ズムウォルト級ミサイル駆逐艦のソースを表示

{| class="wikitable" style="clear:right; float:right; margin: 0em 0em 1em 1em; width: 300px; background:#ffffff"
|-
! colspan="3" style="color: white; height: 30px; background: navy;"|ズムウォルト級ミサイル駆逐艦
|-
| colspan="3" align="center"| [[画像:131028-O-ZZ999-103.JPG|300px]]
|-
!colspan="3" style="color: white; height: 30px; background: navy;"| 艦級概観
|-
|艦種||colspan="2"| [[ミサイル駆逐艦]]
|-
|艦名||colspan="2"|[[アメリカ海軍|海軍]]功労者<br />一番艦は[[エルモ・ズムウォルト・ジュニア]][[提督]]に因む
|-
|style="white-space:nowrap; font-size:smaller"|建造期間||colspan="2"|2011年 - 建造中
|-
|style="font-size:smaller"|就役期間||colspan="2"|2015年（計画）
|-
|建造費
|colspan=2|33億[[アメリカ合衆国ドル|USドル]]
|-
|前級||colspan="2"|[[アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦]]
|-
|次級||colspan="2"|最新
|-
!colspan="3" style="color: white; height: 30px; background: navy;"| 性能諸元
|-
| style="white-space:nowrap;" |[[排水量]]||colspan="2"|満載：14,797 [[トン数|t]]
|-
|全長||colspan="2"|183 m
|-
|全幅||colspan="2"|24.5 m
|- 
|喫水||colspan="2"|8.4 m
|-
|rowspan=6|機関
|colspan=2|[[統合電気推進|統合電力システム]]（IPS）
|-
|[[ロールス・ロイス マリン トレント|MT30]][[ガスタービンエンジン|ガスタービン]]発電機<br />({{Convert|35|MW|hp|abbr=on|disp=s}})||2基
|- 
|[[ゼネラル・エレクトリック LM500|LM500]]ガスタービン発電機<br />({{Convert|5|MW|hp|abbr=on|disp=s}})||2基
|-
|非常用[[ディーゼルエンジン|ディーゼル]][[発電機]]||style="white-space:nowrap;"|複数
|-
|[[アルストム]]AIM電動機<br />({{Convert|34.6|MW|hp|abbr=on|disp=s}})||2基
|-
|[[スクリュープロペラ]]||2軸
|-
|style="white-space:nowrap; font-size:smaller"|航続距離||colspan="2"|不明
|-
|速力||colspan="2"|最大30.3[[ノット]]（56+ km/h）
|-
|乗員||colspan="2"|106名　航空要員：36名<br />（最終的には100名以下まで削減予定）
|-
|rowspan="3"|兵装
|AGS 62口径155mm単装砲||2基
|-
|[[Mk 44 ブッシュマスター II|30mm機関砲]]||2基
|-
|Mk.57 [[VLS]]（20セル）
 • [[ESSM]] [[艦対空ミサイル#個艦防空ミサイル|短SAM]]<br/>• [[トマホーク (ミサイル)|トマホーク]] [[巡航ミサイル|CM]]<br/>を発射可能
|4基
|-
|rowspan="2"|[[艦載機]]
|[[SH-60 シーホーク|SH-60B/MH-60R]] [[LAMPS]] Mk.3||2機
|-
|colspan="2"|またはSH-60B/[[SH-60 シーホーク#統合多用途艦載ヘリコプター（MH-60R）|MH-60R]]×1機<br/> ＋ [[MQ-8 ファイアスカウト|MQ-8]] [[無人航空機|UAV]]×3機
|-
|style="white-space:nowrap; font-size:smaller" rowspan="2"|[[レーダー]]||[[AN/SPY-3]] 多機能式 (3面)||1基
|-
|AN/SPS-73 対水上/航海用||1基
|-
|rowspan="3"|[[ソナー]]
|AN/SQS-60 中周波式||1基
|-
|AN/SQS-61 高周波式||1基
|-
|AN/SQR-20 曳航式||1基
|}
'''ズムウォルト級ミサイル駆逐艦'''（{{Lang-en|''Zumwalt''-class destroyer}}）は、[[アメリカ海軍]]が取得を進めている新型[[ミサイル駆逐艦]]の艦級。

