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[[File:Ehou-direction.png|thumb|right|270px|恵方]]
'''恵方詣り'''（えほうまいり）は、古来の[[正月]]行事の一つ。恵方参りとも書く。

[[1月1日]]（元日）にその年の恵方にある寺社に参拝してその年の幸福を祈願する<ref>『年中行事事典』p104 [[1958年]]（[[昭和]]33年）[[5月23日]]初版発行 [[西角井正慶]]編 東京堂出版</ref>。恵方とは[[歳徳神]]が在位する方角で、[[十干]]に従って毎年変わる。今日では廃れた慣習である<ref name="hirayama2012-106">平山（2012年）、p.106</ref>。

== 歴史 ==
居住地から見て恵方に当たる寺社に参詣するのが、江戸時代までの恵方詣りの形であった<ref name="hirayama2012-3435">平山（2012年）、pp.34-35</ref>。

明治以後、都市周辺に鉄道網が発達すると、恵方詣りの対象も郊外・遠方の有名社寺に広がるようになった。競合する鉄道会社間（国鉄を含む）では元日の参詣客を誘引するために宣伝合戦とサービス競争が行われた。こうしたことから、鉄道による郊外・遠方の有名社寺への「恵方詣り」は盛行を見せる<ref name="hirayama2012-107109">平山（2012年）、pp.107-109</ref>。しかし、年ごとに変わる恵方に対して、方角に関係のない「初詣」という言葉が広告によく使われるようになり、大正時代以後は「初詣」が主に使用されるようになった<ref name="hirayama2012-114117">平山（2012年）、pp.114-117</ref>。元日の参拝先を恵方に限定しない「[[初詣]]」の普及に置き換えられる形で、恵方詣りの慣習は衰退する<ref name="hirayama2012-129130">平山（2012年）、pp.129-130</ref>。

== バリエーション ==
*毎年同じ神社に恵方詣りすることも可能である。方法は、一度、目標とする神社へ直接向かわず、神社が恵方の方角になる地点まで出向き、そこから神社に参拝するのである。これは簡単な[[方違え]]になる。これにより毎年、同じ[[氏神]]に詣る事が出来るとも言われている。

*関西地方では、恵方詣りは元日よりも[[節分]]に盛んに行われていた<ref name="hirayama2012-109">平山（2012年）、p.109</ref>。節分に恵方に向かって太巻きを食べる慣習（いわゆる「[[恵方巻]]」）は、関西で節分と恵方が結びついていた名残である<ref name="hirayama2012-106">平山（2012年）、p.106</ref>。明治時代に鉄道会社の集客競争の中で節分以外にも恵方が持ち込まれるようになり、関西の人々は元日などにも恵方への参詣を行うようになった<ref name="hirayama2012-112">平山（2012年）、p.112</ref>。しかしながら、鉄道会社が熾烈な競争の中で自社沿線の神社仏閣をめいめいに恵方であると宣伝し始めたため、やがて恵方の意味は埋没した<ref name="hirayama2012-109114">平山（2012年）、pp.109-114, 117-125</ref>。大正末期以降、関西では方角にこだわらない「初詣」が正月行事の代表として定着し、恵方詣りは衰退した<ref name="hirayama2012-125126">平山（2012年）、pp.125-126</ref>。

== 脚注 ==
<references />

== 参考文献 ==
* 平山昇『鉄道が変えた社寺参詣』（交通新聞社、2012年）

== 関連記事 ==
*[[初詣]]
*[[方位神]]

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