ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のソースを表示

{{基礎情報 君主
| 人名       = ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世
| 各国語表記 = {{Lang|it|Vittorio Emanuele II}}
| 君主号     = サルデーニャ王<br />イタリア王
| 画像       = Tranquillo Cremona - Vittorio Emanuele II.jpg
| 画像サイズ = 240px
| 画像説明   = ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の肖像画<BR>（トランクイッロ・クレモナ、[[トリノ]]歴史美術館所蔵）
| 在位       = サルデーニャ王<BR>[[1849年]][[7月28日]] - [[1861年]][[3月17日]]<BR>イタリア王<BR>[[1861年]][[3月17日]] - [[1878年]][[1月9日]]
| 戴冠日     = [[1849年]][[7月28日]]（サルデーニャ王）<BR>[[1861年]][[3月17日]]（イタリア王）
| 別号       = ピエモンテ公<BR>サヴォイア公
| 全名       = {{Lang|it|Vittorio Emanuele Maria Alberto Eugenio Ferdinando Tommaso}}<br />ヴィットーリオ・エマヌエーレ・マリーア・アルベルト・エウジェーニオ・フェルディナンド・トンマーゾ
| 出生日     = {{生年月日と年齢|1820|3|14|no}}
| 生地       = [[ファイル:Flag of Kingdom of Sardinia (1848).svg|border|22x20px]] [[サルデーニャ王国]] [[トリノ]]
| 死亡日     = {{死亡年月日と没年齢|1820|3|14|1878|1|9}}
| 没地       = [[ファイル:Flag of Italy (1861-1946).svg|border|22x20px]] [[イタリア王国]] [[ローマ]]
| 埋葬日     = [[パンテオン (ローマ)|パンテオン]]
| 埋葬地     = [[ファイル:Flag of Italy (1861-1946).svg|border|22x20px]] [[イタリア王国]] [[ローマ]]
| 継承者     = [[ウンベルト1世]]
| 継承形式   = [[王太子]]
| 王室歌    = [[王室行進曲]]
| 配偶者1    = [[マリーア・アデライデ・ダズブルゴ＝ロレーナ]]
| 配偶者2    = ローザ・テレーザ・ヴェルチェラーナ・グエリエーリ
|子女 = [[マリーア・クロティルデ・ディ・サヴォイア|マリーア・クロティルデ]]<br />[[ウンベルト1世]]<br />[[アマデオ1世 (スペイン王)|アマデオ1世]]<br />[[:en:Prince Oddone, Duke of Montferrat|オッドーネ・エウジェーニオ・マリーア]]<br />[[マリア・ピア・デ・サボイア|マリーア・ピーア]]<br />カルロ・アルベルト<br />ヴィットーリオ・エマヌエーレ<br />ヴィットーリオ・エマヌエーレ
|王室 = [[サヴォイア家]]
|父親 = [[カルロ・アルベルト・ディ・サヴォイア]]
|母親 = [[マリア・テレーザ・ダズブルゴ＝トスカーナ]]
| サイン     = VittorioEmanueleII.signature.jpg
}}
'''ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世'''（Vittorio Emanuele II di Savoia、[[1820年]][[3月14日]] - [[1878年]][[1月9日]]）は、[[サルデーニャ王国]]の最後の[[サルデーニャ君主一覧|国王]]（在位：[[1849年]] - [[1861年]]）、のち[[イタリア王国]]の初代[[イタリア王|国王]]（在位：[[1861年]] - [[1878年]]）。サルデーニャ王[[カルロ・アルベルト・ディ・サヴォイア|カルロ・アルベルト]]と[[トスカーナ大公国|トスカーナ]]大公女[[マリア・テレーザ・ダズブルゴ＝トスカーナ]]の長男としてサルデーニャ王に即位する。父から引き継いだ[[イタリア統一運動|イタリア統一戦争]]に終止符を打ち、[[リソルジメント]]を成し遂げたことから、王国の[[国父]]（{{lang-it|Padre della Patria}}）と呼ばれた。

ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世は統一イタリアの象徴として国民から敬愛され、王の頭文字 "VERDI"（Vittorio Emanuele Re d'Italia, ヴィットーリオ・エマヌエーレ・レ・ディタリャ、 イタリア王ヴィットーリオ・エマヌエーレ）と呼ばれた。奇しくも[[ロマン派音楽|イタリア・ロマン派]]の音楽家[[ジュゼッペ・ヴェルディ]]の名前と合致したことから、統一戦争の頃には両者を讃えて「"viva! verdi!"」の言葉がイタリア全土で流行した。

==生涯==
===生い立ち===
{{See also|サヴォイア＝カリニャーノ家}}
[[1820年]][[3月14日]]、サヴォイア王国の首都[[トリノ]]において、王家である[[サヴォイア家]]の一族として生まれた。ヴィットーリオの父[[カルロ・アルベルト・ディ・サヴォイア|カルロ・アルベルト]]は、サヴォイア家支流でカリニャーノ公[[トンマーゾ・フランチェスコ・ディ・サヴォイア|トンマーゾ・フランチェスコ]]を祖とする[[サヴォイア＝カリニャーノ家]]の当主であった。

サルデーニャ王[[ヴィットーリオ・アメデーオ3世]]の息子たちは男子に恵まれず、[[カルロ・エマヌエーレ4世]]、[[ヴィットーリオ・エマヌエーレ1世]]、そして末弟[[カルロ・フェリーチェ・ディ・サヴォイア|カルロ・フェリーチェ]]、と兄弟間で王位が継承された末、サヴォイア本家は断絶した。そこで、[[サリカ法典|サリカ法]]を採るサヴォイア家の継承法に基づき、存続していた分家で最も本家と近かったサヴォイア＝カリニャーノ家のカルロ・アルベルトがサルデーニャ王となった。同時に、まだ幼少であったヴィットーリオと弟[[フェルディナンド・アルベルト・アメデーオ・ディ・サヴォイア|アルベルト]]は王子の称号を与えられ、王宮や母方の祖父であるトスカーナ大公[[フェルディナンド3世 (トスカーナ大公)|フェルディナンド3世]]の下で子供時代を過ごした。

1842年、父方の叔母[[マリーア・エリザベッタ・ディ・サヴォイア＝カリニャーノ|マリーア・エリザベッタ]]の娘[[マリーア・アデライデ・ダズブルゴ＝ロレーナ|マリーア・アデライデ]]と[[いとこ婚|従兄妹婚]]を行う。叔母の夫は[[ハプスブルク＝ロートリンゲン家|ハプスブルク家]]の皇族であった[[ロンバルド＝ヴェネト王国|ロンバルド＝ヴェネト]][[副王]][[ラニエーリ・ダズブルゴ|ラニエーリ（ライナー・ヨーゼフ）大公]]であり、一族の結束と政略結婚の双方を意図していた。

===父の退位===
{{See also|第一次イタリア統一戦争}}
[[File:Battaglia di Novara.jpg|260px|left|thumb|[[:en:Battle of Novara (1849)|ノヴァーラの戦い]]]]
[[ナポレオン戦争]]後、正統主義に基づいた秩序で支配されていた[[ヨーロッパ]]に[[1848年革命]]という大動乱が巻き起こった。特に民族の牢獄とも呼ばれた[[多民族国家]]である[[オーストリア帝国]]への影響は大きく、これを契機にして[[ロンバルド＝ヴェネト王国]]内で反オーストリア人・反ハプスブルク家の反乱が全土で発生した。民衆と軍の双方から起こった反乱は瞬く間に[[ミラノ]]と[[ヴェネツィア]]を押さえ（[[ミラノの5日間|ミラノの戦い]]）、若き日の[[ジュゼッペ・ガリバルディ|ガリバルディ]]も加わっていた反乱軍は、帝国からの分離と[[イタリア人]]による[[イタリア]]の統治を求めた戦いを始めた。しかし、[[共和主義者]]と結びついていた1848年革命の軍勢への支援は君主国家にとってデメリットが大きく、周辺国の反応は及び腰であった。