高度な[[ステルス性]]などの先進的な設計と強力な対地射撃能力を備えており、当初は30隻以上の大量建造が計画されていたが、のちにコスト増などのために3隻に削減された。2015年頃に[[ネームシップ]]「[[ズムウォルト (ミサイル駆逐艦)|ズムウォルト]]」が就役予定である。

== 来歴 ==
=== アーセナル・シップとSC-21 ===
本級の計画は、[[1980年代]]末に[[:en:Joseph Metcalf, III|ジョゼフ・メトカーフ3世]]中将が提唱した打撃巡洋艦構想にその起源を有する。これは徹底的なステルス化設計と大量の[[VLS]]の搭載を特色としていた。[[1990年代]]中盤、この構想は、時の[[アメリカ海軍作戦部長|海軍作戦部長]][[ジェレミー・ボーダ]]大将に取り上げられ、[[アーセナル・シップ]]として具現化した。打撃巡洋艦構想では独立作戦能力が確保されていたのに対し、アーセナル・シップ構想では乗員もセンサーも最低限に留められ、索敵・測的・誘導などは[[戦術データ・リンク]]や[[共同交戦能力]]などを介して外部からもたらされる情報に依存するという、極めてラジカルなコンセプトであった<ref name="野木2007">{{Cite journal|和書|author=[[野木恵一]]|year=2007|month=07|title=紆余曲折を経た「ズムウォルト」級開発の経緯 (特集・米次期DDG「ズムウォルト」級を解剖する)|journal=[[世界の艦船]]|issue=676|pages=76-81|publisher=[[海人社]]|naid=40015488225}}</ref>。

そして[[1995年]]より、米海軍の将来水上戦闘艦を開発する一大プロジェクトとしてSC-21（Surface Combatant for 21st Century）のコンセプト開発が開始され、アーセナル・シップ構想もその一環たる海上射撃支援実証艦（MFSD）として組み込まれた。空母保有数削減論につながることへの危惧などから、MFSD計画そのものは1997年11月に打ち切られたものの、その成果はSC-21計画本体に合流し、活かされることとなった<ref name="大熊2006">{{Cite book|和書|author=[[大熊康之]]|year=2006|title=軍事システム エンジニアリング|chapter=第4章 レオポルド博士の海軍装備変革論|publisher=[[かや書房]]|pages=116-142|isbn=978-4-906124-63-3}}</ref>。

SC-21は、当時現役であった[[オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート]]、[[スプルーアンス級駆逐艦]]、[[タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦]]の後継となる水上戦闘艦を構想しており、同一の設計にもとづいて、フリゲート・駆逐艦の後継となるDD-21と、巡洋艦の後継となるCG-21が開発される予定であった<ref name="野木2007"/>、その任務要求においては、下記のような重視事項が提示されていた<ref name="大熊2006"/>。
* [[巡航ミサイル]]および[[短距離弾道ミサイル]]による対地精密火力投射、および[[水陸両用作戦]]部隊等に対する持続的な[[火力支援]]の提供による'''[[戦力投射]]'''
* 他の海軍部隊および[[統合作戦]]部隊の支援、[[シーレーン]]維持、重要港湾・空港の防護のため、陸上・洋上・水中・経空の各種脅威目標の撃破ないし無力化による'''戦闘空間支配'''
* Sensor-to-Shooterコンセプトに基づく'''[[指揮 (軍事)|指揮]]・[[統制]]および監視'''
* 設計にあたっては下記コンセプトに準拠<br />1. [[ライフサイクルコスト]]および性能を最適化する[[システム艦]]開発<br />2. 最大限のモジュラー設計および[[商用オフザシェルフ]]化<br />3. 生残性および損傷を負った状態での戦闘継続

