国鉄417系電車のソースを表示

{{鉄道車両
|車両名 = 国鉄417系電車
|社色 = #000000
|画像 = JNR 417 sendai.jpg
|pxl =
|画像説明 = 417系旧国鉄色
|unit = self
|編成 = 3両編成([[MT比|2M1T]])
|起動加速度 = 1.8km/h/s
|営業最高速度 = 100km/h
|設計最高速度 =
|減速度（常用最大）= 3.5km/h/s
|減速度（非常） = 5.0km/h/s
|編成定員 = 239（座席187）
|車両定員 = 
|編成長 =
|最大寸法 = 20,000mm×2,900mm×3,654mm
|車両質量 = 
|軌間 = 1,067mm
|電気方式 = [[直流電化|直流]]1,500V</br>[[交流電化|交流]]20,000V 50Hz/60Hz
|主電動機 = MT54E[[直巻整流子電動機]]
|駆動装置 = [[中空軸平行カルダン駆動方式|中空軸平行カルダン撓み板継手方式]]
|歯車比 = 17:82 (4.82)
|台車 = [[国鉄DT32形台車|DT32F・TR69J]]
|制御装置 = CS43A形電動カム軸接触器式</br>（[[電気車の速度制御#抵抗制御|抵抗制御・直並列組合せ・弱め界磁制御]]）
|ブレーキ方式 = [[発電ブレーキ]]・[[抑速ブレーキ]]併用</br>[[電磁直通ブレーキ]]
|保安装置 = [[自動列車停止装置#ATS-Ps形（変周地上子組合せパターン型）|ATS-Ps]]
|製造メーカー = [[日立製作所]]
|備考 = 
|備考全幅 =
}}
'''国鉄417系電車'''（こくてつ417けいでんしゃ）は、[[1978年]]（[[昭和]]53年）に[[日本国有鉄道]]（国鉄）が設計・製造した[[交直流電車|交直流]][[近郊形車両|近郊形電車]]。全車[[日立製作所]]が製造した。[[1987年]]（昭和62年）の[[国鉄分割民営化]]時には、全車[[東日本旅客鉄道]]（JR東日本）に承継された。

本項では、[[阿武隈急行]]がJR東日本より購入し、所有する'''A417系電車'''（A417けいでんしゃ）についても記述・解説を行う。

== 概要 ==
1970年代の地方都市圏での人口増加・通勤通学需要の増加に伴い、それまで運用されていた[[客車]]列車ではデッキ付近の混雑で乗降に時間がかかり、地元からサービス改善の要望も出されていた<ref name="rp197804">
{{cite journal
|和書
|title=近郊形交直流417系電車の概要
|publisher=電気車研究会
|journal=鉄道ピクトリアル
|author=吉田実
|year=1978
|month=04
}}</ref>。このため、これら客車を順次気動車や電車に置換える必要が生じていた。

都市圏用の近郊形電車で直流・交流いずれの電化区間も運行可能な系列としては、当時既に[[国鉄415系電車|415系電車]]が常磐・北九州地区へ投入されていた。しかし415系は、地方路線へ投入するには以下の問題点があった。
*半自動戸閉め装置・耐寒耐雪構造・抑速ブレーキが未装備のため寒冷地・[[山岳路線]]での運用に難がある。
*客用扉付近にステップがないため[[プラットホーム|ホーム]]高の低い[[鉄道駅|駅]]が多く残る線区では車両側もしくは施設側に対策が必要。

このため地方の気候や路線輸送事情に対応する車両を新設計する要請から開発されたのが本系列である。

== 構造 ==
当時の国鉄は電車に汎用性を追求していたことから、[[北海道]]以外では基本的に[[交流電化|交流]]区間であっても交直両用電車を投入する方針としていた。このため本系列も[[直流電化|直流]]1,500V/交流20,000V50Hz/同60Hzの3電源方式対応車として設計された。

しかし本系列は、営業運転開始から交流50Hz区間でのみ運用され続け、後に誤操作防止のため交直流切替スイッチが交流側に固定された。
*ただし落成後の公式試運転では、[[山口県]][[下松市]]の[[日立製作所笠戸事業所]]出場後に[[山陽本線]]の直流区間や[[鹿児島本線]][[門司駅|門司]] - [[南福岡駅|南福岡]]間の交流60Hz区間を走行した後に仙台まで自力回送されている<ref name="rp197807">
{{cite journal
|和書
|journal=鉄道ピクトリアル
|publisher=電気車研究会
|year=1978
|month=07
}}</ref>。

