元良勇次郎のソースを表示

{{出典の明記|date=2010年9月}}
{{Infobox Scientist
|name= 元良勇次郎
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|alt = 元良勇次郎
|caption = 元良勇次郎
|birth_name= 杉田勇次郎
|birth_date= {{生年月日と年齢|1858|12|5|no}}
|birth_place = [[三田藩]]（現・[[兵庫県]][[三田市]]の付近）{{Sfn|佐藤達哉|2001}}
|death_date={{死亡年月日と没年齢|1858|12|5|1912|12|13}}
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|field = 心理学
|workplaces= [[東京帝国大学]]
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'''元良 勇次郎'''（もとら ゆうじろう、[[安政]]5年[[11月1日 (旧暦)|11月1日]]（[[1858年]][[12月5日]]） - [[大正]]元年（[[1912年]]）[[12月13日]]）は、[[日本]]最初の[[心理学者]]である。

==人物==
「元良」は勇次郎が結婚した後の姓である。現在、一般に、元良勇次郎と呼ばれている。なお[[船舶工学|船舶工学者]]の[[元良誠三]]と[[物理学者]]の[[高橋秀俊]]は勇次郎の孫にあたる。
勇次郎の生まれた杉田家は、伝承によると[[九鬼守隆]]の学友であった[[杉田市郎右衛門]]の末裔とされている{{Sfn|佐藤達哉|2001}}。
父親は[[三田藩]]の[[儒学者]]であったが、勇次郎が若いころ([[1972年]])に死去された{{Sfn|佐藤達哉|2001}}。
勇次郎は、[[同志社英学校]]最初の学生（全8名）で、開校当初に[[中島力造]]、[[上野栄三郎]]とともに真っ先に駆けつけたひとりだった。同志社英学校では当時としてはめずらしい'''性理学'''（現在の[[心理学]]）の授業が行なわれており、ここでの心理学との出会いが彼の一生を決定付けた。性理学の講義を担当していた[[ジェローム・デイヴィス|J・D・デービス]]が蔵書していた{{仮リンク|ウィリアム・ベンジャミン・カーペンター|en|William Benjamin Carpenter|label=W. B. カーペンター}}『精神生理学の原理』{{Harv|Carpenter|1874}}に感化される{{Sfn|高砂美樹|2001|page=82}}。

== 経歴 ==
*[[儒学者]]であった父の縁で、7歳より三田藩藩校の[[造士館]]にて[[儒学]]や[[洋学]]を学ぶ{{Sfn|佐藤達哉|2001}}。
*[[1869年]]、[[英蘭塾]]に入塾し、[[川本幸民]]らに教えを仰ぐ{{Sfn|佐藤達哉|2001}}。
*父の死後に、宣教師デービス（1838年生 - 1910年没）の説教を聞く機会をもち[[キリスト教]]の影響を受けた後に、[[神戸]]に住むデービスの元で下宿することとなる。{{Sfn|佐藤達哉|2001}}
*[[明治]]12年（[[1879年]]）春、[[津田仙]]から[[津田仙|学農社農学校]]の教員に招かれ退学（同志社には3年余り在学した）。その後、[[東京英和学校]]（[[青山学院]]の前身）の設立にも参画する。
*明治16年（[[1883年]]）、渡米し[[ボストン大学]]の哲学科に入学するものの、教授の{{仮リンク|ボーデン・パーカー・バウン|en|Borden Parker Bowne|label=B. P. バウン}}(1847年-1910年)の保守的なキリスト教の哲学と[[進化論]]をめぐって対立してしまい後に依願退学する{{Sfn|高砂美樹|2001|page=82}}。
*[[1885年]]、[[ジョンズ・ホプキンス大学]]の生物学教室に転向する{{Sfn|高砂美樹|2001|page=82}}。[[ジョン・デューイ]]の講義を受ける。倫理学等も含めて学び、[[実験心理学]]の実験方法を体得した。ジョンズ・ホプキンス大学で[[Ph.D]]の学位を修める。（ただし心理学専攻ではなく[[哲学]]専攻で学位を取得したらしいことが最新の調査で明らかになりつつある）。
*明治21年（[[1888年]]）、日本へ帰国し、東京英和学校の教員を務めた。また[[帝国大学]]文科大学にて[[精神物理学]]の講義を担当する。
*明治22年（[[1889年]]）、[[外山正一]]（元東大総長）、[[神田乃武]]（元一橋大教授）と共に、正則予備校設立。後に[[正則高等学校]]となり現在に至る。 
*明治23年（[[1890年]]）、[[帝国大学]]文科大学教授に就任する。
*明治26年（[[1893年]]）、心理学・[[倫理学]]・[[論理学]]第一講座担当となる（後に第2講座を[[中島力造]]が担当した）。
*明治27年（[[1894年]]）、高等師範学校（現、筑波大学）において心理学を講じる教授を兼任。
*明治39年（[[1906年]]）、[[帝国学士院]]会員に任命。日本における近代[[心理学]]の礎を築く。
*大正元年（[[1912年]]）、[[カリエス]]がもとで死去した。[[従三位]]・[[瑞宝章|勲二等瑞宝章]]。