タイコンデロガ級よりもペリー級・スプルーアンス級のほうが先に退役する計画であったことから、まずDD-21を開発し、それを拡大してCG-21が開発される計画とされた。1998年には、計画のフェーズI（システム概念設計）に応じる2つのコンソーシアムとして、[[ノースロップ・グラマン]]社を中心としたゴールドチームと[[ジェネラル・ダイナミクス]]社（[[バス鉄工所]]）を中心としたブルーチームが発足していた。計画では、初期システム設計のフェーズIIまでは両チームの競争となり、2001年度半ばからのフェーズIIIで単一チームが選定されることとされ、2005年度より毎年3隻ずつを建造、所要隻数は32隻とされていた<ref name="野木2007"/>。

=== DD(X)へ ===
しかし2001年、SC-21計画は突如中断され、再計画が行なわれた。これは下記の理由によるものであった<ref name="大熊2006"/>。
#多様化する任務に単一の設計で対処するには限界がある。CG-21とDD-21は同一の設計に基づくこととなっていたが、計画開始後に次々と追加される任務に対応するため、先行して計画されたDD-21は、既に巡洋艦級と評されるまでに肥大化し、かつなおも装備不足が指摘されていて、その一方で肥大化によって沿海域での戦闘には不適となりつつあった。これを是正するため、漸進的システム取得方式とFamily of Shipsコンセプトの導入が必要と考えられた。
# 将来の紛争の予測不能性と沿海域戦闘特有のCheap Killの危険性<ref group="脚注">安価な武器でも、高価格な艦に大きな損害を与えうるというもの。2000年に発生した[[米艦コール襲撃事件]]が好例である。</ref>への対応が不十分であり、少数の高価格な艦に頼り、これを不用意に前線に展開することは極めて危険であると考えられた。
コスト上昇を憂慮した[[アメリカ合衆国議会|議会]]は、2001年10月、DD-21計画の予算を4分の1にカットするという荒療治によって警告していたことから、計画の見直しは喫緊の課題となっていた<ref name="野木2007"/>。

2001年11月、見直された新計画のもとで、CG-21は[[CG(X)]]、DD-21はDD(X)と改称され、さらにフリゲートの後継となる新艦種として[[沿海域戦闘艦]]（LCS）が追加された。これらは共通の技術基盤を採用するものの、DD-21の計画肥大化を反省して、任務分担を厳格化することとされた。DD(X)は、DD-21の計画を引き継ぐものの、排水量の目標は1万2千トンと定められた。2002年4月、フェーズIIIの契約者としてゴールドチームが選定されたが、ブルーチームが異議申立てを行ったため、[[アメリカ会計検査院]]（GAO）が8月にこれを却下するまで計画は停滞した。最終的に、ゴールドチームにはジェネラル・ダイナミクスやロッキード・マーチンなどブルーチームの企業も合流し、DD(X)ナショナルチームと改称している。ノースロップ・グラマン社が全体のリーダーであり、レイセオン社がシステム・インテグレータとなっている。またコスト上昇に伴い、建造予定数は、DD-21時代の32隻から、DD(X)では24隻、さらに8隻に削減されていた<ref name="野木2007"/>。

2005年11月、海軍次官はフェーズIVでの2隻の先行建造を承認したが、これらはCG(X)に向けての技術実証艦に留められ、以後の建造は行わず、駆逐艦の更新は既存の[[アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦]]の追加建造によって補う計画とされた<ref name="ラインナップ">{{Cite journal|和書|year=2013|month=12|title=2. ズムウォルト級DDG (世界の新型水上戦闘艦ラインナップ)|journal=世界の艦船|issue=782|pages=80-81|publisher=海人社|naid=40019721131}}</ref>。その後、2009年4月、1隻が追加された3隻で建造終了することが正式に決定された<ref name="大塚2013">{{Cite journal|和書|author=大塚好古|year=2013|month=12|title=1番艦進水へ! DDG-1000級の超絶技術 (特集 近未来の米水上艦隊)|journal=世界の艦船|issue=788|pages=82-85|publisher=海人社|naid=40019837765}}</ref>。またその後、CG(X)も計画中止され、こちらもアーレイ・バーク級フライトIIIによって代替されることとなった。

