フェニキア文字のソースを表示

{{特殊文字|説明=追加面}}
{{Infobox WS
| name = フェニキア文字
| type = [[アブジャド]]
| languages = [[フェニキア語]]
| time = [[紀元前1000年|紀元前1050年頃]]から。その後次第に後継文字体系に代わっていった。
| fam1=[[ヒエログリフ|エジプトヒエログリフ]]
| fam2=[[原シナイ文字]]
| fam3=[[原カナン文字]]
| children=[[古ヘブライ文字]]<br />[[アラム文字]]<br />[[ギリシア文字]]<br />他にも数多く存在すると言われる。
| unicode = {{PDFlink|[http://www.unicode.org/charts/PDF/U10900.pdf U+10900-U+1091F]}}
| sample = Phoenician alphabet.svg
| iso15924 = Phnx
}}
{{音素文字}}

'''フェニキア文字'''（フェニキアもじ）は、古代[[地中海]]世界において現在の[[シリア]]一帯を中心に活動していた海洋商業民族である[[フェニキア人]]によって北[[セム系言語]]である[[フェニキア語]]を書くために使用されていた文字。

==概要==
[[紀元前1050年]]頃生まれた。フェニキア文字の前身は、[[原カナン文字]]であると推測されている。

フェニキア文字は22字の文字を持つ純粋な[[アブジャド]]（子音文字）である。すなわち、[[子音]]を表現する文字のみから構成される文字体系である。この特徴はフェニキア文字から生まれたヘブライ文字やアラビア文字にも受け継がれた。いくつかの後に続いて生み出された文字体系は言語の全ての音を表現する真正の[[アルファベット]]だったが、フェニキア文字は[[母音]]用のいかなる記号も持たなかった。それぞれの字は一つの子音を表し、母音は文脈から導かれた。

フェニキア文字は最も広く使われる文字体系となり、フェニキアの商人により欧州と中東を跨いで広められた。それらの地域で様々な種類の言語を表記する為に使われるようになり、多くの後継文字体系が生み出された。

現代の[[文字体系]]の多くが、世界の少なくない範囲に広まったフェニキア文字から派生したものだと考えられている。フェニキア文字の変化形である[[アラム文字]]は、現代の[[アラビア文字]]と[[ヘブライ文字]]、さらには[[ブラーフミー文字]]の祖先である。最後のものは、[[インド]]、[[東南アジア]]、[[チベット]]、[[モンゴル]]で現在も使われている殆どの[[アブギダ]]の親となった。[[ギリシア文字]]はフェニキア文字の直系の後継であるが、特定の文字の音価は母音を表すように変更された。さらにこれを発展させて[[ラテン文字]]、[[キリル文字]]、[[コプト文字]]が生み出された。

<!-- 以下、旧稿にあるもの。英語版からの新訳にはない。 -->
古ヘブライ文字やモアブ語の文字は、フェニキア文字と殆ど同一である。両方とも子音からのみ構成されていた。数世紀を経ると、[[ヘブライ人]]はアラム文字を使うようになった。

ヘブライ語における文字の名前から、フェニキア文字は元来[[象形文字]]であったと推測されている。例えば、最初の文字アレフ (aleph) は雄牛または牝牛を意味している。人によっては文字の中に牛の角を見て取れるかもしれない。それはラテン語の大文字の '''A''' を逆さまにしてみるとより明らかである。またサメフ (samekh) という文字は魚を意味している。同じくフェニキア文字の中に魚の骨を見て取ることができる。
<!-- 以上、旧稿にあるもの。英語版からの新訳にはない。 -->

== 歴史 ==
=== 発見 ===
19世紀にフェニキア文字が初めて発見されたとき、その起源は不明だった。当初、学者たちはこの文字体系がエジプト神聖文字の単なる変種であると考えた<ref>Jensen (1969) p. 256.</ref>。この考えは、当時<!-- ??? recent -->神聖文字が解読されていたことから、広く支持を受けた。しかしながら、この二つの文字体系の間に繋がりを見出せた研究者は居なかった。[[ヒエラティック|神官文字]]や[[楔形文字]]と関係があるという仮説を立てる研究者も居たし、何か他の文字体系に触発されて独立に創出されたのであろうという仮説を立てる研究者さえいた。独立創作説には、一人の人物が思い付いたというものから、[[ヒクソス]]による片言のエジプト語<!-- corrupt Egyptian -->から形成されたというものまで、様々な物があった<ref>Jensen (1969) p. 256-258.</ref>。

