ユーロファイタータイフーンのソースを表示

{{Infobox 航空機
|名称=ユーロファイター タイフーン
|画像=ファイル:RAF Eurofighter EF-2000 Typhoon F2 Lofting-2.jpg
|キャプション=
|用途=[[戦闘機]]
|分類=[[マルチロール機]]
|設計者=
|製造者=ユーロファイター社
|運用者 more=:
** {{GBR}}（[[イギリス空軍]]）
** {{ITA}}（[[イタリア空軍]]）
** {{ESP}}（[[スペイン空軍]]）
** {{DEU}}（[[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|ドイツ空軍]]）
** {{AUT}}（[[オーストリア空軍]]）
** {{SAU}}（[[サウジアラビア空軍]]）
|初飛行年月日=[[1994年]][[3月27日]]
|生産数=355機（[[2013年]]3月時点）
|生産開始年月日=
|運用開始年月日=[[2003年]][[8月4日]]
|退役年月日=
|運用状況=現役
|ユニットコスト=6,300万[[ユーロ]]
}}
'''ユーロファイター タイフーン'''（Eurofighter Typhoon）は、[[北大西洋条約機構|NATO]]加盟国のうち[[イギリス]]、[[ドイツ]]（計画開始当時[[西ドイツ]]）、[[イタリア]]、[[スペイン]]、の4ヶ国が共同開発した[[戦闘機]]で、[[翼平面形#デルタ翼|デルタ翼]]と[[コックピット]]前方に[[エンテ型#ジェット戦闘機のカナード|カナード]]（前翼）を備え、'''カナードデルタ'''（canard-delta）と呼ばれる形式の機体構成をもつ[[マルチロール機]]。

== 開発経緯 ==
=== 背景 ===
[[1970年代]]、[[アメリカ合衆国]]や[[ヨーロッパ]]の各国[[空軍]]は[[ソビエト連邦]]の新型[[戦闘機]]の登場に直面し、自国の戦闘機が陳腐化し始めたという認識が生まれた。[[1977年]]までに[[フランス]]は[[SEPECAT ジャギュア]]の代替、[[西ドイツ]]は[[F-104 (戦闘機)|F-104]]の代替、[[イギリス]]はジャギュアと[[ホーカー・シドレー ハリアー]]の代替を検討していた<ref name="vector">{{cite web|url=http://www.vectorsite.net/aveuro.html|title=The EuroFighter Typhoon|author=greg goebel|publisher=vectorsite.net|language=英語|accessdate=2010-08-31}}</ref>。

[[イギリス空軍]]はジャギュアやハリアーより多くの搭載量を持ち、低コストで対空戦闘能力に秀でていて、かつ、ハリアーのように短距離で離陸が可能な戦闘機を望み、AST（Air Staff Target）396を発行した。しかし、あまりに多くの性能を1つの[[航空機]]に要求しすぎていると分析されたため、計画は見直された。[[1972年]]に対空戦闘能力に絞った戦闘機として仕様書AST 403を発行し、[[ブリティッシュ・エアロスペース]]でP.106Bが設計された。西ドイツの[[メッサーシュミット・ベルコウ・ブローム]]は[[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|西ドイツ空軍（当時）]]から出されたTKF-90（Taktisches Kampfflugzeug 1990）の条件に合う[[制空戦闘機]]の開発を行っていた<ref name="vector" />。

それぞれ独自の開発が進んでいた状況であったが、[[1979年]]にイギリスと西ドイツの間で共同開発の協定が結ばれた。引き続きイギリス側はブリティッシュ・エアロスペース、ドイツ側はメッサーシュミット・ベルコウ・ブロームが設計を担当した。この計画は当初ECF（European Collaborative Fighter）と名付けられ、後にECA（European Combat Aircraft）とプログラム名は変更された<ref name="starstreak">{{cite web|url=http://typhoon.starstreak.net/history.html|title=History, eurofighter|publisher=starstreak.net|language=英語|accessdate=2010-08-31}}</ref>。両国とも[[冷戦]]の軍事支出による予算の制約があったことから、他国の参加が求められ、フランスとの協議により[[ダッソー]]を基幹に参加が決まった<ref name="vector" />。

フランスは開発費用の拠出に消極的であったことが[[1980年]]の政府間協議において問題化した。西ドイツのTKF-90やイギリスのP.106Bは[[1981年]]までに開発が中止された。ブリティッシュ・エアロスペースは独自に輸出向けとしてP.106Bを基にP.110を設計したが、顧客は現れなかった。しかし、TKF-90とP.110のコンセプトを取り入れた[[トーネード IDS|パナヴィア トーネード]]の[[木型|モックアップ]]が[[1982年]]に[[ファーンボロー国際航空ショー]]において公開された。その後、フランスが後の[[ラファール (航空機)|ダッソー ラファール]]となるACX（Avion de Combat Experimenatal）の開発を開始したため、イギリスは[[BAe EAP|EAP]]（Experimental Aircraft Program）の開発を開始し、EAPの開発費援助を受けるため[[1983年]]5月にイタリアの[[アエリタリア]]と契約した<ref name="vector" />。

=== 共同開発計画 ===
[[1983年]]に[[イギリス]]、[[フランス]]、[[西ドイツ]]、[[イタリア]]に加えて[[スペイン]]の5ヶ国でEAPを基にした設計に合意がなされ、詳細の協議が始まった。しかし、イギリスとスペインが[[マルチロール機]]を希望していたのに対し、西ドイツとイタリアは[[制空戦闘機]]を希望していた。これらの設計にはSTOL性能や視界外射程（BVR）戦闘能力も含まれ、F/EFA（Future European Fighter Aircraft）と称した。[[1985年]]8月の会議で議論は行き詰まり、F/EFAとは別にイギリス、ドイツ、イタリアの3ヶ国で新たなEFA（European Fighter Aircraft）プログラムが立ち上げられた<ref name="starstreak" />。

[[1986年]]6月にスペインがEFAへ参加し、イギリスと西ドイツにそれぞれ33%、イタリア21%、スペイン13%の作業分担が合意された<ref name="starstreak" />。生産は[[1992年]]開始を目指した。計画は[[1987年]]9月に正式な仕様が発行された。フランスは[[艦上機]]としての能力を備えることとパワープラントに自国産の[[SNECMA M88]]を採用することを最後まで妥協せず、1985年7月に共同開発計画から脱退した<ref name="vector" />。

1986年に計画を管理するユーロファイター社とパワープラントの[[ユーロジェット EJ200|EJ200]]の開発を管理する[[ユーロジェット・ターボ]]社が設立され、EAPの成果を認めたユーロファイター社は1987年以降の試験に資金を提供する事を決定した。運用開始時期は当初計画の[[1990年代]]前半から[[1997年]]に延びたものの開発はこのまま順調に進むと思われた。

