カンガルーのソースを表示

{{Otheruses|動物|その他}}
{{生物分類表
|名称=カンガルー科
|画像=[[ファイル:Kangaroo and joey03.jpg|250px]]
|画像キャプション=[[オオカンガルー]] {{snamei|Macropus giganteus}}
|省略=哺乳綱
|上目=[[有袋上目]] {{sname||Marsupialia}}
|目=[[カンガルー目]] {{sname||Diprotodontia}}
|亜目=[[カンガルー形亜目]] {{sname||Macropodiformes}}
|上科=[[カンガルー上科]] {{sname|Macropodoidea}}
|科='''カンガルー科''' {{sname||Macropodidae}}
|学名=Macropodidae {{AUY|[[ジョン・エドワード・グレイ|Gray]]|1821}}
|和名=カンガルー
|下位分類名=亜科
|下位分類=
* [[カンガルー亜科]] {{sname||Macropodinae}}
* [[ステヌルス亜科]] {{sname||Sthenurinae}}
}}
'''カンガルー'''（{{lang-en|kangaroo}}）は、[[有袋類]][[カンガルー目]]の一群である。

'''カンガルー科''' ({{sname|Macropodidae}}) に分類されるが、別の分類では[[ネズミカンガルー科]] {{sname||Potoridae}} をカンガルー科に統合し、カンガルー科を'''カンガルー亜科''' {{sname|Macropodinae}}（先の分類でのカンガルー科）とネズミカンガルー亜科 {{sname|Potorinae}} に分ける。

[[オーストラリア]]大陸、[[タスマニア島]]、[[ニューギニア島]]に生息している。大型の（狭義の）カンガルー、小型の[[ワラビー]]、樹上性の[[キノボリカンガルー]]などがいるが、同じ[[カンガルー属]] {{snamei||Macropus}} に[[オオカンガルー]]も[[アカクビワラビー]]も中間サイズの[[ワラルー]]もおり、大型カンガルーとワラビーの区別は分類学的なものではない。

== 語源 ==
「カンガルー (kangaroo)」は、もともとカンガルー（跳ぶもの）を指した現地語 ''gangurru'' が変化したものであると考えられる<ref>[http://www.iberianature.com/trivia/etymology_mammals.htm Etymology of mammal names]. Retrieved January 7, 2007.</ref>。西洋人がカンガルーを指して「あの動物は何と言うのか」と聞いたところ、現地人は（外国語では何を言いたいのか）「わからない」という意味で「カンガルー」と答え、これがこの動物の通称となったという逸話が、[[世界まる見え!テレビ特捜部]]で紹介されたり、中学の英語の教科書にも載ったことがあるが、これは俗説である。なお、オーストラリア周辺には多くの部族が住むため、すべての部族がカンガルーのことをこう呼ぶわけではない。

カンガルーという語がはじめて記録されるのは、[[ジェームズ・クック]]の最初の航海について記述した[[ジョセフ・バンクス]]（[[王立協会]]会長を務めた貴族）の文章で、このときは「Kangaru」と綴られた。元々は[[グーグ・イミディル語]]で灰色のカンガルーの意味であったが、すぐにカンガルー全体を示す英語として使われるようになった。

== 概要 ==
体長は小さいもので25cmから大きい種では160cm、体重は0.5kg程度の種から85kgに達する大きな種まで様々ある。毛の色もアカカンガルーのように明るく赤っぽい茶色、灰色、黄色っぽい茶、[[クロワラルー]]のように黒色の毛をしている種などがある。ただし、色のバリエーションは同じ種内でも、季節や年齢などによっても変化する。
カンガルー属の[[学名]]''Macropus''は[[ラテン語]]で「大きな足」を意味する。
オーストラリアではカンガルーを単にルー (Roo) と呼ぶ。また、子供のカンガルーだけではなく、有袋類全般の子供のことをジョーイ (Joey) と呼ぶ。

