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'''幻覚'''(げんかく、hallucination)とは、[[医学]](とくに[[精神医学]])用語の一つで、対象なき[[知覚]]、即ち'''実際には外界からの入力がない感覚を体験してしまう症状'''をさす。聴覚、嗅覚、味覚、体性感覚などの幻覚も含むが、幻視の意味で使用されることもある。実際に入力のあった感覚情報を誤って体験する症状は[[錯覚]]と呼ばれる。 == 種類 == 幻覚には以下のものがある。 *幻聴(auditory hallucination):[[聴覚]]の幻覚 **実在しない音や声がはっきりと聞こえることをいう。聞こえるものは要素的なものから人の話し声、数人の会話と複雑なものまで程度は様々である。[[てんかん]]などでも起こりえるが、会話の場合は[[統合失調症]]の可能性が高くなる。統合失調症では意識障害時ではなく意識清明期におこり、耳から聞こえてくる、頭の中に直接響いてくる、腹部から聞こえてくる場合もある。統合失調症ではただの音であったり知り合いの声、悪口や命令や自分の考えであったり、会話であったり内容は様々である、[[妄想]]に結びつくのが特徴である。急性期は鮮明に聞こえるが、軽快するにつれ不鮮明となるため陽性症状の指標ともなる。聞こうとすれば聞こえる、聞こうとしなくても聞こえる、声に逆らうことができないといったことも重症度の目安となる。例として、壁を叩く音が聴こえる等。 *幻視(visual hallucination):[[視覚]]性の幻覚 **実在しないものがみえるものである。単純な要素的なものから複雑で具体的なものまで程度は様々である。多くの場合は意識混濁という[[意識障害]]時に起こることが多く、特にアルコール中毒といった中毒性疾患や[[神経変性疾患]]でよく認められる。アルコール中毒で認められる幻視は典型的には小動物が認められるというものである。これらは意識変容によっておこるものと考えられている。特殊な例としては脳幹病変の際に幻覚様体験が起こることがあり、脳脚性幻覚と言われる。[[脳幹]]は意識において極めて重要な役割を担う部位であり、大脳と脳幹の連絡の障害が[[金縛り]]と考えられている。[[統合失調症]]で幻視が認められることは極めて稀である。例として、存在しない人、モノ、建物がまるで本当に存在するかのように見える等。また、視覚障害者の1割程度は脳の過活動から、精神に異常が無いにもかからず幻視を見る(シャルルボネ症候群)。他の例として、遭難中に幻視を見ることが多い。こちらは逆に救助者や飲み物、帰る家など自分の期待するものを脳が作り出すと見られている。 *幻嗅(olfactory hallucination):[[嗅覚]]の幻覚 *幻味(gustatory hallucination):[[味覚]]の幻覚 *[[幻肢]]:触覚の錯覚 == 病態 == さまざまな説が提案されているが、現在のところはっきりとは分かっていない。 ;中脳辺縁系の[[ドパミン]]神経の過活動 :ドパミン作動薬である覚醒剤や大麻の成分が幻覚を起こすこと、幻覚に対してドパミン拮抗薬である[[抗精神病薬]]が有効なことなどから推測される。 ;自己モニタリング機能の障害 :自己と他者の区別を行う機能である自己モニタリング機能が正常に作動している人であれば、空想時などに自己の脳の中で生じる内的な発声を外部からの音声だと知覚することはないが、この機能が障害されている場合、外部からの音声だと知覚して幻聴が生じることになる。 == 原因 == 幻覚は、麻薬などの服用、あるいは[[精神病]]や[[心的外傷後ストレス障害]](PTSD)などといった、特殊な状況でのみ起きるわけではない。正常人であっても、夜間の高速道路をずっと走っている時など、刺激の少ない、いわば[[感覚遮断]]に近い状態が継続した場合に発生することがある。[[アイソレーション・タンク]]のように徹底して感覚を遮断することでも幻覚が見られる。 === 器質性 === 脳の器質疾患により幻覚が起こりうる。 [[ナルコレプシー]]、[[脳血管障害]]、[[脳炎]]、脳外傷、[[脳腫瘍]]、あるタイプの[[てんかん]]、[[痴呆]]など。 === 症状性 === 全身性の疾患に続発して幻覚が起こることがある。代謝性疾患、[[内分泌]]性疾患、神経疾患など。 === 精神病性 === 主に[[統合失調症]]圏の疾患で幻覚がみられる。[[統合失調症]]をはじめ、統合失調症様障害、[[非定型精神病]]など。感情障害でも幻聴が起こることがある。 === 心因性 === 重度の心因反応、PTSDなど。他に、遭難中に救助者や飲み物の幻覚を見ることは多い。いずれも脳の防衛本能によるものとされる。 === 薬理性 === [[LSD (薬物)|LSD]]などの[[幻覚剤]]、[[覚醒剤]]、[[アサ|大麻]]などの[[薬物乱用]]による。[[ステロイド]]などの治療薬でも幻覚が起こることがある。 === 特殊状況下の正常な反応 === 断眠、感覚遮断、高電磁場など == 幻覚の原因と内容の関連 == 疾患により幻覚の内容が異なる傾向があると言われている。例えば[[統合失調症]]では幻聴が、[[レビー小体病]]では幻視が、[[アルコール依存症]]の離脱症状では小動物幻視(小さい虫などが見える)が多いとされているが、必ずしも全例に当てはまる訳ではない。 == 関連項目 == * [[幻]] * [[神経]] * [[精神医学]] * [[感覚]] ** [[錯覚]] * [[精神病]]、[[統合失調症]] * [[薬物乱用]] ** [[幻覚剤]]([[LSD (薬物)|LSD]])、[[覚醒剤]]、[[アサ|大麻]] * [[閃輝暗点]] * [[シミュレーテッドリアリティ]] * [[二分心]] * [[プラズマ#オカルトとの関連性]]、[[経頭蓋磁気刺激法]]、[[心霊現象]] {{DEFAULTSORT:けんかく}} [[Category:症候]] [[Category:感覚]] [[Category:心理学]] [[Category:哲学の概念]]
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