佐々木惣一のソースを表示

[[File:Sasaki Soichi.jpg|thumb|200px|1952年]]
[[File:SASAKI Soichi.jpg|thumb|200px|佐々木惣一]]
'''佐々木 惣一'''（ささき そういち、[[1878年]]（明治11年）[[3月28日]] - [[1965年]]（昭和40年）[[8月4日]]）は、[[日本]]の[[憲法]]学者、[[行政法]]学者。[[正三位]][[勲一等]]。[[法学博士]]。[[貴族院議員]]。[[京都大学]][[名誉教授]]。京都市名誉市民。

== 概要 ==
[[鳥取市]][[西町 (鳥取市)|西町]]に生まれる<ref name="Ziten_p363">『鳥取県大百科事典』363頁</ref><ref name="miura">[[三浦百重]]（鳥取大学学長、鳥取市名誉市民）によれば、「先生は[[1878年|明治十一年]]三月[[鳥取市]]西町十一番地に生まれたとその[[履歴書]]（注・京都市作製）にはなっているが、この点は、私の聞いた限りでも巷間諸説があり、中には近郊の生まれで幼時両親に伴われて鳥取市に移り、その後も数次居を転じた為め諸説が生じたのであると云う人もある。いま之を明らかにする途はないが狩野教授が佐々木先生から直接依頼されて作った“夢松菴記”のうちに…教授（注・佐々木先生）曰吾郷有山曰久松其麓吾幼時居也…（注・吉川教授編―君山文巻五）とあることによっても、[[郷里]]は鳥取市としてよいであろう。」という（『鳥取県百傑伝』、224頁））</ref>。県尋常中（現[[鳥取県立鳥取西高等学校|鳥取西高]]）、[[第四高等学校 (旧制)|四高]]を経て京都帝大に法学を学び[[1903年]]（明治36年）卒業、直ちに同大学の[[講師]]、次いで1906年に[[助教授]]、1913年に[[教授]]となり、行政法を講じた<ref name="Ziten_p363"/>。さらに、1927年からは退官した[[市村光恵]]に代わって憲法も担当するようになった。行政法における師匠は[[織田萬]]であり<ref>佐々木惣一「織田萬博士の追憶」（公法研究一八号）</ref>、憲法における師匠は井上密である<ref>[http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/UCRC/ja/zasshi/pdf/zasshi11/p14.pdf 佐々木惣一の立憲主義論と自由主義思想の展開]</ref>。[[1921年]]（大正10年）以来二回法学部長に挙げらる<ref name="Zinzi1_pさ13">『<small>第廿一版</small> 人事興信録 <small>上</small>』[[昭和]]36年（[[1961年]]）、さ一三</ref>、。

厳密な文理解釈と[[立憲主義]]を結合した憲法論を説き、東の[[美濃部達吉]]とともに、[[大正デモクラシー]]の理論的指導者として活躍し、弟子の[[大石義雄]]とともに憲法学における[[京都学派]]を築いた<ref name="jinbutsu">[http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/jinbutsu.html 人物紹介 | 日本国憲法の誕生]
</ref>。[[1933年]]（昭和8年）「[[滝川事件]]」に抗議して辞職<ref name="jinbutsu"/>。同事件では法学部教授団の抗議運動の中心として活動するなど、[[大学自治]]の擁護に努めた<ref name="jinbutsu"/>。

[[1945年]]（昭和20年）には内大臣府御用掛として憲法改正調査に当たり、いわゆる「佐々木憲法草案」を作成している<ref name="Ziten_p363"/>。
その後は、[[貴族院 (日本)|貴族院]]における[[日本国憲法]]の改正審議に参画し、日本国憲法への改正に反対した。<ref>松尾尊兌「敗戦前後の佐々木惣一　―近衛文麿との関係を中心に―」（『人文学報』98号、2009年）</ref>
<!-- == 学説 ==
[[憲法改正]]の範囲に限界はない（基本原理であっても改正可能である）と主張した。この考えに従うと、[[日本国憲法]]の成立過程において[[明治憲法]]に則った改正手続きをとりつつ明治憲法の基本原理を書き換えた（[[天皇主権]]の[[国民主権]]への改正など）ことを容易に説明することが可能である。ただし、現在は憲法改正の範囲には限界があるとする学説が圧倒的に優勢である。--><!--出典を書いて下さい-->