[[ベルリンの壁崩壊|東西統一]]で、[[ドイツ民主共和国|東ドイツ]]地域の[[インフラストラクチャー|インフラ]]整備に多額の資金が必要となった事により、[[1992年]]に[[ドイツ]]が開発コスト問題から計画の脱退を示唆、この動きに対し、複数の代替案が検討されたが、代替案のすべてが今まで以上のコストがかかるか、仮想敵機である[[MiG-29 (航空機)|MiG-29]]や[[Su-27 (航空機)|Su-27]]に能力面で劣るものばかりであった。同年年末に開発参加国の国防相会議が開催され従来の計画を維持することを確認した。方針維持の要因として、これまでに投入された資金が無駄になる事や外国製戦闘機の導入を行っても大幅なコストの削減ができない、参加国の航空機産業からの圧力などがあった。

[[ファイル:Eurofighter 9803 5.jpg|thumb|250px|ドイツ空軍のEF-2000（複座型）]]
計画の推進が確認された後に、政治的な理由から想定運用開始時期を遅らせ[[2000年]]からの運用としたため、機体名称の変更が行われた。名称はEFAからEF（Eurofighter）-2000に変更され、[[1998年]]には輸出市場向け名称として名付けられた'''タイフーン'''（Typhoon）が愛称となっている。ただしこの愛称は[[第二次世界大戦]]においてドイツ攻撃に活躍した[[戦闘爆撃機]][[ホーカー タイフーン]]を想起させることからドイツとイタリアでは採用されておらず、単に'''ユーロファイター'''と呼ばれている。なお[[BAEシステムズ]]の日本語公式サイトでは'''ユーロファイター･タイフーン'''と表記されている。

{| class="wikitable"
|+ メーカーと名称<ref name="vector" />
|-
! {{GBR}}
| BAe（33%）<br/>後継：[[BAEシステムズ]] || 単座型：タイフーン F.2（ブロック2/2B）/FGR.4（ブロック5以降）<br/>複座型：タイフーン T.1（ブロック1/2/2B）/T.3（ブロック5以降）
|-
! {{DEU}}
| MBB（33%）<br/>後継：[[EADS]]-ドイツ || ユーロファイター EF-2000
|-
! {{ITA}}
| アエリタリア（21%）<br/>後継：[[アレーニア・アエルマッキ|アレーニア]] || EF-2000
|-
! {{ESP}}
| [[コンスラクシオネス・アエロノーティカ|CASA]]（13%）|| 単座型：C.16<br/>複座型：CE.16
|}

イタリアとドイツの単座型と複座型は機体毎のナンバーで識別している。[[2002年]]夏から量産開始。[[アフターバーナー]]なしで[[超音速]]飛行を可能としており、機体構成などが他の[[第4世代ジェット戦闘機#第4.5世代ジェット戦闘機|4.5世代型]]の[[ヨーロッパ]]製[[戦闘機]]と共通する点が多い。

=== 生産 ===
開発国向けの量産機数合計620機は3段階に分けて生産され、各段階に向けたスパイラル方式での近代化が行なわれる。それぞれの段階はトランシェ（Tranche：[[フランス語]]で"区分"の意）と呼ばれ、1から3までの各トランシェ内でもその初期型から後期型までの仕様の違いに応じてブロック数で表される。トランシェは発注段階の区分であり、仕様の違いではない<ref name="mil_rec0812" />。

従ってトランシェ数のみによって機体の能力を決め付けるのは必ずしも妥当ではない。また、ブロックについても改修をすることにより、その後のブロックと同等の能力を得ることが可能で、例として[[イギリス空軍]]が取得したトランシェ1 ブロック2/2Bは、その後の改修により、ブロック5と同様の能力を付与され攻撃、[[偵察]]も可能な多目的機となっている<ref name="mil_rec0812" />。


現在、以下のブロックが生産されている。
* トランシェ1：ブロック1、ブロック2、ブロック2B、ブロック5、ブロック5A<ref name="mil_rec0901">「軍事研究」2009年1月号 ジャパン・ミリタリー・レビュー</ref>
* トランシェ2：ブロック8、ブロック8A ブロック8B ブロック10、ブロック15 ブロック20<ref name="mil_rec0901" /><ref name="air_info0910">「航空情報」2009年10月号 酣燈社</ref>

また、[[2009年]][[7月31日]]には共同開発4ヶ国でトランシェ3の生産が締結されたとされる<ref name="air_info0910" />。
* トランシェ3A<ref name="air_fan0906">「[[航空ファン (雑誌)|航空ファン]]」2009年6月号 文林堂</ref>

=== 関連報道 ===
[[2004年]][[5月24日]]付けのロンドン・イブニング・スタンダードに飛行制限問題が掲載され、コンピューター及びディスプレイの問題で悪天候時の高機動運動が危険であると報じられた。
	 
[[2008年]][[8月20日]]付け[[イギリス]]の[[経済紙]]の[[フィナンシャル・タイムズ]]は、「[[国防省 (イギリス)|イギリス国防省]]が発注したユーロファイターの一部が財政難で購入が難しい、しかしキャンセルすると膨大な違約金が発生するため、[[日本]]を始め、[[サウジアラビア]]、[[インド]]など数ヶ国に購入を打診している」と報じた。しかし、[[BAEシステムズ]]は2008年国際航空宇宙展で「（日本とは）[[ライセンス生産]]を前提とした提案活動を行っており、同紙の報道は誤りである」と強調した。また、この時、[[ブラックボックス]]も設けないことを明らかにしている。さらに会場で配られた資料によれば、[[三菱重工業]]・[[三菱電機]]・[[IHI]]とライセンス生産に向けた話し合いが行われていると明記されている。

[[2011年]][[10月10日]]付の[[産経新聞]]において、技術開示や、日本国内でのライセンス生産の容認、日本国産兵装の搭載が可能であるなど、日本に最も好条件であり、防衛産業維持、リスク分散の面からもユーロファイターを選定するべきという趣旨の記事が掲載された。

== 特徴 ==
=== 電子機器 ===
[[ファイル:ILA Berlin 2012 PD 193-2.JPG|thumb|250px|キャプターEを搭載したデモンストレーター機]]
==== レーダー ====
{{main|ブルーフォックス・レーダー#CAPTOR}}
トランシェ1・2が搭載する[[レーダー]]のCAPTOR（キャプター）は、ユーロレーダー社製の多モードパルスドップラーレーダー（メカニカルスキャン方式）<ref name="mil_rec0812" />。[[アンテナ]]直径約70cm<ref name="mil_rec0812" />。チャンネル数：3チャンネル<ref name="air_fan0901">「航空ファン」2009年1月号 文林堂</ref>。[[戦闘機]]レベルの大きさの目標については約160km、大型目標では約320kmの探知能力があり、同時に20個の目標の追跡ができるという<ref name="air_info0910" /><ref name="air_fan0809">「航空ファン」2008年9月号 文林堂</ref>。

