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可変翼
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[[画像:Bell-X5-Multiple.jpg|thumb|250px|X-5 可変翼の多重露出]] '''可変翼'''(かへんよく、''swing-wing'' または''Variable Geometry wing'' )とは、[[飛行機]]において[[主翼]]の[[後退角]]・[[翼平面形]](アスペクト比)を変化させる機構のことである。VG翼とも呼ばれ、可変翼を有する機体は可変翼機・VG翼機と呼称される。可変翼機は低速から高速まで、低い[[抗力|空気抵抗]]と適切な[[揚力]]を得ることができるが、機構が複雑であることにより、実用化されたのは[[軍用機]]のみである。 == 概要 == 主翼の後退角は、低速巡航時や離着陸時には高い揚力が必要となり[[翼幅荷重]]が低い事が望ましく、高速時には空気抵抗を減少させるために翼幅が小さいほうが都合がよい。飛行中に後退角、ひいては翼幅を変化させることができるならば、どの速度領域においても、低い空気抵抗と適切な揚力を得ることができるようになる。通常の航空機では、主翼の後退角を変化させることはできないため、可変翼を実現させるにあたっては特別な機構が必要となる。 可変翼の機構としては、黎明期には胴体内にレールを設け、翼根を前後に動かすことによって角度を変更するものであったが、後に胴体または主翼の途中にピボットを設け、そこより外側の主翼を動かすものとなった。ただし機構は重く複雑・高価なものとなり、その重量は航空機の性能に悪影響を与える。また、後退角の変化は[[重心]]や空力中心が移動する事態も発生するため、その検討も必要となる。黎明期に翼根を前後に移動させる方法が用いられたのも後退角の変化による重心や空力中心の移動を抑制することが目的であったが、後述の操縦特性の変化を補正する手法の確立により重量増加が大きく構造が複雑となる胴体内レールを用いる方法は実用には至らず、主翼の根元付近にピヴォットを用いる方法が実用となった。重量・価格の増加が大きいために民間機で実用化されたものはなく、軍用機のみが実用化されている。 == 開発 == [[File:Three F-111s with different wing configurations.jpg|thumb|250px|主翼に異なる後退角をつけて飛行するF-111群]] 可変翼の具体的な研究は、[[第二次世界大戦]]中の[[ナチス・ドイツ]]を端緒としている。[[メッサーシュミット P.1101|Me P.1101]]ジェット戦闘機が研究されていたが、完成前に終戦となった。ただし、Me P.1101は地上でのみ、後退角を変化させることができた。この技術資料を入手した[[アメリカ合衆国]]は[[X-5 (航空機)|X-5]]を開発した。X-5は飛行中に後退角を変化させることができ、1951年に飛行試験にまで漕ぎ着けている。 実用機への動きは、まず[[アメリカ海軍]]の[[艦上戦闘機]]で行われた。[[航空母艦]]への発着艦と要撃を行うには、安定した低速飛行性能と加速・高速性能との両立が求められるためである。可変翼戦闘機・グラマン[[XF10F (航空機)|XF10F]]が1952年5月に初飛行したが、機構の複雑性による重量過大・低整備性があり、[[ジェットエンジン]]が非力であったことも手伝い、実用化はなされなかった。特に後退角の変化により操縦特性が変化するため、非常に操縦がやりにくい機体になってしまったのが、一番の難点であった。 初の実用機はアメリカの[[F-111 (航空機)|F-111]]である。前述の操縦性の問題についてコントロール増強システム([[フライ・バイ・ワイヤ#CAS|CAS]])を付加する事によって、コンピュータ制御によって操縦特性を補正する手法が確立した事によるものである。F-111は1964年に初飛行し、[[アメリカ空軍]]に採用された。F-111はアメリカ海軍向け[[艦載機]]型も開発されたが、ここでも重量過大を理由に採用されなかった。 [[ソビエト連邦]]でも[[Su-7 (航空機)|Su-7]]の主翼の中ほどにピボットを設けた[[Su-17 (航空機)|Su-17]]が開発され、1969年に初飛行している。