=== 親の文字体系 ===
まず、エジプト[[ヒエログリフ|神聖文字]]（ヒエログリフ）から[[原シナイ文字]]が生じた。[[紀元前1500年]]頃から[[シナイ半島|シナイ]]と[[レバント]]で、恐らく初期{{仮リンク|西セム語|en|West Semitic languages}}の話者が用いるようになった。それが[[カナン]]で[[紀元前1400年]]頃から[[原カナン文字]]へと発展し、[[カナン語]] (北西セム語) の表記に採用された。

原カナン文字とフェニキア文字は連続性が強い為、フェニキア文字に変わった時期を定めることはできないが<!-- seamlessly continued -->、便宜的に紀元前11世紀半ば以降の物をフェニキア文字と呼んでいる。

=== 音素文字の拡散 ===
フェニキア文字の原カナン文字との違いは字形や年代だけなので、この文字体系<!-- alphabet -->の始まりを明確に特定するのは困難である。それはともかく、知られている最古のフェニキア文字による碑文は[[アヒラムの墓碑銘]]と呼ばれ、[[アヒラム王]]の棺に刻まれている<ref>Coulmas (1989) p. 141.</ref>。

フェニキア人による音素文字の採用は非常な成功を収め、様々な変種が地中海で前9世紀頃から採用された。さらには、[[ギリシア文字]]、[[古代イタリア文字]]、[[アナトリア文字]]、[[イベリア文字]]へ発展していった。その成功の理由の一つは、音声的特徴にあった。フェニキア文字は一つの記号で一つの音を表す文字体系としては、初めて広く使われたものである。当時使われていた[[楔形文字]]やエジプト[[ヒエログリフ|神聖文字]]等の他の文字体系では多くの複雑な文字が必要で、学習が困難であったのに比べて、この体系は単純だった。この一対一方式のおかげで、フェニキア文字は数多くの言語で採用されることになった。

フェニキア文字が成功したもう一つの理由は、音素文字の使用を[[北アフリカ]]と[[ヨーロッパ|欧州]]に広めた、フェニキア商人の[[制海権|海商文化]]であった<ref>Daniels (1996) p. 94-95.</ref>。実際、フェニキア文字の碑文は遥か[[アイルランド]]にまで見つかっている。フェニキア文字の碑文は、[[ビブロス]] (現[[レバノン]]) や北アフリカの[[カルタゴ]]のような、かつてフェニキアの都市や居留地が多数あった地中海沿岸の考古学遺跡で発見されている。後にはそれ以前に[[エジプト]]で使われた証拠も発見されている<ref>[http://www.nytimes.com/library/national/science/111499sci-alphabet-origin.html Semitic script dated to 1800 B.C.]</ref>。

文字は元来[[スタイラス|尖筆]]で刻み込まれていたので、殆どの形状は角張って直線的であるが、より曲線的な物が次第に使われるようになり、ローマ時代北アフリカの[[新ポエニ文字]]<!-- [[Neo-Punic alphabet]] -->へと発展していったと後に証明された。フェニキア文字は通常右から左に（右書き）書かれたが、[[牛耕式]]（行が変わるたびに書字方向を変える）で書かれた文章もある。

== 文字の呼び名 ==
フェニキア文字では、文字の呼び名に[[頭音法]]の方式を適用した。文字の呼び名は本質的に親の文字体系と同じである。親文字体系での文字の呼び名は、その元となった神官文字の単語の音価から引き継いだものである<ref>Jensen (1969) p. 262.</ref>。元の単語はエジプト語からセム系言語でそれと等価なものに翻訳され、翻訳された単語の最初の発音が文字の音価となった<ref>Jensen (1969) p. 262-263.</ref>。ただし、フェニキア文字ではいくつかの文字の呼び名が[[原カナン文字]]とは違うものになった。例えば以下のものである：
* ''gaml'' 「投げつける棒」から ''gimel'' 「ラクダ」に
* ''digg'' 「魚」から ''dalet'' 「扉」に
* ''hll'' 「歓喜」から ''he'' 「窓」に
* ''ziqq'' 「手枷」から ''zayin'' 「武器」に
* ''{{Unicode|na&#7717;&#353;}}'' 「蛇」から ''nun'' 「魚」に
* ''{{Unicode|pi&#702;t}}'' 「角」から ''pe'' 「口」に
* ''{{Unicode|&#353;im&#353;}}'' 「太陽」から ''{{Unicode|&#353;in}}'' 「歯」に