そんな中、サルデーニャ王[[カルロ・アルベルト・ディ・サヴォイア|カルロ・アルベルト]]は唯一、反乱軍への公的支援を約束して軍勢を出陣させた。この時をもって、イタリア統一戦争の火蓋が切られた（[[第一次イタリア統一戦争]]）。ヴィットーリオも王太子として軍の一翼を預けられ、[[パストレンゴの戦い]]{{enlink|Battaglia di Pastrengo||it|a=on}}と[[ゴイトの戦い]]{{enlink|Battle of Goito|a=on}}で浮き足立つオーストリア軍を打ち破り、兵士と将校団を捕虜にした。反乱軍の歓声と共にミラノへ入城したサルデーニャ軍であったが、ここで父カルロ・アルベルトは[[共和主義]]の反乱軍の真意を疑い、同盟軍の合流を拒否するという愚行を犯した。

やがて、体勢を立て直したオーストリア軍が倍近い数で攻め返してくると、カルロ・アルベルトは反乱軍を置いて単独で出陣してしまう。ヴィットーリオも参加した[[クストッツァの戦い]]{{enlink|Battle of Custoza (1848)|a=on}}でサルデーニャ軍は勇戦するものの敗れ、ミラノに後退を強いられた。そしてここに至ってもガリバルディやマッツィーニ、マニンら共和派を信用しないカルロ・アルベルトによって、反乱軍とサルデーニャ軍は各個撃破の憂き目を見る（[[ノヴァーラの戦い (1849年)|ノヴァーラの戦い]]{{enlink|Battle of Novara (1849)|a=on}}、[[ブレシアの戦い]]{{enlink|Dieci giornate di Brescia||it|a=on}}、[[ヴェネツィアの戦い]]{{enlink|Repubblica di San Marco||it|a=on}}）。

戦争終結後、権威を失墜させたカルロ・アルベルトは存命中の退位という屈辱を受け入れ、ヴィットーリオ・エマヌエーレに王位を譲った。ヴィットーリオは3代前の君主の名を貰いヴィットーリオ・エマヌエーレ2世として即位し、難局の最中にある王国を率いていくことになる。

===クリミア戦争===
{{see also|クリミア戦争|セバストポリの攻囲戦|ケルナーヤの戦い}}
[[File:Panorama dentro.JPG|280px|left|thumb|[[セバストポリの攻囲戦]]]]
1852年、[[カミッロ・カヴール]][[侯爵]]を王国宰相に任命したエマヌエーレ2世は、統一事業をいかに進めるか、対策を協議することになった。カヴールの元で諸外国との入念な根回しが進められ、また先の反省から共和勢力とも一定の距離を置きつつも協力が図られた。翌年に[[ロシア帝国|ロシア]]と[[オスマン帝国]]という東方の大国同士が衝突を始めると、ロシアの南下に危機感を抱いた[[フランス第二帝政|フランス]]・[[イギリス]]がオスマン側に立って参戦し、[[クリミア戦争]]へと発展した。サルデーニャ王国は英仏への支援という名目で、1万5000名の遠征軍をクリミア戦争へ派遣する決定を下した。

当初、外交政策に力を入れていたカヴール自身はオスマン側の勝利や外交的意義に疑問を抱いており、むしろこの遠征を強く勧めたのはヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の方であった。到着したサルデーニャ王国軍は最大の激戦区となっていた[[セバストポリ]]要塞への総攻撃に投入され、無傷の増援部隊は疲れ果てていた英仏土軍にとって貴重な援軍となった（[[セバストポリの攻囲戦]]）。要塞陥落後、フランスにおける皇帝記念日であり、サルデーニャにおける[[聖母の被昇天|聖母被昇天の祭日]]である日にロシア軍の奇襲が行われたが、サルデーニャ軍は[[ミハイル・デミトリヴィチ・ゴルチャロフ]]{{enlink|Mikhail Dmitrievich Gorchakov|a=on}}将軍の攻撃を防ぎ、ロシア軍陣地へと押し返す功績を残した。

想定以上の活躍を見せることに成功したサルデーニャ軍であったが、肝心のクリミア戦争は実質的に痛み分けという結果に終わった。外交面ではフランスやイギリスとの友好関係を高めることはできたものの、この時点では具体的な支援を約束するまでには至らなかった。だが英仏との協力関係、加えて同戦争でのオーストリアの孤立は、後にカヴールによる[[プロンビエールの密約]]への足がかりともなった。協定で、オーストリアに打撃を与えるためにフランスはサルデーニャを支援し、またサルデーニャは参戦の口実となる相手からの開戦を引き出すように求められた。

