ミラージュ2000 (戦闘機)のソースを表示

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{{Infobox 航空機
|名称=ダッソー ミラージュ2000
|画像=File: French Mirage 2000 finishes refueling from KC-10A 2009-12-06 mod1.jpg
|キャプション=[[フランス空軍]]ミラージュ2000-5
|用途=[[要撃機]]・[[戦闘機]]
|分類=[[マルチロール機]]
|設計者=
|製造者=[[ダッソー]]（Dassault Aviation）社
|運用者 more=:
**{{FRA}}（[[フランス空軍]]）
**{{IND}}（[[インド空軍]]）
**{{UAE}}（[[アラブ首長国連邦軍#アラブ首長国連邦空軍|アラブ首長国連邦空軍]]）
**{{TWN}}（[[中華民国空軍|台湾空軍]]）他
|初飛行年月日=[[1978年]][[3月10日]]
|生産数=611機
|生産開始年月日=
|運用開始年月日=[[1984年]]
|退役年月日=
|運用状況=現役
|ユニットコスト=
}}
'''ダッソー ミラージュ2000'''（Dassault Mirage 2000）は、[[フランス]]の[[ダッソー]]社製の[[軍用機]]。[[要撃機|迎撃戦闘機]]の要求に基づいて開発されたが、改良が続けられた結果、世界的に有名なミラージュ・シリーズ初の[[マルチロール機]]となった。[[フランス空軍]]の他に、8ヶ国の[[空軍]]に採用された。
== 概要 ==
[[無尾翼機|無尾翼]][[翼平面形#デルタ翼|デルタ]]式の単発[[戦闘機]]。[[フランス]]の他、8ヶ国に採用されている。

操縦システムには[[フライ・バイ・ワイヤ]]を採用し、これにより[[運動能力向上機|CCV]]設計が導入された。無尾翼機は主翼のみで機体の安定を図る設計にする必要があり設計上の制約になるが、CCV設計により静安定が緩和されたために主翼設計の自由度が高くなった。

機体は[[複合材]]の使用による軽量化と[[ブレンデッドウィングボディ]]の採用による空気抵抗の低減が図られている。[[エンテ型#ジェット戦闘機のカナード|カナード翼]]によって無尾翼デルタの欠点を改善できるにも関わらずカナード翼を採用しなかった（代わりに小型の[[ストレーキ]]を採用している）のもこのためである。それでも、CCV設計により[[エレボン]]を下げたまま高い[[揚力]]を維持しつつ機首上げ姿勢をとれるようになったため<ref>本来無尾翼機は機首上げの際エレボンを上げなければならないため、離着陸の際揚力が減少しSTOL性能の悪化に繋がる</ref>、離陸滑走距離の短縮や着陸進入速度の低下に成功している。

こうした構造により、低速度域での操縦特性が極めて良好で<ref>無尾翼形式のデルタ翼機は、[[翼幅荷重]]が小さく、低速域では揚抗比が悪く、性能上の欠点となるのが、それ以前の通例であった。</ref>、その空戦性能は[[パイロット]]の間でも評価が高い<ref>F-16の操縦経験があるパイロットでさえ、空中戦をするなら迷わずミラージュ2000を選ぶというほどである</ref>。

[[フランス空軍]]機は[[1991年]]の[[湾岸戦争]]を筆頭とする多くの[[紛争]]に実戦投入された。[[アラブ首長国連邦軍#アラブ首長国連邦空軍|アラブ首長国連邦空軍]]機は湾岸戦争に、[[カタール空軍]]機は[[2011年リビア内戦]]にフランス空軍機と共に参加している。他にも、[[ギリシャ空軍]]機は[[1996年]]に[[領空侵犯]]した[[トルコ軍|トルコ空軍]]の[[F-16 (戦闘機)|F-16D]]を撃墜し、[[インド空軍]]機も[[1999年]]の[[印パ戦争#カルギル紛争 （1999年）|カルギル紛争]]で対地攻撃に投入されている。

== 開発の経緯 ==
[[ダッソー]]は無尾翼デルタ機の開発を得意としてきたが、これは機体の小型軽量化、飛行特性の安定性などにメリットがある一方で、STOL性能、低空飛行、機動性などが主・尾翼の組み合わせによる二翼式の航空機に劣るとされ、通常の二翼式・後退翼の[[ミラージュF1 (戦闘機)|ミラージュF1]]が採用された。