トランシェ3では、フロントエンドを改良した[[フェーズドアレイレーダー|アクティブフェーズドアレイレーダー]]方式のキャプターEが搭載される予定であるが、導入国間に意見の相違がある為、当初計画の約45%に当るトランシェ3Aにおける搭載は見送られる見通し<ref name="air_fan0906" />。キャプターEは[[2007年]][[5月]]より飛行試験を開始しており、探索距離など、[[巡航ミサイル]]のような小型目標や[[ステルス性]]のある目標を探知する能力に資する性能向上を目指すといわれる<ref name="air_fan0901" />。

なお、CAPTORは旧称をECR90、キャプターEは別名をCAESAR（'''カエサル'''、'''シーザー'''）と言い<ref name="air_fan0901" /><ref name="mil_rec0901" />、[[2015年]]に実用化される予定<ref name="air_fan1010">「航空ファン」2010年10月号 文林堂</ref>。また、代替レーダーとして{{仮リンク|AMSAR|en|AMSAR}}（Airborne Multirole Solid State Active Array Radar：機上多モードソリッドステート・アクティブレーダー）を開発中とされる。

==== DASS ====
防御支援サブシステム（'''DASS'''; Defensive Aids Subsystem）は以下の各機器により構成される。<ref name="mil_rec0901" />
* DAC 防御支援コンピューター
* RWR [[レーダー警報受信機|レーダー警戒受信機]]<ref name="air_info0910" />
* ESM 電子戦支援装置
* LWR [[レーザー]]警戒受信機
* MAW [[ミサイル警報装置|ミサイル接近警戒器]]
* [[チャフ]]・[[フレア (兵器)|フレア]]ディスペンサー
* ジャミング発生装置
* 曳航式[[デコイ (兵器)|デコイ]]

各種システムを統合化する防御支援コンピュータ（DAC）は、機体の全周をカバーする各センサーにより探知した脅威の内容を判断し、自動的に最も適切な方法で対処するようになっている<ref name="mil_rec0901" />。

タイフーンの自己防御システムは、[[キャノピー]]下の両側と主翼後縁付け根のレーザー警戒装置、主翼前縁付け根と垂直安定板内のミサイル接近警報装置、主翼両端の筒の中にECM装置とESM装置を備え、[[イギリス]]向けの機体は右側筒の標準のECM装置を外して曵航式デコイ2基を内蔵するECM装置に変更している。

==== PIRATE（赤外線捜索追跡装置） ====
PIRATE（[[赤外線捜索追跡システム|IRST]]）は、探知走査中にも追跡機能を持つ。さらに空中と地表上の両目標への対処能力を有し、航法用にも前方監視赤外線画像を利用でき<ref name="mil_rec0901" />、情報は[[操縦席]]の[[ヘッドアップディスプレイ]]や[[マルチファンクションディスプレイ|多機能表示装置]]、[[ヘッドマウントディスプレイ|ヘルメット装着式表示装置]]などの、いずれにも表示させる事ができる<ref name="k14">月刊「J-WING」 2010年10 月号</ref>。ユーロファーストが開発したこの装置は、[[戦闘機]]サイズの目標が発する赤外線を145kmの距離で探知でき、複数目標の同時処理も可能<ref name="a505">イカロスmook 「ユーロファーター タイフーン」 Jウイング編集部 [[イカロス出版]] </ref>。

==== MIDSデータ・リンク端末 ====
{{main|多機能情報伝達システム}}
ユーロファイター タイフーンは、[[多機能情報伝達システム]]（MIDS）の[[多機能情報伝達システム#MIDS-LVT|MIDS-LVT(1)]]端末を搭載しており、[[北大西洋条約機構]]の新しい標準的[[戦術データ・リンク]]である[[リンク 16]]（TADIL J）のネットワークに参加することができる。リンク 16は、[[海軍]]用の[[戦術データ・リンク#リンク 11 (TADIL-A/B)|リンク 11]]と[[空軍]]用の[[戦術データ・リンク#リンク4 (TADIL-C)|リンク 4]]を統合する新しい規格であり、[[航空自衛隊]]や[[アメリカ軍]]の作戦機、[[早期警戒管制機]]、地上[[レーダーサイト]]に加えて、[[イージス艦]]・[[航空母艦]]や[[パトリオットミサイル|パトリオット地対空ミサイル]]部隊など他軍種の部隊との情報共有をも実現するもので、その情報を元に効率的な[[統合作戦]]行動を可能とする<ref name="air_info0910" /><ref name="air_info1007">「航空情報」2010年07月号 酣燈社</ref>。データリンク情報は[[コックピット]]内にある3基のMHDD（多機能ヘッドダウンディスプレイ）に表示される<ref name="air_info0910" />。

一部のメディアではタイフーンが[[ヨーロッパ|欧州]]製であるため、[[アメリカ軍]]との共同作戦が難しいといった報道があるが、アメリカ軍との連携に問題は発生していない<ref name="air_info0910" />。

==== VTAS ====
VTASとは、HOTAS概念が導入された、各種スイッチ類が付いたスロットルレバーと操縦桿、そしてDVIと呼ばれる直接音声入力装置によって構成され、[[パイロット]]の作業効率を上げる為の装置である<ref name="mil_rec0901" />。

'''DVI'''は音声で以下のシステムの操作を行える<ref name="mil_rec0901" />。
* 各種データ入力
* [[マルチファンクションディスプレイ|多機能ヘッドダウンディスプレイ]]のモード切替
* 無線や航法装置の周波数切り替え
* 目標選択
* 僚機への目標割り当て

==== HMSS（ヘルメット装着式シンボリックシステム） ====
[[JHMCS]]に該当するもので、ヘルメット自体に多くのセンサーが付けられ、[[パイロット]]は機体の各種[[センサー]]、電子機器類が取得した情報を融合して[[ラスタースキャン]]型バイザーに投影して見ることが可能で<ref name="k3">月刊「航空ファン」2011年4月号</ref>、オフボアサイト照準能力の他、夜間飛行の際にPIRATEの映像を映し出せる。両脇には夜間飛行用の[[暗視装置|暗視スコープ]]を搭載可能。炭素繊維複合材が使用されており重量が2kg以下と軽く、パイロットへの負担が少ない。2010年7月より、各国空軍に納入され始めた<ref name="k14"/>。ストライカーの別名でも呼ばれる。

2014年7月18日、ストライカーIIが公開された。ストライカーIIでは暗視装置を内蔵し、別途装着していた暗視スコープを不要とすることでパイロットの首への負担を軽減している<ref>[http://japanese.engadget.com/2014/07/18/hmd-striker-ii/ 戦闘機用 HMD Striker II発表。暗視カメラ内蔵で夜間ミッション時パイロットの負担を軽減]</ref><ref>「http://www.baesystems.com/product/BAES_055043?_afrLoop=238787751847000&_afrWindowMode=0&_afrWindowId=null#%40%3F_afrWindowId%3Dnull%26_afrLoop%3D238787751847000%26_afrWindowMode%3D0%26_adf.ctrl-state%3Duge4tjbpr_97 STRIKER® II DIGITAL HELMET-MOUNTED DISPLAY - UNVEILED AT FARNBOROUGH AIR SHOW:] - BAeシステムズ公式</ref>。ストライカーIIには開発が中止されたF-35の代替ヘルメットの技術が生かされているとされる<ref>[http://www.flightglobal.com/news/articles/farnborough-bae-launches-next-gen-striker-ii-helmet-401443/ FARNBOROUGH: BAE launches next-gen Striker II helmet]</ref>。