== 功績の概要 ==
それまで日本において、心理学の知識は[[英語]]など外国語で書かれた書物だけであった。つまり心理学という学問は日本に入ってきてはいたが、実際の具体的な手法（実験法、調査法、観察法）は誰も体験しておらず、日本では心理学は存在しなかったと言える。
勇次郎は[[キリスト教徒|クリスチャン]]の人脈を活かし海外に学び、そこで心理学の実験手法などを体得し、心理学を日本に持ち帰り、それを根付かせた<ref name="JOUD">放送大学「心理学史　'05」　2009.10.20放送。担当講師、[[佐藤達哉]] 他。（印刷教材{{Harv|西川泰夫・高砂美樹・編著|2005}}）。</ref>。

== 元良の提供した心理学の背景 ==
元良が提供した心理学は、（ある意味当然のことであるが）当時の一流の学問を反映したものである。その学問的背景とも言えるものを簡潔にまとめると、例えば、
# [[グスタフ・フェヒナー|フェヒナー]]の[[精神物理学]]
# [[ヴィルヘルム・オストヴァルト|オストワルド]]の[[エネルギー一元論]]
# [[ヴィルヘルム・ヴント|ヴント]]の[[実験心理学]]
# [[ジョン・デューイ|デューイ]]や[[ウィリアム・ジェームズ|ジェームズ]]の[[プラグマティズム]]
# [[スタンレー・ホール|ホール]]の[[ジェネティック心理学]]
、と言うこともできる<ref name="JOUD" />。

== 具体的な研究内容、テーマの例 ==
元良による心理学上の研究を、初期・中期・後期と大分して説明する。

初期の段階でもすでに様々なテーマについて実験を行っているが、ひとつ挙げると、「注意」について研究したことが挙げられる。このテーマは一貫して持ち続け、1907年には、児童の注意力とその訓練についての実験へとつながった。そして、学習がうまくできない児童について、能力が無いというわけではなく、「集中」のしかたを知らないからなのだ、という説明および訓練方法を示し<ref group="注釈">現在の水準からすると、シンプルな説明ではある。が、成果はもたらした。</ref>、当時の教育関係者から評価され、それなりに問題解決に貢献することになった<ref name="JOUD" />。

中期・後期のそれを挙げると次のようになる<ref name="JOUD" />。

*[[円覚寺]]の[[塔頭]]である帰源院で[[禅]]を体験した（1894年）。<ref group="注釈">これは、自身を用いての実験と言え、これもまた、心理学におけるひとつの考え方・方法論である）。<br/>
なお同じ日に[[夏目漱石]]も参禅しており、当時の参拝簿には元良と「夏目金之助」の名が隣り合わせに書かれている。（放送大学「心理学史　'05」　2009.10.20放送。担当講師、佐藤達哉 他）漱石と参禅が同時だったことは、{{Harv|元良勇次郎|1910}}にて自身でも述べている。</ref>
* 横読み、縦読みの利害の実験（1895年）
* 白内障者の視覚に関する実験（1896年）
* 神経伝達の実験（1903年）
* 片仮名・平仮名の読み書きの難易の実験（1904年）
* 児童の注意力とその訓練についての実験（1907年）
* 心元　（簡単に言うと精神化したエネルギーのこと） （1909年）
* [[顕心儀]]　（人の自我と、外界との関係の理解を助けるモデルの一種）（1909年）