これらの文字では新たな意味が与えられた為、それがフェニキア語における文字の呼び名となった。フェニキア文字の文字の呼び名は直接証明されておらず、[[テオドール・ネルデケ]]によって[[1904年]]に[[再建]]された。

== 文字の一覧 ==
表記に異体が見られる文字がいくつもある。例えば、現在の '''t''' にあたるタウは 'x' より '+' に近く表記することがあり、ケトには交差線が二つあることがある。

{| class="wikitable" style="text-align:center;"
|-
! rowspan=2 | 画像
! rowspan=2 | 文字
! rowspan=2 | 名前
! rowspan=2 | 意味
! rowspan=2 | 発音
! colspan=6 | 以下の文字体系で対応する文字
|-
! ヘブライ文字
! アラビア文字
! ギリシア文字
! ラテン文字
! キリル文字
|-
| [[Image:phoenician aleph.png|35px|Aleph]]
| {{script|Phnx|&#67840;}}
| {{Unicode|&#700;&#257;leph}}<br/>アレフ
| 雄牛
| &#700;
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1488;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1575;]]
| [[Α|Α α]]
| [[A]] a
| [[А|А а]]
|-
| [[Image:phoenician beth.png|35px|Beth]]
| {{script|Phnx|&#67841;}}
| {{Unicode|b&#275;th}}<br/>ベト
| 家
| b
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1489;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65167;]]
| [[Β|Β β]]
| [[B]] b
| [[Б|Б б]], [[В|В в]]
|-
| [[Image:phoenician gimel.png|35px|Gimel]]
| {{script|Phnx|&#67842;}}
| {{Unicode|g&#299;mel}}<br/>ギメル
| ラクダ
| g
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1490;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65181;]]
| [[Γ|Γ γ]]
| [[C]] c, [[G]] g
| [[Г|Г г]]
|-
| [[Image:phoenician daleth.png|35px|Daleth]]
| {{script|Phnx|&#67843;}}
| {{Unicode|d&#257;leth}}<br/>ダレト
| 扉
| d
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1491;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1583;]]
| [[Δ|Δ δ]]
| [[D]] d
| [[Д|Д д]]
|-
| [[Image:phoenician he.png|35px|He]]
| {{script|Phnx|&#67844;}}
| {{Unicode|h&#275;}}<br/>ヘー
| 窓
| h
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1492;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1607;]]
| [[Ε|Ε ε]]
| [[E]] e
| [[Е|Е е]], {{Unicode|[[&#1028;|&#1028; &#1108;]]}}
|-
| [[Image:phoenician waw.png|35px|Waw]]
| {{script|Phnx|&#67845;}}
| {{Unicode|w&#257;w}}<br/>ワウ
| 鉤
| w
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1493;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65261;]]
| ({{polytonic|[[&#988;|&#988; &#989;]]}}), [[Υ|Υ υ]]
| [[F]]f, [[V]] v, [[Y]]y （[[U]] u, [[W]] w）
| ([[&#1140;|&#1140; &#1141;]]), [[У|У у]]
|-
| [[Image:phoenician zayin.png|35px|Zayin]]
| {{script|Phnx|&#67846;}}
| {{Unicode|zayin}}<br/>[[ザイン]]
| 武器
| z
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1494;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65199;]]
| [[Ζ|Ζ ζ]]
| [[Z]] z
| [[З|З з]]
|-
| [[Image:phoenician heth.png|35px|Heth]]
| {{script|Phnx|&#67847;}}
| {{Unicode|&#7717;&#275;th}}<br/>ケト
| 柵
| &#7717;
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1495;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1581;]] 
| [[Η|Η η]]
| [[H]] h, (Ē ē)
| [[И|И и]], [[Й|Й й]]
|-
| [[Image:phoenician teth.png|35px|Teth]]
| {{script|Phnx|&#67848;}}
| {{Unicode|&#7789;&#275;th}}<br/>テト
| 車輪
| &#7789;
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1496;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1591;]] ,[[&#1592;]]
| [[Θ|Θ θ]]
|
| ([[&#1138;|&#1138; &#1139;]])
|-
| [[Image:phoenician yodh.png|35px|Yodh]]
| {{script|Phnx|&#67849;}}
| {{Unicode|y&#333;dh}}<br/>ヨド
| 腕
| y
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1497;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1610;]]
| [[Ι|Ι ι]]
| [[I]] i （[[J]], j）
| class="Unicode"|([[&#1030;|&#1030; &#1110;]], [[&#1031;|&#1031; &#1111;]], [[&#1032;|&#1032; &#1112;]])