予定通り[[ロンバルディア]]と[[ヴェネト]]を平定すればサルデーニャが同地を併合、見返りに[[ニース]]と[[サヴォワ]]がフランスへ譲られる約束となった。

===イタリア統一===
{{See also|第二次イタリア統一戦争|:en:Treaty of Turin|赤シャツ隊}}
[[File:Bossoli, Carlo - Battle of Solferino.jpg|300px|right|thumb|ソルフェリーノの戦い]]
1859年、万全の体勢を整えたサルデーニャ軍は遂に11年前の復讐を果たすべく行動を開始、総動員令によってオーストリアを挑発し、相手にも総動員令を発動させることに成功した。

開戦時点でサルデーニャ軍7万名に対してオーストリア軍は24万名を越えており、フランスが先の密約に従って15万名の援軍を送っても、まだ両軍を上回る戦力を有していた。しかし、想定していなかった増援に混乱するオーストリア軍は、[[モンテベッロの戦い]]{{enlink|Battle of Montebello (1859)|a=on}}で数的有利を生かせずに敗退、更に[[ジュゼッペ・ガリバルディ|ガリバルディ]]ら共和派の[[義勇兵]]が[[アルプス猟兵隊]]{{enlink|Hunters of the Alps|a=on}}を結成すると、オーストリア軍は[[ヴァレーゼの戦い]]{{enlink|Battle of Varese|a=on}}で彼らにも敗れ去った。勢いに乗るサルデーニャ・フランス連合軍はオーストリア軍をサルデーニャ国境から追い払うと、そのままロンバルディア平定を賭けた戦いに望んだ。

[[ソルフェリーノの戦い]]{{enlink|Battle of Solferino|a=on}}で、サルデーニャ・フランス連合軍は激戦の末にオーストリア軍を破り、オーストリア軍はロンバルディアから敗走していった。歓喜に沸くサルデーニャ軍であったが、予想以上の戦果と自軍損害に慄いたフランス皇帝[[ナポレオン3世]]は、ロンバルディアのみをサルデーニャへ割譲する形で戦いを終らせようと単独交渉を始めた。1860年3月、やむなくヴィットーリオ・エマヌエーレ2世は[[トリノ条約]]{{enlink|Treaty of Turin|a=on}}を締結、フランスを経由する形でロンバルディア領有をオーストリアに認めさせるのを優先した。しかしその上で、協定違反としてニース・サヴォワの割譲をフランスに取り下げさせることにも成功、またこのフランスの裏切りとも呼べる行為によってイタリア統一の機運が高まり、それまでサルデーニャ王国へ反抗的な態度を表していた中部の[[パルマ公国]]・[[モデナ公国]]・[[トスカーナ大公国]]が住民投票の結果サルデーニャ王国への合流を決定した。
サルデーニャ王国は[[教皇領]]レガツィオーネ地区を占領して先の3公国と合わせて併合し[[中部イタリア連邦]]{{enlink|United Provinces of Central Italy|a=on}}を樹立させるなど、対価を獲得した。
[[File:With Victor Emmanuel.jpg|220px|left|thumb|テアーノの握手]]
後にヴィットーリオ・エマヌエーレ2世はニース・サヴォワの割譲履行を条件に、中部イタリア連邦の併合をフランスに承認させ、中部イタリアの大部分を併合した。ヴェネト領有はならなかったものの、サルデーニャ王国は大きく領土を拡大、イタリア地方の3分の1を支配する大国として存在感を増していった。イタリア統一は目前に迫りつつあったが、教皇領の残余と[[両シチリア王国]]に対する処遇を巡って国内は対立した。

ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世が結論を出す前に行動を起こしたのが[[ジュゼッペ・ガリバルディ|ガリバルディ]]であった。彼はアルプス猟兵隊の一部を再編して[[赤シャツ隊]]を創設すると、両シチリアの農民反乱軍を支援するべく、[[シチリア島]]へ密航した。現地で駐留していた両シチリア軍を追い払い、農民の反乱軍を纏め上げたガリバルディは、シチリア全土を占領して「シチリアの護民官」への就任を宣言した。そのまま本土部分へ乗り込んだガリバルディ軍が王都ナポリに入城する勢いを見せると、共和勢力の拡大を恐れたヴィットーリオ・エマヌエーレ2世は自らも両シチリアへの進軍を決意した。その過程で、教皇領はローマを残して全て没収したため、[[教皇]]からヴィットーリオ・エマヌエーレ2世は[[破門]]処分を受けたが、今や教会の破門に情勢を動かすだけの力は無かった。

教皇領接収を終えると両シチリア軍との決戦に臨み、ガリバルディ軍と共にこれを撃破して、両シチリア王国を滅ぼした。事実上、ヴェネト以外の全ての地域がイタリア人支配者の下に置かれたことになるが、今度は共和派と王党派という対立の再燃が危惧された。サルデーニャ軍とガリバルディ軍が睨みあう中、テアーノでヴィットーリオ・エマヌエーレ2世はガリバルディとの会見に応じた。ガリバルディは謁見の場で「ここにイタリアの王がおられるのだ!」と宣言すると、全ての領土をサルデーニャ王国に献上した（{{仮リンク|テアーノの握手|it|Incontro tra Giuseppe Garibaldi e Vittorio Emanuele II}}）。ガリバルディの決断によって最悪の事態は回避され、ヴェネトとローマを除くイタリアの大部分が統合された。

1861年2月18日、サルデーニャ王国の王都トリノで第1回イタリア国民議会が開かれ、一堂に会した有力諸侯や政治家は、全会一致でヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のイタリア王への即位を承認した（[[イタリア王国]]）。王国の首都は投票により[[フィレンツェ]]とされた。

===ヴェネツィア奪還とローマ遷都===
{{See also|第三次イタリア独立戦争}}
[[File:Monumento Vittorio Emanuele II Rom.jpg|thumb|280px|[[ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂]]]]
イタリア王国成立後も、オーストリア支配下にとどまった[[ヴェネト州|ヴェネト]]や[[ボルツァーノ自治県|南チロル]]などの領域（[[未回収のイタリア]]）の統合を求めたイレデンティズモ（{{lang|it|Irredentismo}}、[[民族統一主義]]）が掲げられ、統一戦争の継続が模索された。1866年、[[プロイセン王国|プロイセン]]が南ドイツからのハプスブルク家放逐を目論んで[[普墺戦争]]を開始すると、イタリア王国はプロイセンと同盟（伊普同盟）を結んでオーストリアとの戦端を開いた（[[第三次イタリア独立戦争]]）。これは、サルデーニャ軍を中心に両シチリア軍、中部諸侯軍、教皇軍を統合して新たに結成されたイタリア王国軍の、最初の戦争であった。

結論から言えば、統合から数年後に過ぎない状況下では王国軍の整理統合は十分に進んでおらず、特に指揮官階層がサルデーニャ王国軍出身者で独占される状況は軍内に多大な不和を招いた。「サルデーニャ閥」の筆頭であったサルデーニャ王国軍の元総司令官{{仮リンク|アルフォンソ・フェレッロ・ラ・マルモラ|en|Alfonso Ferrero La Marmora}}元帥は、12万名からなるミンキオ方面軍（Italian Mincio Army）を率いてヴェネトへ進軍した。緒戦は順調にヴェネツィア目前まで攻め進み、迎え撃つ[[アルブレヒト・フォン・エスターライヒ＝テシェン|アルブレヒト大公]]指揮のオーストリア南部軍7万名と、因縁の地クストッツァで再戦した（{{仮リンク|第二次クストッツァの戦い|en|Battle of Custoza (1866)}}）。ミンキオ方面軍は足並みが揃わず、致命的でこそなかったものの敗北を喫する結果に終った（伊側損害8147名、墺側損害5650名）。同時期に行われた[[リッサ海戦]]でも海軍が手痛い敗北を味わっており、エマヌエーレ2世は軍の統合が進んでいないことを痛感することとなった。

