ハイラックスのソースを表示

{{Otheruseslist|動物|ピックアップトラック|トヨタ・ハイラックス|上記派生のSUV|トヨタ・ハイラックスサーフ}}
{{生物分類表
|名称 = イワダヌキ目
|画像 = [[ファイル:Cape Hylax Tennoji 3.jpg|250px|ケープハイラックス]]
|画像キャプション = [[ケープハイラックス]]<br/>''Procavia capensis''
|省略 = 哺乳綱
|上目 = [[アフリカ獣上目]] {{sname||Afrotheria}}
|上目階級なし = [[近蹄類]] {{sname||Paenungulata}}
|目 = イワダヌキ目 {{sname||Hyracoidea}}
|科 = '''イワダヌキ科''' {{sname||Procaviidae}}
|学名 = Hyracoidea {{AUY|[[トマス・ヘンリー・ハクスリー|Huxley]]|1869}}<br/>Procaviidae {{AUY|[[:en:Oldfield Thomas|Thomas]]|1892}}
|和名 = ハイラックス<br/>イワダヌキ（岩狸）
|英名 = [[w:Hyrax|Hyrax]]
|下位分類名 = [[属 (分類学)|属]]
|下位分類 =
* [[ハイラックス属]] {{snamei||Procavia}}
* [[イワハイラックス属]] {{snamei||Heterohyrax}}
* [[キノボリハイラックス属]] {{snamei||Dendrohyrax}}
}}
'''ハイラックス'''は、[[哺乳綱]]イワダヌキ目（ハイラックス目、岩狸目）イワダヌキ科（ハイラックス科）の総称である<ref>{{Yahoo!百科事典|ハイラックス}}</ref>。イワダヌキ科はイワダヌキ目唯一の現生科である。別名'''イワダヌキ'''。

== 特徴・習性 ==
比較的小型の動物で、日本人などにとっては一般に馴染みのない動物であり<ref name="yamauchi">山内節夫『動植物との出会い: 南アフリカ編』文芸社, 2005</ref>、外見を言葉にすれば「うさぎ」や「タヌキ」のような姿をしている<ref name="yamauchi" />。「耳を小さくした[[ウサギ]]のよう」とも。だが、[[ゾウ目]]や[[ジュゴン目]]と類縁関係にあり、足に[[蹄]]に似た扁爪（ひらづめ）がある。

食性は草食性である。他の哺乳類に比べ、体温調節の能力が劣るため、早朝や夕暮れは日光浴をし、暑い時は日陰で体を冷やす生活をしている。いわば[[爬虫類]]のような生活をしているのである。[[中東]]や[[アフリカ]]の[[サバナ (地理)|サバンナ]]に点在する岩場・岩山等に隠れ棲み、数匹から30匹程度の群れを作り生活している。

（rock hyrax イワハイラックスは）足裏に柔らかくて弾力性のある[[肉球]]があり、さらにそこに多数の[[汗腺]]があり常に湿っている。この湿って粘着力のある肉球を吸盤のように用いて、垂直に近い岩壁でも登ることができ、そこにとどまり眠ることもできる、という特徴がある。岩場・岩山の垂直の亀裂で眠ることができるので、蛇などに襲われることを防ぐことができる。夜間、岩場の水平の隙間・亀裂で仲間が身を寄せ合って体を暖めあいつつ眠ることも多いが、警戒を怠らず、チーターなどの肉食性の敵が近付いてきたりするとすかさず逃げ、また亀裂の中まで入り込んでくるような小型の肉食獣に襲われても、すばやく垂直の穴や亀裂を駆け上がり身を守る<ref>NHK『[[ダーウィンが来た]]』「ハイラックス」2013年1月3日9:20～　放送。</ref>。

== 古い記述・言い伝え・近現代の研究 ==
;旧約聖書
ハイラックスは、[[地中海地方|地中海沿岸]]では古くから知られていたようである<ref name="yamauchi">山内節夫『動植物との出会い: 南アフリカ編』文芸社, 2005</ref>。