またミラージュF1は基本的には50年代の超音速戦闘機の技術からあまり発展が見られない、保守的な設計であった。ダッソーと[[フランス空軍]]は、当初地上攻撃に重点をおいた双発[[可変翼]][[戦闘機]][[ミラージュG (航空機)|ミラージュG-4]]を、次いでその派生型[[要撃機]]ミラージュG-8を次期戦闘機として開発していたが、費用・運用の両面から[[1975年]]に全プロジェクトは中止となった。その他にも各種新機軸を採用した機体が構想・計画・設計されたものの、ことごとく行き詰まった。

しかしながらその結果、1975年の[[北大西洋条約機構|NATO]]4ヶ国の新型戦闘機導入商戦において、ミラージュF1E/M53は、[[フライ・バイ・ワイヤ]] や[[運動能力向上機|CCV設計]]などの新機軸を採用した[[F-16 (戦闘機)|F-16]]に性能面で水をあけられ、ことごとく敗れ去った。

[[ファイル:Mirage 2000-01 Musee du Bourget P1020193.JPG|thumb|150px|ミラージュ2000A]]
[[Image:Mirage 2000C in-flight 2 (cropped).jpg|thumb|150px|ミラージュ2000C ]]
フランス空軍・ダッソーの両者が必要としていた次期戦闘機計画（ACF）は、[[1976年]]の時点で実用化までの期限が[[1982年]]までという当時としても短期間での開発計画として再度開始された（現代の戦闘機開発は、さらに長期化している）。ダッソーにとっては短期間で十分な成果を残すことを求められた結果、[[1972年]]より『ミニ・ミラージュ（通称ミミ）』『シュペルミラージュIII』『デルタ1000』などの名称で検討されていた[[ミラージュIII (戦闘機)|ミラージュIII]]の後継機案をこれに充てた。再び無尾翼デルタ形式に回帰したものの、F1において採用されなかった最新の技術を以ってデメリットを回避し、大幅な性能向上を目指した。

機体は'''ミラージュ2000'''と命名され、[[エンジン]]をミラージュG-4/8用の[[SNECMA M53]]を採用するなど開発期間の短期化に注力した結果、設計開始から初飛行までわずか27ヶ月と驚異的な速さで開発が進み（それでも、計画から9ヶ月遅延していた）、[[1983年]]には量産型の軍への納入を開始、翌年には実戦配備されている。ただし、[[レーダー]]の開発は間に合わず、最初期の37機は予定していたRDIレーダーの代わりにRDMレーダーを装備していた。

輸出面ではF-16や[[F/A-18 (航空機)|F/A-18]]の躍進によってあまり振るわなかったため、[[1986年]]から戦闘能力向上の研究が始まり、[[マルチロール機|マルチロール]]型の'''ミラージュ2000-5'''が開発された。当初フランス空軍で採用する予定はなかったものの、[[1992年]]に[[ラファール (航空機)|ラファール]]の配備が遅れている間の繋ぎとして同仕様への改修を決定、それに続く形で[[中華民国]]（[[台湾]]）と[[カタール]]が採用した。

[[1999年]]に発表された'''ミラージュ2000-5 Mk.2'''は輸出専用の発展型で、ラファールで採用した装備の一部も取り入れているが、採用したのは既存の運用国であった[[ギリシャ]]と[[アラブ首長国連邦]]のみで、[[ブラジル]]も契約直前まで進んでいたが財政危機により中古機の導入に切り替えられた。

こうしてミラージュ2000の生産は[[2007年]]に終了したが、ダッソーは既存のユーザーに[[ヘッドマウントディスプレイ|HMD]]、画像識別ポッド、[[戦術データ・リンク]]、[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]、[[赤外線捜索追跡システム|IRST]]を実装する中間寿命改修を提案している。