=== 車体 ===
[[1977年]]から製造されていた[[国鉄キハ40系気動車 (2代)|キハ47形気動車]]の車体構造に類似し、乗降口をやや中央に寄せたデッキなしの片側2扉（両開き）構造とした。車体断面も当時製造されていた気動車・客車との共通化が図られた。

前面は、[[国鉄153系電車|153系電車]]以来国鉄の急行・近郊形電車で採用されているパノラミックウインドウの貫通形である。[[貫通扉]]には膨張性シールゴムを設けて[[操縦席|運転室]]の気密性向上を図った。

運転台は[[国鉄115系電車#1000番台|115系電車1000番台車]]に準じているが、従来の近郊形のものより100mm拡張した前面強化型とした。

[[前照灯]]は[[シールドビーム]]2灯を前面窓下に設置し、中折れシャッターカバー付耐雪構造のタイフォン（[[警笛]]）を装備する。

前面下部の[[排障器]]（スカート）は、寒冷地での使用に対応した大型のものが設置された。

{{Vertical images list
|幅=200px
|1=417.jpg
|2=東北地域本社色
}}
寒冷地での運用を考慮し、各車両には雪切室を設置したほか、客用扉は自動・半自動切替式を採用。編成中のどの運転台からでも操作が可能なシステムとした。

塗装は当初、ローズピンク（[[赤13号]]）の地に[[クリーム4号]]の太帯を正面窓下に入れた交流・直流両用近郊形電車の標準色としたが、JR化後の[[1990年]]頃に[[東北地域本社色]]と呼ばれる[[クリーム10号]]（[[アイボリー]]）を地に[[緑14号]]で帯を巻く塗装に変更された。
*本塗装は[[国鉄457系電車|455・457系電車]]や[[国鉄413系・717系電車|717系電車]]にも採用された。

また車体側面にはサービスの一環と省力化から、側面行先表示機は電動式[[方向幕]]を装備する。
*K-5編成で分割民営化前後の約1年間に[[発光ダイオード|LED]]や[[液晶]]での表示試験を実施した。

=== 台車・機器 ===
[[鉄道車両の台車|台車]]は従来の近郊形車両がコイルバネを使用した[[国鉄DT21形台車|DT21系]]を採用していたのに対し、乗心地向上のため特急・急行形と同等の[[国鉄DT32形台車|DT32F形（電動車）・TR69J形（制御車）]][[空気バネ]]台車を搭載した。
*寒冷地での運用を考慮して、軸バネ・軸箱と電動台車のブレーキシリンダには防雪カバーを取り付け、TR69J形ではのブレーキシリンダにゴム[[蛇腹|ベロース]]を採用し、踏面清掃装置を装備した。

[[主電動機]]は強制通風冷却方式としたMT54E形[[直巻整流子電動機]]を搭載。歯車比は415系と同様の4.82とした。

主制御器は[[国鉄381系電車|381系電車]]で採用されたCS43形を一部改良したCS43A形電動カム軸式[[電気車の速度制御#抵抗制御|抵抗制御]]器を搭載。1基で2両8基分の主電動機を制御する1C8M方式である。

ブレーキは415系同様のSELD式応荷重装置および発電制動付き電磁直通空気ブレーキのほか、[[奥羽本線]][[福島駅 (福島県)|福島]] - [[米沢駅|米沢]]間（[[板谷峠]]）をはじめとする急勾配区間での運用を考慮<ref name="rp197804"/>し、[[抑速ブレーキ]]ならびに耐雪ブレーキを装備した。

補助電源装置の電動発電機（MG）は、強化した暖房機能や将来の冷房搭載にも対応する160kVAをクハ416形に搭載。

[[ジャンパ連結器]]は、当初は他系列との混用を想定しなかったことから74芯のKE96形1基と故障時に455系グループによる推進・牽引を考慮した補助回路接続用19芯のKE76形1基を装備した<ref>後に増備された717系はKE96形を装備したため併結運用が可能。ただし主制御器の違いによる起動時のいわゆる「ドン突き衝動」が発生しやすい（詳細は[[国鉄115系電車#3500番台（JR西日本）]]も参照）。</ref>。

=== 車内設備 ===
[[File:クモハ417-5ドアスイッチ.JPG|160px|thumb|クモハ417-5</br>ドアスイッチ（車外側・開操作のみ行う）]]
座席は固定式クロスシートとロングシートの組合せ（[[鉄道車両の座席#セミクロスシート|セミクロスシート]]）である。クロスシート部の間隔は、それまでの近郊形車両の標準であった1,420mmから1,490mmへと70mm拡大され、居住性が急行形車両並に向上した。
*シート拡大は同時期製造の[[国鉄113系電車|113系1500・2000番台]]・[[国鉄115系電車|115系1000・2000番台]]・[[国鉄415系電車|415系100番台]]・[[国鉄キハ40系気動車 (2代)|キハ40系気動車]]でも採用。「'''シートピッチ改善車'''」と呼ばれ以後の標準となった。