オオカンガルーやアカカンガルー、クロカンガルーなど増加傾向にある種類もあるが、絶滅した種、もしくは絶滅の危機に瀕している種も少なくはない。

== 分類 ==
* [[カンガルー形亜目]] {{sname||Macropodiformes}}
** [[ニオイネズミカンガルー科]] {{sname||Hypsiprymnodontidae}}
** [[カンガルー上科]] {{sname|Macropodoidea}}
*** [[ネズミカンガルー科]] {{sname||Potoridae}}
*** '''カンガルー科''' {{sname||Macropodidae}}
**** [[ステヌルス亜科]]（シマウサギワラビー亜科） {{sname||Sthenurinae}}
***** †[[ステヌルス]] {{snamei||Sthenurus}} などの[[絶滅]]属
***** [[シマウサギワラビー属]] {{snamei||Lagostrophus}} - シマウサギワラビーのみ（ウサギワラビー属に含む説もあり）
**** [[バルバロー亜科]] ({{sname|Balbarinae}})
**** [[カンガルー亜科]] {{sname||Macropodinae}}
***** †[[プロテムノドン]] {{snamei||Protemnodon}} などの絶滅属
***** [[キノボリカンガルー属]] {{Snamei||Dendrolagus}}
***** [[ドルコプシス属]] {{Snamei||Dorcopsis}}
***** [[コドルコプシス属]]（ヒメドルコプシス属） {{Snamei||Dorcopsulus}}
***** [[ウサギワラビー属]] {{Snamei||Lagorchestes}}
***** [[カンガルー属]]（マクロパス） {{Snamei||Macropus}} - [[オオカンガルー]]、[[アカカンガルー]]、[[アカワラルー]]、[[ダマヤブワラビー]] など
***** [[ツメオワラビー属]] {{Snamei||Onychogalea}}
***** [[コイワワラビー属]] {{Snamei||Peradorcas}}
***** [[イワワラビー属]] {{Snamei||Petrogale}}
***** [[クアッカワラビー属]] {{snamei||Setonix}} - クアッカワラビーのみ
***** [[ヤブワラビー属]] {{Snamei||Thylogale}}
***** [[オグロワラビー属]] 　{{Snamei||Wallabia}}

絶滅群は一部のみ。

==生態==
=== 行動 ===
[[ファイル:Kaenguru Hinterfuss-drawing.jpg|200px|thumb|カンガルーの後脚]]
後肢が発達しており、太い尾でバランスをとりながら跳躍することにより、四肢を使うよりも少ないエネルギー消費で、高速移動ができる。大型種であるアカカンガルーは跳躍により時速70kmほどのスピードを出すことができ、2km近くの距離を時速40kmで跳躍し続けることができる。また、移動距離も長く、発情期には100km/1日程度の移動も行う。またオオカンガルーの雌が時速64kmを出した記録がある<ref name="wildlife">Cath Jones & Steve Parish,Field Guide to Australian Mammals,Steve Panish Publishing,2004,pp. 106-145.</ref>。しかしながら、カンガルーは後退することができない。

大型のアカカンガルーは、両手を器用に繰り出して殴り合う[[ボクシング]]を行う。特に顕著なのは[[発情]]期で、雄は雌に寄り添い[[交尾]]の時機を伺いながら、周囲から近づく別の雄を攻撃するようになる。この際、上半身を大きく見せるポンピングを行い、それでも勝負が付かない場合には殴り合いになる。これがいわゆるカンガルーのボクシングである。

ボクシングというが、蹴りもつかう。尻尾で体を支えた両足での前蹴りで、人間ならば内臓破裂しかねない程の破壊力を持つ。

=== 食性 ===
食性は、ほとんどの種類で草の葉を食べる[[草食性]]だが、木の根や[[キノコ]]、[[昆虫]]を食べる種類もある。

=== 繁殖 ===
他の有袋類と同様、[[育児嚢]]（いくじのう）で子どもを育てる。実際の育児嚢の内側は非常に臭いと言う。

多くのカンガルーは繁殖環境のよい時にのみ繁殖を行う。繁殖に適さない環境の場合、雄は精子を作らない。繁殖に適した環境になると繁殖活動を開始する。

カンガルーの雌は交尾をするとすぐに出産するが、繁殖に適さない環境や、育児嚢に子供がいる間は受精卵が子宮へ着床するのを遅らせることにより、発生を遅らせることが出来る。

