名を「知多電気鉄道」と称していたが<ref name="RP473_p73" />、これは奇しくも愛電の正式設立前の社名と同一であった<ref name="RP473_p68-69" />。}}。社長は碧海電気鉄道と同じく愛電社長の藍川が兼務し<ref name="meitetsu1961_p302-303" />、本社も愛電本社内に設置された<ref name="ndl2957781" />。

愛電による技術・資金両面の援助を受けて建設工事は順調に進み<ref name="RP473_p73" />、[[1931年]]（昭和6年）4月に太田川 - [[成岩駅|成岩]]間15.8 kmが<ref name="RP624_p105" />、翌[[1932年]]（昭和7年）7月には成岩 - [[河和口駅|河和口]]間10.0 kmがそれぞれ開通した<ref name="RP624_p105" />。架線電圧は常滑線と共通の直流1,500 V仕様とし、開通当初より常滑線へ直通運転を行った<ref name="RP473_p73" />{{refnest|group="注釈"|その後同社は[[河和駅|河和]]までの延伸工事に着手したが、用地買収の遅れから建設が停滞<ref name="meitetsu1961_p302-303" />、愛電と名岐鉄道の合併と同日の1935年（昭和10年）8月1日に河和口 - 河和間3.0 kmが開通し全線開通に至った<ref name="RP624_p105" />。}}。

西尾鉄道の吸収合併により、愛電の資本金は17,091,050円（うち払込資本金12,647,300円）となり、保有路線の営業キロは約117 kmとなった<ref name="meitetsu1961_p178" />。さらに子会社かつ愛電が業務全般を代行した碧海電気鉄道<ref name="meitetsu1961_p313-314" />および知多鉄道<ref name="meitetsu1961_p302-303" />の両社路線を加えると総営業キロは150 kmを超え<ref name="RP624_p105" />、愛電は名岐鉄道とともに名古屋地区における二大電鉄会社と並び称された<ref name="meitetsu1961_p178" />。

また、愛電は東三河地方の有力者によって立案された、豊橋線と接続して豊橋 - 浜松間を結ぶ電気鉄道の敷設計画に賛同し<ref name="meitetsu1961_p176-177" />、1927年（昭和2年）9月の'''遠三鉄道'''設立に際しては発起人として参加した<ref name="meitetsu1961_p176-177" />。遠三鉄道は豊橋市より浜松市郊外の[[引佐郡]][[気賀町]]に至る路線の敷設免許を取得<ref name="RP624_p104" />、気賀駅（後の[[気賀口駅]]）において浜松鉄道線（後の[[遠州鉄道奥山線]]）と接続して浜松市と結ぶこととし<ref name="meitetsu1961_p176-177" />、また愛電は1928年（昭和3年）8月に遠三鉄道の路線を延長する形で気賀より静岡に至る路線の敷設免許を申請した<ref name="meitetsu1961_p176-177" />。しかし愛電の免許申請は却下され、遠三鉄道線も同時期の経済不況の影響によって着工までに至らず、遠三鉄道は1930年（昭和5年）10月30日付で解散した<ref name="RP624_p104" />。同社が保有した敷設免許は解散に際して愛電へ譲渡されたが<ref name="RP624_p104" />、着工されることはなかった<ref name="meitetsu1961_p176-177" />。

上記以外の未成線については[[#未成線]]を参照。

=== 名古屋市中心部への路線延伸計画 ===
{{See also|名古屋地下鉄道}}
1927年（昭和2年）4月に[[名古屋市電]][[名古屋市電東郊線|東郊線]]が堀田まで開通した<ref name="meitetsu1961_p168" />。これを受けて、愛電は翌1928年（昭和4年）4月に豊橋線沿線から市電東郊線との連絡運輸による名古屋市東部への最短ルートの中継駅として堀田駅を開業、当時の最優等列車種別であった特急を含む全列車を停車させた<ref name="meitetsu1961_p168" />。

さらに愛電は自社路線によって名古屋市中心部へ直接乗り入れることを計画、1927年（昭和2年）2月に名古屋市南区熱田から同南区金山に至る路線の敷設免許が交付され<ref name="RP624_p103" />、さらに金山から中区西菅原町(現在の[[丸の内 (名古屋市)|丸の内]]）に至る地下鉄道の敷設免許を申請した<ref name="meitetsu1961_p180" />。この愛電による申請ルートは、旧・名古屋鉄道（後の名岐鉄道）が「名古屋地下鉄道」名義で1926年（大正15年）10月に免許申請した名古屋 - 熱田間の地下鉄道のルートと一部競合し、異なる事業者による2路線が競願する形となった<ref name="meitetsu1961_p114-115" />。

ただしこれらの申請は、愛電および旧・名古屋鉄道（名古屋地下鉄道）とも事業内容に対して資本面が脆弱であったことから却下される可能性が高いと見られていた<ref name="meitetsu1961_p114-115" />。また、愛電と旧・名古屋鉄道という名古屋地区を代表する二大郊外路線を相互連絡し、名古屋市東西方面を直通する路線とすることが利用者の利便性向上に繋がり、ひいては両社にとって将来の発展性の観点から極めて得策であるとの結論から<ref name="meitetsu1961_p114-115" />、愛電と旧・名古屋鉄道の両社は共同出資で'''名古屋地下鉄道'''（資本金1,500万円）を設立し、同社によって地下鉄道を建設する計画を策定した<ref name="meitetsu1961_p114-115" />。

名古屋地下鉄道の路線は名古屋 - 熱田間 7.2 km、全区間を道路直下の地下に建設し、中途に伏見町・栄町・上前津・別院前<!--百年史では東別院前-->・沢上の5駅を設置することとした<ref name="meitetsu1961_p114-115" />。また旧・名古屋鉄道は起点駅を従来の[[柳橋駅 (愛知県)|柳橋]]から名古屋へ移転し、枇杷島橋付近から地下新線へ切り替えること<ref name="meitetsu1961_p114-115" />、愛電は熱田 - 金山間の敷設免許申請を取り下げることなどが両社間で取り決められた<ref name="meitetsu1961_p115-116" />。名古屋地下鉄道の発起人総代には愛電社長の藍川、旧・名古屋鉄道の代表取締役社長職にあった富田重助{{refnest|group="人物"|[[諱]]は重慶<ref name="kotobank_tomitashigesuke" />。明治銀行[[頭取]]<ref name="kotobank_tomitashigesuke" />。1908年（明治41年）より名古屋電気鉄道取締役社長<ref name="kotobank_tomitashigesuke" />、旧・名古屋鉄道発足時に同社初代社長就任<ref name="meitetsu1961_p103" />。}}の両名が就き、その他両社の重役が全員発起人として参加した<ref name="meitetsu1961_p115-116" />。

同計画は道路を管轄する名古屋市当局による意見提起を経て、1929年（昭和4年）1月21日に正式に関係省庁へ提出された<ref name="meitetsu1961_p115-116" />。しかし、同時期に発生した[[昭和恐慌]]に端を発する経済情勢悪化によって資金調達が難航し、実現には至らなかった<ref name="meitetsu1961_p115-116" />{{refnest|group="注釈"|神宮前から名古屋市中心部への路線延長は、愛電が名岐鉄道と合併した後の[[1944年]]（昭和19年）に東西連絡線の開通によって実現したが<ref name="RP771_p15" />、当時は愛電由来の各路線の架線電圧が1,500 Vであったのに対して、名岐鉄道由来の各路線の架線電圧は600 Vと異なっていたことから<ref name="RP771_p15" />、運行系統は金山橋（現・[[金山駅 (愛知県)|金山]]）を境界駅として東西に分断されていた<ref name="RP771_p15" />。金山橋以東から名古屋方面への直通運転は、[[太平洋戦争]]終戦後の[[1948年]]（昭和23年）5月に、名岐鉄道由来の幹線路線区間の架線電圧昇圧工事が完成したことによってようやく実現することとなった<ref name="RP771_p15" />。}}。なお、計画申請は1931年（昭和6年）6月20日に却下されている<ref name="IDOTA2_p255" />。

=== 三河鉄道との合併計画 ===
西三河地方において多くの路線網を有し、愛電と競争関係にあった三河鉄道は<ref name="RP473_p72-73" />、1927年（昭和2年）8月の新三河鉄道の設立に際して資本参加し<ref name="RP473_p72-73" />、同社の保有した[[西加茂郡]]挙母町（現・[[豊田市]]）から名古屋市の東大曽根町（千種）に至る鉄道路線の敷設免許<ref name="RP624_p104-105" />を事実上手中に収めた<ref name="RP473_p72-73" />。また同年4月には岡崎市内において路線網を有した岡崎電気軌道を吸収合併し<ref name="RP624_p104-105" />、岡崎 - 挙母 - 千種間を結び西三河地方と名古屋を直結する路線の敷設を構想した<ref name="RP473_p72-73" />。

しかし、愛電が西尾鉄道の吸収合併および碧海電気鉄道の設立により幡豆地区に路線網を展開したことより、同地区においても事実上愛電と競争関係を持つこととなった三河鉄道の保有路線の営業成績は大きく影響を受けた<ref name="meitetsu1961_p183" />。さらに同時期の経済不況の影響も加わって新三河鉄道の建設計画は凍結され<ref name="RP473_p72-73" />、三河鉄道は業績好転が困難な状況に陥りつつあった<ref name="RP473_p72-73" />。