唯一、[[ジュゼッペ・ガリバルディ|ガリバルディ]]が招集した{{仮リンク|アルプス猟兵隊|en|Hunters of the Alps}}のみが[[ベッツェッカの戦い]]で勝利を収め、[[トレント]]に向けて進軍していた。しかし、クストッツァとリッサの敗戦により戦線の立て直しが必要となったため、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世はガリバルディに撤退を命じた。戦争はプロイセンの攻勢によりオーストリアが降伏し、イタリアは戦勝国に収まったため、ヴェネトはイタリアに割譲されることとなった。エマヌエーレ2世とガリバルディの微妙な不和は続き、ローマ遷都を共に切望しながらも、諸外国の情勢から動かなかったヴィットーリオ・エマヌエーレ2世に対して、ガリバルディは個人的義憤としてローマ占領を計画した。ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世はガリバルディと彼の部隊に武装解除を求め、ガリバルディがこれに従うと丁重に根拠地へと送り返した。

1870年、プロイセンはフランスと戦争を開始し（[[普仏戦争]]）、教皇領の外交的後ろ盾は消失した。ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世は慎重に時期を待っていたローマ占領を実行に移し、これでヴェネト・ローマ併合というイレデンティズモ最大の目標を達成して、自らの統一事業に区切りをつけた。1871年7月2日、[[クィンナーレ宮]]を新たなサヴォイア家の王宮として接収し、これをもって王都はフィレンツェからローマへと遷都された。

===晩年===
晩年のエマヌエーレ2世の統治は、立憲議会の監督など、比較的穏かで静かなものへと代わった。前妻の病没後はローザ・テレーザ・ヴェルチェッラーナ・グエッリエーリという妾と生活して、私生児エマヌエーレ・アルベルトを儲けた。アルベルトにはミラフィオーリ及びフォンタナフレッダ伯爵の称号と領地を与えている。死の直前には教皇[[ピウス9世 (ローマ教皇)|ピウス9世]]からの和解の使者を突き返している。

1878年、57歳で波乱の人生に幕を下ろした。遺骸は跡を継いだ[[ウンベルト1世]]によってローマの[[パンテオン (ローマ)|パンテオン]]に埋葬された。

==一族==
[[File:VictorEmmanuel2.jpg|220px|thumb|現存する写真の一つ]]
=== 祖先 ===
*曽祖父
**父系：[[ルイージ・ヴィットーリオ・ディ・サヴォイア＝カリニャーノ|ルイージ・ヴィットーリオ]]（カリニャーノ公）
**母系：[[レオポルト2世 (神聖ローマ皇帝)|レオポルト2世]]（神聖ローマ皇帝）
**母系：[[フェルディナンド1世 (両シチリア王)|フェルディナンド1世]]（両シチリア王）
*祖父
**父方：[[カルロ・エマヌエーレ・ディ・サヴォイア＝カリニャーノ|カルロ・エマヌエーレ]]（カリニャーノ公）
**母方：[[フェルディナンド3世 (トスカーナ大公)|フェルディナンド3世]]（トスカーナ大公）
*父：[[カルロ・アルベルト・ディ・サヴォイア|カルロ・アルベルト]]（カリニャーノ公、サルデーニャ王）
*母：[[マリア・テレーザ・ダズブルゴ＝トスカーナ|マリア・テレーザ]]（トスカーナ大公女）
*弟：[[フェルディナンド・アルベルト・アメデーオ・ディ・サヴォイア|フェルディナンド・アルベルト・アメデーオ]]（ジェノヴァ公爵）