==== 飛行操縦システム関連 ====
*ケアフリーハンドリング機能 
:[[パイロット]]がどのような操作を行っても飛行状態が異常にならないように自動的に操縦システムが制御するもので、失速、オーバーG、スピン、デバーチャーなどを防ぐ効果がある<ref name="mil_rec0901" />。

*混乱時回復機能
:自機の飛行状態を把握できない混乱（[[空間識失調]]など）に陥った場合でも、ボタン一つで自動的に300[[ノット]]の速度を維持したまま機体姿勢を水平に保ち、安定させるなどパイロットの安全をサポートする<ref name="mil_rec0901"/>。

== 機体 ==
[[ファイル:Eurofighter Typhoon FIA 2012.jpg|thumb|left|250px|]]
クロースカップルド・デルタ翼はデジタル・コンピュータに常時制御されていて、操縦者の命令に従い安全な飛行姿勢が維持できる範囲内で最適化され、超音速飛行時だけでなく低速時でも安定性が確保される。

操縦者は[[耐Gスーツ]]と加圧呼吸装置で長時間9Gに耐えられる。これにより急激な速度変化や旋回が可能となった。人体と機体が耐えられる限界は9Gである。なお、従来機ではこの荷重に数秒しか耐えられない。

[[F-22 (戦闘機)|F-22]]同様、[[アフターバーナー]]を使用しなくても超音速飛行が可能な[[スーパークルーズ]]性能を備える。空虚重量でマッハ1.5、全備重量でマッハ1.3を発揮できる。
{{-}}

=== ステルス性能 ===
前方からのRCS低減のみに配慮されたと言われる機体は、電波吸収材の多用により、[[トーネード IDS|トーネード]]に比べ[[レーダー反射断面積]]（RCS）が4分の1以下に減少した<ref name="mil_rec0812" />。BAESの評価では正面からのRCSの値は最新型[[F/A-18E/F (航空機)|F/A-18E/F]]や[[ラファール (航空機)|ラファール]]よりも小さく、[[ステルス機]]に次ぐという評価もある<ref>[http://www.eurofighter-typhoon.co.uk/Eurofighter/tech.php Eurofighter Technology and Performance, www.eurofighter-typhoon.co.uk] {{En icon}}</ref>。最近の報道では機体のRCSは一般的な中小型[[戦闘機]]の20%、もしくはそれを下回る数値である1m&sup2;以下だと推定されている<ref name="air_info0910" />。また、[[2010年]]時点の情報によれば、0.05-0.1m&sup2;とも言われている<ref name="jwing1008">「J-WING」 2010年08月号 イカロス出版</ref>。

== 能力 ==
[[ファイル:BVR combat rating against Upgraded Su-27 Flanker (Core).PNG|thumb|230px|'''Su-27を相手にした空中格闘戦での想定勝率グラフ'''<ref group="注">「BVR」とは Beyond Visual Range の略</ref><br/>性能向上型の[[Su-27 (航空機)|Su-27]]（[[Su-35 (航空機・初代)|Su-27M]]に相当）と空戦時の勝利確率をそれぞれの機体の能力から求めたもの。開発主体であるBAEシステムズ社によるデータ<ref name ="mil_rec0812">「[[軍事研究]]」2008年12月号 ジャパンミリタリーレビュー 石川潤一著「ユーロファーター・タイフーン」節 59-71頁</ref><ref>[http://typhoon.starstreak.net/Eurofighter/tech.php Eurofighter Technology and Performance] ''starstreak.net''. {{En icon}}</ref>]]
BAEシステムズ社のマーケティング資料では、本機が[[アメリカ合衆国|アメリカ]]製の最新[[戦闘機]][[F-22 (戦闘機)|F-22]]には空戦能力の点では劣ると認めた上で、F-22と[[F-35 (戦闘機)|F-35]]の両機それぞれの得意分野である空中戦闘能力と対地攻撃能力の両方を1機種でカバーできる、フォース・ミックスの観点でも優れた戦闘機として各国軍への宣伝を行なっている。また、タイフーンは、対空対地両方の装備をした上で作戦中に、敵航空戦力の迎撃を受けた場合でもその状態のまま反撃を行うことが可能としている。これは、航空作戦時に敵の[[航空機]]による攻撃を受けた場合には、爆装を放棄し自機の迎撃を行うしかない既存機よりも大きなメリットであるとしている（これをBAEシステムズ社では、マルチロールと区別する意味でスイングロールと呼んでいる）<ref>酣燈社著 航空情報11月号増刊　ユーロファイター・タイフーン56ページ「攻撃力＜実際の戦い方>」</ref>。

低翼機であるが、空気取込口が胴体下にあることもあって主翼下のグランドクリアランスが広く、また、翼端を除いて13もの[[ハードポイント]]があり、7.5トンの兵装搭載容量を持つため、[[攻撃機]]としての能力が高い。トランシェ1ブロック5からはPIRATE（受動式[[赤外線]]探知装置）を装備し、胴体下に[[イスラエル]]のラファエル社製、[[ライトニング (照準ポッド)|ライトニングIII]]目標指示ポッドを搭載できる。

=== 制空 ===
小型の機体に出力の大きな[[エンジン]]を備え、高速での[[ドッグファイト|格闘戦闘]]でも有利な性能を備える<ref name="mil_rec0812" />。制空仕様の場合には中/長距離[[空対空ミサイル]]を6発、短距離空対空ミサイルを2発、外部燃料タンク3つを同時に搭載できる<ref name="mil_rec0812" />。

==== 機動性 ====
また、[[空対空ミサイル]]を6発装備した状態で超音速巡航飛行が可能<ref name="mil_rec0812" />とされ、空対空装備時に[[マッハ数|マッハ]]0.9からマッハ1.5へ[[アフターバーナー]]を使用し加速する場合、所要時間は[[F-35 (戦闘機)|F-35]]の2/3で済み、マッハ1.5における維持旋回率はF-35の二倍とされる<ref name="air_info0910">「航空情報」2009年10月号 酣燈社</ref>。空対空装備時における推力重量比は1.13<ref name="air_info0910" />。

[[イングランド]]北西部において[[2005年]]に行われた共同訓練中に、タイフーン複座機に2機の[[F-15E (航空機)|F-15E]]が襲いかかったものの、[[ドッグファイト]]でタイフーンに撃退されたという説がある<ref name="air_info0910" />。

イギリス防衛評価研究所（DERA）の試算をもとに、改良型[[Su-27 (航空機)|Su-27]]（[[Su-35 (航空機・初代)|Su-27M]]相当）と撃墜/被撃墜を比較するとタイフーンは3から4.5対1の割合で有利である<ref>[http://www.airpower.at/flugzeuge/eurofighter/faq.htm Eurofighter Typhoon, www.airpower.at] {{En icon}}</ref>。