== 派生型 ==
主なバリエーションは以下の通り。
;ミラージュ2000A
:プロトタイプ。
;ミラージュ2000C（ミラージュ2000C-S1/S2/S3）
:RDM[[レーダー]]を装備した初期量産型。
;ミラージュ2000DA（ミラージュ2000C-S4/S5）
:RDIレーダーを装備し、防空能力を向上させた本格量産型。DAは『Defense Aerienne（防空）』の略。
;ミラージュ2000B
:[[機関砲]]を外してシートを増設した複座型。
;[[ミラージュ2000N (航空機)#ミラージュ2000D|ミラージュ2000D]]
:後述のミラージュ2000Nをベースに対地攻撃能力を強化した[[戦闘爆撃機]]型。なお、[[フランス空軍]]以外のものは後述のミラージュ2000Eの複座型を示す。
;ミラージュ2000E
:ミラージュ2000Cの輸出型。RDMレーダーを搭載し、対地攻撃能力を強化。
;[[ミラージュ2000N (航空機)|ミラージュ2000N]]
:ミラージュ2000Bに[[核弾頭]]搭載の[[巡航ミサイル]][[ASMP (ミサイル)|ASMP]]の運用能力を付与した、[[ミラージュIV (航空機)|ミラージュIV]]後継の戦闘爆撃機型。
;ミラージュ2000R
:[[偵察]]ポッドの運用を可能にしたタイプ。[[アラブ首長国連邦]]のみ採用。
;ミラージュ2000-5
:次世代型と呼ばれ、大幅な改良を施した[[マルチロール機|マルチロール]]型。新型のRDYレーダーを装備し、MICAミサイルの運用能力を得た他、[[コックピット]]を[[グラスコックピット]]化。
;ミラージュ2000-5 Mk.2
:ミラージュ2000-5に、レーダー改良・航法装置の改良・データ処理能力の向上・電子戦能力の強化を施した型。アラブ首長国連邦向けのものはシステム構成が大きく異なるため'''ミラージュ2000-9'''と呼ばれる。
;ミラージュ2000AT
:ミラージュ2000-5 Mk.2をベースにレーダーや自衛機器を外した[[練習機]]型。計画のみ。
;[[ミラージュ4000 (戦闘機)|ミラージュ4000]]
:ダッソーの社内企画による拡大双発型。不採用に終わる。

== スペック ==
[[画像:Mirage 2000C 3-view.gif|350px|thumb|三面図]]
[[画像:HAF Mirage 2000-5 .jpg|250px|thumb|ミラージュ2000-5 Mk.2と搭載武装]]
* 乗員：1名
* 全長：14.4m
* 翼幅：9.1m
* 全高：5.2m
* 翼面積：41m&sup2;
* 自重：7,500kg
* 最大離陸重量：17,000kg
* エンジン：SNECMA [[SNECMA M53|M53-P2]][[ターボファンエンジン]] 1基
* 推力：6,600（9,700）kgp（A/B）
* 戦闘行動半径：1,480km
* 最大速度：2,340km/h
* 最大マッハ数：M2.2
* 上昇限度：16,750m
* 上昇率：17,000m/min
* 兵装搭載量：6,300kg
* 固定武装：[[DEFA 550#サブタイプ|DEFA 554]] 30mm[[機関砲]] 2門
* 搭載武装
**[[R.550 (ミサイル)|R.550マジック]]
** [[シュペル530 (ミサイル)|シュペル530]]
** [[MICA (ミサイル)|MICA EM/IR]]（ミラージュ2000-5）
** [[エグゾセ|AM39エグゾセ]]
** 各種[[無誘導爆弾]]・[[誘導爆弾]]など

