小田急2200形電車のソースを表示

{{鉄道車両
|車両名=小田急2200形電車
|社色=#112299
|画像 = Oer2200.JPG
|pxl = 280px
|画像説明 = 2200形（1980年、本鵠沼駅）
|unit =
|編成 =2両固定編成（2200形）<br/>4両固定編成（2220形）
|起動加速度 =3.0
|営業最高速度 =100
|設計最高速度 =110
|最高速度 =
|定格速度 =
|減速度（常用最大）=
|減速度（非常） =
|編成定員 =
|車両定員=130人（デハ2201・座席52人/立席78人）<br/>130人（デハ2221・座席46人/立席84人）
|編成長 = 35m（2200形）<br/>70m（2220形）
|最大寸法 =17,570 × 2,800 × 4,120 mm（デハ2201）<br/>17,570 × 2,800 × 4,145 mm（デハ2217）<br/>17,570 × 2,800 × 4,130 mm（デハ2221）
|車体長 =17,000
|車体幅 =2,700
|車体高 =3,695
|編成質量 =
|車両質量 =31.0t（デハ2201）<br/>33.7t（デハ2221）
|軸配置 =
|軌間 =1,067
|電気方式 =[[直流電化|直流]]1,500V<br/>（[[架空電車線方式]]）
|主電動機 =[[三菱電機]]MB-3012-B（デハ2201-2216）<br/>三菱電機MB-3032-A（デハ2217・デハ2218・デハ2221-2236）
|モーター出力 =75kW
|機関出力 =
|搭載数 = 4
|端子電圧 = 340V
|編成出力 =
|定格出力 =
|定格引張力 =
|駆動装置 =[[直角カルダン駆動方式]]（デハ2201-2216）<br/>[[WN駆動方式]]（デハ2217・デハ2218・デハ2221-2236）
|歯車比 =59:12=4.90（デハ2201-2216）<br/>81:12=5.06（デハ2217・デハ2218・デハ2221-2236）
|変速段 =
|台車 =FS203（デハ2201-2216）<br/>FS321（デハ2217・デハ2218）<br/>FS316（デハ2221-2236）
|制御装置 =[[発電ブレーキ|発電制動]]併用直並列複式（ABFM-D） ABFM108-15-MDHB
|ブレーキ方式 = [[電磁直通ブレーキ|電磁直通式電空併用]][[自動空気ブレーキ|中継弁付自動空気制動]](HSC-D)
|保安装置 =[[自動列車停止装置#多変周式信号ATS（多変周式（点制御、連続照査型））|OM-ATS]]
|製造メーカー =[[日本車輌製造]]・[[川崎重工業車両カンパニー|川崎車輛]]
|備考全幅={{Double image stack|right|OER 2200 sideview.png|OER 2220 sideview.png|280|2200形側面図|2220形側面図}}
}}
'''小田急2200形電車'''（おだきゅう2200がたでんしゃ）は、[[小田急電鉄]]（小田急）がかつて保有していた[[通勤形車両 (鉄道)|通勤車両]]<!--小田急では「通勤形」という区分ではないため。竣功図には「並等電動客車」というように書いてあるようですが-->である。小田急の一般営業車両としては初めて[[カルダン駆動方式]]を採用した電車で、いわゆる「高性能電車」の第一世代とされ、本形式で採用された技術は、その後の小田急の車両における基礎的なものと位置づけられている<ref name="rp405-174"/>。

本項では以下、ほぼ同様の車体で駆動方式が一部変更され、当初4両固定編成で導入された'''小田急2220形電車'''についても記述し、2200形・2220形の2形式をまとめた呼称としては「本形式群」、[[小田急2300形電車|2300形]]・[[小田急2320形電車|2320形]]も含めた4形式をまとめた呼称としては「ABFM車」<ref name="abfm" group="注釈">"ABFM"とは、三菱電機製の直流電車用自動加速形・弱め界磁付き多段制御装置の形式名で、Aは「自動加速('''A'''utomatic acceleration)」、Bは「低電圧制御('''B'''attery voltage)」、Fは「弱め界磁付('''F'''ield tupper)」、Mは「多段進段('''M'''ultiple notch)」。本来は[[ウェスティングハウス・エレクトリック]]社系の単位スイッチ式制御器に与えられた型番であるが、三菱電機製の場合、後には[[カムシャフト|電動カム軸]]制御器もこの名で呼ばれるようになった。</ref>を用いる。また、[[小田急2400形電車|2400形]]は「HE車」、[[小田急2600形電車|2600形]]は「NHE車」と表記する。