=== 対地 ===
トランシェ1ブロック5より[[レーザー]][[誘導爆弾]]の運用能力が付加され、トランシェ2ブロック15から[[巡航ミサイル]]や対[[装甲]][[ミサイル]]、超音速で[[空襲|爆撃]]可能な各種[[爆弾]]の運用を可能にする計画がある<ref name="mil_rec0901" />。

=== 対水上 ===
トランシェ2以降は[[ハープーン (ミサイル)|ハープーン]]などの[[対艦ミサイル]]を最大6発搭載し、艦船に対する攻撃能力を有する<ref name="a505">イカロスmook 「ユーロファーター タイフーン」 Jウイング編集部 イカロス出版 </ref>。この場合でも、対艦ミサイルの他に外部燃料タンクと6発の[[空対空ミサイル]]を同時に積載できる<ref name="a505" />ため、海上脅威に対する任務遂行中に航空脅威に遭遇しても十分対応できる能力を持つ。

=== 相互運用性（インターオペラビリティ） ===
[[イギリス空軍]]のユーロファイター タイフーンFGR4は、[[2008年]]5-6月に[[ネバダ州]]ネリス空軍基地で行われた共同演習「グリーンフラッグウエスト」に参加し、[[アメリカ空軍]]や[[アメリカ陸軍]]地上部隊との共同作戦をこなしていることから、BAEシステムズ社は、タイフーンの[[アメリカ軍]]兵器システムとの相互運用性について問題はないとしている<ref name="mil_rec0812" />。

また、[[2011年]][[2月2日]]には、在日イギリス大使館におけるユーロファイター説明会において、デイビッド・ウォレン駐日イギリス大使は、「ユーロファイターはアメリカ軍との定期的な合同演習で完全な相互運用性が実証されている」と述べ、同機がアメリカ軍との相互運用性で問題が無い事を、[[イギリス政府]]として公式に認めている<ref name="asag01">[[朝雲新聞]]　2011年02月10日付 </ref>。

== 各発注区分とブロック ==
[[ファイル:Italian Eurofighter Typhoon.JPG|thumb|250px|EF-2000（イタリア空軍）]]
[[ファイル:Spanish Air Force Eurofighter.jpg|thumb|250px|ユーロファイター タイフーン C.16<br/>（スペイン空軍）]]
=== トランシェ1 (Tranche 1) ===
; ブロック1
: 最初の量産仕様機で、メインコンピューターのソフトウェアはPSPI。DASSは搭載されていない。複座型しか製造されておらず、初期の乗員訓練と防空訓練のみに使用。飛行試験用5機と量産機31機。
; ブロック2
: 防空能力を高めた完全な初期作戦能力を持った機体で、ソフトウェアをPSPI2に変更。一部簡略化されたDASSを搭載。また、キャプターレーダー、IFF、MIDS、についてある程度のセンサー融合がなされた。更に自動操縦装置、マイクロ波着陸装置、直接音声入力装置の簡易版を搭載。47機を生産。
; ブロック2B
: ブロック2と同じだがケアフリーシステムを追加。38機を生産。
; ブロック5
: 完全作戦能力を持った機体。GBU-16などの[[ペイブウェイ|ペイブウェイII]]や1,000lb通常[[爆弾]]の携帯が可能になった他、BK-27の空対地使用が解禁され、DASS、直接音声入力装置、[[センサー]]融合共に完全な能力を得た。また、PIRATEを追加した（独向け機体を除く）21機を生産。
; ブロック5A
: ブロック5に準じた[[オーストリア]]向け、下記4ヶ国分から調達した15機。

[[2005年]]3月迄の総生産機数148機。

各国での初期調達予定
* {{GBR}}：単座型37機 複座型18機
* {{ITA}}：単座型19機 複座型10機
* {{ESP}}：単座型12機 複座型8機
* {{DEU}}：単座型28機 複座型16機

実際の調達数
* {{GBR}}：53機
* {{ITA}}：28機
* {{ESP}}：19機
* {{DEU}}：33機
* {{AUT}}：15機

=== トランシェ2 (Tranche 2) ===
; ブロック8/8A/8B
: 能力向上と旧式化した部分を取り除いた新しいミッションコンピューターを導入するもの。初期のソフトウェアはブロック5と同じだが8A/8Bではバージョンアップしている。
; ブロック10
: [[ペイブウェイ|ペイブウェイIII]]、[[JDAM]]などが携帯でき、スイングロール（空対空と空対地任務を同時にする事）が可能になった。また、[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]、IFF、MIDSの能力が強化された。
; ブロック15
: [[SCALP-EG/ストーム・シャドウ|ストームシャドウ]]・{{仮リンク|KEPD 350|en|KEPD 350}}[[巡航ミサイル]]など、空対地能力を更に向上させ、最大離陸重量を引き上げた。スイングロール能力も向上。

[[2005年]][[12月17日]]に開発参加4ヶ国合計で236機の導入契約を締結。これに加えトランシェ1で[[オーストリア]]の分を各国で計15機調達が減った分トランシェ2が15機増産される。
また、[[イギリス]]は自国の調達分のうち24機を[[サウジアラビア]]に譲っている。

当初の調達予定
* {{GBR}}：単座型83機 複座型6機
* {{ITA}}：単座型43機 複座型3機
* {{ESP}}：単座型27機 複座型6機
* {{DEU}}：単座型58機 複座型10機
236機

=== トランシェ3 (Tranche 3) ===
対地攻撃能力を完全実装したタイプで、開発参加4ヶ国合計で236機を調達する予定であった。[[2009年]]7月の会議において、3Aと3Bの二種に分けて調達することが決定した。この決定と同時に合計112機のトランシェ3Aの調達を確定させたが、残りの3Bのオーダーについては各国における防衛費削減を原因として不確定さが増している。[[イギリス]]は3Bの調達を予定しておらず<ref>[http://www.theregister.co.uk/2009/07/31/eurofighter_ditched/ Government slashes final Eurofighter order], 31 July 2009</ref>、さらに、調達を急いでいた[[サウジアラビア]]へ自国のトランシェ2の調達枠24機分を譲り、その代替として既に注文を確定させたトランシェ3A 40機のうち24機をあてるとしている<ref>[http://www.defenseindustrydaily.com/Eurofighters-EUR-9B-Miltinational-Tranche-3A-Contract-05674/ Eurofighter’s Future: Tranche 3, and Beyond]</ref>。

当初の調達予定
* {{GBR}}：88機
* {{ITA}}：46機
* {{ESP}}：34機
* {{DEU}}：68機
計236機

トランシェ3A確定分
* {{GBR}}：40機
* {{ITA}}：21機
* {{ESP}}：20機
* {{DEU}}：31機
計112機

=== ユーロファイター2020 ===
ユーロファイター2020とは、ユーロファイター・ワールド6月号で掲載されたコンセプトであり次のような改良が盛り込まれている。