== 採用国 ==
=== 運用国 ===
[[ファイル:MIR-2000 User countries.png|thumb|350px|運用国（青）]]
* {{FRA}}（315機）
** ミラージュ2000C &times; 124（DAを含む。C全機、DA仕様に改修済。内37機を-5F仕様に改修）
** ミラージュ2000B &times; 30
** ミラージュ2000N &times; 75
** ミラージュ2000D &times; 86
* {{UAE}}（68機）
** ミラージュ2000EAD &times; 22（RAD、DADを含む30機を-9仕様に改修）
** ミラージュ2000RAD &times; 8
** ミラージュ2000DAD &times; 6 
** ミラージュ2000-9 &times; 20
** ミラージュ2000-9D x 12
* {{IND}}（59機）
** ミラージュ2000H &times; 52（51機を-5 Mk.2仕様に改修予定）
** ミラージュ2000TH &times; 7
* {{EGY}}（20機）
** ミラージュ2000EM &times; 16
** ミラージュ2000BM &times; 4
* {{QAT}}（12機）
** ミラージュ2000-5EDA &times; 9
** ミラージュ2000-5DDA &times; 3
* {{GRC}}（55機）
** ミラージュ2000EG &times; 36（10機を-5 Mk.2仕様に改修）
** ミラージュ2000BG &times; 4
** ミラージュ2000-5 Mk.2 &times; 15（単座型10機、複座型5機。-5EG/BGとも呼ばれる）<ref>[http://www.afpbb.com/article/politics/2316385/2387029 AFPBB News 2007/11/24：ギリシャ空軍、ミラージュ2000-5戦闘機を採用]</ref>
* {{TWN}}（60機）
** ミラージュ2000-5Ei &times; 48
** ミラージュ2000-5Di &times; 12
* {{PER}}（12機）
** ミラージュ2000P &times; 10
** ミラージュ2000DP &times; 2
* {{BRA}}（12機）
** ミラージュ2000C &times; 10（フランス空軍の中古機。ブラジル空軍正式名F-2000C）
** ミラージュ2000B &times; 2（フランス空軍の中古機。ブラジル空軍正式名F-2000B）

<gallery widths="200px" heights="180px">
File:IAF Mirage 2000.jpg|インド空軍のミラージュ2000TH
File:Mirage 2000 of Hellenic Air Force.JPEG|ギリシャ空軍のミラージュ2000EG
File:Mirage 2000-5EI in Gangshan Air Force Base Left View 20111015a.jpg|台湾空軍のミラージュ2000-5Ei
File:Emirate Mirage 2000 jets.JPG|アラブ首長国連邦空軍のミラージュ2000-9
</gallery>

=== 採用を取り消した国 ===
*{{LBY1977}} 
:[[1983年]]、[[チャド]]からの撤退と引き換えに最大100機の導入を打診したが、撤退を反故にしたため実現せず。
*{{JOR}}
:[[1988年]]に単座型のEJを10機、複座型のDJを2機発注したが、[[湾岸戦争#湾岸危機（開戦までの経緯）|湾岸危機]]の際[[イラク]]を支持したことで購入資金を出す[[サウジアラビア]]が援助を停止したため取り消された。
*{{IRQ1963}}
:[[1990年]]にミラージュ2000-5を最大50機導入することを検討し契約寸前だったが、湾岸危機により実現せず。
*{{KUW}}
:イラクとほぼ同時期に、保有するミラージュF1を下取りしてもらい20機以上を導入する計画だったが、湾岸危機により実現せず。
*{{PAK}}
:登場時から何度も売却交渉を行っているが、実現していない。ちなみにアラブ首長国連邦のミラージュ2000の[[パイロット]]や整備士のほとんどは[[パキスタン人]]であるという。

== 登場作品 ==
{{main|ダッソー社製軍用機に関連する作品の一覧}}

== 出典 ==
* 世界の名機シリーズ ダッソー ミラージュ2000 [[イカロス出版]] 2011年 ISBN 9784863203686
* 週刊 ワールド・エアクラフト No.189 [[デアゴスティーニ・ジャパン|デアゴスティーニ]]社 2003年
* [http://www.fas.org/man/dod-101/sys/ac/row/mirage-2000.htm Mirage 2000, Federation of American Scientists]
* [http://www.vectorsite.net/avmir2k.html Air Vectors - Dassault Mirage 2000 & 4000]

== 脚注 ==
<references />

== 外部リンク ==
{{commons|Dassault Mirage 2000}}
* [http://www.dassault-aviation.com/ Dassault Aviation]
* [http://wiki.livedoor.jp/namacha2/d/%a1%d6%a5%df%a5%e9%a1%bc%a5%b8%a5%e52000%a1%d7%c0%ef%c6%ae%b5%a1 日本周辺国の軍事兵器 - 「ミラージュ2000」戦闘機]

{{Dassault Mirage}}
[[Category:フランスの戦闘機|みらしゆ2000]]
{{Link FA|hr}}