== 船体 ==
{{Triple image stack|right|DD(X).png|Zumwalt class destroyer (center cut design).PNG|Zumwalt Deckplate Transit.jpg|250|本級で導入された各種の新機軸|中央付近の船体横断面図|上部構造物}}
満載[[排水量]]は15,000tに近く、これは現在アメリカ海軍が唯一保有する[[巡洋艦]]である[[タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦]]よりも大きい。

本級は、非常にラジカルな設計を採用していることで知られている。従来の艦艇では、上甲板から吃水線にむけて船体幅が絞られ、乾舷は外傾していたのに対し、本級では吃水線付近が最も幅広く、乾舷は船体内向きに内傾しているタンブルホーム船型を採用した。これは木造帆船時代に船体上部の重量軽減のために考案された船型であり、19世紀にも鋼鉄水上戦闘艦の登場時にも一部で採用された実績があったものの、第2次世界大戦期以降姿を消していたものであったが、[[ステルス性]]向上の必要から復活することになった。また、船首形状も、従来は波を乗り越える形状であったのに対し、本級は波浪を貫通する形状となっており、水面上より水面下の方が前方に突き出ている。広い船尾トランサムも1枚の単純平面で構成され、側面同様に内傾している。これらをあわせて、'''波浪貫通タンブルホーム船型'''（Wave Piercing Tumble Home hull form）と称されている<ref name="多田2007">{{Cite journal|和書|author=多田智彦|year=2007|month=7|title=「ズムウォルト」級 その驚くべきメカニズムと戦闘能力 (特集・米次期DDG「ズムウォルト」級を解剖する)|journal=世界の艦船|issue=676|pages=82-89|publisher=海人社|naid=40015488226}}</ref>。

[[アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦]]や[[フランス海軍]]の[[ラファイエット級フリゲート]]のような[[ステルス艦|ステルス性が重視されている艦]]は、前から見るとひし形のような形状をしているが、この場合水平方向からくるレーダー波は上部にあたると空に向かって、下部にあたると海に向かって反射され、直接もとの方向へ戻ってしまうことはない。しかし海に向かって反射された電波は海面で乱反射し、ある程度もとの方向へ戻ってしまう。DD(X)で採用したタンブルホーム船型は、水平方向からくる電波はほぼすべて空に向かって反射されるため、旧来のステルス性設計を凌駕する。艦船や航空機に搭載されているレーダー機器から発射される電波波長領域（2-18GHz, S-Ku Band）では、現在運用されているアーレイ・バーク級に比べ、[[レーダー反射断面積]]（RCS）が50分の1程度になるといわれている<ref name = "海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術"/>。

船体中央にデッキハウスと呼ばれる大きな上部構造物が設けられており、単純な平面で構成された壁面はいずれも内傾しているため、上部構造物は多角錐型になっている。煙突はこの上部構造物に収められていて、天井部に開口部があるだけである。炭素繊維などの複合材料で作られた壁面には多数の開口部が設けられて、同一平面を成した平面アンテナや電子光学機器の観測窓、信号灯が埋め込まれており、統合複合材料デッキハウス・開口（Integrated composite deckhouse & apertures、'''IDHA'''）と呼ばれている<ref name="多田2007"/>。他の艦では当たり前のはしごや手すり類、燃料補給ステーションなどの突起物は外面から見える位置には露出しない。艦橋の窓は、上部構造物前部のやや低い位置にあり、船室の窓は基本的に設けられない。

なお船体は内側と外側の二重の側壁を備えており、二重船底と合わせて、後部の一部を除く船体は二重船殻を形成している<ref name = "海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術"/>。
{{-}}