この情勢下、愛電と三河鉄道は従来の対立関係を改めて協調関係を築くこととし<ref name="meitetsu1961_p183" />、1928年（昭和3年）6月に愛電豊橋線の新知立 - [[牛田駅 (愛知県)|牛田]]間に[[知立信号所|分岐点]]（後の知立信号所）を新設、分岐点より三河鉄道線の知立駅に至る連絡線を開通させて<ref name="SHIN2008-7_p45" />貨物列車の相互直通運転を開始した<ref name="meitetsu1961_p183" />。その後、愛電豊橋線の[[一ツ木駅|一ツ木]]から三河鉄道線の[[重原駅|重原]]に至る連絡線など複数の連絡線の建設が計画されたが<ref name="meitetsu1961_p183" />、同時期には協調関係からさらに踏み込んで両社の合併案が浮上、管轄省庁である鉄道省からも合併を推奨された<ref name="meitetsu1961_p183" />。

合併には愛電・三河鉄道双方とも積極的であり<ref name="meitetsu1961_p183" /><ref name="meitetsu1961_p298" />、愛電の大株主であった[[東邦電力]]（名古屋電燈の後身）の神谷啓三の斡旋を受け、1930年（昭和5年）4月22日に開催された愛電の臨時株主総会において合併が可決され<ref name="meitetsu1961_p754" />、同月両社間にて合併に関する仮契約を締結した<ref name="meitetsu1961_p183" />。この合併申請は1930年（昭和5年）7月に認可されたが<ref name="meitetsu1961_p183" />、合併に関する事務手続き中途にて発覚した三河鉄道の保有資産<!--負債？-->に関する解釈を巡って両社の関係は急速に悪化し<ref name="meitetsu1961_p298" />、合併手続きは中断された<ref name="meitetsu1961_p298" />。その後、同年9月に愛電側より合併拒否を通告<ref name="meitetsu1961_p298" />、翌[[1931年]]（昭和6年）6月24日に開催された愛電の定期株主総会において合併解消が可決されたことにより<ref name="meitetsu1961_p754" />、合併案は消滅した<ref name="RP473_p72-73" />。

交渉決裂後の両社の対立は以前にも増して先鋭化したと伝わるが<ref name="meitetsu1961_p183-184" />、後年の交通統合によって三河鉄道は[[1941年]]（昭和16年）6月に愛電の後身である名古屋鉄道へ吸収合併された<ref name="RP624_p104-105" />。

=== 二度目の経営危機 ===
1929年（昭和4年）に発生した[[世界恐慌]]の影響により<ref name="meitetsu1961_p184" />、日本国内においても国家主導で消費節約が進められ、さらに同年秋の大豊作に起因して米価が暴落するなど悪条件が重なり、昭和恐慌と呼ばれる経済不況に突入した<ref name="meitetsu1961_p184" />。

豊橋線の建設や子会社設立など積極的に設備投資を行った愛電は、営業成績も大正年間末期まで好調であったが、昭和初期には再び停滞に転じた<ref name="meitetsu1961_p184" />。さらに昭和恐慌の影響によって1929年（昭和4年）をピークに業績が急激に悪化し、1931年（昭和6年）度には営業収入がピーク比で約25 %減少<ref name="meitetsu1961_p184" />、また積極的な財政支出が災いして借入金の利子支払いが大きな負担となりつつあった<ref name="meitetsu1961_p184" />。同時に最盛期は年7 %であった[[配当|株主配当]]も年々減少し、[[1932年]]（昭和7年）下半期においては5 %に低下した<ref name="meitetsu1961_p184" />。

この情勢下において、愛電は名岐鉄道（1930年9月に旧・名古屋鉄道より改称、以下「名岐」と記す）や乗合バス各社と提携し旅客誘致に努め、また車内で[[ビール]]を提供するイベント列車「ビール列車」を常滑線神宮前 - 大野町間において運行するなど利用者増加に尽力した<ref name="meitetsu1961_p184" />。しかし、これらの政策も業績を立て直すには至らず、1931年（昭和6年）6月より従業員の給与削減を実施し<ref name="meitetsu1961_p184" />、さらに翌1932年（昭和7年）11月には従業員の解雇による人員整理を断行するなど、経営は危機的状況に陥った<ref name="meitetsu1961_p184" />。

昭和恐慌は[[1933年]]（昭和8年）頃に終息し、日本国内の景気回復とともに愛電の営業成績も好転<ref name="meitetsu1961_p185" />、同年4月をもって給与削減は撤回され、危機的状況を脱した<ref name="meitetsu1961_p185" />。

=== 名岐鉄道との合併・名古屋鉄道成立 ===
前述した旧・名古屋鉄道との[[合弁事業]]による名古屋市内への地下鉄道による路線延伸が構想された当時、両社の合併案が浮上した<ref name="meitetsu1961_p188" />。愛電社長の藍川、旧・名古屋鉄道社長の富田重助とも、地下鉄道開通後の両社の合併の可能性を否定しなかったが、地下鉄道計画が実現しなかったことにより合併案も自然消滅した<ref name="meitetsu1961_p188" />。さらに、[[1932年]]（昭和7年）頃には、愛電・名岐・[[名鉄瀬戸線|瀬戸電気鉄道]]・[[伊勢電気鉄道]]の4社を対象とした名古屋圏を中心とする事業者統合案が浮上<ref name="meitetsu1961_p188" />、当時名古屋市商工会議所副会頭を務めた青木鎌太郎{{refnest|group="人物"|航空機部品および精密兵器の製造メーカーである愛知時計電機社長、[[1936年]]（昭和11年）より名古屋市商工会議所会頭<ref name="ndl1054267_p24" />。}}による斡旋が行われたものの、こちらも構想段階に留まった<ref name="meitetsu1961_p188" />。

その後、当時の[[鉄道大臣]]であった[[三土忠造]]によって[[1933年]]（昭和8年）9月に設立された「内閣交通審議会」における審議により<ref name="meitetsu1961_p187" />、細分化した地域交通事業者の統合による企業体力強化ならびに交通統制が国策として推進されることとなった<ref name="RP473_p74-75" />。それを受けて、鉄道同志会（現・[[日本民営鉄道協会]]）は地域別の交通事業者の統合に関する特別委員会を開催し<ref name="meitetsu1961_p189" />、愛知・岐阜地方の交通統制については愛電と名岐が担当委員として調査を行った<ref name="meitetsu1961_p189" />。その結果、愛電・名岐の2社を統合し愛知・岐阜地方（中京圏）における基幹事業者とすることが適当であるとの結論に至った<ref name="meitetsu1961_p189" />。

{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:80%; margin:1em 0em 2em 2em; float:right;"
|-
! style="background-color:#ccc;"|&nbsp;
! style="width: 10em;"| 愛知電気鉄道
! style="width: 10em;"| 名岐鉄道
|-
! 公称資本金<br />（払込額）
| 17,091,050円<br />（14,869,175円）
| 19,001,000円<br />（14,874,000円）
|-
! 社債発行額
| 14,500,000円
| 12,000,000円
|-
! 借入金
| 2,260,000円
| 0円
|-
! 総資産額
| 36,119,636円
| 32,960,371円
|-
! 鉄軌道収入
| 1,580,374円
| 1,465,404円
|-
! 総収入
| 1,629,052円
| 1,681,306円
|-
! 利益金
| 427,795円
| 419,912円
|-
! 配当率
| colspan="2"| 5 %
|-
! 従業員
| 723名
| 1,570名
|-
! 営業キロ
| 122.2 km
| 211.8 km
|-
! 保有車両数
| 353両
| 401両
|-
|}

愛電・名岐両社の1934年（昭和9年）下半期における資産および収益内容は右表の通りである<ref name="meitetsu1961_p190-192" />。このように、愛電が豊橋線建設などによる多額の[[債務]]を抱えていたのに対して、名岐は[[無借金経営]]を行っていた点を除くと、両社は経営規模・財務内容ともほぼ同等であり<ref name="meitetsu1961_p190-192" /><ref name="RP473_p74-75" />、統合に際しては様々な困難が伴うものと予想された<ref name="meitetsu1961_p189" />。また名岐側は当時社長職にあった[[跡田直一]]が病気療養中であったという事情もあり、両社とも合併を積極的に推進する意図はなかったとされる<ref name="meitetsu1961_p189" />。一方で、かねてから両社の統合を希望した名古屋財界を中心として合併を推進する動きが外部より強まり<ref name="RP473_p74-75" />、愛電・名岐とも国策として推進された事業者統合の時流に抗うことは困難と判断するに至った<ref name="meitetsu1961_p189" />。青木や当時の名古屋市長であった[[大岩勇夫]]らの斡旋を受け<ref name="meitetsu1961_p189-190" />、愛電側は藍川が、名岐側は跡田の代理人として取締役の神野金之助{{refnest|group="人物"|諱は金重郎<ref name="RP473_p88" />。紅葉屋財閥の指導者で<ref name="ndl1054267_p38" />、名古屋財界において主流派とされる「九日会」に属す<ref name="RP473_p88" /><ref name="ndl1054267_p38" />。1923年（大正12年）より旧・名古屋鉄道監査役<ref name="RP473_p88" />、のち名岐鉄道取締役・現名古屋鉄道副社長を歴任し<ref name="RP473_p88" />、[[1945年]]（昭和20年）現・名古屋鉄道の2代目取締役社長就任<ref name="RP473_p88" />。}}がそれぞれ代表となり<ref name="meitetsu1961_p189-190" />、1934年（昭和9年）10月頃より合併に関する内交渉が開始された<ref name="meitetsu1961_p189-190" />。