[[ファイル:Joey in pouch.jpg|thumb|200px|生まれたばかりの嬰児]]もし繁殖に適した環境が続いた場合、カンガルーの雌は再び交尾を行い、育児嚢の中にいる離乳前の子供と、育児嚢からは出ているが離乳前の子供、そしてさらにもう一つを[[胎芽]]の状態でとどめておくことができる。その時に袋で育てている子供が死ぬか、もしくは袋から出てしばらくすると発生が再開する。
新生児は1g程度もしくはそれに満たない、かつ未熟な状態で生まれる。生まれたての赤ちゃんは[[総排出腔]]から育児嚢の中へ自力で移動し、乳首を見つける。

完全に親離れする（袋に戻らなくなる）までに、オオカンガルーで通常で約44週間、長いと18ヶ月間かかることもある。種によるがおおむね30週間から40週間くらいである。

アカカンガルーの場合、約50%は2歳までに死亡し、90%は10歳になる前に死亡する。

== 人との関わり ==
===獣害と駆除===
[[ファイル:Western australia kan.jpg|thumb|200px|高速道路を横切るカンガルー]]
[[ファイル:Kangaroo Sign at Stuart Highway.jpg|thumb|150px|道路標識<br />「カンガルーに注意」]]
オーストラリアではカンガルーをはじめとする野生動物が突然道路に飛び出してくるため、自動車との衝突事故が多発している。事実、田舎の高速道路の道ばたには、カンガルーやその他野生動物の死体を見かけることが多い。このような事故から車体の損傷の被害を最小限に抑えるために[[バンパー]]を取り付ける車もあり、バンパーのことはルー・バー ([[:en:Roo bar|Roo Bar]]) と呼ばれている。

オーストラリアではいくつかの種が絶滅、あるいは絶滅の危機に瀕している中、一部のカンガルー類はその生息数を増やし続け、現在の生息数は主要な4種だけで5000万頭以上とも言われている<ref>{{Cite web|url=http://www.ypte.org.uk/animal/australian-wildlife-part-2/45|title=Australian Wildlife part 2|accessdate=2010-03-16|date=|author=Young People's Trust for the Environment}}</ref>。そのために、環境や農業へ被害を与えているともいわれ、特に近年は、[[旱魃]]の影響により、人の生活圏の側までカンガルーが進出してきたと問題になっている。これに対して、カンガルーの害によって[[ウール]]の生産量が落ちたとか、羊の放牧が制約されているという事実は確認できず、獣害の主張は科学的根拠がないとする研究もある<ref>{{Cite web|url=http://espace.library.uq.edu.au/view.php?pid=UQ:10246|title=Conservation Benefit from Harvesting Kangaroos: Status Report at the Start of a New Millennium - A Paper to Stimulate Discussion and Research|accessdate=2010-03-16|date=2002-01-01|author=Grigg, Gordon C.}}</ref>。

オーストラリア[[国防省]]は、2007年5月14日に旱魃の影響を受けた地域で野生のカンガルーによる深刻な被害が出たとして、[[キャンベラ]]近郊の軍用基地 2カ所で 3200 匹前後の駆除を発表したが、これに対し動物保護団体からは抗議の声が挙がった<ref>{{Cite web|url=http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-25964920070515|title=オーストラリア首都近郊でカンガルーの大量駆除を計画|accessdate=2009-01-25|date=2007年5月15日|author=ロイター}}</ref>。一度は撤回したものの、翌2008年5月に、オオカンガルー514頭が駆除された、王立動物虐待防止委員会 (RSPCA) を含む動物管理の専門家の協力で安楽死による駆除が実行されたものの、前述のとおり、動物保護団体や動物愛護運動家から猛反発が起きており、この際にも10人以上の動物愛護運動家が逮捕されるなどした<ref>{{Cite web|url=http://news.jams.tv/jlog/view/id-4091|title=カンガルー駆除終了 514頭が安楽死|accessdate=2009-01-25|date=2008年6月2日|author=A A P}}</ref>。