客室内の[[寒冷地仕様|寒冷地]]対策として、両開き式客用[[扉]]は[[自動ドア|半自動]]扱いへの切替を可能としたほか、扉脇に袖仕切と上部にガラス製風防を設置した。
*半自動扉は、当初手動開閉式で適用時期も限られていたが、[[1996年]]に押ボタン操作式に改造後は通年半自動扱いに変更された。半自動扱い中にボタン操作を行うと[[ドアチャイム|ブザー]]が鳴るが、[[車掌]]によるドア開閉時は鳴らない。

普通列車の冷房化が推進されていた時期にも関わらず、都市部を優先する方針・仙台地区の気候・当時の国鉄財政事情などから経費節減のために屋根上[[エア・コンディショナー|冷房装置]]搭載場所に塞ぎ板を取付た冷房準備工事車として落成した。
*[[1988年]]からAU75G形[[集中式冷房装置]]が搭載された。

== 車両形式 ==
; クモハ417形（1 - 5） 
: モハ416形と[[動力車#MM'ユニット方式|ユニット]]を組む下り方（一ノ関向き）制御[[動力車|電動車]]。CS43A形主制御器・主[[抵抗器]]を搭載し、1・4位側面に主電動機冷却風用雪切室を設置する。定員108名（座席61名）。
; モハ416形（1 - 5）
: クモハ417形とユニットを組む中間電動車。耐雪形のPS16H形[[集電装置|パンタグラフ]]・[[空気遮断器]]・交直切換器・交流[[避雷器]]・TM20形主[[変圧器]]・RS45B形[[整流器]]・主平滑リアクトルを搭載し、1・4位側面に主電動機冷却風用雪切室を設置する。定員124名（座席68名）。
; クハ416形（1 - 5）
: 上り方（黒磯向き）[[制御車]]。160kVA電動発電機 (MG) とC2000形空気[[圧縮機]] (CP)を搭載し、3位側隅に[[列車便所|トイレ]]と4位側隅にMG冷却風用雪切室を設置する。定員107名（座席60名）。
{{triple image|center|JNR kumoha417-1.jpg|185|JNR moha416-1.jpg|180|JNR kuha416-1.jpg|180|クモハ417-1|モハ416-1|クハ416-1}}

=== 編成 ===
以下の編成を組成する。
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:100%;"
|-
|style="background-color:#ddd;"|&nbsp;
|colspan="3"|{{TrainDirection|一ノ関|黒磯}}
|-
|style="width:6em;"|仙台運転所</br>編成番号
!style="width:8em;"|クモハ417
!style="width:8em;"|モハ416
!style="width:8em;"|クハ416
|-style="border-top:solid 5px #00984f;"
|K-1||colspan="3"|1
|-
|K-2||colspan="3"|2
|-
|K-3||colspan="3"|3
|-
|K-4||colspan="3"|4
|-
|K-5||colspan="3"|5
|}

本系列は、上述仙台地区向け3両編成x5本計15両のみの製造で打ち切られた。
*将来的には、仙台地区のみならず秋田・金沢など他の[[地方都市|地方都市圏]][[交流電化]]区間への投入も計画されていたが<ref name="rp197804"/>、国鉄の[[財政]]悪化に伴い以後は余剰化した[[国鉄583系電車|581系・583系]][[特急形車両|特急形電車]]や[[国鉄457系電車|451系・453系・471系・473系]][[急行形車両|急行形電車]]の車体・車内更新による近郊形への転用改造に方針転換が行われた。しかし、試作要素の強い九州地区向け[[電気車の速度制御#サイリスタによる連続位相制御|サイリスタ位相制御]]の[[国鉄713系電車|713系電車]]や車体更新車である[[国鉄413系・717系電車|413系・717系電車]]が、ほぼ同一の車体構造を踏襲した。