|-
| [[Image:phoenician kaph.png|35px|Kaph]]
| {{script|Phnx|&#67850;}}
| {{Unicode|kaph}}<br/>カフ
| 掌
| k
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1499;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65241;]]
| [[Κ|Κ κ]]
| [[K]] k
| [[К|К к]]
|-
| [[Image:phoenician lamedh.png|35px|Lamedh]]
| {{script|Phnx|&#67851;}}
| {{Unicode|l&#257;medh}}<br/>ラメド
| 突き棒
| l
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1500;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65245;]]
| [[Λ|Λ λ]]
| [[L]] l
| [[Л|Л л]]
|-
| [[Image:phoenician mem.png|35px|Mem]]
| {{script|Phnx|&#67852;}}
| {{Unicode|m&#275;m}}<br/>メム
| 水
| m
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1502;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65249;]]
| [[Μ|Μ μ]]
| [[M]] m
| [[М|М м]]
|-
| [[Image:phoenician nun.png|35px|Nun]]
| {{script|Phnx|&#67853;}}
| {{Unicode|nun}}<br/>[[ヌン]]
| 魚
| n
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1504;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65253;]]
| [[Ν|Ν ν]]
| [[N]] n
| [[Н|Н н]]
|-
| [[Image:phoenician samekh.png|35px|Samekh]]
| {{script|Phnx|&#67854;}}
| {{Unicode|s&#257;mekh}}<br/>サメク
| 魚/柱
| s
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1505;]]
|
| [[Ξ|Ξ ξ]], [[Χ|Χ χ]]
| [[X]]<ref>ラテン文字 [[X]] は[[西方ギリシア文字]][[Χ]]から派生しており、サメクに影響を受けて生じた[[ギリシア文字]][[Ξ]]（クシー）から派生した文字ではない。しかしながら[[ギリシア文字]][[Χ]]それ自身は恐らくフェニキア文字のサメクを間接的に<!-- secondary -->引き継いでいる。</ref> x
| ({{Unicode|[[&#1134;|&#1134; &#1135;]]}}), [[Х|Х х]]
|-
| [[Image:phoenician ayin.png|35px|Ayin]]
| {{script|Phnx|&#67855;}}
| {{Unicode|&#700;ayin}}<br/>アイン
| 目
| &#700;
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1506;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1593;]]
| [[Ο|Ο ο]]
| [[O]]o
| [[О|О о]]
|-
| [[Image:phoenician pe.png|35px|Pe]]
| {{script|Phnx|&#67856;}}
| {{Unicode|p&#275;}}<br/>ペー
| 口
| p
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1508;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65233;]]
| [[Π|Π π]]
| [[P]] p
| [[П|П п]]
|-
| [[Image:phoenician sade.png|35px|Sade]]
| {{script|Phnx|&#67857;}}
| {{Unicode|&#7779;&#257;d&#275;}}<br/>ツァデ
| [[パピルス#パピルス（植物)|パピルス]]
| &#7779;
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1510;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1589;]]
| ({{Polytonic|[[&#1018;|&#1018; &#1019;]]}})
| (Ś)
| [[Ц|Ц ц]], [[Ч|Ч ч]]
|-
| [[Image:phoenician qof.png|35px|Qoph]]
| {{script|Phnx|&#67858;}}
| {{Unicode|q&#333;ph}}<br/>コフ
| [[針穴]]
| q
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1511;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65237;]]
| ({{Polytonic|[[&#984;|&#984; &#985;]]}})
| [[Q]] q
|
|-
| [[Image:phoenician res.png|35px|Res]]
| {{script|Phnx|&#67859;}}
| {{Unicode|r&#275;&#353;}}<br/>レシュ
| 頭
| r
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1512;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#65197;]]
| [[Ρ|Ρ ρ]]
| [[R]] r
| [[Р|Р р]]
|-
| [[Image:phoenician sin.png|35px|Sin]]
| {{script|Phnx|&#67860;}}
| {{Unicode|&#353;in}}<br/>シン
| 歯
| &#353;
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1513;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1587;]]
| [[Σ|Σ σ]]
| [[S]] s
| [[С|С с]], [[Ш|Ш ш]]
|-
| [[Image:phoenician taw.png|35px|Taw]]
| {{script|Phnx|&#67861;}}
| {{Unicode|t&#257;w}}<br/>[[タウ]]
| 印
| t
| class="Unicode" lang="he"|[[&#1514;]]
| class="Unicode" lang="Arab"|[[&#1578;]]
| [[Τ|Τ τ]]
| [[T]] t
| [[Т|Т т]]
|}