翌1935年（昭和10年）1月に大岩による正式な合併勧告を受け<ref name="meitetsu1961_p193" />、愛電は同月21日に開催された重役会において、合併に合意し全てを藍川に一任することを決議した<ref name="meitetsu1961_p193" />。また名岐においても、病床にあった跡田より「合併やむなし」との同意を得て<ref name="meitetsu1961_p193" />{{refnest|group="注釈"|跡田は同時に''「堅実経営を旨とした名岐は、内容において愛電に大きく勝る。合併にあたっては名岐の優位性を主張し合併諸条件について有利に取り運ぶよう」''指示したと伝えられる<ref name="meitetsu1961_p193" />。}}、同月23日に開催された重役会において合併に合意する旨決議された<ref name="meitetsu1961_p193" />。これを受けて、同月30日より名古屋商工会議所において合併裁定案の作成会議が数回にわたって開催され<ref name="meitetsu1961_p193-194" />、青木・大岩のほか、愛知県知事の[[篠原英太郎]]、鉄道省名古屋鉄道管理局長の須田博{{refnest|group="人物"|鉄道省在[[ロンドン]]事務官<ref name="ndl971883" />・名古屋鉄道管理局長などを歴任<ref name="meitetsu1961_p193-194" />、1936年（昭和11年）11月より現・名古屋鉄道専務取締役<ref name="meitetsu1961_p208" />。後年同じく国鉄名古屋鉄道管理局長を務め、[[東海旅客鉄道]]（JR東海）の初代社長となった[[須田寛]]とは同音異字の別人である。}}、名古屋市商工会議所会頭の岡谷惣助{{refnest|group="人物"|岡谷合資創設者、1936年（昭和11年）まで名古屋商工会議所会頭<ref name="ndl1054267_p24" /><ref name="kotobank_okayasousuke2" />。}}の計5名が仲介人として同会議に出席した<ref name="meitetsu1961_p193-194" />。会議においては合併後の社長を愛電・名岐のどちらから選出するかが焦点となり<ref name="meitetsu1961_p193-194" />、特に名岐側は「自社が愛電を合併する」という立場を崩さず、跡田を社長とすることを強く求めた<ref name="meitetsu1961_p193-194" />。そのため当初は、跡田を取締役会長とし、社長には藍川が就任する折衷案が検討されたが<ref name="meitetsu1961_p193-194" />、最終的には藍川が跡田を社長に推して自らは副社長に就任する旨を表明し、解決した<ref name="meitetsu1961_p193-194" />。

1935年（昭和10年）2月14日に両社へ裁定書が下付され、翌15日に愛電・名岐とも裁定に応諾することを重役会にて決議<ref name="meitetsu1961_p196" />、同日午後に愛電側から藍川以下重役5名<ref name="meitetsu1961_p196" />、名岐側から常務取締役の山田芳市以下重役4名<ref name="meitetsu1961_p196" />が商工会議所に出向き、仲介人へ承諾書を提出した<ref name="meitetsu1961_p196" />。両者の直接折衝の末、存続会社を名岐として愛電は解散すること<ref name="meitetsu1961_p196-197" />、[[合併 (企業)#合併比率|合併比率]]は1対1の[[対等合併]]とすること<ref name="meitetsu1961_p196-197" />、新会社の役員数は愛電・名岐出身者の双方同数とすること<ref name="meitetsu1961_p196-197" />、愛電の保有資産は全て名岐へ継承されること<ref name="meitetsu1961_p196-197" />、愛電従業員は待遇・報酬とも愛電在籍当時の条件を維持し勤続年数も愛電当時からの通算扱いとすること<ref name="meitetsu1961_p196-197" />などについて正式に合意し、同日に合併仮契約を締結した<ref name="meitetsu1961_p196" />。合併後の社名については、愛電側が「日本中部鉄道」「中部日本鉄道」「中部鉄道」を主張したのに対して<ref name="meitetsu1961_p199" />、名岐側は「名岐鉄道」ないし同社の旧社名である「名古屋鉄道」を主張して平行線を辿ったが<ref name="meitetsu1961_p199" />、同年5月5日に藍川・神野両代表者の折衝により合併後の社名を「名古屋鉄道株式会社」とすることを正式決定した<ref name="meitetsu1961_p199" />。

[[File:Nagoya Railroad Linemap 1935.svg|280px|thumb|right|発足当時の名古屋鉄道路線図]]
管轄省庁へ提出した合併申請は1935年（昭和10年）7月25日付で認可され<ref name="meitetsu1961_p201" />、同年8月1日をもって両社は合併し、愛知電気鉄道株式会社は解散した<ref name="meitetsu1961_p201" />。同時に名岐は社名を'''名古屋鉄道'''（名鉄）と改め、資本金36,291,050円（うち払込資本金29,843,175円）・営業キロ360.6 km・従業員約2,400名を擁する大事業者として発足した<ref name="meitetsu1961_p201" />。なお、合併後の社長に内定していた跡田が同年7月17日に死去したため<ref name="meitetsu1961_p200" />、合併当日に開催された役員会においては藍川が名古屋鉄道の初代社長に選任された<ref name="meitetsu1961_p201" />。

[[ファイル:Meitetsu 3401F sukaguchi.jpg|thumb|left|180px|東部線へ導入された3400系]]
合併後、愛電が保有した常滑線・豊橋線・西尾線など各路線は「東部線」と総称された<ref name="RP771_p14-15" />。東部線は名岐由来の「西部線」<ref name="RP771_p14-15" />と比較して直線区間が多く<ref name="RP473_p89" />、使用する軌条は37 kgの重軌条（西部線は主に30 kg軌条を使用）と高規格で敷設されており<ref name="meitetsu1961_p190-192" /><ref name="RP473_p74-75" />、高速鉄道路線としての設備条件を充足し運転・保守の両面で相対的に優れていた<ref name="RP473_p74-75" /><ref name="RP473_p89" />。その技術水準の高さは後年の名鉄社内においても高く評価されたという<ref name="RP473_p89" />。

また合併当初は、列車の運行および車両の管理については愛電由来の東部線と名岐由来の西部線で管轄部署が分かれており<ref name="RP792_p108-109" />、[[1937年]]（昭和12年）に名鉄成立後における初めての新型車両として東部線・西部線にそれぞれ導入された[[流線形車両]]2形式のうち、東部線用の[[名鉄3400系電車|3400系]]は愛電出身の開発陣によって設計された<ref name="RP792_p108-109" />{{refnest|group="注釈"|同時期に西部線向けに導入された[[名鉄850系電車|850系]]については、名岐出身の開発陣によって設計された<ref name="RP792_p108-109" />。こちらは完全新規設計された東部線3400系とは異なり、名岐当時に導入された従来車[[名岐鉄道デボ800形電車|デボ800形]]の設計を踏襲し、前頭部を流線形状に設計変更した車両であった<ref name="RP792_p108-109" />。}}。同形式は「愛電と名岐両社の車両設計の集大成」と評され<ref name="RP771_p14-15" />、流線形状の前頭部と車体下部全周にわたって設置されたスカートを特徴とする<ref name="RF387_p86" />、優美な外観と高い走行性能を兼ね備えた[[優等列車]]用電車であった<ref name="RP771_p14-15" />。