[[旧約聖書]]の[[詩篇]]104章18節、[[箴言]]30章26節などでは、住処を岩の中に作る、知恵ある動物として、「{{enlink|Coney}} コニー」という名で登場している<ref>BibleGateway.com [http://www.biblegateway.com/passage/?search=leviticus%2011:3-11:8&version=48 Leviticus 11:3-8 (21st Century King James Version)]</ref>。

[[マルティン・ルター]]はこれを[[ヘブライ語]]から[[ドイツ語]]に翻訳する際は「ウサギ」と訳した<ref>なお、フェニキア語に近縁の[[ヘブライ語]]では、ハイラックスは ''saphan''(隠れる者) である</ref><ref group="注">現代の語彙体系しか知らない初学者などの中には、つい"誤訳"だと感じてしまう人も一部にいるかも知れないが、ヨーロッパにはハイラックスは棲息せず、当時のヨーロッパ人のほとんどはハイラックスの姿を見たこともなく、そもそも「ハイラックス」という語彙も存在しなかったわけであるから、彼らに知られた範囲で似ている「ウサギ」と訳すことは当然のことである。翻訳先の語彙体系にぴったりのものが無い場合、読み手・聞き手が知っている範囲で類似のものに置き換えることでとりあえずイメージを伝えるのは、プロの[[翻訳]]者や[[通訳]]者がいつでも行っている、一般的で妥当な手法でもある。</ref>。

<div class="NavFrame" style="border: none; text-align: left; font-size: 100%">
<div class="NavHead" style="background: transparent; text-align: left; font-weight: normal">''詩編の該当箇所を読むには右の［表示］をクリック''
</div>
<div class="NavContent">
日本語では例えばおおよそ次のように訳されている。
{{Quotation|わが魂よ、主をほめよ。</br>
（...中略）</br>
主の木と、主がお植えになったレバノンの香柏は豊かに潤され、</br>
鳥はその中に巣をつくり、</br>
こうのとりはもみの木をそのすまいとする。</br>
高き山はやぎのすまい、</br>
岩は'''岩だぬき'''の隠れるところである<ref name="yamauchi" /><ref>『動植物との出会い: 南アフリカ編』の詩編の引用では「イワダヌキ」と表記しているが、日本語版聖書では「岩だぬき」としているものも多い（もある）ようである。</ref>。
</br>
（詩篇第104篇1-18）
}}
</div>
</div>
<div class="NavFrame" style="border: none; text-align: left; font-size: 100%">
<div class="NavHead" style="background: transparent; text-align: left; font-weight: normal">''箴言の該当箇所を読むには右の［表示］をクリック''
</div>
<div class="NavContent">
日本語では例えばおおよそ次のように訳されている。

{{Quotation|この地上には、</br>
小さいが非常に賢いものが4つある。</br>
蟻は力がないが、</br>
食糧を夏のうちに蓄える。</br>
'''岩だぬき'''は強くないが、</br>
すみかを岩につくる。</br>
いなごは王がいないが、</br>
皆、隊を組む。</br>
やもりは手でもつかまえられるが、</br>
王の宮殿にいる。</br>
（箴言、第30章24-28）
}}
</div>
</div>

また、[[レビ記]]11章5節には、「これは[[反芻]]するが、蹄が割れても分かれてもいないから」食べても、死体に触れてもいけない穢れた動物として、ウサギ、ラクダ等と共に出る。

<div class="NavFrame" style="border: none; text-align: left; font-size: 100%">
<div class="NavHead" style="background: transparent; text-align: left; font-weight: normal">''レビ記の該当箇所を読むには右の［表示］をクリック''
</div>
<div class="NavContent">
日本語では例えばおおよそ次のように訳されている。

{{Quotation|主はまた[[モーセ]]と[[アロン]]に言われた。</br>
イスラエルの人々に言いなさい、</br>
『地にあるすべての獣のなかで、</br>
あなたがたが食べることができる動物は次のとおりである。</br>
獣のうち、すべてのひずめの分かれたもの、すなわち、ひずめの全く切れたもの、</br>
反芻するものは、</br>
これを食べることができる。</br>
ただし、反芻するもの、あるいはひずめの分かれたもののうち、次のものは食べてはならない。</br>
らくだは（... 中略）</br>
'''岩だぬき'''は、反芻するけれどもひずめが分かれていないから、あなたには汚れたものである。</br>
野うさぎは（...中略）</br>
豚は（...中略）</br>
あなたがたは、これらのものの肉を食べてはならない。またその死体に触れてもならない。これらはあなたがたには汚れたものである。
（レビ記、第11章1-8）
}}
</div>
</div>