== 概要 ==
1950年以降、[[日本国有鉄道]]（国鉄）をはじめとする各鉄道事業者では車体および[[鉄道車両の台車|台車]]の軽量化と、駆動方式の変更と[[主電動機]]（モーター）の小型化を軸とする高性能車の開発を進めていた<ref name="rp405-173"/>。小田急においても例外ではなく、1951年2月には[[直角カルダン駆動方式]]・試験台車を装備した[[東芝]]の試験車両1048号車を使用して走行試験を行った<ref name="arc1-14"/>ほか、1953年2月には日本鉄道技術協会 (JREA) の高速運転に関する研究に協力する形で、試験台車を装備した国鉄モハ40030・モハ40044・モハ70043を使用して走行試験が行われた<ref name="arc1-14"/>。また、1953年には試験的に車体と台車の軽量化を採用した[[小田急2100形電車|2100形]]が登場していた。

これらの試験結果や運用実績を踏まえて、小田急では初となる軽量高性能車として1954年7月に導入されたのが2200形である。2200形は前面非貫通型で2両固定編成であったが、1958年の増備車両では前面貫通型の4両固定編成となり、形式も2220形に変更された。さらに、1959年には前面貫通型の2両固定編成が2200形として増備された。

その後、HE車の増備が進むにつれて、本形式群はHE車の増結車両として使用されることになり、2220形は2両固定編成に改造された。2300形・2320形が通勤車に格下げされた後は、2両固定編成の高性能車として4形式とも共通運用が行われるようになり、搭載制御器にちなみABFM車（またはFM車）と呼称された<ref name="abfm" group="注釈"/>。

1982年8月から淘汰が開始され、1984年に本形式群はすべて[[廃車 (鉄道)|廃車]]となった。廃車後は[[富士急行]]へ8両・[[新潟交通]]へ2両が譲渡されたが、いずれも既に廃車となっている。そのほか、8両分の台車が[[伊予鉄道]]に売却された。

== 車両概説 ==
本節では、登場当時の車両仕様について記述する。

2200形は17.5[[メートル|m]]車による2両固定編成で、形式は全車両デハ2200形である。すべて先頭車で、[[鉄道の車両番号|車両番号]]はデハ2201からデハ2218までの連番となっている。

2220形は同じく17.5m車による4両固定編成である。形式は全車両デハ2220形で、車両番号は以下の通りとなる。
* 先頭車…デハ2221・デハ2224・デハ2225・デハ2228・デハ2229・デハ2232・デハ2233・デハ2236
* 中間車…デハ2222・デハ2223・デハ2226・デハ2227・デハ2230・デハ2231・デハ2234・デハ2235

=== 車体 ===
先頭車・中間車とも車体長17,000[[ミリメートル|mm]]・全長17,500mmで、車体幅は2,700mmである。正面はデハ2217・デハ2218を除く2200形が非貫通型の2枚窓で、そこはかとなく動物的な印象があり、「ネコ」という愛称で呼ばれていた<!--これは1983年11月号か12月号あたりの鉄道ジャーナル掲載の2200形の全廃のトピックスに出ていたはず-->。1956年までの製造車（デハ2212まで）は窓枠が[[チーク]]製となっている<ref name="arc1-106"/>など、車体の一部に木製部品が使用されている半鋼製車体であったが、1957年以降の増備車両では[[アルミサッシ]]の窓枠が採用され、木製部品は全く使用されていない全金属製車体となった。