=== 年表 ===
* [[1906年]]（明治39年）12月4日 - 藍川清成ら7名の発起人により、私設鉄道法に基く熱田町 - 大高 - 常滑間の電気鉄道「知多電気鉄道」免許申請<ref name="meitetsu1961_p724" />
* [[1909年]]（明治42年）9月23日 - 計画を軌道条例に基く軌道線へ変更、岩田作兵衛ら23名の発起人により「知多電車軌道」特許出願<ref name="meitetsu1961_p728" />
* [[1910年]]（明治43年）
** 8月3日 - 準拠法改正に伴い、軌道条例による特許出願を軽便鉄道法による免許申請へ変更<ref name="meitetsu1961_p728" />
** 9月23日 - 熱田町新宮坂より常滑町へ至る鉄道路線の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
** 11月21日 - 会社創立総会開催、資本金100万円、社名を'''愛知電気鉄道'''とする<ref name="RP473_p79-80" />
* [[1912年]]（明治45年 / 大正元年）
** 2月18日 - 伝馬町 - 大野町間23.3 km開通<ref name="RP473_p79-80" />
** 8月1日 - 秋葉前 - 伝馬町間0.4 km開通<ref name="RP473_p79-80" />
** 8月20日 - 知多郡常滑町より知多郡内海町へ至る鉄道路線（内海線）の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
** 12月20日 - 知多郡[[横須賀町_(愛知県)|横須賀町]]より知多郡半田町へ至る鉄道路線（半田線）の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
* [[1913年]]（大正2年）
** 2月18日 - 名古屋市南区熱田東町より名古屋市中区東陽町へ至る鉄道路線（東陽町線）、および名古屋市南区熱田東町より知多郡有松町へ至る鉄道路線（有松線）の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
** 3月29日 - 大野町 - 常滑間5.2 km開通<ref name="RP473_p79-80" />
** 5月2日 - 資本金を200万円に増資<ref name="meitetsu1961_p732" />
** 8月31日 - 神宮前 - 秋葉前間0.6 km開通をもって神宮前 - 常滑間29.5 km全通<ref name="RP473_p79-80" />
** 9月23日 - 神宮前 - 国鉄熱田駅間の貨物連絡線完成、10月25日より直通輸送開始<ref name="meitetsu1961_p732" />
* [[1914年]]（大正3年）
** 8月15日 - 初代社長岩田作兵衛辞任<ref name="meitetsu1961_p734" />
** 8月19日 - 2代目社長に福澤桃介就任<ref name="meitetsu1961_p734" />
* [[1915年]]（大正4年）
** 2月1日 - 軽便鉄道補助金交付が許可、株価急騰<ref name="meitetsu1961_p734" />
** 6月17日 - 名古屋市南区熱田東町より名古屋市中区東陽町へ至る鉄道路線（東陽町線）免許失効<ref name="meitetsu1961_p732" />
** 11月22日 - 知多郡常滑町より知多郡内海町へ至る鉄道路線（内海線）免許失効<ref name="meitetsu1961_p730" />
** 12月 - 知多郡横須賀町より知多郡半田町へ至る鉄道路線（半田線）免許失効<ref name="meitetsu1961_p730" />
** 12月28日 - 株式買入消却により資本金を185万円へ減資<ref name="meitetsu1961_p734" />
* [[1917年]]（大正6年）
** 3月19日 - 有松線神宮前 - 笠寺（現・本笠寺）間4.1 km開通<ref name="RP473_p79-80" />、同時に神宮前 - 常滑間の路線呼称を「常滑線」とする<ref name="meitetsu1961_p158-159" />
** 5月8日 - 有松線笠寺 - 有松裏（現・有松）間5.5 km開通をもって神宮前 - 有松裏間9.6 km全通<ref name="RP473_p79-80" />
** 6月4日 - 2代目社長福澤桃介辞任、相談役となり、3代目社長に藍川清成就任<ref name="meitetsu1961_p736" />
* [[1919年]]（大正8年）
** 6月10日 - 愛知郡鳴海町より碧海郡知立町へ至る鉄道路線（岡崎線）の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
** 6月20日 - 定時株主総会において軽便鉄道補助金交付辞退を承認<ref name="meitetsu1961_p738" />
** 10月11日 - 常滑線日永 - 新舞子間にて列車同士の正面衝突事故発生<ref name="meitetsu1961_p738" />
* [[1920年]]（大正9年）
** 6月8日 - 愛知郡笠寺村より名古屋市南区東築地に至る鉄道路線（築港線）の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
** 8月11日 - 碧海郡知立町より同郡矢作町へ至る鉄道路線（岡崎線）の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
** 10月1日 - 資本金を500万円に増資、名古屋電燈が筆頭株主となる<ref name="meitetsu1961_p162-163" />
* [[1922年]]（大正11年）7月8日 - 東海道電気鉄道および新舞子土地開発の2社を吸収合併、資本金15,162,500円となる<ref name="meitetsu1961_p742" />
* [[1923年]]（大正12年）
** 4月1日 - 岡崎線（旧有松線）有松裏 - 新知立仮駅間9.3 km開通<ref name="RP473_p79-80" />
** 6月1日 - 岡崎線新知立仮駅 - 西岡崎（現・岡崎公園前）間12.5 km開通<ref name="RP473_p79-80" />、新知立を正規の位置に移転し仮駅廃止<ref name="meitetsu1961_p744" />
** 8月4日 - 岡崎線西岡崎 - 東岡崎間1.1 km開通をもって神宮前 - 東岡崎間32.5 km全通<ref name="RP473_p79-80" />
** 8月29日 - 宝飯郡国府町より同郡牛久保町へ至る鉄道路線（豊川線）の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
* [[1924年]]（大正13年）1月15日 - 築港線大江 - 西六号（現・東名古屋港）間2.2km全通<ref name="RP473_p79-80" />
* [[1925年]]（大正14年）6月15日 - 岡崎線神宮前 - 東岡崎間の架線電圧を直流600 Vから同1,500 Vへ昇圧<ref name="meitetsu1961_p746" />
* [[1926年]]（大正15年 / 昭和元年）
** 4月1日 - 豊橋線（旧岡崎線）東岡崎 - 小坂井間26.0 km開通<ref name="RP473_p79-80" />、同日より豊川鉄道への乗り入れ運転および連絡運輸開始<ref name="meitetsu1961_p746" />
** 5月24日 - 宝飯郡下地町より豊橋市へ至る鉄道路線（豊橋線延伸）の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
** 6月1日 - 鳴海土地を吸収合併、資本金15,662,500円となる<ref name="meitetsu1961_p748" />
** 12月1日 - 西尾鉄道を吸収合併、資本金17,091,050円、総営業キロ116.9 kmとなる<ref name="meitetsu1961_p748" />
* [[1927年]]（昭和2年）
** 2月24日 - 名古屋市南区熱田東町から同区金山へ至る鉄道路線の免許取得<ref name="RP473_p79-80" />
** 6月1日 - 豊橋線伊奈信号所 - 吉田（現・豊橋）間 5.0km開通をもって神宮前 - 吉田間62.4 km全通<ref name="RP473_p79-80" />、同日より特急・急行列車の運転開始、総営業キロ121.9 kmとなる<ref name="meitetsu1961_p750" />
** 10月17日 - 直営の愛電球場（後の[[鳴海球場]]）開場<ref name="meitetsu1961_p750" />
* [[1928年]]（昭和3年）
** 4月15日 - 豊橋線神宮前 - 呼続間に堀田駅開業<ref name="meitetsu1961_p750" />
** 6月1日 - 豊橋線新知立 - 牛田間に分岐点開設、分岐点から三河鉄道知立駅に至る連絡線開通<ref name="SHIN2008-7_p45" />、貨物列車の直通運輸開始<ref name="meitetsu1961_p183" />
** 10月1日 - 西尾線（旧西尾鉄道線）西尾 - 吉良吉田間・西尾 - 港前間の1,067 mm軌間への改軌ならびに電化工事、および西尾駅の移転工事完成<ref name="RP473_p79-80" />
* [[1929年]]（昭和4年）
** 1月18日 - 常滑線全線の架線電圧を直流600 Vから同1,500 Vへ昇圧、幹線路線の昇圧工事完了<ref name="meitetsu1961_p752" />
** 4月1日 - 西尾線岡崎新 - 西尾間の1,067 mm軌間への改軌および電化工事完成<ref name="RP473_p79-80" />
* [[1930年]]（昭和5年）4月22日 - 臨時株主総会において三河鉄道との合併が承認<ref name="meitetsu1961_p754" />
* [[1931年]]（昭和6年）9月20日 - 豊橋線複線化工事完成に伴うダイヤ改正実施、超特急「あさひ」運行開始<ref name="meitetsu1961_p754" />
* [[1932年]]（昭和7年）
** 1月 - 業績不振により従業員給与を一律3 - 5 %削減<ref name="meitetsu1961_p756" />
** 6月24日 - 定時株主総会において三河鉄道との合併解消が承認<ref name="meitetsu1961_p756" />
* [[1933年]]（昭和8年）5月 - 業績回復により給与削減取り止め<ref name="meitetsu1961_p756" />
* [[1934年]]（昭和9年）
** 2月1日 - 乗合バス事業を子会社の愛知自動車へ譲渡<ref name="meitetsu1961_p756" />
** 10月 - 名岐鉄道との間で合併に関する内交渉開始<ref name="meitetsu1961_p189-190" />
* [[1935年]]（昭和10年）
** 1月21日 - 名岐鉄道との合併を応諾<ref name="meitetsu1961_p758" />
** 2月15日 - 名岐鉄道との間で合併に関する仮契約を締結<ref name="meitetsu1961_p758" />
** 7月25日 - 合併申請認可<ref name="meitetsu1961_p201" />
** 8月1日 - 名岐鉄道との合併により'''現・名古屋鉄道'''発足、愛知電気鉄道解散<ref name="RP473_p79-80" />

== 保有鉄道路線 ==
[[File:Aichi Electric Railroad Linemap.svg|400px|thumb|right|愛知電気鉄道路線図]]
開業当初における基幹路線であった'''常滑線'''<ref name="meitetsu1961_p158-159" />、東海道電気鉄道計画を継承し有松線を延長する形で開通した'''豊橋線'''<ref name="meitetsu1961_p173" />の二大幹線に加えて、常滑線の貨物支線と位置付けられる'''築港線'''<ref name="meitetsu1961_p164" />、旧西尾鉄道より継承した'''西尾線'''<ref name="meitetsu1961_p178" />の計4路線を保有した。西尾線はその経緯から他三路線とは線路が繋がっておらず、『鉄道停車場一覧』では豊橋線・常滑線・築港線を'''愛電本線'''と総称し<ref name="ndl1212697_174"/>、西尾線（平坂方面を含む総称でもある）とは区別していた<ref name="ndl1212697_175"/>。

その他、'''知多鉄道・碧海電気鉄道'''の傘下事業者2社については、前述の通り開業当初より業務全般を愛電が行っており<ref name="meitetsu1961_p313-314" /><ref name="meitetsu1961_p302-303" />、同2社の路線は事実上愛電の一路線として、愛電の保有する路線との連絡運輸を緊密に行った<ref name="RP473_p74" />。

'''保有路線'''
* [[名鉄常滑線|常滑線]]
** [[神宮前駅]] - [[常滑駅]] 29.5 km
** 分岐点 - 山崎川駅 0.4 km （山崎川貨物支線）
* [[名鉄名古屋本線#豊橋線|豊橋線]]（旧有松線・岡崎線）
** 神宮前駅 - [[豊橋駅|吉田駅]] 62.4 km
** [[知立信号所|分岐点]] - [[三河知立駅|知立駅]] 0.8 km （知立連絡線）
** [[伊奈駅]] - [[小坂井駅]] 1.2 km （[[名鉄小坂井支線|小坂井線]]）
* [[名鉄築港線|築港線]]：[[大江駅]] - [[東名古屋港駅]] 1.9 km
* [[名鉄西尾線|西尾線]]
** [[岡崎駅前駅|岡崎新駅]] - [[吉良吉田駅]] 22.1 km
** [[西尾駅]] - [[港前駅]] 4.5 km （[[名鉄平坂支線|平坂線]]）

