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バスカヴィル家の犬
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{{Portal|文学}} {{シャーロック・ホームズ|1901年|バスカヴィル家の犬|ジェームズ・モーティマー博士|1889年?|チャールズ・バスカヴィル卿殺人事件}} 『'''バスカヴィル家の犬'''』(バスカヴィルけのいぬ、''The hound of the Baskervilles'')は、[[アーサー・コナン・ドイル]]による[[シャーロック・ホームズシリーズ]]の長編小説の一つ。『'''バスカービルの魔犬'''』などの訳題も用いられる。 ホームズの長編は4作あるが、この作品だけが2部構成を採っておらず、また登場人物の過去の因縁話がからむ[[箱物語]]形式も採っていない。 ==あらすじ== [[File:Aune head mire3.jpg|thumb|200px|小説の舞台となったダートムアの沼地]] 魔の犬の伝説がある富豪のバスカヴィル家で、当主のチャールズ・バスカヴィル卿が死体で発見される。表向きには心臓発作による病死と発表されたが、卿の死体のそばには巨大な犬の足跡があった。 [[シャーロック・ホームズ|ホームズ]]は事件の調査を、チャールズ卿の主治医であり友人でもあるモーティマー博士から依頼される。子息のいないチャールズ卿の正統な後継者は、チャールズ卿の甥にあたる若きヘンリー・バスカヴィル卿一人である。しかし、モーティマー博士に伴われてロンドンにやってきたヘンリー卿の元にも、バスカヴィルの館へ赴く事を警告する謎の手紙が届く。 ホームズは[[ロンドン]]で別の事件に携わる必要があるといい、[[ジョン・H・ワトスン|ワトスン]]が代わりにヘンリー卿の客人として入館に同行する。 委細ありげな執事のバリモアとその妻、脱獄囚のセルデン、近所に住む昆虫学者のステープルトンとその美しい妹ベリル嬢など、ワトスンは見聞きした事をホームズに向けた手紙や自らの日記に綴る。バリモアとその妻の不審な行動は何故なのか? 凶悪な殺人犯セルデンは何処へ潜んでいるのか? ベリル嬢は何故自分や、彼女に求婚するヘンリー卿にここを立ち退くよう懇願するのか? そして、自分が湿地帯ではっきり聞いた恐ろしい声は「魔の犬」の咆哮ではないのか……。 更にそれらの誰でもない未知の人物が、身近に潜んでいる事をワトスンは知る。 ==年代について== [[File:1900 Princetown, Prison Gate.jpg|thumb|200px|作品と同時代の、プリンスタウンの牢獄の様子(1900年)]] モーティマーがホームズの部屋に置き忘れたステッキに「1884」と年号が刻まれており、それを5年前といっていることから、事件が起こったのは1889年と考えるのが自然である。だが、1889年はワトスンが結婚生活に入っており、ホームズと同居していないため、矛盾が生じている。またホームズはかなりの著名人となっているが、現実の1889年までに公表された作品は『[[緋色の研究]]』のみである。 [[シャーロキアン|研究者]]によってこの事件の発生年はまちまちであり、1886年から1900年までいろいろな説が出ている。 == 執筆の経緯 == 1901年3月、ドイルは[[腸チフス]]の後遺症で悩まされ、[[ノーフォーク州]]クローマーで療養していた<ref>1899年に南アフリカでボーア戦争が勃発。ドイルは1900年2月から8月まで野戦病院の医師として南アフリカで働いたが、このとき腸チフスに罹患してしまった。</ref>。その時に[[ボーア戦争]]で知り合ったジャーナリストの友人、バートラム・フレッチャー・ロビンソンと再会し、ロビンソンの出身地ダートムアの黒い魔犬の伝説を聞いた。この伝説に着想を得て書き上げたのが本作である。このため本作の冒頭にはロビンソンへの献辞がある。ドイルは当初ロビンソンとの共著として、ホームズとは無関係の作品を書こうとしていたが、ロビンソンは共著を辞退した。そこでドイルはこの作品に登場させる主役を考案し、ホームズを主役とする案を思いつく。この案には1893年に『[[最後の事件]]』でホームズを死亡させているという問題点があったが、事件の発生年月を『最後の事件』以前にすることで、ホームズを主役とする作品として書き上げることにした<ref>河村幹夫『ドイルとホームズを「探偵」する』日経プレミアシリーズ、2009年、103-111頁</ref>。ドイルはストランド・マガジンの編集部に1000語につき100ポンドの原稿料を要求し、そのうち30%をロビンソンに渡している。この原稿料は従来の倍額であったが、これはホームズを再登場させたからという理由であった<ref>東山あかね「『バスカヴィル家の犬』(の舞台裏)」『シャーロック・ホームズ大事典』小林司、東山あかね編、東京堂出版、2001年、594-596頁</ref>。 ==備考== [[File:Grimspound circle 1.jpg|thumb|200px|ホームズが潜伏したという、グリムズポンドの円状巨石列柱]] * [[1893年]]に「[[最後の事件]]」で一度ホームズが葬られてから、8年ぶりで発表された新作だった。ドイルは、ホームズという役者がすでにいるのに、新しい役者を用意する必要もあるまいと思った、と語っている。書店に押し寄せた読者が失望させられたことには、事件は(上述のような、年代にまつわる議論はあるものの)ホームズが[[ライヘンバッハの滝]]へ転落する以前に起こったものとされていた。ホームズが本当の意味の生還を遂げるには、読者はもう数年を辛抱しなくてはならなかった。 * 本作の刊行の翌年に、ドイルは[[ナイト|ナイト爵]]を受爵する。歴史的事実としては、これは[[ボーア戦争]]の従軍記などの社会的活動に対して贈られたものだった。しかし当時の誰もが、これはホームズを死の淵から復活させたことに対する恩賞であると信じた。この誤解は、現在でもまれに信じられている。 * バスカヴィルの家名は、[[バーミンガム]]の印刷業者であった[[ジョン・バスカヴィル]]に由来するのではないか、という説がある。 == 映像化 == 作品自体の人気に加えて、[[ダートムア]]の景観を描いた[[紀行文学]]的要素や、「火を吐く魔犬」といった題材が好まれてか、ホームズものの長編の中でも映像化された回数は多い。どの作品も大幅にストーリーが省略・改変されていて、主要なキャラクターが登場しないものもあり(特に[[レストレード]]警部が省かれたものが多い)、「完全映像化」されたものはいまだ無い。 [[1939年]]の[[ワーナー・ブラザーズ]]製作の映画は、[[ベイジル・ラスボーン]]が初めてホームズを演じた作品である。当時まだラスボーンのホームズ役に懐疑的だったワーナーでは、彼でなく魔犬を宣伝ポスターの中心に据えるなどしたが、その後[[1946年]]まで14本が製作される人気シリーズとなった。 [[1959年]]の[[ハマー・フィルム・プロダクション]]制作の[[イギリス映画]]『[[バスカヴィル家の犬 (1959年の映画)|バスカヴィル家の犬]]』では、ホームズを[[ピーター・カッシング]]が演じた。カッシングがもともとホームズファンだったこともあって、その演技は絶賛された。ハマー・プロは怪奇映画で知られた映画会社であり、作中の演出の随所に[[怪奇映画]]的味わいが見られる。なお、同作でヘンリー・バスカヴィルを演じた[[クリストファー・リー]]は、のちにシャーロックと[[マイクロフト・ホームズ|マイクロフト]]のホームズ兄弟を両方演じることになる。 1980年代からはテレビ向けの映像化が多い。1983年アメリカ製作のビデオドラマ版では『[[コナン・ドイルの事件簿]]』(2000年 - 2001年)でホームズのモデル=ジョゼフ・ベル博士を演じた[[イアン・リチャードソン]]がホームズ役である。 上記の2作品では普通の犬だった魔犬が、燐光のエフェクトを加えられて禍々しいイメージに仕上がっている。 [[ジェレミー・ブレット]]がホームズを演じた『[[シャーロック・ホームズの冒険 (テレビドラマ)|シャーロック・ホームズの冒険]]』の映像化は[[1988年]]である。俳優のスケジュールでレストレードが登場せず、主演のブレットも残念がるコメントを残している。 2000年にはカナダで[[マット・フリューワー]]主演でドラマ化された。原作とはがらりと変わった、饒舌なホームズ像を演じた。 2002年にはイギリスで[[リチャード・ロクスバーグ]]主演でドラマ化されている。ホームズよりもワトスンが主役に近い描かれ方だった。魔犬は[[コンピュータグラフィックス|CG]]で表現されている。 2012年に放送された [[ベネディクト・カンバーバッチ]]主演の『[[SHERLOCK (シャーロック)]]』では、舞台が現代という設定もあり、魔犬は軍事兵器の催眠ガス作用による幻覚という設定がされている。 ==その他== *[[いしいひさいち]]の漫画短編集『コミカル・ミステリー・ツアー』第2巻のサブタイトル『バチアタリ家の犬』はこの作品名をもじったものである。 *『[[名探偵コナン (アニメ)|名探偵コナン]]』の映画第6作『[[名探偵コナン ベイカー街の亡霊|ベイカー街の亡霊]]』では、自宅にホームズがいない理由として、この事件が紹介された。また、この事件をモチーフにした事件も存在する。(原作70巻) == 脚注 == <references /> {{シャーロック・ホームズシリーズ}} {{DEFAULTSORT:はすかういるけのいぬ}} [[Category:シャーロック・ホームズシリーズの長編小説]] [[Category:1901年の小説]] [[Category:イヌを題材とした作品]]
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