2220形では[[小田急電鉄の車両検修施設|検車区]]から車内清掃時の移動のため[[貫通扉]]設置の要望があった<ref name="arc1-10"/>ことから、貫通型3枚窓となり、デハ2217・デハ2218も貫通型で製造された。貫通扉の隙間風対策として、それまでの車両では単に走行中に開かないためのラッチが設置されていたのみであったが、2220形では当時の[[冷蔵庫]]で採用されていた、大型ハンドルで押し付けて密着させる方式が採用された<ref name="arc1-10"/>。2220形・デハ2217・デハ2218では貫通扉下部に[[方向幕]]が設置された。

客用扉は各車両とも3か所で、1,100mm幅の[[片開き]]扉である。側窓は1,000mm幅の2段上昇窓が客用扉間に3つ・客用扉と連結面の間には2つ、乗務員扉と客用扉の間には1つ配置された。各客用扉に隣接する窓のうち1つ<ref group="注釈">奇数番号の車両では小田原寄り、偶数番号の車両では新宿寄り。</ref>は戸袋窓となっている。[[列車便所|トイレ]]の窓は曇りガラスとされたほか、男子用トイレ部分の窓幅に限っては500mm幅となっている。屋根上の[[ベンチレーター|通風器]]は、デハ2217・デハ2218を除く2200形は屋根上に小型通風器を2列配置したが、2220形・デハ2217・デハ2218では屋根中央に1列という配置になった。

塗装は腰部と上部が青色、窓周りが黄色という、当時の特急色となった。この塗装デザインは、その後1969年まで通勤車両の標準色となった。

=== 内装 ===
座席はすべて[[鉄道車両の座席#ロングシート（縦座席）|ロングシート]]であるが、扉脇の仕切りは板状のものから金属製のパイプに変更となった。2220形では比較的長距離の運用があることを考慮し、デハ2222・デハ2226・デハ2230・デハ2234の[[小田原駅|小田原]]寄り海側にトイレを2室設置した。連結面寄りが男女共用の[[便器#和式大便器（和風大便器）|和式トイレ]]、扉側は男子専用の[[便器#小便器|小用トイレ]]である。

車内の照明装置は2100形で試験的に採用された交流[[蛍光灯]]を本格採用した。先頭車では40[[ワット (単位)|W]]の蛍光灯を各車両とも2列に11本並べており、照度は460[[ルクス]]である<ref name="arc1-105"/>。
{{-}}

=== 主要機器 ===
[[ファイル:Choshi-Electric-Railway-1001-FS316.jpg|thumb|right|240px|WN駆動のFS316形台車。写真は銚子電気鉄道1000形に転用されたもの。]]
本形式群共通の事項として、主に車両制作費や保守費の抑制を目的として、[[電動発電機]]と[[圧縮機|電動空気圧縮機]]を奇数番号の車両に、[[主制御器]]と[[集電装置]]を偶数番号の車両に搭載し、機器の集約化を図り<ref group="注釈">この方式は2両の電動車でユニットを組むことから「MM'ユニット方式」と呼ばれる。元来は低端子電圧の高速モーターで発電ブレーキを確実に使用するための手段として、三菱電機と[[近畿日本鉄道]]のコンビによって開発・実用化された。</ref>、同時に全[[動力車|電動車]]方式とすることで高加減速性能を実現し、列車の高速化と単位時間あたりの列車運行本数の高密度化を合わせて実現可能とした<ref name="rp430-17">『鉄道ピクトリアル』通巻430号 p.17</ref>。各車両とも1台車に対して主電動機2基を装架している。

2200形では、主電動機は小型で高速回転の電動機として、1時間定格出力75kW（[[公称電圧|端子電圧]]340[[ボルト (単位)|V]]）の[[三菱電機]]MB-3012-B形を使用した。駆動方式は[[電機子]]軸を線路方向にレイアウトし、[[自在継手]]を経て[[ハイポイド|ハイポイドギア]]で減速しつつ回転方向を直角に変える直角カルダン駆動方式であり、台車は[[アルストム#アルストムリンク式台車|アルストムリンク式]]（平行リンク式）の[[住友金属工業]]製のFS203が採用された。いずれも小田急では初の採用事例である<ref name="rp405-171"/>。