*主翼付け根を延長し[[ストレーキ|LERX]]とする。
*EJ200の推力増強と[[推力偏向|推力偏向ノズル]]の導入。
*{{仮リンク|AMSAR|de|EuroRADAR CAPTOR#Varianten}}[[フェーズドアレイレーダー|AESA]]レーダーの搭載。
*[[コンフォーマル・フューエル・タンク|CFT]]への対応。
*新型{{仮リンク|照準ポッド|label=ターゲティングポッド|en|Tageting pods}}・[[偵察]]ポッド運用能力。
*ヘルメット装着シンボロリックシステム（HMSS）や新型オートパイロットによるパイロットへの負荷軽減。
*DASSシステムの強化（[[レーザー]]警報装置やパッシブ・[[ミサイル警報装置]]の強化）
*新型[[ミサイル]]・[[誘導爆弾]]への対応。

なおこれらの一部はブロックにより実装されている（新型ポッド、・ミサイルなどへの対応、HMSSなど）

== 運用国 ==
[[ファイル:Eurofighter operators.png|thumb|350px|運用国（青）]]
; {{GBR}}（[[イギリス空軍]]）
; {{ITA}}（[[イタリア空軍]]）
; {{ESP}}（[[スペイン空軍]]）
; {{DEU}}（[[ドイツ空軍 (ドイツ連邦軍)|ドイツ空軍]]）
: 8つの閣議決定の下で[[1997年]]10月、[[F-4 (戦闘機)|F-4FファントムII]]と[[トーネード IDS|トーネード]]の後継として180機が計画された。計画生産率は年間15機であった。最初の7機は[[2004年]]に第73戦闘航空団"シュタインホフ"に引き渡された。その後[[2006年]]には[[ドナウ川]]沿いの[[バイエルン州]]ノイブルクの第74戦闘航空団に配備された。

; {{AUT}}（[[オーストリア空軍]]）
: 当初24機の導入が決まっていたが、[[2002年]]の洪水により計画を[[2007年]]まで凍結し導入機数も結局15機に削減された。また、[[スウェーデン]]がサーブ・[[サーブ 39 グリペン|グリペン]]の不採用の報復として、同国が運用していたサーブ・[[サーブ 35 ドラケン|ドラケン]]のメンテナンス費用を正規価格に変更したため（オーストリアは以前グリペンの導入を約束し、スウェーデンから中古のドラケンを受領していた）、オーストリア側は対抗策として[[スイス]]から[[リース]]した[[F-5 (戦闘機)|F-5E]]と入れ替える形でドラケンを退役させた。
: 引き渡しは2007年から始まり、[[2009年]]に完了した。[[パイロット]]の訓練はドイツで行われるため、複座型は導入していない。

; {{SAU}}（[[サウジアラビア空軍]]）
: [[2005年]]12月下旬に導入が決定したと報じられた。[[ヨーロッパ]]諸国以外では初の受注となる。導入機数は72機で、内48機は[[サウジアラビア]]国内で組み立てられる予定であったが、交渉の結果国内組み立ては実現しなかった。引き渡しは2009年から開始されている。
: 代替されるのは空軍の[[トーネード ADV]]もしくはF-5E/Fと言われている。同国に関連する汚職事件<ref group="注">トーネード ADV購入時の賄賂疑惑</ref>に関し、イギリス側の司法当局が捜査を行っていたが、両国の信頼関係を損なう恐れとまとまった商談が破棄される恐れがあるとして捜査を中止したことに際し、まとまった商談はタイフーンの輸出に関する事柄だったのではと一部で言われている。

== 開発参加国以外への販売 ==
タイフーンの価格は、[[F-16 (戦闘機)|F-16]]よりは高く、[[F/A-18E/F (航空機)|F/A-18E/F]]や[[F-15E (航空機)|F-15E]]よりは安い価格が示されているとされる<ref name="mil_rec0812" />が、情報は少ない。[[2005年]]に[[サウジアラビア]]が当時のレートで約1兆2,000億円で約72機（諸説有）購入したことから、当時の価格は1機100億円以上であったと憶測されている。インドF-X商戦においてのラファールの[[ライセンス生産]]提案価格が約189億にあたり、タイフーンはその22%増と発表されているために一機約230億で提案されていたものと思われる。

=== 採用決定・納入待ちの国家 ===
; {{OMN}}
: [[2008年]]に中古のトランシェ1を24機購入する予備契約を交わしたが、[[F-16 (戦闘機)|F-16]]の追加発注によりご破算になったという見方をする報道があった<ref>月刊「JWings」 2010年11月号</ref>。しかし[[2012年]][[12月21日]]に新造機12機の採用を決定した<ref>月刊「JWings」 2013年3月号</ref>。

=== 検討中の国家 ===
; {{POL}}
: 現在のところ[[ポーランド]]は[[東側諸国|東側]]時代の[[ソビエト連邦|ソ連]]製[[戦闘機]]にかえて[[F-16 (戦闘機)|F-16C/D Block52アドバンスド]]を主力[[要撃機|迎撃戦闘機]]としているが、これに加えてさらに強力な主力迎撃戦闘機を導入する計画を立てており、ユーロファイター社は[[ポーランド空軍]]によるタイフーンの大量購入を見込んで売り込みを開始しており、購入数は50-70機ほどと推測される<ref>Bartosz Glowacki. "[http://www.flightglobal.com/articles/2010/09/09/347107/eurofighter-offers-typhoon-for-polish-air-force.html Eurofighter offers Typhoon for Polish air force]." ''Flight International''. {{En icon}}</ref><ref>"[http://www.defpro.com/news/details/18152/ The European Typhoon team support MSPO 2010 exhibition at Kielce]". ''defpro.news''. {{En icon}}</ref>。

; {{QAT}}
: [[インド]]へ売却する予定の[[ミラージュ2000 (戦闘機)|ミラージュ2000-5]]の後継として[[F-35 (戦闘機)|F-35]]、[[F/A-18E/F (航空機)|F/A-18E/F]]、[[F-15E (航空機)|F-15E]]、[[ラファール (航空機)|ラファール]]と共に候補に挙がっており、24-36機を導入する予定<ref>イカロスmook 「世界の名機シリーズ ダッソー ミラージュ2000」 2011年 イカロス出版</ref>。

; {{CZE}}
: [[2014年]]末に[[リース]]期限が切れる[[サーブ 39 グリペン|グリペン]]の後継として提案されており、[[イタリア]]、[[ドイツ]]、[[スペイン]]、[[イギリス]]各空軍の中古機を新品の30-40%引きで提供できるとしている<ref>月刊「JWings」 2012年1月号</ref>。

; {{LBY}}
: [[2012年]][[7月]]、[[2011年リビア内戦|内戦]]に伴い崩壊した空軍を再建するべくラファールとともに購入する計画を発表した<ref name="kokufan717">月刊「航空ファン」 2012年9月号</ref>。

; {{PER}}
: [[スペイン空軍]]から中古のトランシェ1 18機の譲渡を提案されている<ref>月刊「JWings」 2013年5月号</ref>。

; {{ARE}}<ref name="kokufan717"></ref>
; {{KWT}}<ref name="kokufan717"></ref>
; {{BHR}}<ref name="kokufan717"></ref>