'''業務代行路線'''
* [[知多鉄道|知多鉄道線]]：[[太田川駅]] - [[河和駅]] 28.8 km
* [[碧海電気鉄道|碧海電気鉄道線]]：[[新安城駅|今村駅]] - 西尾駅 15.0 km

'''廃止路線'''
* 吉田臨港線：吉良吉田駅 - 吉田港駅 0.4 km … 1928年（昭和3年）10月1日廃止

=== 未成線 ===
;名古屋市内乗入計画線（軌道条例）
:名古屋市内への電車乗り入れは会社設立初期より構想されており、1909年（明治42年）11月24日には総延長41.0 kmにおよぶ市内乗入線の特許を申請している<ref name="IDOTA2_pp243-244" />。既に市内電車を運行していた名古屋電気鉄道はこの動きに強く反発し<ref name="meitetsu1961_p142" />、逆に愛電の営業圏である知多半島や三河方面への路線を出願するなど、一時両社は免許取得をめぐって互いを牽制し合う関係となっていた<ref name="IDOTA2_pp243-244" />。愛電は形勢不利とみたか、その後3度にわたる変更申請で市内線の総延長を7.3 kmまで縮小しており、それに対して名古屋電気鉄道は知多方面線の申請を取り下げるなど、両社間で調整が図られた<ref name="IDOTA2_pp243-244" />。
:*第1回申請（計41.0 km） - 1909年（明治42年）11月24日出願、1912年（大正3年）7月1日却下<ref name="IDOTA2_p238" />。
:**幹線：桃ノ木 - 松重町 20.9 km
:**第一分岐線：日置町 - 上園町 2.7 km
:**第二分岐線：金城村 - 武平町 3.2 km
:**第三分岐線：長塀町 - 前津小林 2.4 km
:**第四分岐線：新出来町 - 車道 2.0 km
:**第五分岐線：新出来町 - 大曽根 1.2 km
:**第六分岐線：赤塚 - 大曽根 0.9 km
:**第七分岐線：末広町 - 前津小林 0.4 km
:**第八分岐線：前津小林地内 1.4 km
:**第九分岐線：金山 - 古渡町 0.7 km
:**第十分岐線：神戸町 - 熱田西町 2.1 km
:**第十一分岐線：前津小林 - 御田 2.7 km
:*第2回申請（計20.0 km） - 1910年（明治43年）5月27日出願、1912年（大正3年）7月1日却下<ref name="IDOTA2_p238" />。
:**第一幹線（精進川線）：神宮坂 - 武平町 6.3 km
:**第一幹線（第一分岐線）：前津小林 - 久屋町 1.4 km
:**第一幹線（第二分岐線）：東古渡町地内 0.5 km
:**第二幹線（大曽根線）：前津小林 - 大曽根 4.7 km
:**第二幹線（千種停車場線）：山口町 - 千種町 1.8 km
:**第三幹線（外堀線）：山口町 - 泥江町 5.3 km
:*第3回申請（計15.2 km） - 1910年（明治43年）8月22日出願、1912年（大正3年）7月1日却下<ref name="IDOTA2_p240" />。
:**第一幹線（精進川線）：神宮坂 - 久屋町 6.0 km
:**第一幹線（東別院分岐線）：東古渡町地内 0.5 km
:**第二幹線（大曽根線）：久屋町 - 大曽根 3.0 km
:**第二幹線（葵町分岐線）：山口町 - 新栄町 1.5 km
:**第三幹線（車道線）：前津小林 - 山口町 4.0 km
:**第三幹線（千種分岐線）：車道 - 千種町 0.2 km
:*第4回申請（計7.3 km） - 1911年（明治44年）5月26日出願、1912年（大正3年）7月1日却下<ref name="IDOTA2_p240" />。
:**伝馬町 - 古渡町 4.2 km
:**古渡町 - 新柳町 2.1 km
:**新柳町 - 上園町 1.0 km
:
;名古屋市内乗入計画線（軽便鉄道法）
:上記軌道条例による市内線乗り入れ案とは別に、常滑線を名古屋市内へ乗入れさせる最低限度の路線として、軽便鉄道法による「東郊線（後の東陽町線）」が計画された<ref name="IDOTA2_pp240-241" /><ref name="IDOTA2_pp243-244" />。しかし、この路線も免許失効までに開業に至らず未成に終わっている。
:;東郊線
::*神宮坂 - 新栄町 5.5 km：1911年（明治44年）1月23日出願<ref name="IDOTA2_pp240-241" />。
:;東陽町線
::*神宮坂 - 東陽町 4.7 km：1913年（大正2年）1月13日「東郊線」より変更出願、同年2月18日取得、1915年（大正4年）6月17日<ref name="meitetsu1961_p732" />（8月24日<ref name="IDOTA2_pp240-241" />）失効{{refnest|group="注釈"|『名古屋鉄道社史』には同区間について1915年（大正4年）8月4日に再申請、1916年（大正5年）5月1日に却下とある<ref name="meitetsu1961_p734" />。}}。
:
;名古屋市内乗入計画線（地方鉄道法）
:東陽町線の免許失効後は有松線（後の岡崎線・豊橋線）の建設に注力していたが、同線完成の目処がついた頃より、再び名古屋中心部への路線が構想されるようになった<ref name="IDOTA2_p255" />。
:;{{Anchor|市内乗入線・金山線}}
::*岡崎線 / 星崎町 - 熱田東町御田（神宮前駅） 6.2 km：1924年（大正13年）1月31日出願、同年10月25日取得、1958年（昭和33年）6月27日失効<ref name="IDOTA2_pp257-258" />。
::*常滑線連絡線（貨物線<ref name="meitetsu1961_p171" />） / 本星崎町 - 笠寺町（大江駅） 5.5km：1924年（大正13年）1月31日出願、同年10月25日取得、1932年（昭和7年）8月20日失効<ref name="IDOTA2_pp257-258" />。
::*金山線 / 熱田東町御田（神宮前駅） - 金山 1.8 km 1924年（大正13年）11月4日出願、1927年（昭和2年）2月4日取得<ref name="IDOTA2_pp258-260" />。
::有松裏以東が高規格路線として建設されたのに対し、神宮前 - 有松裏間は曲線がきつく単線区間も残されていたため、高速運転が可能な別線を設け、別線から名古屋市中心部へ路線を伸ばす案が浮上した。しかし、免許を取得してから工事が始まるまでの間に沿線の都市化が進み、建設費の高騰が予想されたため、本星崎 - 大江間の支線が1932年（昭和7年）に起業廃止となった。残る区間も沿線からの高架化要求や諸問題（運河埋め立て問題、並走する国鉄線から分岐する貨物支線との交差など）の折り合いがつかず、1958年（昭和33年）に失効した<ref name="IDOTA2_pp257-258" /><ref name="meitetsu1961_p174-175" />。
::金山線は「市内乗入線」をさらに金山まで延長させるため出願した路線だったが、市内乗入線自体が実現困難になったことで同路線も計画が進展しなかった<ref name="IDOTA2_pp258-260" />。なお、当初は計画の経緯から東海道本線の西側に沿ったルートで免許を取得しているが、熱田駅前の用地取得などが困難なことから、1934年（昭和9年）12月20日に東海道本線東側沿いに変更する申請を行っている。この申請は受理され、本免許は名鉄合併後に構想される「東西連絡線」の一部となった<ref name="IDOTA2_pp263-264" />。
:;有松裏 - 名古屋駅前間別線
::*有松裏 - 名古屋駅前 17.2 km：1926年（大正15年）8月13日出願、1931年（昭和6年）12月23日却下<ref name="IDOTA2_pp260-261" />。
:;金山 - 西菅原町間別線
::*有松裏 - 名古屋駅前 3.7 km：1928年（昭和3年）7月4日出願、1932年（昭和7年）1月13日却下<ref name="IDOTA2_p261" />。
:
;尾張・知多方面未成線
:内海線・半田線 (I) については[[#経済不況による経営危機]]も参照。
:;内海線
::*常滑 - 内海 21.4 km：1912年（明治45年）4月12日出願、同年（大正元年）8月20日<ref name="RP473_p79-80" />（8月26日<ref name="IDOTA3_pp183-184" />）取得、1915年（大正4年）11月22日<ref name="meitetsu1961_p730" />（11月25日<ref name="IDOTA3_pp183-184" />）失効<ref name="IDOTA3_pp183-184" />。
:;半田線 (I)
::*横須賀 - 半田 14.2 km：1912年（明治45年）7月2日出願、同年（大正元年）12月20日取得、1915年（大正4年）12月17日失効<ref name="IDOTA3_pp183-184" />。
:;大高線
::*鳴海 - 上野 4.5 km：1912年（大正元年）10月5日出願、1913年（大正2年）2月18日取得、1918年（大正7年）10月13日<ref name="meitetsu1961_p732" />（11月16日<ref name="IDOTA3_pp183-184" />）失効<ref name="IDOTA3_pp183-184" />。
::変更された常滑線第一工区（熱田 - 名和村間）のうち有松線と重複しない残区間。
:;名古屋 - 大垣間
::*名古屋 - 大垣 1920年（大正9年）2月20日出願、後に取下げ<ref name="IDOTA3_pp183-184" />。
:;横須賀町 - 半田町間
::*横須賀 - 半田 14.2 km：1920年（大正9年）11月16日出願、1925年（大正14年）7月8日却下<ref name="IDOTA3_pp183-184" />。
:;半田線 (II)
::*常滑 - 半田 11.0 km：1921年（大正10年）1月17日出願、1925年（大正14年）7月8日取得、1927年（昭和2年）7月7日<ref name="meitetsu1961_p746" />（10月15日<ref name="IDOTA3_pp183-184" />）失効<ref name="IDOTA3_pp183-184" />。
:;岡田支線
::*長浦 - 岡田 2.9 km 1923年（大正12年）5月10日出願、1924年（大正13年）3月14日取得、1929年（昭和4年）6月18日失効<ref name="IDOTA3_pp183-184" />。
::元々は名古屋電気鉄道の知多循環線が岡田町地内を通過する予定だったことを端緒とする路線。知多方面線計画と異なり海岸線沿いに敷設された愛電線（後の常滑線）に対し、岡田町は木綿などを輸送する手段として愛電線より分岐する支線建設を要望した。愛電はこれに合意したものの、貨物輸送量を不安視した愛電は岡田町に対して想定輸送量を下回った場合における補償を主張した。岡田町側はこれに応じたものの、想定輸送量の基準について両者間で折り合いがつかず、そのまま着工期限を超過してしまった<ref name="CHITA_pp488-492" />。
:
;三河方面未成線
:豊川線については[[#建設開始から全線開通に至るまで]]も参照。
:;宇頭 - 米津間
::*宇頭 - 米津 11.9 km：1921（大正10年）8月16日出願、1922年（大正11年）7月返付<ref name="IDOTA3_pp218-219" />。
:;豊川線
::*国府 - 新牛久保 7.6 km：1923年（大正12年）2月14日出願、同年8月23日<ref name="RP624_p103" />（8月19日<ref name="IDOTA3_pp218-219" />）取得、1928年（昭和3年）5月14日返納<ref name="meitetsu1961_p744" />（5月10日失効<ref name="IDOTA3_pp218-219" />）<ref name="IDOTA3_pp218-219" />。
:;一色線
::*福地（一色口駅） - 一色 4.2 km：1923年（大正12年）3月5日出願、1927年（昭和2年）6月2日免許、1933年（昭和8年）2月10日<ref name="meitetsu1961_p750" />（2月16日<ref name="IDOTA3_pp218-219" />）失効<ref name="IDOTA3_pp218-219" />。
:;{{Anchor|岡崎 - 豊富村間}}
::*岡崎 - 豊富村 16.5 km：1923年（大正12年）1月13日出願、同年12月17日免許、1931年（昭和6年）4月11日廃止許可申請<ref name="RP816_p162-163" />。
::西尾鉄道の岡崎・額田方面線を継承した路線だが、山間区間の難工事および愛電の自動車営業線との重複を理由に建設が中止された<ref name="RP816_p162-163" />。
:;今村 - 若林間
::*今村 - 若林 4.5 km：1926年（大正15年）1月21日出願、1934年（昭和9年）7月11日返付<ref name="IDOTA3_pp218-219" />。
:;気賀 - 静岡間
::*気賀 - 静岡 79.0 km：1928年（昭和3年）8月24日出願、1931年（昭和6年）12月24日却下<ref name="IDOTA3_pp218-219" />。
:;小坂井 - 前芝間
::*小坂井 - 前芝 3.2 km：1929年（昭和4年）8月13日出願、1931年（昭和6年）7月26日却下<ref name="IDOTA3_pp218-219" />。
:;新岡崎 - 東岡崎間
::*新岡崎 - 東岡崎 4.1 km：1929年（昭和4年）12月26日出願、1930年（昭和5年）6月24日取得、失効日不明<ref name="IDOTA3_pp218-219" />。
:
;東海道電気鉄道の免許線
:*東八事 - 平針 - 矢作 25.1 km：1918年（大正7年）2月23日出願、同年7月24日取得、1934年（昭和9年）8月24日失効<ref name="IDOTA3_p212"/><ref name="Moriguchi_p.182"/>。
:*古沢 - 平針 11.2 km：1920年（大正9年）1月7日出願、同年6月23日取得、1934年（昭和9年）8月21日失効<ref name="IDOTA3_p217"/><ref name="Moriguchi_p.182"/>。
:
;遠三鉄道の免許線
:*豊橋 - 石巻 - 本坂峠 - 気賀 30.3 km：1920年（大正9年）3月8日出願、1921年（大正10年）11月11日追願、1922年（大正11年）9月16日取得の免許を1924年（大正13年）10月14日に変更申請、1926年（大正15年）12月4日変更認可、1932年（昭和7年）12月27日失効<ref name="IDOTA3_pp120-128"/><ref name="IDOTA3_p218"/>。
:*石巻 - 豊川町 5.9 km：1927年（昭和2年）10月14日出願、1928年（昭和3年）5月10日取得、1932年（昭和7年）12月27日失効<ref name="IDOTA3_pp120-128"/><ref name="IDOTA3_p218"/>。