2220形では保守部門より保守軽減を図りたいという意見があったこと<ref name="arc1-63"/>と、折りしも主電動機の電機子軸を従来通り枕木方向にレイアウトする[[WN駆動方式]]について[[狭軌]]用を実用化する目途が立った<ref name="arc1-63"/>ことから、主電動機は1時間定格出力75kW（端子電圧340V）の三菱電機MB-3032-A形とし、駆動方式についてはWN駆動方式を採用、台車もアルストムリンク式の住友金属工業FS316形<ref name="rp405-174"/><ref group="注釈">台車としての基本構造はFS203とほぼ同一で、主電動機支持架回りのみ異なる。なお、住友金属工業の台車では、直角カルダン駆動方式に対応するものを200番台、平行カルダン駆動方式各種（レイアウトが共通するWN駆動を含む）に対応するものを300番台と区分していたため、同一型番のサフィックス付与ではなく別型番として納入されている。</ref>。
が採用された。

最終増備車のデハ2217・デハ2218では、駆動方式と主電動機は2220形と同一ながら、台車は小田急で初採用となる[[空気バネ|空気ばね]]台車として、FS36形をベースとして枕ばねをベローズ式空気ばねで置き換えたアルストムリンク式空気ばね台車の住友金属工業FS321形が採用された。

アルストムリンク式の台車は、機器流用車両の[[小田急4000形電車 (初代)|4000形]]を除くその後の小田急の通勤車両の標準となり、[[小田急1000形電車|1000形]]まで継続して採用されたほか、特急車両でも[[小田急7000形電車|7000形LSE車]]・[[小田急10000形電車|10000形HiSE車]]・[[小田急20000形電車|20000形RSE車]]にも採用されている。

主制御器については、三菱電機製の自動加速形[[電気車の速度制御#弱め界磁制御|弱め界磁]]付き多段制御装置であるABFM-D形<ref name="abfmd" group="注釈">最後のDは「発電制動('''D'''ynamic Break)」。</ref>が採用された。これは8個の主電動機を1つの制御器で制御する方式 (1C8M) で、[[発電ブレーキ|発電制動]]を常用する。また、制動装置は、[[電磁直通ブレーキ|電磁直通式]]で電空併用（発電制動・空気制動を併用）の[[自動空気ブレーキ|中継弁付自動空気制動]]としてHSC-D形<ref group="注釈">「ハイスピードコントロール('''H'''igh '''S'''peed '''C'''ontrol) ・ダイナミックブレーキ ('''D'''ynamic Break) 付」の略である。</ref>が採用されたが、これも小田急では初の採用事例である<ref name="arc1-63"/>。

== 沿革 ==
1954年7月に2200形2両固定編成4本が入線し、同年7月30日に関係者向けの展示会が行われた<ref name="arc1-104"/>後に運用を開始した。運転を担当する乗務員（[[運転士]]）からは、それまでの小田急の車両とは異質の車両として受け止められ<ref name="rp829-132"/>、本形式の運転に対して苦手意識を持つ運転士も多かったという<ref name="rp829-132"/>。起動時に[[マスター・コントローラー|主幹制御器]]でノッチを投入した後のタイムラグが理解できず、上り[[線形 (路線)#勾配|勾配]]のついた本線上での入換時には、ノッチ投入後に電車が一瞬後退するために車両故障と間違えられたこともあったという<ref name="rp829-132"/>。

2200形は1957年までに8編成が製造されたが、1958年の増備にあたっては4両固定編成に対する要望があった<ref name="arc1-64"/>ことや、折りしも狭軌用のWN駆動方式について実用化の目途が立った<ref name="arc1-63"/>ことから、車体や駆動方式を一部変更した上で4両固定編成とした2220形の増備に移行した。なお、1955年以降数次に分けて、デハ2207・デハ2211に[[三菱重工業MD形台車|新三菱重工業MD101形]]台車を装着した上で、平行カルダン方式の試験が行われた<ref name="arc1-63"/><ref name="arc2-65"/>。