== 運用 ==
1978年に仙台地区近郊輸送改善を主目的に製造された3両編成x5本計15両は仙台運転所（現・[[仙台車両センター]]）に配置された<ref name="rp197804"/>。主に東北本線（[[黒磯駅|黒磯]] - 福島 - [[仙台駅|仙台]] - [[一ノ関駅|一ノ関]]間）で普通列車・[[快速列車]]「[[仙台シティラビット]]」のほか、一時は[[仙山線]]（仙台 - [[作並駅|作並]]間）普通列車でも運用された。
*上述のように交流電化区間での運用に終始し、直流電化区間で営業運転を行ったことは今に至るまで一度もない<ref>ただし、初期の側面方向幕には[[上野駅|上野]]・[[宇都宮駅|宇都宮]]などの東北本線直流区間のコマが存在した。</ref>。
[[File:417mc-sannou.jpg|thumb|200px|thumb|陸前山王駅構内側線での留置</br>2007年9月]]
一貫して仙台配置・仙台地区周辺で運用され続けたが、[[JR東日本E721系電車|E721系電車]]への置換えに伴い、[[2007年]][[7月1日]]をもって全編成が定期運用を終了した。その後は全編成が[[陸前山王駅]]に留置されたが、以下の状況となった。

;K-1編成
:2008年6月に[[郡山総合車両センター]]に配給回送され整備。[[阿武隈急行]]に後述するA417系電車として譲渡。

;K-4編成
:2007年11月に郡山総合車両センターに配給回送。同年12月[[岩切駅]]に隣接する仙台レールセンター（[[新幹線総合車両センター]]に併設）に配給回送。
:2008年1月に書類上[[廃車 (鉄道)|廃車]]とされたが、以後は車籍のない訓練用機械扱いで使用されている。

;K-2・K-3・K-5編成
:2008年8月に[[鹿島臨海鉄道]][[神栖駅]]へ配給回送され廃車。

== A417系電車 ==
{{Vertical images list
|幅=200px
|1=Abukuma Kyuko A417 in Tomino.jpg
|2=阿武隈急行A417系
}}
[[2007年]]に阿武隈急行はJR東日本から中古車両3両編成1本を購入し増備する方針を発表した<ref>『[[河北新報]]』2007年6月16日。</ref>。JR東日本と協議検討を重ねた結果、状態の良い417系電車を購入するに至り2008年6月から郡山総合車両センターで元仙台車両センター所属のK-1編成に同社向け仕様変更の改造工事を施工した。
*編成の方向転換。
*同社の[[阿武隈急行8100系電車|8100系電車]]に準じた塗装へ変更<ref>{{Cite web
|author=栢森千
|date=2008-08-29
|url=http://railf.jp/news/2008/08/29/185900.html
|title=417系，阿武隈急行色に
|work=railf.jp
|publisher=[[鉄道ファン (雑誌)#交友社|交友社]]
|accessdate=2008-09-11
}}</ref><ref>営業運転開始時に前面貫通扉に阿武隈急行のCIマークが追加された。</ref>。
2008年10月30日から当初の予定<ref>
{{Cite journal
|和書
|year=2008
|month=11
|publisher=交通新聞社
|journal=鉄道ダイヤ情報
}}</ref>通り、営業運転を開始した<ref>{{Cite web
|author=ういんぐ
|date=2008-10-30
|url=http://1-noriba.net/topics/200810/t009339.html
|title=【阿武急】A417系 営業運転開始
|work=1番のりば
|accessdate=2008-10-30
}}</ref>。最近は[[梁川駅 (福島県)|梁川]] - 福島間の平日朝夕限定で運用される。

;阿武隈急行A417系電車編成表
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:100%;"
|-
!style="background-color:#ddd;"|&nbsp;
|colspan="3"|{{TrainDirection|[[丸森駅|丸森]]（富野）|福島}}
|-style="border-top:solid 5px #00984f;"
!style="width:6em;"|車両</br>番号
!style="width:10em;"|AT418
!style="width:10em;"|AM417-2
!style="width:10em;"|AM417-1
|-
|旧番号
|クハ416-1
|モハ416-1
|クモハ417-1
|}
{{triple image|center|Abukuma_Kyuko_AT418.jpg|170|Abukuma Kyuko AM417-2.jpg|185|Abukuma Kyuko AM417-1.jpg|185|AT418|AM417-2|AM417-1}}

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{reflist}}

== 関連項目 ==
{{commonscat|JNR 417}}
{{国鉄の新性能電車}}
{{JR東日本の車両リスト}}
{{阿武隈急行の車両}}

 {{リダイレクトの所属カテゴリ
 |redirect1=阿武隈急行A417系電車
 |1-1=阿武隈急行
 |1-2=他社から譲り受けた鉄道車両
 }}
{{DEFAULTSORT:こくてつ417けいてんしや}}
[[category:日本国有鉄道の新性能電車|417]]
[[category:東日本旅客鉄道の電車|417]]
[[Category:1978年製の鉄道車両|こくてつ電417]]
[[Category:日立製作所製の電車|こくてつ417]]