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[[File:Plankton_collage.jpg|thumb|right|300px]] '''プランクトン'''(Plankton、浮遊生物)とは、水中や水面を漂って生活する[[生物]]の総称。様々な[[生物の分類|分類群]]に属する生物を含む。微小なものが多く、生態系では生態ピラミッドの下層を構成する重要なものである。 == 一般的特徴 == [[ファイル:Copepodkils.jpg|thumb|代表的な小型甲殻類である[[ケンミジンコ|カイアシ類]](おそらく''Neocalanus''属の一種)]] プランクトンとは、浮遊生物のことであり、水中を漂って生活する生物を指す言葉である。[[ケイソウ]]や小型[[甲殻類]]、[[クラゲ]]、[[魚類]]の幼生など、様々な[[生物の分類|分類群]]に属する生物を含む。遊泳能力を全く持たないか、あるいは遊泳能力があっても水流に逆らう力が軽微であったり比較的小型の生物であるため結果的に漂うことになる生物が大部分である。 あくまでも「浮遊者」という概念なので、大型の生物でも[[クラゲ]]など遊泳能力が非常に低いものも含まれる。しばしば水生の微細な[[動物]]や[[藻類]]などの[[微生物]]をプランクトンと称することがあるが、付着生活など水底における生活をするものは後述のベントスに相当し、定義的にはこうしたものにプランクトンの名称を当てることは誤りである。しかし、プランクトン図鑑など、特に淡水では両者をあわせることが多い。 浮遊しているといっても水の動きに対して単に受動的に生きているわけではなく、浮上や沈降を能動的に行うことなどによって水の流れを利用してある程度能動的に[[水塊]]中に定位することができる。 自らのエネルギーを大量に投入せずに水塊中に定位する生活型とも言え、[[帆船]]の航法にも類似している。 === 生活の型による類型 === プランクトンとは、水生生物を[[生活型 (水生生物)|生活型]]に分けた場合の、浮遊生物に対する名前である。これに対し、水流に逆らって遊泳できる生物を'''[[生活型 (水生生物)#プランクトンとネクトン|ネクトン]]''' (nekton) 、あるいは'''遊泳生物'''、水底で生活する生物を'''ベントス''' (benthos) 、あるいは'''[[底生生物]]'''と呼ぶ。また、水面より上に生活するものを'''[[生活型 (水生生物)#ニューストン|ニューストン]]'''という。 ただし、これらの概念はあくまで理論的なもので、実際の生物に完全に適用できるものではない。例えば[[甲殻類]]の[[オキアミ]]類の遊泳力はプランクトンとネクトンの中間程度であり、マイクロネクトンと呼ばれる。また一部のカイアシ類やアミなど、日中は海底直上にとどまり,夜間は水中に泳ぎ出すという半プランクトン半ベントス的な生活をするものある。'''ネクトベントス'''、'''プランクトベントス'''などの中間概念としてのカテゴリー分けも便宜上使われている。 また、これらの区分は、生物種の生活史全体を通じて不変のものではない。例えば、[[エビ]]、[[カニ]]、[[ヒトデ]]、[[海綿動物|カイメン]]、[[イソギンチャク]]などの多くは、幼生期にプランクトン生活を送るが、成長と共に水底で生活するベントスになるし、魚類の多くも、卵から孵化した後の幼生期は、プランクトンであるが、成長と共に遊泳能力が発達しネクトンとなる。このようなものは、幼生プランクトンとも呼ばれる。 後述のように、プランクトンは採集の方法が古くから確立されており、遊泳生物や底生生物より徹底した採集がたやすい。そのためもあり、幼生がプランクトンとして成体より先に発見された例や、幼生であると考えられているものの、成体が判明していない例もある。 == 分類 == プランクトンは[[分類学]]的単位ではなく、生活の類型による分類である。門や綱のレベルで分類群を挙げてゆけば、恐らくほとんど全ての分類群が含まれる。 