[[新宿駅|新宿]]と[[箱根湯本駅|箱根湯本]]を直通する[[小田急小田原線#急行|急行]]については本形式群の限定運用となる<ref name="arc1-46"/>など、小田急の通勤車両の筆頭として運用されていたが、全車電動車方式では車両の製造コストや保守費用の増大も招くことになった<ref name="rp679-131"/>。折りしも通勤需要の増大が著しかったこともあって、これまで以上のペースで車両増備を行わなければならない<ref name="rp679-131"/>ことになり、投資額の大幅な増加が懸念されることになった<ref name="rp679-132"/>。このため、1959年の2両固定編成増備を最後に新造は打ち切られ、以後の車両増備は経済車両として新しく設計したHE車によって行われることになった。なお、同年に増備された編成は車体や駆動方式は2220形とほぼ同一であったが、2両固定編成であることから2200形の増備車として扱われ<ref name="arc1-64"/>、番号も2200形の続き番号であるデハ2217・デハ2218となった。

[[ファイル:ChangeOER-2220.png|thumb|right|240px|2220形の2両固定編成化改造の概略図]]
HE車の導入後、2200形は主に4両編成の列車に対する[[増解結|増結]]車両としての運用が多くなった<ref name="arc1-79"/>。2220形についてはしばらくはHE車と同一の運用についていたが、HE車の増備が進むにつれ、増結用の2両固定編成が不足気味になった<ref name="arc1-79"/>ことから、1962年に2220形は2両固定編成に改造されることになった。この時、まず先頭車だけの2両編成に組成を変更し、中間車に対してHE車と同様の正面形態で貫通形[[操縦席|運転台]]を増設した後に、元の編成に戻すという手法を採っている<ref name="arc1-79"/>。増設運転台は、[[前照灯]]が2灯式となっていることと、前面貫通扉に設置された方向幕が埋め込み仕様になっている点で識別可能であった。また、車内トイレはこの改造時に廃止されている。

1963年には、[[小田急小田原線#準特急（サービス急行）|準特急]]の廃止により、2300形と2320形が本形式群と同様の目的で使用するために3扉ロングシート車に改造され、以後は本形式群と2300形・2320形は共通運用となり、小田急のダイヤ上も同一形式扱いとされるようになった。小田急の場合、[[小田急2600形電車|NHE車]]までの通勤車両については制御装置などの英字による略称を内部用語として用いることがあり、趣味的にも流用されるが、本形式群と2300形・2320形を含めた4形式においては、搭載制御器にちなみ「ABFM車」（あるいは「FM車」）と呼称されるようになった<ref name="abfm" group="注釈"/>。なお、2200形のうち非貫通型の車両については、一時期正面貫通型化改造の構想があった<ref name="arc1-10"/>ため、しばらく方向幕は設置されていなかったが、貫通型化改造は行われないことになったため、1963年に方向幕の設置が行われている<ref name="arc1-10"/>。また、木製窓枠の車両については、この時期に順次アルミサッシ化が進められた<ref name="arc1-79"/>。

1968年には既設の運転台の前照灯もすべて2灯式に改造され、同時に種別表示幕・[[自動列車停止装置##多変周式信号ATS（多変周式（点制御、連続照査型））|OM-ATS]]・[[信号炎管]]の追設が行われた<ref name="arc2-68"/>。1969年にはケイプアイボリーにロイヤルブルーの帯を巻く新塗装に変更され<ref name="arc2-68"/>、同時期に連結器が[[連結器#密着自動連結器|密着自動連結器]]から[[連結器#密着連結器|密着連結器]]に交換された<ref name="arc2-68"/>。1974年には扉下に[[プラットホーム]]と車体の間の隙間を埋めるためのステップが設置された<ref name="rp405-173"/>。

{{Double image aside|right|Oer2220.JPG|200|Oer2212 in fujikyu livery.JPG|210|6両編成で運用される2220形電車（1979年）|富士急色のまま小田急線で試運転を行ったデハ2211・デハ2212（1982年8月30日）}}
この時期以降、大型車両の増備に伴い、ABFM車は2両編成を3本連結した6両編成での運用が目立つようになった<ref name="arc2-68"/>。時にはABFM車だけで10両編成を組むこともあった<ref name="rp679-163"/>。また、前面非貫通型の2200形は6両編成の中間に連結されることが多くなり、先頭に連結される機会が減少した<ref name="rp405-130"/>。