== 保有鉄道車両 ==
旅客用車両（電車）を延べ15形式86両、[[電気機関車]]を3形式計14両、電動貨車を1形式1両導入し<ref name="RP248_p64-65" />、その他貨車を大量に保有した<ref name="meitetsu1961_p190-192" />。電車・電気機関車とも、一部を除いて搭載する電気機器が[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[ウェスティングハウス・エレクトリック|ウェスティングハウス]] (WH) 社製の輸入品で占められていた点が特徴である<ref name="RP473_p171-172" />{{refnest|group="注釈"|電6形のみ、主電動機に国産品（東京芝浦電気SE-132-C）を採用した<ref name="RP473_p171-172" />。}}。

なお、愛電においては旅客用車両のうち[[制御車]]の記号を「サハ」とし<ref name="RP248_p64-65" />、電4形以降に導入された各形式については[[鉄道の車両番号|車両番号]]の初番を0とした<ref name="RP473_p171" />。また電3形以降に導入された各形式は、旅客用車両・電気機関車とも車両番号の末尾5を欠番とした<ref name="RP473_p171-172" />。これは新舞子における列車正面衝突事故の当該車両がいずれも末尾5であったことに起因し<ref name="RP248_p64-65" />、この方針は愛電のみならず愛電の子会社の保有車両にも踏襲された<ref name="RP248_p64-65" />。

=== 旅客用車両 ===
開業当初に導入された'''電1形'''および開業後間もなく増備された'''附1形'''はオープンデッキ構造であったが<ref name="CB521_p118" />、常滑線常滑延伸に際して導入された'''電2形'''は乗降口に客用扉が新設された<ref name="CB521_p118" />。上記3形式はいずれも4輪単車であったが<ref name="CB521_p118" />、常滑線複線化工事と並行して導入された'''電3形'''より2軸ボギー構造に変更され<ref name="CB521_p119" />、以降の導入車両は全て2軸ボギー車となった<ref name="CB521_p119" />。豊橋線の架線電圧1,500 V昇圧に際して導入された'''電6形'''は初回導入分を当時架線電圧が600 Vであった常滑線における運用を考慮して複電圧仕様とし<ref name="RP473_p171" />、後に導入した車両については1,500 V単電圧仕様とした<ref name="RP473_p171" />。'''電7形'''より車体を従来の木造から半鋼製に改めたほか車内をクロスシート仕様とし<ref name="CB521_p121" />、愛電最後の新型車両となった'''デハ3300形'''は18 m級の大型車体を採用した<ref name="CB521_p122" />。

その他、前述した碧海電気鉄道の架線電圧600 V降圧に際して電3形のうち4両が同社へ転籍し<ref name="CB521_p119" />、架線電圧1,500 V仕様であった同社保有の[[碧海電気鉄道デ100形電車|デ100形]]が愛電籍へ編入されて'''デハ1010形'''となった<ref name="CB521_p123" />。

このうち、愛電当時に全廃された電1形・電2形・附1形の各形式<ref name="CB521_p118" />を除く全車が現・名鉄へ継承された<ref name="CB521_p119-123" />。

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 | align     = right
 | image1    = Meitetsu mo 1001 nishio.jpg
 | width1    = 160
 | caption1  = 電3形<br />（名鉄モ1000形）

 | image2    = Meitetsu kuyu 2011 kanayamabashi.jpg
 | width2    = 180
 | caption2  = 附2形<br />（名鉄クユ2010形）

 | image3    = Meitetsu mo 1071 sukaguchi.jpg
 | width3    = 180
 | caption3  = 電6形<br />（名鉄モ1070形）
}}

* [[愛知電気鉄道電1形電車|電1形・附1形]]
* [[愛知電気鉄道電2形電車|電2形]]
* [[愛知電気鉄道電3形電車|電3形]]
* [[愛知電気鉄道電4形電車|電4形]]
* [[愛知電気鉄道電5形電車|電5形・附2形]]
* [[愛知電気鉄道電6形電車|電6形]]
* [[愛知電気鉄道電7形電車|電7形・附3形・デハ3090形]]
* [[愛知電気鉄道デハ3300形電車|デハ3300形・デハ3600形・サハ2040形]]
* [[碧海電気鉄道デ100形電車|デハ1010形]]

=== 電気機関車・電動貨車 ===
開業以来、貨物運輸は電動貨車'''デカ350形'''による輸送、もしくは旅客用車両による貨車牽引によって行われていたが<ref name="RP473_p172" />、築港線の開通に先立って電気機関車'''デキ360形'''が導入され<ref name="RP473_p172" />、次いで'''デキ370形'''、'''デキ400形'''の順に導入された<ref name="RP473_p172" />。

{{multiple image
 | align     = right
 | image1    = Toyohashi 211.jpg
 | width1    = 140
 | caption1  = デキ360形<br />（豊橋鉄道譲渡後）

 | image2    = Aichi Elc Rly Type DEKI370 EL No.372.png
 | width2    = 170
 | caption2  = デキ370形<br />（メーカー公式写真）

 | image3    = Meitetsu Type Deki 400 EL 001.JPG
 | width3    = 192
 | caption3  = デキ400形<br />（車体更新施工後）
}}

