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[[ファイル:Intel82443bx_agpset.jpg|thumb|right|チップセットに用いられるLSI例]] '''チップセット'''(Chipset)とは、原義では、ある機能を実現するのに、複数の[[集積回路]](IC)を組み合わせて機能を実現する構成の場合、それら一連の関連のある複数の集積回路のことをチップセットと呼ぶ。 現在では、[[コンピュータ]]において、[[CPU]]の外部バスと、メモリや周辺機器を接続する標準バスとのバスブリッジ<ref>CPU-PCIバスブリッジなどのチップはコンパニオンチップとも呼ばれる。</ref>などの、旧来は単機能のICを複数組み合わせて(こちらが原義のチップセット)実現されていた機能を、1個ないし少数の大規模集積回路(LSI)に集積したものを指して、チップセットと呼ぶことが多い<ref>1個にまで集積されてしまうと、果たして「セット」(集合)という呼称が正しいものか悩ましいが、数学的には含まれる要素が1個という「一者集合」も集合ではある。</ref>。本項はこの[[パーソナルコンピュータ]]におけるチップセットについて説明する。 == 概要 == [[File:Chicony CH-286N-16 (1280x700 deutsch).jpg|thumb|4チップ構成のチップセットを用いた初期のPC/AT互換マザーボード]] 初期の[[PC/AT互換機]]では、CPUメーカーが供給する標準的なCPU周辺ICと複数の汎用ICの組み合わせによって、制御回路を構成していた。チップセットは、PCの低価格化などをはかるためにこれら周辺IC<ref>当時は[[Dynamic Random Access Memory|DRAM]]コントローラ、i8257[[Direct Memory Access|DMA]]コントローラ、INS8250シリアルI/O、パラレルI/O、μPD765A[[フロッピーディスク|FDD]]コントローラなどが、統合の対象となった。</ref>を幾つかの、より高密度なLSIに統合したもので、[[チップス・アンド・テクノロジーズ]](後の1997年にインテルに買収された)などが初期の代表的なメーカーである。 PC/AT互換機メーカーやマザーボードメーカーは、多数の周辺ICをIBMと同様に購入していては、仕入れ価格すなわち原価の点でIBMより不利であったが、チップセットの導入により逆転した。このことは、PC/AT互換機の普及の加速に貢献した。なおチップセットは、複数の汎用LSIの組み合わせをPC専用の少数のチップのセットに統合したものであって、必ずしも2チップのセットとは限らない。また、チップセットが登場した初期には、単に統合[[ASIC]]と呼ばれることが多く、PCやマザーボードのカタログでも、使用チップセットについて取り立てて強調するようなことはなかった。 現在のチップセットには高度な[[主記憶装置|メモリ]]インタフェース機能や[[Accelerated Graphics Port|AGP]]などの制御回路が搭載されているため、コンピュータの性能に重大な影響を与える。すなわち[[マザーボード]]<ref>メインボード、ロジックボード、システムボードとも呼ばれる。</ref>は特殊な場合を除き、CPUをターゲットに設計されるのではなく、直接の設計ターゲットはチップセットとなる。CPUの交換が想定されているシステムは珍しくないが、チップセットのみの交換を想定しているシステムは存在しない。 チップセットという言葉が広く認知され始めたのは、これがPCの機能や性能に重大な影響を与えるようになってからであり、具体的には、PCIバス規格に準じたインテルのi420TX(Saturn)やi430NX(Neptune)あたりからである<!--この時代には好みのセーラー戦士と同じ名前のチップセットを積んだマザーボードを選ぶ者もいた-->。i430LX(Mercury)やi430FX(Triton)の時代になると、チップセットは現在よく見られる以下に述べるような2チップ構成となった。 == ノースブリッジとサウスブリッジ == 現在、多くのチップセットは、開発サイクルや発熱・[[歩留まり]]を考慮して、2チップ構成になっており、CPUやメモリバスに接続される方を'''[[ノースブリッジ]]'''<ref>組み込みシステムや[[Macintosh]]ではシステムコントローラと呼ばれる。なお、システムコントローラにはI/Oコントローラなどの周辺チップやCPUを統合している場合もある。</ref>、I/Oに接続される方を'''[[サウスブリッジ]]'''<ref>MacintoshではI/Oコントローラと呼ばれる。</ref>と呼ばれる。これら2つのチップ間は数ギガbpsの高速かつ排他的なリンク<ref>[[HyperTransport]]など。</ref>で接続される。このリンクの方式と速度が整合していれば、1世代のノースブリッジで、何世代かのサウスブリッジに対応可能である。これにはマーケティング的にシステムの最新スペックを更新しやすいという利点があり、格付けが異なる複数の製品併売も容易となる。 ノースブリッジには、CPUインターフェース、メモリインターフェース、グラフィックインターフェース(90年代〜00年代前半は[[Accelerated Graphics Port|AGP]]、現在は[[PCI Express]]が主流)が含まれ、[[Graphics Processing Unit|GPU]]の機能を統合しているものもある(後述の[[#統合チップセット|統合チップセット]]を参照)。 サウスブリッジには、[[Peripheral Component Interconnect|PCI]]、[[Advanced Technology Attachment|IDE]]、[[ユニバーサル・シリアル・バス|USB]]、[[イーサネット|Ethernet]]などのI/Oが搭載されることが多い。 