1982年よりABFM車の淘汰が開始されることになり、まず2200形の1編成（デハ2211・デハ2212）が1982年8月31日付で廃車となったが、廃車後は富士急行（富士急）に譲渡され、同社では[[富士急行5700形電車|5700形]]として使用されることになった。ところが、譲渡整備を行った状態で[[鉄道車両の検査|定期検査]]を行ったため、同年8月30日には富士急の塗装デザインで小田急の路線上での[[試運転]]を行うという珍しい事象が発生した<ref name="rp679-195"/>。その後も漸次[[小田急8000形電車|8000形]]の増備とともに廃車が進められ、2200形の非貫通型車両は1983年8月に全廃となった<ref name="1985-k-184"/>。残りの車両についてはしばらくはABFM車やHE車と連結した6両編成で運用されていたが、1984年6月24日に[[鉄道友の会]]東京支部による「お別れ式」が行われた<ref name="1985-k-135"/>後、同年6月30日に全車両が廃車となり<ref name="1985-k-184"/>、本形式群はともに全廃となった。
{{-}}

== 他社への譲渡 ==
=== 富士急行 ===
[[ファイル:Fujikyu-5700-2200.jpg|thumb|富士急行に譲渡された2220形（左）・2200形（右）]]
{{main|富士急行5700形電車}}
デハ2211・デハ2212・デハ2223・デハ2224・デハ2225・デハ2226・デハ2227・デハ2228の8両が富士急に譲渡された。なお、元2200形の2両は、譲渡後の1984年に2220形の廃車で捻出されたFS316に台車を交換している。前述の通り、同社では5700形として運用されたが、非冷房車である上に老朽化が進んだため、車両のレベルアップのため[[京王5000系電車|京王5000系]]を譲受の上車両の更新を行うことになり、1995年10月以降に順次廃車が開始され、1997年3月に全廃となった。

なお、廃車後に2両分の台車 (FS316) が富士急から[[銚子電気鉄道]]に譲渡され、同社[[銚子電気鉄道線#電車|デハ1000形電車]]に使用されている<ref name="rp679-195"/>。
{{-}}
=== 新潟交通 ===
{{Double image aside|right|Niigata_moha2220.jpg|180|Niigata2230interior 19850314.jpg|90|新潟交通モハ2220形|2230号車の車内 (1985年3月14日撮影) }}
1984年6月に廃車となったデハ2229・デハ2230については、[[ワンマン運転|ワンマン運行]]のための[[バックミラー]]設置と、[[併用軌道|路面区間]]に対応した[[排障器]]の設置を行った上で新潟交通に譲渡された。塗装は変更されず、番号も形式称号がデハからモハになった以外は小田急時代と同じ番号である。

輸送力列車に運用され、ワンマン化改造は受けてはいたが、[[白山前駅|県庁前]] (のちの白山前) 駅と[[東関屋駅]]との間に存在した[[軌道法]]準拠区間を運転する際には車掌が乗務した。2229は衝突事故に遭い、修理の際[[1994年]][[8月]]に貫通扉及び方向幕の埋め込み改造を受けている。

モーターの故障を起こしたことで同線廃止前の1998年11月に[[休車]]<ref name="rp679-194"/>となり、そのまま翌[[1999年]][[4月5日]]に電車線は廃止された。廃線後はしばらく旧東関屋駅の[[車庫]]に放置されていたが、腐食が進んだことから当駅に留置されていた他の車両と共に[[2003年]][[3月]]に解体された。なお、旧東関屋駅の車庫もその後、同年6月に解体された。

=== 伊予鉄道 ===
台車のみの譲渡であるが、6両分のFS316と2両分のFS321が主電動機一式とともに譲渡されている。

FS321は[[伊予鉄道130系電車|130系]]モハ133・モハ134の高性能化時に使用され、その後[[京王電鉄|京王帝都電鉄]]（当時）から譲渡された[[伊予鉄道700系電車|700系]]のモハ717・モハ718で使用されていた<ref name="rp546-174"/>が、車輪転削盤にかからないことから、1993年11月までに他の台車に振り替えられている<ref name="rp679-196"/>。

