ロレンツォ・デ・メディチのソースを表示

{{出典の明記|date=2012年12月|ソートキー=人1492年没}}
[[画像:Lorenzo de' Medici-ritratto.jpg|thumb|200px|right|ロレンツォ・デ・メディチ]]
'''ロレンツォ・デ・メディチ'''(Lorenzo de' Medici, [[1449年]][[1月1日]] - [[1492年]][[4月8日]]）は、[[イタリア]]、[[フィレンツェ]]の[[ルネサンス]]期における[[メディチ家]]最盛時の当主。公的な肩書きはなかったが、当時の[[フィレンツェ共和国]]を実質的に統治した。

メディチ家の他のロレンツォと区別する意味もあって、'''ロレンツォ・イル・マニーフィコ'''（Lorenzo il Magnifico）とも呼ばれる。イル・マニーフィコは「偉大な」の意味でしばしば君主などに使われた称号であるが、「イル・マニーフィコ」だけでも通るのはロレンツォのみである。近年「ロレンツォ豪華王」と訳されることもあるが、ロレンツォは王ではなく「イル・マニフィコ」という訳語も不正確である。

優れた政治・外交能力を持っており、イタリア各国の利害を調整する立場として大きな影響力を振るい、信頼を得ていた。また、一般市民には気前良く振舞い、絶大な支持を得た。学問や芸術（ことに文学）のパトロンとしても知られ、彼のもとでルネサンス文化は最盛期を迎える。

== 生涯 ==
1449年、父[[ピエロ・ディ・コジモ・デ・メディチ|ピエロ]]と母ルクレツィア・トルナブオーニの間に、長子として生まれた。祖父は[[コジモ・デ・メディチ]]（イル・ヴェッキオ）である。幼時から、フィレンツェの指導者としての教育を受け、近隣の王侯貴族とも交流した。[[1469年]]、父ピエロが死ぬと、その跡を継いで20歳でメディチ家当主となり、フィレンツェの[[シニョリーア|最高権力者]]となった。

[[1478年]]、いわゆる[[パッツィ家の陰謀]]によって命の危険に晒された。[[サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂|フィレンツェ大聖堂]]で行われたミサの席上、暗殺者に襲われ、弟の[[ジュリアーノ・デ・メディチ|ジュリアーノ]]は殺害されるが、ロレンツォはかろうじて逃れる。暗殺者らは市民に反乱を呼びかけるも失敗、後に捕らえられて処刑された。この容赦の無い処置はパッツィ家と結んでいた時の[[教皇]][[シクストゥス4世 (ローマ教皇)|シクストゥス4世]]を激怒させ、パッツィ戦争が起こった。この危機を乗り切ると、ロレンツォの支配体制は確固としたものになり、フィレンツェ社会も総じて安定した。

以後、ロレンツォは各勢力が乱立するイタリアのバランサーとして、大いにその外交手腕を発揮した。その外交の特徴は[[勢力均衡]]と現状の維持である。彼はその財と個人的な魅力を巧みに使い、イタリア内の安定を実現した。

[[ファイル:Verrocchio Lorenzo de Medici.jpg|180px|right|thumb|ロレンツォ・デ・メディチ像]]
ロレンツォの時代はフィレンツェ・ルネサンスの最盛期となったが、一方でメディチ銀行経営の内実は巨額の赤字を出しており、破綻寸前の状態であった。また、共和国の公金にも手を付けていたといわれる。

そうした折、メディチ家ゆかりのサン・マルコ修道院の修道士[[ジロラモ・サヴォナローラ|サヴォナローラ]]がフィレンツェ社会の腐敗やメディチ家支配を批判する説教を行い、多くの信奉者を集めていた。ロレンツォは説教を禁止することはなく、ひそかに関心を寄せていた。そうした寛容さを示す一方で、説教の妨害も間接的に行っている。

当時彼はメディチ家の持病とも言える痛風に苦しんでおり、1492年には43歳の若さで死の床に就くが、サヴォナローラを自宅に招いて罪の告白を行ったという。ただし、罪の告白はサヴォナローラ側による宣伝で、捏造であるともされている。

死後、長男の[[ピエロ・ディ・ロレンツォ・デ・メディチ|ピエロ]]が家督を継ぐが、フランス軍の侵攻にあってその対処を誤り、市民の怒りを買う。この為、メディチ家は一時フィレンツェを追放され、その後のフィレンツェで政治を壟断したのはサヴォナローラであった。ロレンツォの死後、フィレンツェは動乱期を迎える事となり、メディチ家にとっても転換期となった。

== パトロンとしての活動 ==
[[サンドロ・ボッティチェッリ|ボッティチェリ]]、[[フィリッピーノ・リッピ|リッピ]]などの芸術家や[[マルシリオ・フィチーノ|フィチーノ]]、[[ピコ・デラ・ミランドラ|ミランドラ]]ら[[人文主義者]]を多数保護し、芸術・学芸の[[パトロン]]として、祖父コジモと並んで、後世まで模範と仰がれた。古典の教養も豊かで祖父コジモの代に創立された[[プラトン・アカデミー]]を主宰。自ら詩作や批評を行い、その文才は現代でも評価されている。青春の美しさと儚さを歌った「謝肉祭の歌」の一節が知られる。

