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フントの規則
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'''フントの規則'''(フントのきそく)は、[[原子]]の最安定な[[電子配置]]に関する[[経験則]]である。[[フリードリッヒ・フント]]により提案された。原子に限らず、[[イオン]]や[[分子]]においても成り立つことが多い。同じ[[エネルギー]]の[[電子軌道|軌道]]が ''N'' 個あるとき、これに ''k'' 個の[[電子]]を配置する場合の数は <sub>''2N''</sub>C<sub>''k''</sub> 通りある。フントの規則によれば、これらの電子配置のうちで、許される限り[[スピン角運動量|スピン]]を平行にして異なる軌道に電子を入れる配置が、最も安定な電子配置である。 == 定性的な説明 == 同じエネルギーの軌道が複数ある場合、二個の電子は同じ軌道に入るよりも互いに異なる軌道に入ったほうが、それらの電子同士が接近して存在する確率が低くなり、[[クーロン力]]による[[位置エネルギー]]が小さくなる。互いに異なる軌道に入っている電子のスピンが反平行であるときよりも平行であるときの方が安定になることについては、[[フェルミ孔]]を考えることにより定性的には説明できる。 == 具体例 == 例えば[[マンガン|Mn]]原子の3[[d軌道]]に5個の電子を配置する場合の数は、252通りある。これらの電子配置のうちで、すべての電子が互いに異なる軌道に入る配置は、電子の数が軌道の数と同じなので、2<sup>5</sup> 通りある。フントの規則によれば、これらの32通りの電子配置のうちで基底状態に対応する最安定の電子配置は、電子の[[スピン角運動量|スピン量子数]]が全て同じとなる電子配置である。 {| class="wikitable" |- | 磁気量子数 || -2 || -1 || 0 || +1 || +2 |- | スピン || ↑ || ↑ || ↑ || ↑ || ↑ |} 例えば[[チタン|Ti]]原子の3d軌道に2個の電子を配置する場合の数は、45通りある。これらの電子配置のうちで、許される限りスピンを平行にして異なる軌道に電子を入れる配置は、20通りある。フントの第2規則によれば、これらの20通りの電子配置のうちで基底状態に対応する最安定の電子配置は、電子の[[磁気量子数]]の和の絶対値が最大となる電子配置である。 {| class="wikitable" |- | 磁気量子数 || -2 || -1 || 0 || +1 || +2 |- | スピン || || || || ↑ || ↑ |} == 注意すべき点 == [[遷移金属]][[錯体]]の中心金属イオンでは、スピンを反平行にして同じ軌道に電子が入っている配置の方がエネルギー的に安定になる場合がある。これは、配位子場により軌道の[[縮退]]が解けているためである。すなわち、配位子場により軌道のエネルギーが同じではなくなっているので、フントの規則を破っていることにはならない。 [[酸素]]分子 O<sub>2</sub> や[[カルベン|メチレン]] CH<sub>2</sub> などのように、分子やビラジカルについてもフントの規則が成り立つことが多い。 電子スピンが平行になるのは磁気モーメントどうしのエネルギーが小さくなるためである、という定性的な説明がなされることがあるが、これは間違いである。電子スピンが平行のときと反平行のときの磁気的エネルギーの差は、フントの規則を説明するには小さすぎる。 {{DEFAULTSORT:ふんとのきそく}} [[Category:量子化学]]
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