最後に導入されたデキ400形が箱形車体であるほかは、いずれも凸形車体を備える電気機関車である<ref name="RP473_p172" />。なお、デキ370形の一部は電6形電車と同様の理由により複電圧仕様で落成した<ref name="RP473_p172" />。

これらは全車とも現・名鉄へ継承された<ref name="RP473_p172" />。

* [[愛知電気鉄道デカ350形電車|デカ350形]]
* [[愛知電気鉄道デキ360形電気機関車|デキ360形]]
* [[愛知電気鉄道デキ370形電気機関車|デキ370形]]
* [[愛知電気鉄道デキ400形電気機関車|デキ400形]]

== 鉄道事業以外の事業 ==
=== 電力供給事業 ===
愛電は創設当初より鉄道事業のほか電力供給事業を兼業した<ref name="meitetsu1961_p146" />。事業は1911年（明治44年）4月に認可され<ref name="meitetsu1961_p146" />、同年12月に日長・名和村の両変電所の稼動を開始、知多半島西岸地域を中心として電力を供給した<ref name="meitetsu1961_p146" />。中途経済不況による産業向け電力需要の低下や一般家庭の廃灯によって業績が伸び悩んだ時期があったものの<ref name="meitetsu1961_p154" />、鉄道事業と比較してコスト面で有利な電力供給事業は、大正期に愛電が経営危機に陥った際には貴重な収入減として会社存続を支えた存在であった<ref name="meitetsu1961_p182" />。その後、電力需要の増大に伴って西浦・有松の両変電所を新たに設置して、供給区域を東岸地域を除く知多半島全域と愛知郡および西加茂郡の一部に拡大した<ref name="meitetsu1961_p182" />。

しかし、第一次世界大戦前後における電力需要の増大に対して電力開発が進んだ結果、逆に電力供給が過剰となり、電力会社間で過当競争の様相を呈した<ref name="meitetsu1961_p182" />。同時期には愛電の筆頭株主である東邦電力の勢力伸長などもあり、元より発電施設を持たず電力供給事業に特化した事業の維持が困難となりつつあったことから<ref name="meitetsu1961_p182" />、愛電は1929年（昭和4年）6月の株主総会において自社の電力供給事業の一切を東邦電力へ譲渡することを決定した<ref name="meitetsu1961_p182" />。

譲渡に際しては新会社を設立して愛電の電力供給事業を譲渡し、新会社を東邦電力が吸収合併する形を取り<ref name="meitetsu1961_p182" />、翌1930年（昭和5年）4月30日付で愛知電力（資本金350万円）を設立、同社へ電力供給事業を譲渡した<ref name="meitetsu1961_p182" />{{refnest|group="注釈"|同時期に発生した深刻な経済不況の影響により直後二度目の経営危機に陥った愛電にとって、電力供給事業から撤退したことは結果的に痛手となり<ref name="meitetsu1961_p184" />、その影響は翌1931年（昭和6年）度の営業収入がピーク比で25 %も減少したことに現れた<ref name="meitetsu1961_p184" />。}}。

=== 自動車事業 ===
愛電は1919年（大正8年）5月に自社従業員による乗合バス個人事業を譲り受けて直営事業としたが、利用者が少なかったことから同年11月には早くも営業廃止された<ref name="meitetsu1961_p428" />。その後、昭和初期における乗合バス事業の興隆により愛電も1928年（昭和3年）12月より乗合バス事業を再開した<ref name="meitetsu1961_p428" />。当初の営業路線は国鉄熱田駅前 - 有松裏駅前間10.8 kmのみであったが<ref name="meitetsu1961_p428" />、新規路線の開業や中小事業者の吸収合併によって年々路線網を拡大した<ref name="meitetsu1961_p429" />。

1929年（昭和4年）1月には、更なる路線網拡大を目的として、幡豆郡吉田村（現在の[[西尾市]]）に本社を置く'''吉田自動車'''の全発行株式を取得、同社を完全子会社化した<ref name="meitetsu1961_p430" />。その後、吉田自動車は1933年（昭和8年）8月10日付で'''愛電自動車'''と社名を変更し<ref name="meitetsu1961_p431" />、翌1934年（昭和9年）2月に資本金を50万円に増資するとともに愛電より乗合バス事業の一切を譲り受けた<ref name="meitetsu1961_p431" />。同時に本社を愛電本社内へ移転し、愛電自動車は事実上愛電の自動車事業部門となった<ref name="meitetsu1961_p431" />。

愛電自動車は1934年（昭和9年）9月より本宿駅 - 蒲郡駅間の路線の運行を開始した<ref name="meitetsu1961_p432" />。この路線は同年開通した[[愛知県道38号蒲郡本宿線]]を経路としたが<ref name="meitetsu1961_p432" />、県道周辺の景観が優れていたことから、愛電自動車は同路線を「景観が[[箱根]]と似た区間を走行する路線」の意で「新箱根線」と命名、観光路線として宣伝した<ref name="meitetsu1961_p432" />。翌1935年（昭和10年）4月には車体を流線形とした新箱根線専用のバス車両を導入した<ref name="meitetsu1961_p432" />。流線形バスはアメリカの[[レオ・モーター・カー・カンパニー]] (REO) 製の[[シャーシ]]に東京・日本自動車製の車体を装架したもので<ref name="meitetsu1961_p432" />、座席はクッションの効いた本皮張り仕様とするなど豪華かつ最新の仕様を取り入れたものとした<ref name="meitetsu1961_p432" />。車両価格は当時の一般的なバスの2倍強に相当する1台あたり8,000円であった<ref name="meitetsu1961_p432" />。計6台の流線形バスが導入された新箱根線は、運行車両の特徴的な外観と豪華な車内設備に加えて女性車掌による案内が好評を博し<ref name="meitetsu1961_p432" />、行楽期には全便とも満員となり積み残しが生じるほどであったという<ref name="meitetsu1961_p432" />。

1935年（昭和10年）8月の現・名鉄発足に伴って名鉄の子会社となった愛電自動車は<ref name="meitetsu1961_p433" />、翌[[1936年]]（昭和11年）1月20日付で社名を'''名鉄自動車'''と改称した<ref name="meitetsu1961_p433" />。後年[[陸上交通事業調整法]]を背景とした地域交通事業者の統合が行政より事実上強制されたことに伴って、親会社の名鉄と同様に数多くの自動車事業者を統合したのち<ref name="meitetsu1961_p769" />、[[太平洋戦争]]終戦後の[[1947年]]（昭和22年）6月10日付で名鉄へ吸収合併され、解散した<ref name="meitetsu1961_p775" />。

=== その他の事業 ===
愛電は前述した1921年（大正11年）の東海道電気鉄道の吸収合併に際して、土地販売・住宅開発といった不動産業への進出を目的として、同時に'''新舞子土地開発'''を吸収合併した<ref name="meitetsu1961_p164-165" />。同社は常滑線沿線の新舞子地区の土地開発を行う目的で1912年（明治45年）に設立された事業者であったが<ref name="meitetsu1961_p164-165" />、業績不振により同社株主から愛電への吸収合併の要望が高まり、1922年（大正11年）7月に合併に至ったものであった<ref name="meitetsu1961_p164-165" />。その後愛電は1926年（大正15年）6月に'''鳴海土地'''を吸収合併して販路を広げ<ref name="meitetsu1961_p748" />、沿線各地において土地開発・分譲住宅の販売・新聞社協賛の住宅展示会の開催などを行った<ref name="meitetsu1961_p752-753" /><ref name="meitetsu1961_p746" /><ref name="meitetsu1961_p754" />。

また、愛電は常滑線の開通当時より知多半島沿岸地域を名古屋市近郊の手軽な観光地として紹介し旅客を誘致することを目論み<ref name="RP473_p92" />、大野町・古見の海岸に海水浴場を開設した<ref name="ndl1460414_p2-3" />。これにより夏季の運賃収入が他季の約2倍にのぼったことから<ref name="RP473_p92" />、愛電はさらに新舞子に海水浴場を開設、自社運営の無料休憩所などを設けた<ref name="RP473_p92" />。1913年（大正12年）には前述した新舞子土地開発により旅館「舞子館」が開業<ref name="RP473_p92" />、さらに新舞子土地開発を吸収合併したのちは自社運営の野外演芸場や納涼施設「龍宮殿」を開設し、新舞子地区を総合リゾート施設のような形で開発した<ref name="RP473_p92" />。