== 人物像 ==
=== 学者としての信念 ===
佐々木惣一の生涯は、[[学問の自由]]を守るための闘いであったといっても過言ではない<ref name="kyoudo_p263">『鳥取県郷土が誇る人物誌』263頁</ref>。その学者としての態度は[[1922年]]（[[大正]]11年）、彼が鳥取中学校『創立五十年』に送った文章の中にも見られる<ref name="kyoudo_p263"/>。
:「我々は中学時代から久しく何でも偉くなろうと志した<ref name="kyoudo_p263"/>。しかし偉いとはどんなのかということについては今日ようやく気がつくようになったのである<ref name="kyoudo_p263"/>。…[[シルクハット]]をかぶり、[[大礼服]]を着、[[富豪|金持]]となり、[[華族]]となることが出来るようになればなるほど、それだけ正しい人となることが出来なくなるのだと思うことすらある<ref name="kyoudo_p263"/>。今の私にとっては正しい人が最も偉い人なのである<ref name="kyoudo_p263"/>。」

=== 人柄・性格 ===
[[趣味]]は[[読書]]、[[俳句]]<ref name="Zinzi1_pさ13"/>。[[宗教]]は[[仏教]]<ref name="Zinzi1_pさ13"/>。

== 年譜 ==
* [[1878年]]（明治11年）
:3月 - 現在の[[鳥取県]][[鳥取市]][[西町 (鳥取市)|西町]]に生まれる<ref name="miura"/><ref name="kyoto">[http://www.city.kyoto.jp/sogo/hisyo/honor_01.html 京都市名誉市民　佐々木惣一氏]</ref>。惣三郎の長男<ref name="Zinzi1_pさ13"/>。
* [[1903年]]（明治36年）
:7月 - [[京都帝国大学]]法科大学卒業<ref name="kyoto"/> 
* [[1906年]]（明治39年）
:10月 - 京都帝国大学法科大学助教授<ref name="kyoto"/>
* [[1909年]]（明治42年）
:9月 - [[ドイツ]]、[[フランス]]、[[イギリス]]へ[[行政法]]研究のため3年間[[留学]]<ref name="kyoto"/>
* [[1913年]]（[[大正]]2年）
:1月 - 京都帝国大学法科大学教授<ref name="kyoto"/>
:12月 - 法学博士<ref name="kyoto"/>
* [[1921年]]（大正10年）
:4月 - 京都帝国大学法学部長<ref name="kyoto"/> 
* [[1934年]]（昭和9年）
:3月 - [[立命館大学]]学長<ref name="kyoto"/>
* [[1939年]]（昭和14年）
:12月 - 帝国学士院会員<ref name="kyoto"/>
* [[1945年]]（昭和20年）
:10月 - 京都帝国大学名誉教授<ref name="kyoto"/>　
:11月 - 宮内省御用掛として憲法改正調査の大命を受け佐々木憲法草案作成<ref name="kyoto"/>
* [[1946年]]（昭和21年）
:3月 - 貴族院議員<ref name="kyoto"/>
* [[1965年]]（昭和40年）
:8月4日 - 死去

== 賞 ==
* [[1952年]]（昭和27年）11月 - [[文化功労者]]として顕彰される<ref name="kyoto"/>　[[文化勲章]]<ref name="kyoto"/>
* [[1965年]]（昭和40年）8月 - [[正三位]][[勲一等瑞宝章]]<ref name="kyoto"/>