== 機関 ==
本級は、アメリカ海軍の水上戦闘艦としては初めて[[統合電気推進]]（IPS）方式を採用している。これは、電気推進に用いるための電力と、艦船内の他の用途（兵器や電子機器、その他船内サービス用）の電力の電源を共用化する技術であり、高度な電力制御技術と高性能の電動機が必要とされるものの、電力配分・機関運転の適正化や維持コスト低減、水中騒音の抑制など多くの利点がある。本級の場合、電源はいずれも[[ガスタービンエンジン|ガスタービン発電機]]とされ、主発電機としては出力{{Convert|35|MW|hp|lk=on}}の[[ロールス・ロイス マリン トレント]]MT30が2基、補助発電機としては出力{{Convert|5|MW|hp|lk=on}}の[[ゼネラル・エレクトリック LM500]]が2基、搭載されている。現状では、所要の電力量は主発電機1基のみで充足可能であり、将来的には、大電力が必要な[[レールガン]]の搭載にも対応可能とされている<ref name="大塚2013"/>。

推進機構としては、出力{{Convert|34.6|MW|hp}}のAIM電動機（Advanced induction motor、先進誘導電動機）2基によって推進器2軸を駆動する。また3番艦では、AIMにかえて、より小型で先進的な米アメリカン・スーパーコンダクター社（AMSC）製 高温超伝導（High temparature supercondductor、HTS）モーターに変更される予定となっている<ref name="大塚2013"/><ref name = "アメリカ海軍の超戦闘艦＆有事作戦"/>。

== 装備 ==
ズムウォルト級では従来までのような[[マスト]]は廃止され、ほとんどの[[アンテナ]]も、上記のIDHA式上部構造物の傾斜壁面に固定式で取り付けられている。唯一例外の通信・電子戦用の回転式小型アンテナも上部構造物の上面前部に傾斜角を揃えた選択電波透過性の角型レドームに収められている<ref name = "海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術"/>。

=== C4ISR ===
[[File:SMC of the DDG-1000 class.jpg|thumb|300px|SMCのイメージ。2層分の高さが確保されている]]
本級においては、[[戦闘指揮所]]（CIC）を発展させたSMC（ship's mission center）が設置される。これは従来のCICの機能のほか、主機操縦室や群司令部指揮所（TFCC）の機能も包括したもので、2層分の高さが確保されている<ref>{{Cite web|author=Lt. Cmdr. Jay Sego|url=http://surfwarmag.ahf.nmci.navy.mil/feature_ddg_1000.html|title=Life at Sea Aboard DDG 1000 |language=英語|accessdate=2013-11-12}}</ref>。本級の[[C4Iシステム]]は、艦内すべてのシステムをネットワーク連接した「全艦コンピュータ環境」としてTSCEI（Total Ship Computing Environment Infrastructure）と呼称されている。次世代アメリカ海軍戦闘艦の標準型戦闘システムとなることを想定し、[[イージスシステム]]の完全[[オープンアーキテクチャ]]版を目標に<ref name="大塚2013"/>、[[艦艇自衛システム#SSDS_Mk.2|SSDS Mk.2]]のソフトウェア資産等を活用して開発されている<ref>{{Cite web|author=[[レイセオン]]|date=2006-11-07|url=http://investor.raytheon.com/phoenix.zhtml?c=84193&p=irol-newsArticle&ID=927951&highlight=|title=Raytheon Delivers Source Code for DDG 1000 Total Ship Computing Environment Infrastructure Software |language=英語|accessdate=2013-11-22}}</ref>。

主[[レーダー]]としては、Xバンドを使用する多機能レーダー（MFR）である[[AN/SPY-3]]が搭載される。これは[[フェーズドアレイレーダー|アクティブ・フェイズド・アレイ（AESA）式]]の固定式アンテナ3面による全周監視を可能としており、精密目標追尾・識別および射撃指揮のほか、遠達性に劣るXバンドを使用するにも関わらず、従来の[[イージス艦]]に搭載されているSバンドの[[AN/SPY-1]]を凌駕する広域索敵能力を備えているとされている。当初計画では、これを補完する広域捜索レーダー（VSR）として、SバンドのAESA式レーダーであるAN/SPY-4も搭載される予定であったが、システム開発とコスト上昇の問題に直面し、こちらは中止された<ref name="大塚2013"/>。