FS316はモハ131・モハ132・モハ135・モハ136・モハ301・モハ302に使用するための台車として使用され<ref name="rp546-174"/>、その後1993年11月時点では同社モハ712・モハ714・モハ715・モハ722・モハ724・モハ725に使用されていた<ref name="rp679-196"/>。その後3両が他の台車に交換されたため、1999年の時点では同社モハ712・モハ714・モハ715で使用されている<ref name="rp679-196"/>。

== 保存車両 ==
{{Triple image|right|OER 2201-2202 OnoFactory 19940514.jpg|150|Odakyu-2200.jpg|150|OER-2218.jpg|150|大野工場で保管<!--14年くらいこの画像の状態で、どちらかといえば放置に近かった-->されていた頃のデハ2201・デハ2202|喜多見検車区で保存されているデハ2201・デハ2202|陸送される直前のデハ2218}}
1983年6月に廃車となった2200形の第1編成（デハ2201・デハ2202）については、小田急では初の高性能車として歴史的な意義があることから保存されることになった。廃車後しばらくは[[小田急電鉄の車両検修施設#大野総合車両所|大野工場]]の西側の本線脇に保管<!--個人的な印象では放置に近かった-->されていた<ref name="rp679-197"/>が、1997年に登場当時の青色と黄色の塗装デザインに戻された後<ref name="rp679-197"/>、1998年2月に[[小田急電鉄の車両検修施設#喜多見検車区|喜多見検車区]]に移動された<ref name="rp679-197"/>。以後は同検車区内で保存されており、時折[[ファミリー鉄道展]]にて展示されることがある。

1984年6月に廃車となったデハ2218については、同年12月に[[神奈川県]][[藤沢市]]の[[辻堂海浜公園]]内の交通公園に搬入されたが、この当時の小田急では珍しく[[牽引自動車|トレーラー]]による[[車両輸送]]が行われた<ref name="1985-k-140"/>。保存にあたっては台車を富士急の台車交換で発生したFS203に変更している<ref name="rp546-174"/>。車内にも入れる状態で保存展示されていたが、[[潮風]]を受けて傷みがひどくなったため[[1994年]]9月に解体された<ref name="rp679-197"/>。

1982年の廃車後に富士急に譲渡されたデハ2211・デハ2212（富士急行ではモハ5707・モハ5708）については、富士急で1996年9月に廃車後、[[山梨県]][[笛吹市]][[一宮町 (山梨県)|一宮町]]市之蔵の日本システムウェアに譲渡された<ref name="rp679-195"/>。番号は富士急時代のままだが、塗装デザインは登場当時の青色と黄色のツートンカラーに戻されている<ref name="rp679-195"/>。