== 史料 ==
;父母への手紙
[[第四高等学校 (旧制)|第四高等学校]]に入学し、[[金沢市|金沢]]から郷里の両親に送った佐々木自筆の書翰から要点を適載する。手紙は先づ両親が家道困窮のうちに、高等学校へ進学さしてくれたことを感謝し、（以下原文のまま）
:…三年の此学校を[[卒業]]致し候はば仮令ひ大学校に入ること出来申さずとも、月に二十五六円の月給を取って御一同様を養ひ申し、今日までの海より深き御恩に報じ、山よりも高き不孝のつみを御わび申上ぐべく候<ref name="hyakuketsu_p228">『鳥取県百傑伝』228頁</ref>。後をたのしみとして決して御病気などにかからせられざる様御大切になし下されたく候<ref name="hyakuketsu_p228"/>。（中略）先日はまことに相すみ不申候義とは存じ候へ共、こまり候まま御無理御願ひ申上候ところ、早速御送金を辱ふし難有御礼申上候。さぞ困難遊ばされた御ことと奉恐縮候<ref name="hyakuketsu_p228"/>。

:殊に[[親戚|親せき]]一どうへも御しんがいのこと此上なく中学卒業以来一文も金もうけせずしてただ種々の御しんぱいを相かけ申候ことのみ、是も全く後の事をおもひ候故にて今九円の月給を取る時はいま一時は都合よく相見え候へども、十年後になりて家族などもふえ来るときはまたまた大なんぎして御一同様をなぐさめ申上ぐること出来不申、従っていつも中以下のくらしをせねばならぬことと考え候故に御坐候間不孝の罪不悪御免被下度候<ref name="hyakuketsu_p229">『鳥取県百傑伝』229頁</ref>。

:（中略）母上様にはやはり[[村|ザイ]]へ[[卵|玉子]]買に御出あそばされるや<ref name="hyakuketsu_p229"/>。ああ六十有余の父上<ref>[[魚]][[問屋]]勤務</ref>には遠きみちを[[元魚町 (鳥取市)|魚町]]までかよはせられ、かねて病身の母上様には、この寒さにも拘らず、ざいへ出られ其留守をさびしく八十に余り玉へる御老母様がひとりまもり遊バされ候<ref name="hyakuketsu_p229"/>。何とぞ御大切に御保養う平に祈候（中略、この間、金沢の風物、[[能]]、[[芝居]]、四高の内容、在金沢の鳥取県人の動静に加えて、旅次大[[水害]]に会い困難を極めた顛末などを詳述している）、以上記したはただありの侭に候へ共御笑覧被下度候<ref name="hyakuketsu_p229"/>。非常に困難せし如く見え候へ共、二人ともすこしもさわりなく、あんおんにつく為め、日数と金銭をおしまず、一向にあやうきに近よらずして着仕候間すこしもそのがいをうけ不申候間御安心被下度候<ref name="hyakuketsu_p229"/>。

::十月十二日夜八時認め終る
:::惣一拝
::御一同様

== 著書 ==
*『立憲非立憲』（弘文堂書房、1918年）
*『日本憲法要論』（金刺芳流堂、1930年）
*[http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/02/042shoshi.html 『帝国憲法改正ノ必要』1945年11月24日（日付は11月23日）に天皇に奉答した改正案]

== 参考文献 ==
*『新日本人物大観』（鳥取県版） 人事調査通信社 1958年 サ…345-346頁
*『鳥取県百傑伝』 1970年  224-230頁
*『鳥取県大百科事典』（編集・新日本海新聞社鳥取県大百科事典編集委員会）1984年 363頁
* [[松尾尊兌]]「敗戦前後の佐々木惣一　―近衛文麿との関係を中心に―」（『人文学報』98号、2009年）

== 関連項目 ==
*[[押し付け憲法論]]
*[[学問の自由]]
*[[佐々木・和辻論争]]
*[[滝川事件]]
*[[和辻哲郎]]
*[[憲法9条]]
*[[森戸辰男]]
*[[大内兵衛]]

== 脚注 ==
<references />

== 外部リンク ==
*[http://www.ndl.go.jp/jp/data/kensei_shiryo/kensei/nihonnkokukennpouseiteinikannsurudannwarokuonn.html 日本国憲法制定に関する談話録音｜国立国会図書館 憲政資料室]


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