一方、ソナー・システムとしては、AN/SQQ-90統合水中戦闘システム（IUW）が搭載される。これはアーレイ・バーク級フライトIIAの[[AN/SQQ-89]](V)15をもとにした統合システムで、艦首のバウ・ドーム上側には高周波の障害物回避ソナーであるAN/SQS-61が、下側には中周波の対潜探知用ソナーであるAN/SQS-60が設置されるが、これらの制御は統合されており、米海軍初のデュアル・バンド・ソナーを構成する。また艦尾からは[[戦術曳航ソナー|AN/SQR-20多機能式曳航ソナー（MFTA）]]が展開される<ref name="大塚2013"/>。

[[電子戦]]装置としては、従来の[[AN/SLQ-32]]に替えて、米[[ノースロップ・グラマン]]社が開発中のMFEW（Multi Function Electronic Warfare）システムを搭載する計画である。このシステムのアンテナもまた、平板型で構成されている<ref name = "海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術"/>。

=== 武器システム ===
==== ミサイル ====
[[画像:USS Zumwalt (DDG-1000) 1.jpg|thumb|250px|ミサイル発射イメージ]]
[[ミサイル]]は、二重船殻の間隙部に装備するMk.57 [[VLS]]（PVLS：Peripheral Vertical Launch System）に搭載される。これらは外殻と内殻の間に装備することで、被弾によって自艦のミサイルが誘爆した場合でも、その被害を局限化するように考慮されている。

運用するミサイルとしては、当初は、区域防空用の[[ESSM]]、広域防空用の[[スタンダードミサイル#SM-2シリーズ|スタンダードSM-2]]、[[ミサイル防衛]]用の[[RIM-161スタンダード・ミサイル3|スタンダードSM-3]]、対地攻撃用の[[トマホーク (ミサイル)|トマホーク]]、[[対潜戦]]用の[[アスロック#VLA|垂直発射式アスロック（VLA）]]などが計画されていた。しかしシステム開発とコスト面の問題に直面し、搭載兵器リストからVLAは削除され、広域防空・ミサイル防衛能力も見送りとなっている<ref name="大塚2013"/>。

装備要領としては、当初は128セル前後を[[主砲]]とヘリコプター甲板の両脇付近に装備する予定と言われていたが、2011年現在、内殻と外殻の間には4セルを1単位とするPVLSを前甲板左右舷に各6基、後部のヘリコプター甲板左右舷に各4基の合計20基、80セルを搭載する。ESSMは細身であるため1セルに4発まで装填できるため、セル数以上の搭載数となる<ref name = "海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術"/>。

なお、計画当初は艦尾などの船体内に[[Mk 32 短魚雷発射管|3連装短魚雷発射管]]を搭載する計画もあった<ref name = "アメリカ海軍の超戦闘艦＆有事作戦"/>が、2013年現在では、魚雷防御システムの後日装備余地が確保されているのみとなっている<ref>{{Cite web|author=[[:en:Naval Sea Systems Command|NAVSEA]]|date=2013-04-09 |url=http://www.navsea.navy.mil/Media/SAS2013/1.%20DDG%201000.pdf|title=DDG 1000 Class Destroyer|format=PDF|language=英語|accessdate=2013-11-23}}</ref>。
{{-}}