== 脚注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
{{reflist|2|refs=
<ref name="1985-k-135">[[#小山1985|『私鉄の車両2 小田急電鉄』p.135]]</ref>
<ref name="1985-k-140">[[#小山1985|『私鉄の車両2 小田急電鉄』p.140]]</ref>
<ref name="1985-k-184">[[#小山1985|『私鉄の車両2 小田急電鉄』p.184]]</ref>
<ref name="rp405-130">[[#RP405|『鉄道ピクトリアル』通巻405号 p.130]]</ref>
<ref name="rp405-171">[[#山下405|『鉄道ピクトリアル』通巻405号 p.171]]</ref>
<ref name="rp405-173">[[#山下405|『鉄道ピクトリアル』通巻405号 p.173]]</ref>
<ref name="rp405-174">[[#山下405|『鉄道ピクトリアル』通巻405号 p.174]]</ref>
<ref name="rp546-174">[[#岸上546|『鉄道ピクトリアル』通巻546号 p.174]]</ref>
<ref name="rp679-131">[[#山岸679|『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.131]]</ref>
<ref name="rp679-132">[[#山岸679|『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.132]]</ref>
<ref name="rp679-163">[[#RP679|『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.163]]</ref>
<ref name="rp679-194">[[#岸上679|『鉄道ピクトリアル』通巻679号 p.194]]</ref>
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<ref name="rp829-132">[[#川島829|『鉄道ピクトリアル』通巻829号 p.132]]</ref>
<ref name="arc1-10">[[#zadana1|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.10]]</ref>
<ref name="arc1-14">[[#zadana1|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.14]]</ref>
<ref name="arc1-46">[[#生方a1-1959|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.46]]</ref>
<ref name="arc1-63">[[#生方a1-1959|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.63]]</ref>
<ref name="arc1-64">[[#生方a1-1959|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.64]]</ref>
<ref name="arc1-79">[[#生方a1-1963|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.79]]</ref>
<ref name="arc1-104">[[#otenamia1-2200|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.104]]</ref>
<ref name="arc1-105">[[#otenamia1-2200|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.105]]</ref>
<ref name="arc1-106">[[#otenamia1-2200|『鉄道ピクトリアル アーカイブス1』p.106]]</ref>
<ref name="arc2-65">[[#山下a2|『鉄道ピクトリアル アーカイブス2』 p.65]]</ref>
<ref name="arc2-68">[[#山下a2|『鉄道ピクトリアル アーカイブス2』 p.68]]</ref>
}}

== 参考文献 ==
=== 書籍 ===
<!--* {{Cite book|和書|author = [[生方良雄]]|authorlink = |coauthors = [[諸河久]]|year = 1981|title = 日本の私鉄5 小田急|publisher = [[保育社]]|ref = 生方1981|id = 0165-508530-7700|isbn = }}
* {{Cite book|和書|author = 生方良雄|authorlink = |coauthors = 諸河久|year = 1983|title = 日本の私鉄5 小田急|publisher = 保育社|ref = 生方1983|id = |isbn = 4586505303}}
* {{Cite book|和書|author = 生方良雄|authorlink = |coauthors = 諸河久|year = 1985|title = 日本の私鉄5 小田急|publisher = 保育社|ref = 生方1985|id = |isbn = 4586505303}}
* {{Cite book|和書|author = 大幡哲海|authorlink = |coauthors = |year = 2002|title = 小田急電鉄の車両|publisher = [[JTBパブリッシング]]|ref = 大幡2002|id = |isbn = 4533044697}}-->
* {{Cite book|和書|author = 小山育男|authorlink = |coauthors = 諸河久|year = 1985|title = 私鉄の車両2 小田急電鉄|publisher = 保育社||ref = 小山1985|id = |isbn = 4586532025}}
<!--* {{Cite book|和書|author = [[吉川文夫]]|authorlink = |coauthors = |year = 1987|title = 小田急 車両と駅の60年|publisher = [[大正出版]]|ref = 吉川1987|id = 0025-301310-4487|isbn =}}-->

=== 雑誌記事 ===
* {{Cite journal|和書|author=生方良雄 |year=2002 |month=9 |title=私鉄車両めぐり37 小田急電鉄 |journal=鉄道ピクトリアル アーカイブスセレクション |issue=1 |pages=pp. 42-71 |publisher=電気車研究会 |ref = 生方a1-1959}}
* {{Cite journal|和書|author=生方良雄 |year=2002 |month=9 |title=私鉄車両めぐり 小田急電鉄（補遺） |journal=鉄道ピクトリアル アーカイブスセレクション |issue=1 |pages=pp. 74-82 |publisher=電気車研究会 |ref = 生方a1-1963}}
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* {{Cite journal|和書|author= |year=1999 |month=12 |title=想い出のColor Photo|journal= 鉄道ピクトリアル|issue= 679|pages= 162-163 |publisher= 電気車研究会|ref = RP679}}
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== 関連項目 ==
{{Commonscat|Odakyu 2200 series}}
{{小田急電鉄の車両}}
{{新潟交通電車線の車両}}
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|1-3=他社から譲り受けた鉄道車両}}
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[[Category:小田急電鉄の電車|2200]]
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