美術のみならず、[[建築]]、[[彫刻]]においてもパトロンとして知られ、イタリア中に芸術・学問の庇護者'''メチェナーテ'''（[[古代ローマ]]の[[ガイウス・マエケナス|マエケナス]]に由来する）として名声を博した。また、ロレンツォの特異な点として、美術家の国外派遣が挙げられる。彼はフィレンツェの主要な美術家を、[[ローマ]]、[[ヴェネツィア]]、[[ナポリ]]、[[ミラノ]]に積極的に派遣した。これはロレンツォの外交政策の一端ではあったが、これにより、フィレンツェの[[ルネサンス美術]]は、イタリア中に広まったと言える。

ロレンツォの時代は、ルネサンスが正に華開いた「[[盛期ルネサンス]]」と重なる。しかし、ロレンツォ後のフィレンツェは衰退し、ルネサンスの中心はローマへと移っていく事となる。

若き日の[[ミケランジェロ・ブオナローティ|ミケランジェロ]]に彫刻の才能を見出し、自宅に住まわせて面倒をみた。

==家族==
* 妻：クラリーチェ・オルシーニ（1450年 - 1488年）
*: [[ローマ]]の名門[[オルシーニ家]]の娘。
* 長女：ルクレツィア・デ・メディチ（1470年 - 1553年）
*: [[1489年]]、ヤコポ・サルヴィアティと結婚。[[マリア・サルヴィアティ]]の母、[[トスカーナ大公国|トスカーナ大公]][[コジモ1世]]の祖母。
* 長男：[[ピエロ・ディ・ロレンツォ・デ・メディチ|ピエロ・デ・メディチ]]（1472年 - 1503年）
*: 父から'''愚か者'''と評された。事実彼は、[[人文学]]的教養は備わっていたが、傲岸不遜で政治的能力に欠けており、市民の不興を買ってフィレンツェを追われた。不運な死を迎えた事で不運なピエロ（ロ・スフォルトゥナート）と呼ばれた。しかしその生涯から、愚かなピエロ（イル・ファトゥオ）とも言われることが多い。
* 次女：マッダレーナ（1473年 - 1528年）
*: [[1487年]]、[[教皇|ローマ教皇]][[インノケンティウス8世 (ローマ教皇)|インノケンティウス8世]]の庶子[[フランチェスケット・チーボ]]と結婚。
* 次男：[[レオ10世 (ローマ教皇)|ジョヴァンニ・デ・メディチ]]（1475年 - 1521年）
*: 父から'''賢い'''と評された。事実彼は、兄ピエロとは違い、[[パトロン]]活動には積極的であったが、父譲りの政治的能力を発揮し、最終的にローマ教皇[[レオ10世 (ローマ教皇)|レオ10世]]になった。
* 3男：[[ジュリアーノ・デ・メディチ (ヌムール公)|ジュリアーノ・デ・メディチ]]（1479年 - 1516年）
*: 父から'''心優しい'''と評された。政治的能力は無かったが、教養と文才に富んだ貴公子と呼ばれた。[[フランス王国|フランス]]の王族の娘と結婚し、フランス王[[フランソワ1世 (フランス王)|フランソワ1世]]からヌムール公の称号を与えられた。これ以降メディチ家はフランスとの結び付きを深めていった。また[[レオナルド・ダ・ヴィンチ]]の[[モナ・リザ]]は、ジュリアーノの依頼により彼の[[愛人]]（コスタンツァ）を描かせたもの、とする説もある（通説ではジョコンダ夫人を描いたもの）。
* 養子：[[クレメンス7世 (ローマ教皇)|ジュリオ・デ・メディチ]]（1479年 - 1534年）
*: [[パッツィ家の陰謀]]で[[暗殺]]された[[ジュリアーノ・デ・メディチ]]の子でロレンツォの甥。ロレンツォが引き取り[[養子]]とした。[[枢機卿]]となり、後にローマ教皇[[クレメンス7世 (ローマ教皇)|クレメンス7世]]となった。

== 関連項目 ==
{{commons|Category:Lorenzo de' Medici}}
* [[ミケランジェロ・ブオナローティ]]
* [[マルシリオ・フィチーノ]]
* [[プラトン・アカデミー]]

{{先代次代|[[トスカーナの支配者一覧|フィレンツェの僭主]]|1469年 - 1492年|[[ピエロ・ディ・コジモ・デ・メディチ|ピエロ・イル・ゴットーソ]]|[[ピエロ・ディ・ロレンツォ・デ・メディチ|ピエロ・イル・ファトゥオ]]}}

{{DEFAULTSORT:めていち ろれんつお}}
[[Category:メディチ家|ろれんつお]]
[[Category:イタリアの詩人]]
[[Category:フィレンツェの僭主]]
[[Category:フィレンツェ出身の人物]]
[[Category:ルネサンスの人物]]
[[Category:1449年生]]
[[Category:1492年没]]