=== 過去に検討された国家 ===
; {{IND}}
: [[インド空軍]]が購入を予定している126機の[[マルチロール機|多目的戦闘機]]の最終候補として欧州の2[[戦闘機]]（[[ラファール (航空機)|ラファール]]とタイフーン）が残っていた。ラファールが独占交渉に入ったと報道され、その後フランス国防相もこれを認めた<ref>月刊「航空ファン」 2012年4月号</ref>。

; {{JPN}} 
{{main|F-X (航空自衛隊)#現在のF-X (第4次F-X)}}
: [[航空自衛隊]]の老朽化した[[F-4 (戦闘機)#日本|F-4EJ改]]戦闘機の更新計画として進められていた第4次次期戦闘機F-Xの候補の1つとしてタイフーンの導入が検討され、当機の日本への売り込みは英国の[[BAEシステムズ]]社が主に担当し、[[イタリア]]のアレニア・アエロナウティカ社もその支援に当っていた<ref name="TBC001">月刊「航空ファン」 2008年9月号</ref>。しかし、最終的に[[日本]]は[[F-35 (戦闘機)|F-35A]] 42機の導入を決定した。
: 今回の日本の次期戦闘機選定に対する[[BAEシステムズ]]社の意気込みは大きく、[[アビオニクス]]をはじめとする日本独自の電子機器類の搭載や[[ミサイル|誘導弾]]などへの対応と、[[ライセンス生産]]までも認めるなど、競合機と比べてかなり柔軟な売り込み姿勢<ref>佐藤紀泰. "[http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20091225/211863/?P=1 「バルチック艦隊」が取り持つFXの縁]". ''[[日経BP|日経ビジネスオンライン]]''.</ref>をとり、副社長その他の幹部、[[テストパイロット]]などが幾度も来日して会見や日本政府など関係各方面への働きかけを行っていた。
: [[BAEシステムズ]]社は、日本におけるタイフーンのメリットを、価格水準と取得性の高さ、機体性能の高さ、日本における[[ライセンス生産]]と機体組み立てにおける日本航空機産業の関与、参加の保証、などを以って積極的にアピールしており<ref name="TBC002">月刊「AIR WORLD」  2010年 4月号</ref>、[[2007年]][[5月31日]]には[[三菱重工業]]とユーロファイターの生産ライセンス供与について交渉したことを発表している<ref>"[http://jp.reuters.com/article/idJPnTK317586620070601 英BAE、三菱重と戦闘機の生産ライセンス供与で交渉]". ロイター.co.jp. 2010-09-06閲覧</ref>。

; {{GRC}}
: 比較的早い段階から購入の意思表明を行っていたが、[[アテネオリンピック (2004年)|アテネオリンピック]]後に導入計画が白紙化され、[[2005年]]に導入コストの問題から[[F-16 (戦闘機)|F-16C/D]]の継続導入が決定された。

; {{SGP}}
: [[A-4 (航空機)|A-4]]の後継機として提案当初から[[シンガポール空軍]]関係者から有力候補として名前を挙げられていたが、開発の遅れが原因で間に合わず候補から脱落した。その後F-15Eをシンガポールの要求に合わせた改修型の[[F-15E (航空機)#シンガポール|F-15SG]]と[[ラファール (航空機)|ラファール]]が選考対象として残っていたが、F-15SGの採用が決定した。

; {{TUR}}
: [[F-35 (戦闘機)|F-35A]]を導入予定だが、国内生産時の分担比率の問題と、当時はF-35A自体が生産されるか流動的となっていたため、万が一の保険としての打診がトルコから一部の製造企業に対して行われたが、タイフーンではF-35Aの[[ステルス性]]を代価できないという軍事的事情や[[アメリカ合衆国|アメリカ]]との結びつきを重視した結果、当初の予定されていたF-35Aの導入が決定した。

; {{DNK}}
: F-16の更新用として提案されていたが、 同国の企業が製造に参加しているF-35が本命視されている上で、開発が成功しなかった場合の代案としてグリペンNGの破格での提案があったため断念。

; {{FIN}}
: [[F/A-18 (航空機)|F-18]]の更新用として提案されていたが、 同国の企業が製造に参加しているF-35が本命視されている上で、開発が成功しなかった場合の代案としてグリペンNGの破格での提案があったため断念。

; {{CHE}}
: ラファール、グリペンと共に[[F-5 (戦闘機)|F-5E]]の後継機候補となっていたが、選定の結果グリペンNGが採用された。

; {{KOR}}
: [[F-15E (航空機)#韓国|F-15K]]や[[ラファール (航空機)|ラファール]]、[[Su-35 (航空機・初代)|Su-35]]とともに[[F-4 (戦闘機)|F-4D]]の更新用として提案されたが、最終的に[[大韓民国空軍|韓国空軍]]は政治的な問題からF-15Kを40機採用した。不採用の要因として、韓国の選定当時はまだ開発段階で、対地攻撃能力実証が間に合わなかったのが原因といわれている。同じくF-4D後継機の第2次FXでは、F-15K選定時の不透明な経緯からボーイング以外の入札が行われなかったため、F-15Kの21機追加と言う形に終わっている。
: F-4E後継機の第3次FXの60機でも、[[F-15SE (航空機)|F-15SE]]、[[F-35 (戦闘機)|F-35A]]と並んでRFPに応じた<ref>「J-WING」 2012年09月号 イカロス出版</ref>。
: [[2013年]][[8月16日]]に最終入札が行われ、F-35Aは予算不足のため選定から脱落し、[[8月18日]]、ユーロファイターは書類不備のため脱落したと発表された<ref>{{cite news |title=韓国次期戦闘機導入事業　Ｆ１５ＳＥが最終候補に |newspaper=[[朝鮮日報]] |date=2013-8-18 |url=http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/08/18/2013081801202.html |accessdate=2013-8-18}}</ref>。[[9月24日]]、防衛事業庁はF-15SE採用を否決して、入札を白紙からやり直す事を発表した<ref>[http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE98N07420130924 『韓国次期戦闘機選定、ボーイング「F-15SE」の採用否決』]（ロイター 2013年9月24日）</ref>。[[11月23日]]、入札条件に[[ステルス性|ステルス機能]]と[[電子戦]]能力を追加したため、F-35Aのみを検討対象とすることを事実上決定、40機導入する予定<ref>http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2203T_S3A121C1FF2000/</ref>。