==== 砲 ====
[[画像:USS Zumwalt (DDG-1000).jpg|thumb|250px|left|AGSによる砲撃イメージ]]
[[主砲]]としては、単装の{{仮リンク|AGS 155mm砲|en|Advanced Gun System|label=155mm先進砲システム（AGS）}}が2基搭載される。SC-21計画時任務要求以来、本級では海上火力支援（NSFS）任務への対応が要求されてきたが、本砲はその目玉となる装備といえる。非誘導の弾道型長射程砲弾（ASuWP）使用時で最大射程41〜44km、GPS/INS誘導・[[:en:Rocket-assisted projectile|ロケット補助推進]]を導入した長距離対地攻撃砲弾（[[:en:Long Range Land Attack Projectile|LRLAP]]）使用時で最大射程137km以上（[[平均誤差半径‎]]20〜50m）を発揮できるとされており、搭載弾数は砲1基あたり304発である。また上記の通り、将来的には電磁[[レールガン]]（EMRG）への換装も視野にいれているとされているが、こちらはまだ構想段階である<ref name="大塚2013"/>。2006年10月段階でのレールガンの開発計画では2016年に海上試験を行い、実用砲の完成は2020-2025年とされていた<ref name = "海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術"/>。

またこれを補完して近距離の対水上・対空射撃を行うため、Mk.110 70口径57mm単装速射砲も2基搭載される予定であった。これは[[スウェーデン]]の[[ボフォース57mm砲#Mk_3|ボフォースMk.3]]をユナイテッド・ディフェンス社が国産化したもので、[[CIWS]]としての性格もあることもあって近接砲システム（Close in gun system、'''CIGS'''）と呼称される。[[沿海域戦闘艦]]（LCS）及び[[アメリカ沿岸警備隊]]のカッターでも採用が決定しているが、これらでは従来通りの低体積砲塔が採用されていたのに対し、本級搭載のステルス砲塔では、射撃しないときには砲身に俯角をかけて砲塔内に格納するという思い切った手法によりステルス性を確保している<ref name="大塚2013"/>。しかし2014年には対舟艇用の[[Mk 44 ブッシュマスター II|30mm機関砲]]に変更されCIWSは搭載されないことになった<ref>[http://news.usni.org/2014/08/05/navy-swaps-anti-swarm-boat-guns-ddg-1000s Navy Swaps Out Anti-Swarm Boat Guns on DDG-1000s]</ref>。

=== 艦載機 ===
[[画像:US Navy 030606-N-0000X-002 Artist^rsquo,s concept of the 210-meter (689 feet) DD(X) destroyer design by a Northrop Grumman Corporation-led team selected by the U.S. Navy to complete the system design for the Navy's advanced, 21.jpg|thumb|250px|後部にヘリコプター格納庫]]
後部にヘリコプター格納庫と広い甲板を備えている。有人ヘリコプターである[[SH-60 シーホーク#統合多用途艦載ヘリコプター（MH-60R）|MH-60R シーホーク]]2機、またはMH-60R シーホーク1機と[[無人航空機]]（UAV：Unmanned Aerial Vehicles）の[[MQ-8 ファイアスカウト]]3機を格納庫内に収容可能である。

[[飛行甲板#ヘリコプター甲板|ヘリコプター甲板]]は広く、より大型なヘリコプターでも発着は可能であると示唆された<ref name = "海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術"/>。

=== 艦載艇 ===
7m級の高速型[[複合艇]]（RHIB）が2艇、船尾のヘリコプター発着甲板下に格納されており、艦尾の扉から発進・回収が行なえるようになっている<ref name = "海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術">{{Cite journal|和書||author=野木恵一|coauthors=多田智彦|year=2008||month=6||title=海自汎用護衛艦＆世界の戦闘艦技術||journal=[[軍事研究]]||issue=||pages=||publisher=ジャパン・ミリタリー・レビュー}}</ref>。後続艦には11m級RHIBが搭載される予定である。<ref name = "アメリカ海軍の超戦闘艦＆有事作戦">{{Cite book|和書|author=河津幸英|year=2008|title=アメリカ海軍の超戦闘艦＆有事作戦|publisher=アリアドネ企画|isbn=9784384041651}}</ref>
{{-}}
== 配備 ==
1番艦は暫定的な仕様の「フライト0」とされ、2011年に起工した。2～3番艦は、2011年9月[[ジェネラル・ダイナミクス]]社[[バス鉄工所]]が18億ドルで受注したことが発表された。<ref>[http://www.defense.gov/Contracts/Contract.aspx?ContractID=4623 国防総省調達情報，2011年9月15日]</ref><ref>{{PDFlink|[https://www.gdbiw.com/sites/default/files/docs/Press%20Releases/DDG%201001%20-%201002%20Award%20Sept%202011%281%29.pdf General Dynamics Awarded $1.8 Billion for Construction of Two Zumwalt-class DDG-1000 Destroyers]}} [[ジェネラル・ダイナミクス]][[バス鉄工所]]ニュースリリース，2011年9月15日</ref>