[[ファイル:Kangaroo meat supermarket.JPG|thumb|left|170px|スーパーで売られているカンガルー肉]]

=== 食用 ===
{{Main|カンガルー肉}}
一方で、一部のカンガルー類において個体数が増加し、環境や農業へ被害を与えている数種のカンガルーを対象に、年間300万頭前後が商業的に狩猟され<ref>{{Cite web|url=http://www.environment.gov.au/biodiversity/trade-use/wild-harvest/kangaroo/stats.html|title=Kangaroo and wallaby harvesting statistics|accessdate=2009-01-25|author=Department of the Environment, Water, Heritage and the Arts}}</ref>、その肉はオーストラリア国内での消費をはじめ、世界55国へ輸出されている<ref>{{Cite web|url=http://www.environment.gov.au/biodiversity/trade-use/publications/kangaroo/quotas-background-2009.html|title=2009 Commercial kangaroo and wallaby harvest quotas|accessdate=2009-01-25|author=Department of the Environment, Water, Heritage and the Arts}}</ref>。

オーストラリア国内では食用肉として[[バーベキュー]]や[[ステーキ]]、[[ソーセージ]]、[[ミンチ肉]]、[[ケバブ]]などの形で、大手スーパーの精肉コーナーで販売されて、消費されている。なお、カンガルーの肉はアボリジニの代表的な[[ブッシュ・タッカー]]として消費されてきた。

===カンガルーのキャラクター===
* [[ガルーラ]]
* [[ボクシング・カンガルー]]
* [[カンガルー・スキッピー]]　- カンガルーが主役のテレビドラマ   
* [[パタパタくん]]　- カンガルーの着ぐるみで人気のCMキャラクター   
* [[ブルーカンガルー]] - エマ・チチェスタークラーク作、まつかわまゆみ訳の絵本
* [[鉄拳の登場人物#ロジャー［Roger］|ロジャー]] - 鉄拳（ゲーム）の登場人物   
* のってカンガルー - [[日産自動車]]試乗キャンペーンのキャラクター
* [[西濃運輸]]　- カンガルー便の愛称で親しまれている

=== 象徴 ===
[[ファイル:RAAF Roundel.svg|thumb|140px|オーストラリアの[[国籍マーク]]]]
[[オーストラリアの国章]]に[[エミュー]]とともに描かれており、これらがオーストラリアの[[国獣]]とされる。オーストラリアを代表する動物として広く知られている。

=== 野生化の疑い ===
日本国内では野生種の存在は確認されていないが、2003年ごろから[[宮城県]][[大崎市]][[岩出山]]の真山地区周辺で、カンガルーらしき動物を目撃したとの報告が多数寄せられている<ref>[http://www.kahoku.co.jp/news/2009/11/20091126t15017.htm カ、カンガルー生息?!　大崎・岩出山のミステリー] 河北新報 2009年11月26日 06:10{{リンク切れ|date=2011年1月}}</ref>。正式な手続きを踏めば個人での飼育も可能なため、逃げ出した個体とも考えられるが、テレビの取材に答えた[[八木山動物園]]の飼育係の意見では、東北の気候での生存は難しいという。写真なども撮影されていないため真偽も不明であるが、目撃証言は2010年になっても寄せられており、同地区には誰かが設置したカンガルーの横断に注意を促す標識があるという<ref>[http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2707338/5465074 雪深い山里にカンガルー？宮城で目撃談相次ぐ] AFP 2010年3月9日閲覧</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 関連項目 ==
{{Wikispecies|Macropodidae|カンガルー科}}
{{Commons|Category:Macropodidae|カンガルー科}}
* [[有袋類]]
* [[オーストラリア]]
* [[バンパー#カンガルーバー|カンガルーバー]]

== 参考文献 ==
* Cath Jones & Steve Parish ''Field Guide to Australian Mammals'' Steve Panish Publishing 2004 pp.106-145

{{DEFAULTSORT:かんかるう}}
[[Category:有袋類]]
[[Category:カンガルー|*]]

{{Link FA|eu}}
{{Link GA|sv}}
{{Link FA|de}}