開発サイクルを犠牲にしても実装面積の削減を目的に、ノースブリッジとサウスブリッジを一つにまとめる場合もあり、こういった製品はワンチップチップセットと呼称される。物理的な統合・分離とは異なり、インテルの[[Centrino]]のようにCPUや[[無線LAN]]といったチップセット以外のデバイスとの組合せをプラットフォームとしてブランディングする動きもある。 カスタマイズされた[[ベンチマーク]]などの特定[[アプリケーションソフトウェア|アプリケーション]]を除き、2チップ間のリンクの方式と速度が全体のシステム能力の上限を決定することになるので、リンクのシリアル化とともに、その高速化に余念がない。20世紀最終のUSBに始まった高速シリアル化の流れは、[[RDRAM]]がPCにおいては失敗に終わったため一時停滞したものの、その後[[Serial ATA]]の普及、[[PCI Express]]への移行を済ませて、2009年現在メモリインターフェースを残すのみとなった。 他のデバイス同様、チップセットの機能・役割も時代によって変わりつつある。例えばチップセットの代表的な機能であったメモリコントローラについては、CPUとメモリの間の転送帯域を向上させるため、ノースブリッジのチップに担わせていた同機能をCPUに内蔵させるという流れが、[[アドバンスト・マイクロ・デバイセズ|AMD]]プラットフォームでは2003年に、[[インテル]]プラットフォームでも2008年には一般的な傾向となり、従来の「ノースブリッジ=メモリコントローラを内蔵したチップ」という概念は必ずしも通用しなくなっている。 また、高速な動作が必要でない、あるいは不可能であるようなレガシーデバイス([[キーボード (コンピュータ)|キーボード]]、[[マウス (コンピュータ)|マウス]]、[[フロッピーディスク|フロッピーディスクドライブ]]、[[RS-232|シリアル]]、[[IEEE 1284|パラレル]]、[[Industry Standard Architecture|ISA]]バス<ref>ごく一部の組み込み用マザーボードにはまだ採用されている。</ref>)をサポートする回路を組み込むことは、チップセット自体の高速化の足かせとなるため、サウスブリッジのチップから分離させ、'''[[スーパーI/O]]チップ'''と呼ばれる別のLSIに担当させることが増えている。スーパーI/Oチップは、CPUから見ればサウスチップのさらに向こうにつながっていることになる。スーパーI/Oチップもチップセットの重要な一部であるが、その役割がPCの性能向上に寄与しないレガシーデバイスの管理であるため、マザーボードのスペックなどではあまり注目されない。 <gallery> ファイル:Schema_chipsatz.png|2チップ構成のチップセット模式図 ファイル:Motherboard diagram.svg|2チップ構成チップセットを用いた[[マザーボード]][[ブロック図]] ファイル:Intel G45 Chipset(ASUS P5Q-EM).jpg|ノースブリッ ジの一例。インテル製G45チップ ファイル:Schipset Sul South Bridge.jpg|サウスブリッジの一例。インテル製ICH5R </gallery> == 統合チップセット == [[ファイル:Sis_760gxlv.jpg|thumb|right|統合チップセットの例(SiS760)]] ノースブリッジにグラフィックス機能を統合したチップセットを、特に'''統合チップセット'''と呼ぶ("グラフィックス"または"ビデオ"を冠することもある)。一般的に[[ビデオカード|グラフィックスボード]]を 搭載するよりも低コストであり、また省スペース性・省電力性にも優れているため、低価格機および発熱・消費電力が問題になりやすい[[ノートパソコン]]や 小型[[デスクトップパソコン]]で はグラフィックス機能の主流となっている。 ビデオメモリは[[メインメモリ]]の一部領域を共有する'''[[ユニファイドメモリアーキテクチャ|Unified Memory Architecture]]'''(UMA)が主流であるが、専用の外部メモリをサポートする製品もある。 描画性能は同世代の単体GPUに比べ大幅に劣ることが多い。ただし、近年ではグラフィックス機能の強化が積極的に行われており、高い3D処理能力が求められる[[ファーストパーソン・シューティングゲーム|FPS]]などを実行する場合を除けば基本的に十分な性能を有している。また、[[マルチディスプレイ]]機能や[[Digital Visual Interface|DVI]]出力、[[DirectX|Shader Model 4.0]]対応などの単体GPUに迫る多彩な機能を実装した製品も多い。 統合チップセットのグラフィックス機能は、チップセットの機能としてマザーボードに最初から搭載されているので、一般的に「[[オンボードグラフィック|オンボードグラフィックス]]」などと呼称される。また、グラフィックス用の基板(カード)が別に存在するわけではないから、「オンボードグラフィックス'''カード'''」などの呼称は誤りである。 == 代表的なメーカーとチップセット == インテルやAMDなどのCPUメーカーは、自社製の純正チップセットを開発、供給している。これにより信頼性やブランドイメージを上げる事に貢献している。 [[サードパーティー]]のメーカーは、統合型のチップセットによる実装工数の削減や、価格的なアドバンテージをマザーボード製造メーカーにアピールする傾向にあり、低価格PC向けに採用されることが多い。一方で、[[ベンチマーク]]性能重視の製品を積極的に投入しているメーカーもある。 