艦名は1番艦が海軍提督[[エルモ・ズムウォルト・ジュニア]]、2番艦が仲間を[[手榴弾]]から守り[[戦死]]した[[Navy SEALs|シールズ]]隊員マイケル・モンスーア、3番艦が元大統領[[リンドン・ジョンソン]]から取られている。

米海軍は2013年[[10月28日]]に1番艦が[[メイン州]]の造船所で進水し、搭載兵器を備え付ける作業に入ると発表した<ref>"[http://www.navy.mil/submit/display.asp?story_id=77322 First Zumwalt Class Destroyer Launched（2013年10月29日）]" - ''Official Website of the United States Navy''。2013年11月1日閲覧。</ref><ref>”[http://www.cnn.co.jp/usa/35039270.html 米海軍のステルス駆逐艦が進水、炭素繊維で軽量化（2013年10月31日）]” - [[CNNj]].2013年11月1日閲覧</ref>。

{|class="wikitable" border="1" cellpadding="3"
|-
! # !! 艦名 !! 建造所 !! 起工 !! 進水 !! 就役 
|-
|DDG-1000||[[ズムウォルト (ミサイル駆逐艦)|ズムウォルト]]<br/>USS ''Zumwalt''||rowspan="3"|[[バス鉄工所]]||2011年<br/>11月17日||2013年<br/>10月28日|||2015年予定
|-
|DDG-1001||[[マイケル・モンスーア (ミサイル駆逐艦)|マイケル・モンスーア]]<br/>USS ''Michael Monsoor''||2013年<br/>5月23日||||2016年予定
|-
|DDG-1002||[[リンドン・B・ジョンソン (ミサイル駆逐艦)|リンドン・B・ジョンソン]]<ref>[http://www.defense.gov/releases/release.aspx?releaseid=15190 “Navy Names Zumwalt Class Destroyer USS Lyndon B. Johnson”] {{en icon}} DDG-1002を「リンドン・B・ジョンソン」と命名することを決定したと公表する国防総省のプレスリリース。</ref><br/>USS ''Lyndon B. Johnson''|||||||2018年予定
|}

== 登場作品 ==
*『[[鋼鉄の咆哮シリーズ]]』
:「[[鋼鉄の咆哮2 ウォーシップコマンダー|鋼鉄の咆哮2]]」以降の作品においてプレイヤーが建造可能な艦船として登場。1番艦が進水する以前に発売された作品であるため、詳細な形状は異なっている。
*『[[エースコンバット インフィニティ]]』
:オンライン協同戦役モード内の追加ミッションにおいて『STEALTH DESTROYER』という名称で登場する。
*『[[萌え萌え大戦争☆げんだいばーん]]』
:鋼の乙女「カレン」のモデルとなっている。また、一部のステージではサポートユニットとしてもズムウォルト級が直接登場する。

== 脚注 ==
<references group="脚注"/>

== 出典 ==
{{Reflist|2}}

== 関連項目 ==
{{Commonscat|Zumwalt class destroyer}}
*[[シー・シャドウ (実験艦)]]
*[[ステルス艦]]
{{ズムウォルト級ミサイル駆逐艦}}
{{アメリカ海軍のミサイル駆逐艦}}
{{DEFAULTSORT:すむうおるときゆうみさいるくちくかん}}
[[Category:アメリカ合衆国の駆逐艦|*]]
{{Link GA|de}}