反芻動物であると誤解されたのは「常に口を動かしている為」か、「胃袋が反芻動物とよく似ているため」と考えられる。


;スペインの国名の語源説
「[[スペイン]]（イスパニア）」という国名の由来には諸説あるが、一説に、現地で初めてウサギを見た[[フェニキア人]]が、「saphan（=ハイラックス）の島」と呼んだことに由来するという<ref>前述のように、フェニキア語に近縁の[[ヘブライ語]]では、ハイラックスは ''saphan''と呼ばれていた。（スペイン語版 [[:es:Hispania#Origen del nombre]] による。）</ref>。


;生物学
（生物の学術的な研究というのはすでに古代ギリシャ時代から例えばアリストテレスやテオプラストスなどによって行われていたわけであるが）
近・現代の生物研究におけるハイラックスに関する記述や位置付けの変遷ついても紹介する。

古くは「原始的な[[齧歯類]]（げっしるい）」として、モルモットなどのネズミの仲間の祖先だと考えられていた<ref name="yamauchi" />。「ハイラックスの仲間は上顎の門歯が一生伸び続ける特徴から、かつては[[ネズミ目]]に分類されていた。{{要出典|date=2014年1月}}」とも。

学名の属名にProcaviaと付けられたが、Caviaはテンジクネズミであるので、Procaviaは「テンジクネズミの祖先」という意味である<ref name="yamauchi" />。（その後、後述するように、この理解は間違っていたと判ったのだが、それでもこの学名はそのまま使いつづけられている<ref name="yamauchi" />。）

[[1766年]]には {{snamei|Cavia capensis}} という[[学名]]が付けられ、[[テンジクネズミ]]と同じ {{snamei||Cavia}} 属に分類された。

その後、[[フランス]]の[[博物学者]]、[[解剖学者]]<ref name="yamauchi" />の[[ジョルジュ・キュビエ]]は、歯と足の特徴を調べた結果、ハイラックスの仲間は「原始的な有蹄動物である」とした。足の裏側が、足底の全体を地面につける構造のゾウと同じ構造になっていることなどによって、ゾウに近い生き物だと立証したのである<ref name="yamauchi" />。

ハイラックスの上顎の門歯は一生伸び続けるが、下顎の門歯はある時点で成長が止まってしまうという点で、[[ネズミ目]]や[[ウサギ目]]とは異なる。また、上顎の臼歯は[[ウマ目]]（奇蹄目）の[[サイ]]に、下顎の臼歯は[[ウシ目]]（偶蹄目）の[[カバ]]に似た特徴を有している。また、全身の骨格はサイのものを小型にしたような特徴を持ちながら、前足の骨は[[ゾウ]]に類似している。[[胃]]の構造は[[ウマ]]に似ている。このように様々な動物に少しずつ似た特徴を持っているが、[[化石]]記録や[[分子生物学]]的な解析{{誰|date=2014年1月}}{{いつ|date=2013年1月}}から、[[ゾウ]]等の原始的な有蹄類と類縁関係があることが明らかになり、[[近蹄類]]の一目としてイワダヌキ目（ハイラックス目）という独立した目に分類されるようになった。

分布域は、[[地球史年表#1000万年前 〜 100万年前|今から700万年～200万年前ごろ]]（中新世から鮮新世）は南ヨーロッパから中国の中部あたりまでの広い地域だったのだが、現在の分布域は[[アフリカ]]中部から南部および[[中東]]域と狭くなっている<ref name="yamauchi" />という。

== 逸話 ==
今泉忠明の『世界珍獣図鑑』によれば、ある日本の動物園で、（職員がハイラックスの習性・能力を知らず）12頭ほどのハイラックスを、巨大な土管状の畜舎に入れて展示したところ、吸盤状の足によってよじ登り、その日のうちに全て脱出した<ref>今泉忠明　『世界珍獣図鑑』　111頁</ref>という。