== 仕様・性能 ==
[[ファイル:Eurofighter Typhoon line drawing.svg|right|400px]]
[[ファイル:Eurofighter triebwerk.jpg|thumb|250px|手前がEJ200エンジン。奥に隠れて見えるのが[[ターボ・ユニオン RB199|RB199]]エンジン。<br />RB199はかつてタイフーンの試作機に搭載]]
{{航空機スペック
|出典=エンジン、推力重量比以外は後述の一部を除き全て''軍事研究''<ref name="mil_rec0812" />を単位変更。<br/><small>但し、近似値の正確な数値、空虚重量、[[ヤード・ポンド法]]単位の数値は''DOPPELADLER.COM''<ref>[http://www.doppeladler.com/oebh/eurofighter.htm Typhoon (Taifun)] {{En icon}}</ref>、''Air Force Technology''<ref>[http://www.airforce-technology.com/projects/ef2000/ Eurofighter Typhoon] ''Air Force Technology''. {{En icon}}</ref></small>による。

|固定翼 or 回転翼?=固定翼
|ジェット or プロペラ?=ジェット
|乗員=1名または2名
|定員=2名
|ペイロード SI=
|ペイロード fp=
|全長 SI=15.9m
|全長 fp=52ft
|スパン SI=11.0m
|スパン fp=36.1ft
|全高 SI=5.3m
|全高 fp=17.4ft
|面積 SI=50m<sup>2</sup>
|面積 fp=538ft<sup>2</sup>
|翼型=[[エンテ型#ジェット戦闘機のカナード|カナード]][[翼平面形#デルタ翼|デルタ翼]]
|空虚重量 SI=10,995kg
|空虚重量 fp=24,240lb
|運用時重量 SI=<!-- 出典求む: 15,550kg, 34,280lb -->
|運用時重量 fp=
|有効搭載量 SI=
|有効搭載量 fp=
|最大離陸重量 SI=23,500kg<!-- 出典求む: 21,000kg, 46,300lb -->
|最大離陸重量 fp=51,809lb
|製造単価、約3,800万ドル
|その他の諸元=
|エンジン名（ジェット）=[[ユーロジェット・ターボ]] [[ユーロジェット EJ200|EJ200]]
|エンジン種類（ジェット）=[[ターボファンエンジン]]×2
|エンジン数（ジェット）=2
|推力 SI=60kN×2
|推力 fp=6,188kg×2
|推力 original=<!-- 出典求む:ドライ 6,120Kg/AB使用時 9,185kg×2 -->
|推力 more=
|アフターバーナー作動時 推力 SI=89kN
|アフターバーナー作動時 推力 fp=9,075kgf
|最大速度 SI=<br/>
** 13,700mで水平飛行・アフターバーナー使用時：[[マッハ数|マッハ]]2.0（2,120km/h）
** 高高度水平飛行・アフターバーナー不使用時：マッハ1.1-1.5
** 海面高度で水平飛行・アフターバーナー使用：マッハ1.2
|最大速度 fp=
|最大速度 more=<!-- 出典求む: 2,390km/h -->
|巡航速度 SI=<!-- km/h -->
|巡航速度 fp=<!-- kt -->
|巡航速度 more=
|失速速度 SI=<!-- km/h -->
|失速速度 fp=<!-- kt -->
|失速速度 more=
|超過禁止速度 SI=<!-- km/h
|超過禁止速度 fp=<!-- kt -->
|航続距離 SI=2,900km
|航続距離 fp=<!-- 海里 -->
|航続距離 more=
|フェリーレンジ SI=3,706km
|フェリーレンジ fp=<!-- 海里 -->
|フェリーレンジ more=
|上昇限度 SI=19,800m
|上昇限度 fp=64,961ft
|上昇率 SI=315 [[メートル毎秒|m/s]]
|上昇率 fp=1,033ft/s
|翼面（円板）荷重 SI=<!-- kg/m<sup>2</sup> -->
|翼面（円板）荷重 fp=<!-- lb/ft<sup>2</sup> -->
|推力重量比=<!-- 計算して無次元数にする -->
|馬力荷重 SI=<!-- kW/kg -->
|馬力荷重 fp=<!-- hp/lb -->
|最大馬力荷重 SI=
|最大馬力荷重 fp=
|最大推力重量比=1.13（空対空仕様時）<ref name="mil_rec0901" />
|その他の性能=
* '''ブレーキオフから離昇までの所要時間'''：8秒以内
* '''ブレーキオフから35,000ft（10,675m）、マッハ1.5までの到達時間'''：2.5分以内
* '''200ノットからマッハ1までの所要時間'''：30秒
* '''Gリミット'''：+9G、-3G
}}

=== 兵装 ===
; 固定武装
* [[モーゼル|マウザー]][[マウザー BK-27|BK-27]] 27mm[[リヴォルヴァーカノン]]×1門

{{Col|
; [[空対空ミサイル]]
* [[IRIS-T]]
* [[ミーティア (ミサイル)|MBDA ミーティア]]
* [[サイドワインダー (ミサイル)|AIM-9 サイドワインダー]]
* [[AIM-120 (ミサイル)|AIM-120 AMRAAM]]
* [[ASRAAM (ミサイル)|AIM-132 ASRAAM]]

; [[空対地ミサイル]]
* [[AGM-65 マーベリック]]

; [[空対艦ミサイル]]
* [[ハープーン (ミサイル)|AGM-84 ハープーン]]
* [[ペンギン (ミサイル)|KDA ペンギン]]
|
; [[対レーダーミサイル]]
* [[ALARM (ミサイル)|ALARM]]
* [[AGM-88 (ミサイル)|AGM-88 HARM]]

; [[巡航ミサイル]]
* [[SCALP-EG/ストーム・シャドウ]]
* {{仮リンク|KEPD 350|en|KEPD 350}}

; [[対戦車ミサイル]]
* [[ブリムストーン (ミサイル)|ブリムストーン]]

; [[爆弾]]<!-- **MK8X系低抵抗爆弾 -->
* [[JDAM|GBU-31 JDAM]] [[誘導爆弾]]
* [[ペイブウェイ|ペイブウェイ II/III]]/[[ペイブウェイIV|IV]] 500ポンド-2,000ポンド 誘導爆弾
|
[[ファイル:Eurofighter hardpoints.png|thumb|250px|<center>赤の線は[[ハードポイント]]で、その中で黄色の縁取りがある3か所は[[増槽]]を装備可能。<br/>緑の線はBK-27[[航空機関砲]]]]
}}

== 出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 注記 ==
{{Reflist|group="注"}}

== 関連項目 ==
* [[X-31 (航空機)]]
* [[マルチロール機]] - [[戦闘爆撃機]]

== 外部リンク ==
{{Commons|Category:Eurofighter Typhoon}}
* [http://www.baesystems.com/japan BAEシステムズ ユーロファイター・タイフーン公式HP] {{dead link|date=2013年11月}} {{ja icon}}
* [http://www.eurofighter.com/ ユーロファイター社公式HP]{{en icon}}
* [http://eaglet.skr.jp/MILITARY/EF2000.htm Eurofighter Typhoon] {{ ja icon}}

{{Link FA|es}}

{{Link FA|pl}}

{{DEFAULTSORT:ゆろふあいたたいふん}}

[[Category:戦闘機]]
[[Category:イギリスの戦闘機]]
[[Category:イタリアの戦闘機]]
[[Category:ドイツの戦闘機]]
[[Category:スペインの軍用機]]