その後、アメリカの[[B-1 (航空機)|B-1]]、[[ヨーロッパ]]の[[トーネード IDS]]、[[トーネード ADV]]、ソ連の[[MiG-23 (航空機)|MiG-23]]、[[Su-24 (航空機)|Su-24]]、[[Tu-160 (航空機)|Tu-160]]などが実用化された。民間機では[[ボーイング2707]]の開発段階で検討されたが、のちに[[翼平面形#デルタ翼|デルタ翼]]の計画となり、それも実用化されなかった。 アメリカ海軍の[[F-14 (戦闘機)|F-14]]戦闘機の可変翼は、特に優れたものである。初期の可変翼機が、巡航時に手動で後退角度を変更するものなのに対して、F-14はコンピューターによる自動制御を行っている。このため単なる低速時や離着陸時にとどまらず、旋回時にも主翼の後退角を小さくし翼幅を広げて、これにより高い旋回性能を得ている。 {{-}} == 衰退 == しかしながら可変翼の採用は1960年代後半から70年代にかけての、極めて短期間の流行で終わった。それらは以下の理由による。 *重量の増加 - 可変翼の複雑な構造は機体重量の増加となり、可変翼による性能向上効果が相殺される。 *コスト増加 - 同じく可変翼の複雑な構造は製造コストの上昇を招き、そのコストに見合った効果が得られるか疑問視された。 *航空機に対する要求の変化 - 可変翼は低速性能と高速性能を両立させるための機構である。1970年代以降マッハ2級の最高速度は実用上の意味がないとして高速性能の追求がなされなくなった。 *エンジンの発達 - ジェットエンジンのパワーが強力となり、後退角が小さな主翼の機体でも、十分な速度性能を得る事ができるようになった。 *[[運動能力向上機|CCV(Control Configured Vehicle)設計]]の確立 - この手法による運動性向上のため、F-14のような旋回時に主翼幅を広げて旋回性能を高める手法に相対的に利点が薄れてしまった。 *STOL(短距離離着陸)技術の向上 - [[エンテ型#ジェット戦闘機のカナード|カナード翼]]、LEX([[ストレーキ]])のような、可変翼より単純な手法による離着陸性能の向上がなされた。 *[[ステルス性]]への悪影響 - 機体設計によりステルス性を得るには、主翼の後退角についても最適な設計が必要であり、それが変化する可変翼ではステルス性の追求が難しい。 その一方1990年代以降は[[スーパークルーズ]]性能が新たに着目されるようになった。エンジンをF110-GE-400に換装したF-14戦闘機は、ごく短時間であるが[[アフターバーナー]]なしで音速を突破可能であり、このためスーパークルーズを達成するための手法としても可変翼は有利ではないかと言われたこともある。しかしながら[[F-22 (戦闘機)|F-22]]や[[YF-23 (航空機)|YF-23]]は強力で高速向きのエンジンによってスーパークルーズを達成し、結局可変翼が顧みられる事はなかった(上述の通り、両機はステルス性も追求している機体である事による)。F-22の艦載機型には可変翼の採用が検討されたものの、実現はなされなかった。 == 斜め翼 == [[画像:NASA_AD-1_in_flight.jpg|thumb|250px|[[アメリカ航空宇宙局]] [[AD-1]]]] これまでに実用化されたのは、両翼に後退角を付ける可変翼だが、他の形態の可変翼も考えられる。 構造を簡易化するために、斜め翼(オブリーク翼)を可変翼化した翼も研究された。実用化された可変翼機は左右対称に翼平面形を変化させるために、ピボットを2ヶ所有している。オブリーク翼ではピボットを1ヶ所にすることにより、機構を簡易化し、重量軽減を図った。この機構では、片方が後退翼のときに、もう片方が前進翼となり、左右非対称の形状となる。[[アメリカ航空宇宙局]]で実験機{{仮リンク|AD-1|label=NASA AD-1|en|NASA AD-1}}が作られたものの、実用化はなされていない。AD-1は[[バート・ルータン]]が基本設計を担当した。この実験機は彼の設計した航空機の中でも異色の物である。 ==関連項目== {{Commonscat|Variable-sweep wings}} その他の試みを行った実験機 *[[NIAI RK-I]] *[[ヒルソン バイモノ]] {{DEFAULTSORT:かへんよく}} [[Category:航空工学]]
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