<!--
== 日本で飼育している動物園 ==
{{国際化|日本|section=1|date=2013年4月}}

国内での飼育はすべて[[ケープハイラックス]] {{snamei||Procavia capensis}} のみである。
*[[群馬サファリパーク]]
*埼玉県[[こども動物自然公園]]
*[[恩賜上野動物園]]
*[[富士サファリパーク]]
*[[いしかわ動物園]]
*[[大阪市天王寺動植物公園]]
*[[神戸市立王子動物園]]
*[[広島市安佐動物公園]]
*[[高岡古城公園動物園]]（富山県高岡市）
*[[麻溝公園]]ふれあい動物広場（神奈川県相模原市）
-->

== 分類 ==
イワダヌキ目（ハイラックス目）は[[近蹄類]]の1目である。現生1科、3属が知られている<ref>[[厚生労働省]] [http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou12/ 『動物の輸入届出制度について』]</ref>。

* [[近蹄類]]
** † [[重脚目]] {{sname||Embrithopoda}}
** [[テティス獣類]] {{sname||Tethytheria}}
** イワダヌキ目, Hyracoidea
*** † [[プリオハイラックス科]] {{sname|Pliohyracidae}} - [[中新世]]から[[始新世]]頃<ref>渡邊 誠一郎 [http://epp.eps.nagoya-u.ac.jp/~seicoro/bio/mammalia.html 『哺乳類の系統分類』] ※ページサイズが大きいので注意(337K)</ref>
**** [[ティタノハイラックス]]属 {{snamei||Titanohyrax}} ({{AUY|[[松本彦七郎|Matsumoto]]|1922}})
**** [[クバベビハイラックス]]属 {{snamei||Kvabebihyrax}} ({{AUY|Gabunia & Vekua|1966}})
**** [[プロハイラックス]]属 {{snamei||Prohyrax}} ({{AUY|Stromer|1926}})
**** [[プリオハイラックス]]属 {{snamei||Pliohyrax}}
*** '''イワダヌキ科''' {{sname||Procaviidae}}
**** [[キノボリハイラックス属]] {{sname||Dendrohyrax}}
***** [[ミナミキノボリハイラックス]] {{snamei||Dendrohyrax arboreus}}
***** [[ニシキノボリハイラックス]] {{snamei||Dendrohyrax dorsalis}}
***** [[ヒガシキノボリハイラックス]] {{snamei||Dendrohyrax validus}}
***** [[イワハイラックス属]] {{snamei||Heterohyrax}}
***** [[キボシイワハイラックス]] {{snamei||Heterohyrax brucei}}
**** [[ハイラックス属]] {{snamei||Procavia}}
***** [[ケープハイラックス]] {{snamei|Procavia capensis}}
***** [[アビシニアハイラックス]] {{snamei|Procavia habessinica}}
***** [[サハラハイラックス]] {{snamei|Procavia syriaca}}
***** [[カオコベルトハイラックス]] {{snamei|Procavia welwitschii}}

== 画像 ==
<gallery>
ファイル:Tree-hyrax.jpg|ミナミキノボリハイラックス
ファイル:Beecroft%27sTreeHyrax.JPG|ニシキノボリハイラックス
ファイル:Ein_klippschliefer.jpg|キボシイワハイラックス
ファイル:Cape Hyrax, Gustav Hayek, 1876.png|ケープハイラックス イラスト
</gallery>

== 注釈、出典 ==
;注
<references group="注"/> 

;出典
<references/>

== 外部リンク ==
{{Commonscat|Hyracoidea}}
*[http://ch09706.kitaguni.tv/e223284.html autan's annex:ちょっと変わり種の動物ハイラックス]
*[http://blog.goo.ne.jp/angio-neuro/e/be4aae9713489e1edf63e2ca3a9ac40f 可愛い動物 岩狸目について]
*[http://www.asahi-net.or.jp/~ch2m-nitu/iwatnk.htm 岩狸目]

{{哺乳類}}

{{DEFAULTSORT:はいらつくす}}
[[Category:イワダヌキ目]]
{{Link GA|de}}