== 著書 ==
{{Refbegin|2}}
*『教育新論』中近堂、1884年。{{全国書誌番号|40038033}}。
*『心理学』金港堂、1890年。{{全国書誌番号|40004778}}。（日本において、『心理学』という書名のものとしては最初のものである）
*『児童学綱要』（[[高島平三郎]]らと共著）洛陽堂、1890年。
*『万国史綱』（[[家永豊吉]]と共著）三省堂、1892年-1893年。{{全国書誌番号|40011654}}。
*『倫理学』　小野英之助・共著、1893年。{{全国書誌番号|40003747}}。
*『心理学十回講義』　富山房、1897年。{{全国書誌番号|40004811}}。
*『教育と宗教との関係』　光融館、1900年。{{全国書誌番号|40038073}}。
*『倫理講話　中等教育』　右文館、1900年。{{全国書誌番号|40003810}}。
*『倫理及宗教　現今将来』　勉強堂書店、1900年。{{全国書誌番号|40003736}}。
*『元良氏倫理書　中等教育』　成美堂、1902年。{{全国書誌番号|440003623}}。
*『心理学綱要』　弘道館、1907年。{{全国書誌番号|40004807}}。
*『論文集』　弘道館、1909年。{{全国書誌番号|40000232}}。
*『英独仏和哲学字彙』（[[井上哲次郎]]、[[中島力造]]と共編）丸善、1912年。{{全国書誌番号|40000144}}。
*『教育病理及治療学』（[[榊保三郎]]らと共著）榊保三郎、1912年。{{全国書誌番号|40041019}}。
{{Refend}}

== 登場する作品 ==
* [[八重の桜]](2013年・NHK大河ドラマ) - 演：[[颯太]]

== 翻訳 ==
*[[ヴィルヘルム・ヴント]]、ほか。『心理学概論』（[[中島泰蔵]]と共訳）富山房、1898-1899年。{{全国書誌番号|40004794}}。
* [[スタンレー・ホール]](Hall, Granville Stanley)『青年期の研究』（[[中島力造]]らと共訳）同文館、1910年。{{全国書誌番号|40038701}}。

==指導学生==
*[[上野陽一]]
*[[大槻快尊]]
*[[倉橋惣三]]
*[[松本亦太郎]]

==参考文献==
{{Refbegin|2}}
*{{Cite book |last=Carpenter |first=William Benjamin |authorlink=w:William Benjamin Carpenter |year=1874 |title=Principles of mental physiology : with their applications to the training and discipline of the mind, and the study of its morbid conditions |publisher=D. Appleton & Co |location=New York |language=英語 |oclc=5786833 |ref=harv}}
*{{Cite book|和書|author=元良勇次郎|chapter=禅と精神修養|year=1910 |title=名士禅 |publisher=柳枝軒|location=京都 |page= |id={{全国書誌番号|40048987}}|editor=小川煙村・倉光空喝編 |ref=harv}}
*{{Cite journal |author=高砂美樹 |date=2001-02-25 |title=神経伝達理論にみる元良勇次郎 : バイオサイコロジー史(3) |journal=山野研究紀要 |volume=9 |pages=79-87 |publisher=山野美容芸術短期大学 |naid=110000033985 |ref=harv}}
*{{Cite journal|和書|author=佐藤達哉 |date=2001-03 |title=海外留学以前の元良勇次郎 |journal=生涯学習教育研究センター年報 |volume=6 |pages=25-32 |publisher=福島大学 |naid=AN1055943X |ref=harv }}
*{{Cite book |和書|editor=西川泰夫・高砂美樹・編著|series=放送大学教材 2005 |year=2005 |title=心理学史 |publisher=放送大学教育振興会|ncid=BA71639936 |isbn=4595305117|ref=harv }}
{{Refend}}

== 注釈 ==
{{Reflist|group="注釈"}}

== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

{{Normdaten|NDL=00048151|CINII=DA0118396X|LCCN=no/99/023868|VIAF=63640115}}
{{DEFAULTSORT:もとら ゆうしろう}}
[[Category:日本の心理学者]]
[[Category:帝国学士院会員]]
[[Category:東京大学の教員]]
[[Category:東京教育大学の教員]]
[[Category:勲二等瑞宝章受章者]]
[[Category:同志社英学校出身の人物]]
[[Category:ジョンズ・ホプキンス大学出身の人物]]
[[Category:1858年生]]
[[Category:1912年没]]