===子女===
1842年、[[ハプスブルク家]]の[[ラニエーリ・ダズブルゴ|ライナー・ヨーゼフ（ラニエーリ）大公]]（神聖ローマ皇帝[[レオポルト2世 (神聖ローマ皇帝)|レオポルト2世]]の子）の末子で従妹に当たる[[マリーア・アデライデ・ダズブルゴ＝ロレーナ|マリア・アーデルハイト]]（マリーア・アデライデ）と結婚し、8子をもうけた。
*長男 [[ウンベルト1世|ウンベルト]]（Umberto, 1844年 - 1900年） - イタリア王
*次男 [[アマデオ1世 (スペイン王)|アメデーオ]]（Amedeo, 1845年 - 1890年） - スペイン王、アオスタ公爵
*三男 オッドーネ（[[:en:Prince Oddone, Duke of Montferrat|Oddone Eugenio Maria]], 1846年 - 1866年） - モンフェッラート公
*四男 カルロ・アルベルト（Carlo Alberto, 1851年 - 1854年） - シャブレ公爵
*五男 ヴィットーリオ・エマヌエーレ（Vittorio Emanuele, 1852年） - 幼児にて病没
*六男 ヴィットーリオ・エマヌエーレ（Vittorio Emanuele, 1855年） - ジェノヴァ伯爵
*長女 [[マリーア・クロティルデ・ディ・サヴォイア|マリーア・クロティルデ]]（Maria Clotilde, 1843年 - 1911年） - [[ナポレオン・ジョゼフ・シャルル・ポール・ボナパルト|ナポレオン公ジョゼフ・シャルル・ポール]]妃
*次女 [[マリア・ピア・デ・サボイア|マリーア・ピーア]]（Maria Pia, 1847年 - 1911年） - ポルトガル王[[ルイス1世 (ポルトガル王)|ルイス1世]]妃

1869年11月7日、愛妾ローザ・テレーザ・ヴェルチェッラーナ・グエッリエーリ（Rosa Teresa Vercellana Guerrieri）と再婚。1子が成人した。
*私生児 エマヌエーレ・アルベルト  - ミラフィオーリ・フォンタナフレッダ伯爵

他に何人もの妾を抱えていたとされており、落胤を自称する者が絶えなかったという。

==脚注==
{{Reflist}}

==参考文献==
{{1911}}
*{{cite book|first=Lorenzo|last=Del Boca|title=Maledetti Savoia|publisher=Piemme|location=Casale Monferrato|year=1998}}
*{{cite book|first=Pier Francesco|last=Gasparetto|title=Vittorio Emanuele II|publisher=Rusconi|location=Milan|year=1984}}
*{{cite book|first=G. S.|last=Godkin|title=Life of Victor Emmanuel II|publisher=Macmillan|year=1880}}
*{{cite book|first=Denis|last=Mack Smith|title=Storia d'Italia|publisher=Laterza|location=Rome-Bari|year=2000|isbn=88-420-6143-3 }}
*{{cite book|first=Denis|last=Mack Smith|title=Vittorio Emanuele II|publisher=Mondadori|location=Milan|year=1995}}
*{{cite book|first=Paolo|last=Pinto|title=Vittorio Emanuele II: il re avventuriero|publisher=Mondadori|location=Milan|year=1997}}
*{{cite book|first=Gianni|last=Rocca|title=Avanti, Savoia!: miti e disfatte che fecero l'Italia, 1848-1866|publisher=Mondadori|location=Milan|year=1993}}

== 関連項目 ==
{{Commonscat|Victor Emmanuel II of Italy|ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世}}
{{Wikisourcelang|de|Victor Emanuel II., König von Italien, gestorben am 9. Januar 1878|Victor Emanuel, König von Italien, gestorben am 9. Januar 1878 (Zeitungsbericht von 1878)}}
*[[リソルジメント]]
*[[イタリア統一戦争]]
*[[ジュゼッペ・ガリバルディ]]
*[[ジュゼッペ・マッツィーニ]]
*[[カミッロ・カヴール]]
*[[ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂]]
*[[ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世のガッレリア]]
*『[[ロミオの青い空]]』 - 統一直後のイタリアを舞台としており、名前こそ示されていないが、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世も登場している。

==外部リンク==
*[http://www.chivalricorders.org/royalty/gotha/italygen.htm External link: Genealogy of recent members of the House of Savoy]
*[http://www.freereservation.com/roma2/1.htm View of Venezia Square Victor Emanuel II monument]

{{サルデーニャ王|1849年 - 1861年}}
{{近代イタリア王|1861年 - 1878年}}
{{Normdaten|PND=119172011|LCCN=n/80/56898|VIAF=95301792}}

{{DEFAULTSORT:ういつとりおえまぬえれ2}}
[[Category:近代イタリア王]]
[[Category:サルデーニャ＝ピエモンテ国王]]
[[Category:イタリア統一運動]]
[[Category:カトリック教会に破門された人物]]
[[Category:トリノ出身の人物]]
[[Category:1820年生]]
[[Category:1878年没]]