プランクトンをさらに分ける方法もいくつかある。 ; 栄養摂取の形式による分類 : 一般に光合成を行なうものを'''[[植物プランクトン]]'''([[w:Phytoplankton|Phytoplankton]])、摂食によるものを'''動物プランクトン'''([[w:Zooplankton|Zooplankton]])という。しかし、渦鞭毛藻類などで、色素を持たずバクテリアなどの粒子をもっぱら摂食するものや、色素を持ち光合成を行う一方で摂餌も行うものもある。 ; 生活史による分け方 : [[生活史 (生物)|生活史]]の一部をプランクトンとして過ごすものを'''一時プランクトン'''([[w:Meroplankton|Meroplankton]])、生活史のほぼ全てをプランクトンとして過ごすものを'''終生プランクトン'''([[w:Holoplankton|Holoplankton]])という。海産[[無脊椎動物]]には[[卵]]と[[幼生]]の時期をプランクトンとして過ごすものが多い。 == 役割 == 小型のプランクトンは、水界の[[生態系]]を構成する[[食物連鎖]]の下位に位置し、魚類や[[クジラ]]など、より大型の[[動物]]の[[餌]]として重要な役割を担っている。特に海底が深くにある海洋では、[[生産者]]の位置にあるのが植物性プランクトンである。他方で、水中においては排泄物や分解産物も水中を浮遊し、[[デトリタス]]のような形で分解の過程を経るから、[[分解者]]としてその経路に関わるものもやはりプランクトンである。 また、[[有孔虫]]や[[円石藻]]のように石灰質の、あるいは[[ケイ藻]]や[[放散虫]]のようにケイ酸質の骨格を持つものもある。それらは深海底における堆積物の大きな部分を占め、[[堆積岩]]を形成する例もある。[[白亜]]はその典型的な例である。 小型のものでも、量的には大きく多量に漁獲できる場合には、水産物としても利用される([[イサザアミ]]、[[オキアミ]]、[[シラス (魚)|シラス]]など)。富栄養化によって植物プランクトンが大量発生する現象は海では[[赤潮]]、陸水では[[アオコ]]と呼ばれ、生態系に深刻な影響を与える。 == 採集 == プランクトンの採集には、[[プランクトンネット]]が使われることが多い。古典的なプランクトンネットは、丈夫な丸い枠に目の細かい円錐形または円筒円錐形の網をつけたもので、先端にはサンプル採取用のガラス瓶がつく。これを手やボートで引っ張るなどして採集するものである。目的に応じて目合い(メッシュサイズ)を使い分ける。伝統的に0.33mmを動物目合い、0.1mmを植物目合いとしてきたが、近年では0.33mmでは主要な[[カイアシ類]]が抜けるために、動物プランクトンの採集にも0.1mmを使うことが多い。 藻類や微小動物プランクトンの採集には、現在では採水法を使うのが一般的である。採水法では、海水を1L、2Lなどと定量的に採集し、プランクトンを海水ごと固定して沈殿濃縮し、顕微鏡で同定・計数を行う。また、目的によっては10µm、2µm、0.2µmなどのフィルターを使って濃縮し、フィルターを光学顕微鏡や蛍光顕微鏡で観察することもある。藻類については,同定をせず、グラスファイバーフィルターで生海水を濾過して、[[アセトン]]や[[メタノール]]、[[ジメチルホルムアミド]]などで抽出し、[[吸光度]]または[[蛍光]]を測定して[[クロロフィル]]などの色素量のみを定量することもある。 == 参考文献 == * 海洋プランクトン. 有賀祐勝[ほか] 著, 丸茂隆三 編,東京大学出版会,1974. 海洋学講座, 10. == 外部リンク == * [http://www.plankton.jp/ 日本プランクトン学会] {{DEFAULTSORT:ふらんくとん}} [[Category:生物海洋学]] [[Category:水圏生態学]]
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