[[画像:Phoenizisches alphabet.jpg]]

=== 符号化 ===
フェニキア文字は [[Unicode]] 5.0 で、U+10900 - U+1091F の範囲への符号化を受理された。[[ヘブライ文字]]の書体の変化で処理するという対案もあったが却下された ({{PDFlink|[http://www.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n2746.pdf PDF]}}の要約を参照)。文字は U+10900 - U+10915 までが ''aleph'' から ''taw'' となり、U+10916 - U+10919 がそれぞれ数字 1, 10, 20, 100 であり、U+1091F が単語の分離子である。
{|class="wikitable" cellpadding="4" cellspacing="0" style="font-family:'ALPHABETUM Unicode','MPH 2B Damase','MPH 2B ダマセ',Aegean,Code2001,FreeSans,Quivira;font-size:125%;text-align:center;"
!U+!!width="15pt"|0!!width="15pt"|1!!width="15pt"|2!!width="15pt"|3!!width="15pt"|4!!width="15pt"|5!!width="15pt"|6!!width="15pt"|7!!width="15pt"|8!!width="15pt"|9!!width="15pt"|A!!width="15pt"|B!!width="15pt"|C!!width="15pt"|D!!width="15pt"|E!!width="15pt"|F
|-
!style="background:#fff;"|10900
|&#67840;||&#67841;||&#67842;||&#67843;||&#67844;||&#67845;||&#67846;||&#67847;||&#67848;||&#67849;||&#67850;||&#67851;||&#67852;||&#67853;||&#67854;||&#67855;
|-
!style="background:#fff;"|10910
|&#67856;||&#67857;||&#67858;||&#67859;||&#67860;||&#67861;||&#67862;||&#67863;||&#67864;||&#67865;||&#x1091A;||&#x1091B;||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||style="background:#666;"| ||&#67871;
|}
<!--{{Unicode chart Phoenician}}-->

== 後継の音素文字 ==
[[Image:Ph&#246;nizisch-5Sprachen.png|thumb|フェニキア系文字の対照図<br/>左から、ラテン文字・ギリシア文字・フェニキア文字・ヘブライ文字・アラビア文字]]
=== 中東の子孫 ===
初期の[[ヘブライ語]]表記に使われた[[古ヘブライ文字]]は、フェニキア文字と殆ど同一である。[[サマリア人]]が使った[[サマリア文字]]は、古ヘブライ文字の一種<!-- a version -->である。

別の子孫として、[[アラム語]]の表記に使われた[[アラム文字]]がある。アラム文字は中東の'''[[リングワ・フランカ|通商語]]'''（共通語）となり、広く採用された。アラム文字はその後、現代[[ヘブライ文字]]、[[シリア文字]]、及び[[ナバテア文字]]等多数の関連する音素文字に分かれた。[[ナバテア文字]]を元に極めて曲線的にした物が[[アラビア文字]]となった。

=== 後継の欧州の文字体系 ===
[[ギリシア文字]]はフェニキア文字から直接発展した<!-- か、またはフェニキア文字と共通の祖先である北セム文字から発展したと考えられている -->。ギリシア人は殆どの記号の発音をそのまま保持したが、ギリシア語に存在しない発音を表現していた文字のいくつかを[[母音]]の表現に使った。これは特に重要である。なぜならば、[[ギリシア語]]のような[[インド・ヨーロッパ語族]]ではほとんどの[[セム系言語]]と比べて子音の重要性が遥かに低いからである。例えば、最初のフェニキア文字アレフ (Aleph) から、殆ど同じ名前の最初のギリシャ文字アルファ (Alpha) が生まれたが、表している音はまったく違うものとなった。