その他、当時盛んとなりつつあった[[野球]]の試合開催を目的に「東京の[[明治神宮野球場|神宮球場]]、大阪の[[阪神甲子園球場|甲子園球場]]に並ぶ大球場<ref name="mdsl_narumi" />」として1927年（昭和2年）に建設、「名古屋市民になくてはならぬもの<ref name="ndl1460414_p2-3" />」と評された愛電球場（のちの[[鳴海球場]]）<ref name="meitetsu1961_p750" />の運営も行った<ref name="ndl1460414_p2-3" />。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{reflist|group="注釈"}}
=== 注釈（人物解説） ===
{{reflist|group="人物"}}
=== 出典 ===
{{Reflist|2|refs=
<ref name="ndl913388_p119">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/913388/65 『名古屋新百人物』 p.119]</ref>
<ref name="ndl932292_p1-18">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/932292/3 『転轍轍叉明細図』 pp.1 - 18]</ref>
<ref name="ndl983167_p59-60">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/983167/39 『名古屋新百人物. 続々』 pp.59 - 60]</ref>
<ref name="ndl971883">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971883/5 『英国鉄道ノ労働問題』 p.5]</ref>
<ref name="ndl1020258">[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1020258/173 『半田町史』 p.279]</ref>
<ref name="ndl2957462">[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2957462/17 「公告」 『官報』 1930年4月26日]（国立国会図書館デジタルコレクション）</ref>
<ref name="ndl2957781">[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2957781/15 「株券無効公告」 『官報』 1931年5月19日]（国立国会図書館デジタルコレクション）</ref>
<ref name="ndl1460414_p2-3">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1460414/8 『事業と人』 pp.2 - 3]</ref>
<ref name="ndl1054267_p24">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1054267/18 『名古屋商工会議所議員名鑑 昭和十二年版』 p.24]</ref>
<ref name="ndl1054267_p32">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1054267/22 『名古屋商工会議所議員名鑑 昭和十二年版』 p.32]</ref>
<ref name="ndl1054267_p38">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1054267/25 『名古屋商工会議所議員名鑑 昭和十二年版』 p.38]</ref>
<ref name="ndl1169576_p129-130">[http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1169576/93 『国民産業物語 運輸交通編 電車の話』 pp.129 - 130]</ref>
<ref name="mdsl_narumi">[http://www.meitetsu.ac.jp/mdsl/about_school/narumi.php 鳴海球場] - [[名鉄自動車学校]]公式Web 2014年2月1日閲覧</ref>
<ref name="kotobank_okayasousuke2">[http://kotobank.jp/word/%E5%B2%A1%E8%B0%B7%E6%83%A3%E5%8A%A9%282%29 岡谷惣助] - [[コトバンク|kotobank]] 2014年2月1日閲覧</ref>
<ref name="kotobank_tomitashigesuke">[http://kotobank.jp/word/%E5%AF%8C%E7%94%B0%E9%87%8D%E6%85%B6 富田重慶] - [[コトバンク|kotobank]] 2014年2月1日閲覧</ref>
<ref name="meitetsu1961_p103">[[#meitetsu1961|『名古屋鉄道社史』 p.103]]</ref>
<ref name="meitetsu1961_p114-115">[[#meitetsu1961|『名古屋鉄道社史』 pp.114 - 115]]</ref>
<ref name="meitetsu1961_p115-116">[[#meitetsu1961|『名古屋鉄道社史』 pp.115 - 116]]</ref>
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== 参考資料 ==
=== 電子資料 ===
* 馬場籍生 [http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/913388 『名古屋新百人物』] 珊珊社 1921年 [[国立国会図書館]]近代デジタルライブラリー
* 須田博 [http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/971883 『英国鉄道ノ労働問題』] 鉄道大臣官房外国鉄道調査課 1924年 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
* [[鉄道省]]大臣官房研究所 編纂 [http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/932292 『鐵道設計圖表全集別冊 転轍轍叉明細圖』] 鉄道時報局 1925年 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
* 馬場守次 [http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/983167 『名古屋新百人物. 続々』] 珊々社 1925年 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
* 愛知県半田町 編 [http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1020258 『半田町史』] 半田町 1926年 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
* 鉄道省 編 [http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1212697 『鉄道停車場一覧. 昭和9年12月15日現在』] 川口印刷所出版部 1935年 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
* 近藤喜一 [http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1460414 『事業と人』] 経済評論社 1935年 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
* [http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1054267 『名古屋商工会議所議員名鑑 昭和十二年版』] 総合経済研究所 1937年 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
* 宮本政幸 [http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1169576 『国民産業物語 運輸交通編 電車の話』] 陽文社 1944年 国立国会図書館近代デジタルライブラリー

=== 書籍 ===
* {{Anchor|meitetsu1961|名古屋鉄道株式会社社史編纂委員会 『名古屋鉄道社史』 名古屋鉄道 1961年5月}}
* {{Anchor|ERH1962|[[電気学会]] 『電気鉄道ハンドブック』 電気学会 1962年}} 
* {{Anchor|CHITA|知多市誌編さん編集委員会 『知多市誌 本文編』 [[知多市]] 1981年}}
* {{Anchor|Wakuda1981|和久田康雄 『日本の私鉄』 [[岩波書店]] 1981年}}
* {{Anchor|CB521|[[白井昭]]・白井良和・井上広和 『日本の私鉄4 名鉄』 [[保育社]] 1982年8月 ISBN 4-586-50521-4}}
* {{Anchor|meitetsu1994|名古屋鉄道広報宣伝部 『名古屋鉄道百年史』 名古屋鉄道 1994年}}
* {{Anchor|Moriguchi|森口誠之『鉄道未成線を歩く 私鉄編』[[ジェイティービー|JTB]] 2001年9月 ISBN 978-4533039225}}
* {{Anchor|IDOTA2|井戸田弘『東海地方の鉄道敷設史 II』 2006年}}
* {{Anchor|IDOTA3|井戸田弘『東海地方の鉄道敷設史 III』 2008年}}
* {{Anchor|SHIN2008-7|[[今尾恵介]]（監修） 『日本鉄道旅行地図帳』7号 [[新潮社]] 2008年11月 ISBN 978-4107900258}}

=== 雑誌記事 ===
* 『[[鉄道ピクトリアル]]』 [[電気車研究会|鉄道図書刊行会]]
** {{Anchor|RP248_p60-65|渡辺肇・加藤久爾夫 「私鉄車両めぐり(87) 名古屋鉄道 3」 1971年3月号（通巻248号） pp.60 - 65}}
** {{Anchor|RP370_p149-153|[[徳田耕一]] 「名車の軌跡 知多鉄道デハ910物語」 1979年12月臨時増刊号（通巻370号） pp.149 - 153}}
** {{Anchor|RP473_p65-81|[[青木栄一 (地理学者)|青木栄一]] 「名古屋鉄道のあゆみ -その路線網の形成と地域開発-」 1986年12月臨時増刊号（通巻473号） pp.65 - 81}}
** {{Anchor|RP473_p86-89|小川功 「明治大正期の名鉄経営者と名古屋財界 -神野金之助重行・福沢桃介を中心に-」 1986年12月臨時増刊号（通巻473号） pp.86 - 89}}
** {{Anchor|RP473_p90-96|[[三木理史]] 「名鉄と観光 -沿線地域の開発-」 1986年12月臨時増刊号（通巻473号） pp.90 - 96}}
** {{Anchor|RP473_p166-176|白井良和 「名古屋鉄道の車両前史 現在の名鉄を構成した各社の車両」 1986年12月臨時増刊号（通巻473号） pp.166 - 176}}
** {{Anchor|RP624_p68-71|[[白土貞夫]] 「絵葉書に見る昔日の名古屋鉄道」 1996年7月臨時増刊号（通巻624号） pp.68 - 71}}
** {{Anchor|RP624_p93-106|青木栄一 「名古屋鉄道のあゆみ（戦後編） -その路線網の形成と地域開発-」 1996年7月臨時増刊号（通巻624号） pp.93 - 106}}
** {{Anchor|RP771_p10-17|柚原誠 「総説：名古屋鉄道」 2006年1月臨時増刊号（通巻771号） pp.10 - 17}}
** {{Anchor|RP771_p181-186|松永直幸 「名鉄沿線 歴史のある風景」 2006年1月臨時増刊号（通巻771号） pp.181 - 186}}
** {{Anchor|RP792_p106-112|名鉄資料館 「知られざる名鉄電車史2　2つの流線型車両 3400形と850形」 2007年8月号（通巻792号） pp.106 - 112}}
** {{Anchor|RP816_p150-157|松永直幸 「名鉄沿線の古レール -全274駅を調査-」 2009年3月臨時増刊号（通巻816号） pp.150 - 157}}
** {{Anchor|RP816_p158-163|藤井建 「岡崎を中心とした名鉄電車こぼれ話」 2009年3月臨時増刊号（通巻816号） pp.158 - 163}}
** {{Anchor|RP816_p208-211|澤内一晃 「名鉄の私有貨車」 2009年3月臨時増刊号（通巻816号） pp.208 - 211}}
* 『[[鉄道ファン (雑誌)|鉄道ファン]]』 [[交友社]]
** {{Anchor|RF387_p84-89|清水武 「エバーグリーン賞を受賞した名鉄3400系を讃える」 1993年7月号（通巻387号） pp.84 - 89}}
* 『[[鉄道史料]]』 鉄道史資料保存会
** {{Anchor|RMH40_p77|鉄道史料編集部 「連載：鉄道施設 轉轍器及び轍叉」 通巻40号 1985年11月 p.77}}
* 『鉄道時報』 鉄道時報局
** {{Anchor|JIHO796_p28-29|「東京市街高架鐵道建設概要」 通巻796号 1914年12月 pp.28 - 29}}
** {{Anchor|JIHO922_p34-35|「箱根を巡る登山鐵道（二）」 通巻922号 1915年5月 pp.34 - 35}}

=== 新聞記事 ===
* {{Anchor|Asahi20080717|西尾典祐 『創意の人々 名古屋鉄道・藍川清成 上』 [[朝日新聞]]中部版 2008年7月17日夕刊}}
* {{Anchor|Asahi20080724|西尾典祐 『創意の人々 名古屋鉄道・藍川清成 中』 朝日新聞中部版 2008年7月24日夕刊}}
* {{Anchor|Asahi20080731|西尾典祐 『創意の人々 名古屋鉄道・藍川清成 下』 朝日新聞中部版 2008年7月31日夕刊}}

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[[Category:愛知電気鉄道|*]]
[[Category:名古屋鉄道|社あいちてんきてつとう]]
[[Category:かつて存在した日本の鉄道事業者]]
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