サードパーティ製チップセットは、不具合や相性問題を抱える製品が少なからず存在する(ただし、各CPUメーカーの純正品が必ずしも安定しているという訳でもない)。チップセットドライバ、[[Basic Input/Output System|BIOS]]の更新や調整、各拡張カードの[[デバイスドライバ]]や[[ファームウェア]]の更新で安定することもあるため、特に[[自作パソコン]]のユーザーはネット掲示板などを通じ、これら不具合や相性の解消法の意見交換を盛んに行っている。 ; サードパーティーメーカーの競争 : サードパーティーのチップセットメーカーは常に熾烈な競争を繰り広げている。かつては台湾系チップセットメーカー(ALi(ULi)、SiS、VIA)が主なサードパーティーメーカーとして競争を繰り広げていた。2000年代前半より、ATIやNVIDIAといった大手グラフィックス専業メーカーがチップセット製造販売に参入し、マザーボードへの採用数も急増した。こうして、古くからあるチップセット専業メーカーは新参のメーカーにシェアを奪われた。そして2005年、この業界で古参にあたるULiがNVIDIAに買収され、NVIDIAのアジア地区営業担当とチップセット開発に携わるようになった。2006年にはAMDがATIを買収し、ATIチップセットがAMD純正として扱われるようになる。そのため、ATIのインテル向け新製品供給は無くなった。VIAはインテル、AMD向けの開発から撤退し、自社CPU向けのみの開発となる。NVIDIAとSiSも事実上、チップセットの開発から撤退し、サードパーティのチップセットは消滅した。 === PC/AT互換機用 === * [[インテル]](詳細については[[インテル チップセット]]の項目を参照) ** [[Intel 440BX|i440BX]],i440MX,i440GX (PentiumPro/PentiumII向け) ** [[Intel 810|i810]],[[Intel 815|i815]],[[Intel 820|i820]],i830 ** i840,[[Intel 845|i845]],i850,i860,i865 ** i855,i915,i945 ** i925,i955,i965,i975 ** P3x,G3x,Q3x,X3xシリーズ ** P4x,G4x,Q4x,X4xシリーズ ** E7200/E7500/E8500 シリーズ ** P55,H55,H57,Q57,X58 ** Z68,P67,H67,H61など * [[アドバンスト・マイクロ・デバイセズ|AMD]](詳細については[[AMD チップセット]]の項目を参照) ** AMD690G,690V ** AMD740G,750,760G,770,780G,780V,785G,790GX,790X,790FX ** AMD870,AMD880G,AMD890GX,AMD890FX ** AMD970,AMD990X,AMD990FX ; 撤退、又は買収されたメーカー * [[ATI Technologies]] - AMDに買収され、事実上AMD製品専門となる ** RADEON IGP/XPRESS シリーズ * [[ALi (企業)|ALi]]/[[ULi]] - ULiはALiのチップセット部門が[[スピンオフ]]した子会社。2005年にNVIDIAに買収された ** ALADDiN5,ALADDiN-Pro5,ALiMAGiK1(ALi) ** M1683,M1689,M1695,M1697(ULi) * [[NVIDIA]] ** nForce シリーズ ** GeForce GT 9400M, 320M * [[SiS]] ** SiS530,630,650,660,735,745,746,751,755,761 * [[VIA Technologies|VIA]] ** Apollo MVP3,Pro133A,KT266A,KT400,KT600 ** K8T/K8M シリーズ ** P4X/P4M シリーズ === サーバ、ワークステーション向け === * [[ブロードコム]](Broadcom) ** HT-2000,HT-2100 * [[ServerWorks]] ** ServerSet === x86以外 === [[x86]]以外のプラットフォームのチップセットについて。 * [[アップル インコーポレイテッド|アップルコンピュータ]] - [[x86]]化以前、[[PowerPC]]を搭載したMacintosh向けにチップセットを独自開発していた。IBMと共同開発したシステムコントローラは、アップルコンピュータがMacintoshに搭載するCPUをIntel製品に移行した後も、IBMの一部製品に使われている。 * [[NEC]] * [[東芝]] * [[IBM]] - 自社開発の[[POWER]]・PowerPC搭載システム向けのチップセットを開発・製造している。 * [[シリコングラフィックス]] - chapter11適用前はMIPS系RISC CPU最強を誇るチップセットメーカーでもあった。 * [[ディジタル・イクイップメント・コーポレーション]] - 買収前は[[DEC Alpha|Alpha]]向け、現在は[[ヒューレット・パッカード]]となり[[Itanium]]系チップセットメーカーである。 == 脚注 == <references/> == 関連項目 == * [[オンボード]] * [[マザーボード]] ** [[スーパーI/O]] ** [[オンボードグラフィック]] * [[自作パソコン]] * [[High Precision Event Timer]] [[Category:チップセット|*]] [[Category:CPU|ちつふせつと]]
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