[[キリル文字]]は[[ギリシア文字]]から派生した。キリル文字の一部の文字は、ヘブライ文字の影響を受けた[[グラゴル文字]]の字形に基づいている。

[[ラテン文字]]は、エトルリア語や他の言語で使われた[[古代イタリア文字]] (元は[[ギリシア文字]]から生まれた) から派生した。ゲルマン人の[[ルーン文字]]も、初期の形態の古代イタリア文字から、北部イタリア文字<!-- Alpine scripts -->を経由して派生したとされる。

=== インドと東アジアへの影響 ===
[[ブラーフミー文字]]と後継の[[インド系文字]]は、言語学会ではアラム文字に由来するとの意見が有力であるが、異論もある。アラム文字起源説が正しいとすれば、これらの文字もフェニキア文字の後継となる。また、韓国語のハングルは多くの音素文字や、漢字、契丹文字などを参考にして<ref>字母の組書きの発想は漢字や契丹文字を、音節ごとに一まとめにするという発想は漢字やインド系文字を、音素文字をベースに子音と母音をあらわす部分をまとめて音節的に書くという発想はインド系文字を、それぞれ参考にしたのではないかという説がある。しかし、インド系文字特有の随伴母音は一切採用されておらず、子音母音の独立字母を漢字の部首的に組み合わせ、更に音節末子音をひとつの音節内に書くという発想はインド系文字とは異なる。</ref>、音韻論や音声学に基づいて少数の字形から字母を新造して創出された文字であるが、これらの参照文字のうち、もしブラーフミー文字がフェニキア文字を起源とした場合、漢字や契丹文字等の漢字及びその派生文字を除く文字の全てがフェニキア文字から派生したことになる。仮にブラーフミー文字の起源はフェニキア文字であるとする説が正しいとなると、今日世界で使われている全ての文字体系のうち、[[漢字]]及びその派生文字体系（例：[[仮名 (文字)|仮名]]、[[注音符号]]）のみが独立の起源を持っている、とも言えそうである。[[マヤ文字]]やメソポタミアの[[シュメール語]]文化圏の古代の文字体系は独立して発明されているのに対して、フェニキア文字は[[原カナン文字]]、そして[[ヒエログリフ|エジプト文字]]の流れに影響を受けている文字であるという見解も存在しており、現在は検証中である。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* Sanford Holst, ''Phoenicians: Lebanon's Epic Heritage'', Cambridge and Boston Press, Los Angeles, 2005.
* [[ジャンピエール ティオレ|Jean-Pierre Thiollet]],'' Je m'appelle Byblos'', H &amp; D, Paris, 2005. ISBN 2 914 266 04 9
* [[:en:George Rawlinson|George Rawlinson]], ''History of Phoenicia'', Longmans and Green, 1889.
* Daniels, Peter T., et al. eds. ''The World's Writing Systems'' Oxford. (1996).
* Jensen, Hans, ''Sign, Symbol, and Script'', G.P.  Putman's Sons, New York, 1969.
* Coulmas, Florian, ''Writing Systems of the World'', Blackwell Publishers Ltd, Oxford, 1989.
文字体系の呼称や用語の表記は、原則として次の文献に見えるものによった。
* {{cite book|和書
| author=河野六郎・千野栄一・西田龍雄編著
| title=言語学大辞典 別巻 世界文字辞典
| publisher=三省堂
| year=2001
| month=7
| id=ISBN 4-385-15177-6 }}

== 関連項目 ==
<!--{{Phoenician alphabet}}-->
{{Commons|Phoenician alphabet}}
*[[ヘブライ文字]]
*[[ギリシア文字]]
*[[死海文書]]<!-- [[クムラン聖書]]([[:en:Tanakh at Qumran]]) は現在日本語版ウィキペディアにないので -->
*{{仮リンク|ティフナグ|en|Tifinagh|label=ティフナグ文字}}
*[[Template:Script/Phoenician]] - 対応フォント一覧とダウンロード先を紹介
{{-}}
== 外部リンク ==
* [http://phoenicia.org/ Phoenicia.org]
* [http://www.ancientscripts.com/phoenician.html Ancient Scripts.com (Phoenician)]
* [http://biblescripture.net/Hebrew.html The Alphabet of Biblical Hebrew]
* [http://www.omniglot.com/writing/phoenician.htm Omniglot.com (Phoenician alphabet)]
* フェニキア文字に関する公式 {{PDFlink|[http://www.unicode.org/charts/PDF/U10900.pdf Unicode 規格の文書]}}

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