カメレオン科のソースを表示

{{Redirect|カメレオン}}
{{生物分類表
|省略 = 爬虫綱
|名称 = カメレオン科
|画像=[[ファイル:Chamaeleo.chamaeleon.bl1.jpg|250px|チチュウカイカメレオン]]
|画像キャプション = '''チチュウカイカメレオン''' ''Chamaeleo chamaeleon''
|目 = [[有鱗目 (爬虫類)|有鱗目]] {{Sname||Squamata}}
|亜目 = [[トカゲ亜目]] {{Sname||Sauria}}
|下目 = [[イグアナ下目]] {{Sname||Iguania}}
|科 = '''カメレオン科''' Chamaeleonidae
|学名 = Chamaeleonidae [[ジョン・エドワード・グレイ|Gray]], [[1825年|1825]]
|タイプ属 = [[カメレオン属]] {{Snamei||Chamaeleo}}
|下位分類名 = [[亜科]]
|下位分類 = * [[ヒメカメレオン亜科]] {{Sname||Brookesiinae}}
* [[カメレオン亜科]] {{Sname||Chamaeleoninae}}
}}
[[File:Tongue extension in the Three-horned Chameleon.jpg|thumb|230px|right|舌は非常に素早く体長以上に伸びる<ref>[http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140227001 ニュース - 動物 - 自然界の不思議な舌 - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト（ナショジオ）]February 27, 2014</ref>。詳しくは[[#外部リンク|外部リンク]]の動画を参照。]]
'''カメレオン科'''（カメレオンか、Chamaeleonidae）は、[[爬虫綱]][[有鱗目_(爬虫類)|有鱗目]]に属する科。体色を変化させ、舌を伸ばして虫を捕るなど、特異な爬虫類としてよく知られる。

== 概説 ==
カメレオン科は9-10[[属 (分類学)|属]]におよそ200[[種 (分類学)|種]]が属している。[[タイプ (分類学)|模式属]]は[[カメレオン属]] ({{Snamei|Chamaeleo}})。

トカゲの仲間に含まれる群ではあるが、一般に独自のものとして認識されている側面がある<ref>海老沼(2011)p.4-5</ref>。これは以下のような特徴がよく知られているためである。
*体色変化が得意で、背景の色に溶け込んで姿を見つけるのが難しい。
*両方の目をそれぞれ別個に動かすことが出来る。
*尾を巻くことが出来、それで木の枝に捕まることが出来る。
*舌を伸ばして虫を捕る。
もっともこれは必ずしも正しくなく、体色変化は種によって範囲が決まっているし、その変化も必ずしも環境だけによるわけでなく、個体の状態や環状によっても変化する。

一般的な関心が高く、ペットとして飼育されることもあるが、飼育は容易ではない。

== 形態 ==
最長種は[[ウスタレカメレオン]]で全長69センチメートル<ref name="fn3"/>。最小種は[[ミクロヒメカメレオン]]で、全長は最大でおよそ2.9センチメートル<ref>{{Cite journal
|last1 = Glaw
|first1 = F.
|last2 = Kohler
|first2 = J. R.
|last3 = Townsend
|first3 = T. M.
|last4 = Vences
|first4 = M.
|editor1-last = Salamin
|editor1-first = Nicolas
|year = 2012
|title = Rivaling the World's Smallest Reptiles: Discovery of Miniaturized and Microendemic New Species of Leaf Chameleons (Brookesia) from Northern Madagascar
|journal = PLoS ONE
|volume = 7
|issue = 2
|pages = e31314
|doi = 10.1371/journal.pone.0031314
|pmid = 
|pmc = 
}}</ref>、これは同時に陸上性の脊椎動物([[有羊膜類]])の中でも最小である(該当記事参照)。

体型は側扁し、重心が枝の上からずれずにバランスを取るのに役立つと考えられている<ref name="fn5"/>。全身の鱗は小型で、皮骨板や腹面の鱗に皮膚腺の出る孔がない<ref name="fn5"/>。体色を瞬時に変化させることができるが<ref name="fn5"/>、種により変化する色には限度がある<ref name="fn1"/>。変色能力はカメレオン亜科は高く、ヒメカメレオン亜科は低い傾向がある<ref name="fn1"/>。保護色の意味合いもあるが、変色する要素は主に生理的・心理的要因が大きい（例:興奮する、交尾を拒否する、体温を上昇させるなど）<ref name="fn1"/>。視覚だけではなく、皮膚が直接反応し変色する（体の一部を覆い強い光をあてると、覆った部分のみ変色する。眼を覆っても同様の結果が得られる。）<ref name="fn1"/>。

後頭部に隆起（冠、冠突起、カスク）があり、頭頂部の線状の隆起（頭頂稜）やその側部の隆起（側頭稜）からなる<ref name="fn1"/>。[[眼]]は大型で円錐形<ref name="fn5"/>。瞼は癒着し、鱗で覆われる<ref name="fn5"/>。左右の眼を別々に動かすことができ、前方の獲物に対し立体視することもできる<ref name="fn5"/>。カルンマカメレオン属のように頸部から肩にかけて左右にそれぞれ皮膚の膜（後頭葉、フラップ、ローブ）で覆われる種もいる<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。尾は細く、多くの種でものに巻きつけることができる（ナマクアカメレオン、ヒメカメレオン属などは尾が短いため物に巻きつける力が弱いか物に巻きつけることができない）<ref name="fn1"/><ref name="fn5"/>。尾は自切しない<ref name="fn1"/><ref name="fn5"/>。

四肢は細長い<ref name="fn5"/>。趾指は5本だが、前肢は内側の3本の指と外側の2本の指、後肢は内側の2本の趾と外側の3本の趾が癒合し二股になっている<ref name="fn1"/>。これにより木の枝を掴むことができる<ref name="fn1"/><ref name="fn5"/>。趾指の先には爪があり、枝に食い込ませることで体を支えることができる<ref name="fn1"/>。

== 分類 ==
系統的には[[アガマ科]]に近縁とされる。最古の化石記録は、[[ドイツ]]の[[バーデン＝ヴュルテンベルク州]]から出土した[[中新世]]のものである<ref>{{Paleodb|37888|Chamaeleonidae}}</ref>。

以下に現生種を示す。種数は Reptile database<ref>{{Cite web
|author = 
|title = Chamaeleonidae in reptile database
|url = http://reptile-database.reptarium.cz/advanced_search?taxon=Chamaeleonidae&submit=Search
|language = 英語
|accessdate=2012-10-31
}}</ref>による。
=== ヒメカメレオン亜科 Brookesiinae ===
* [[ヒメカメレオン属]] {{Snamei||Brookesia}} - 31種、マダガスカル
* [[カレハカメレオン属]] {{Snamei||Rhampholeon}} - 14種、熱帯アフリカ
* [[チビオカレハカメレオン属]]<ref>この和名は海老沼(2011)による。</ref> {{Snamei||Rieppeleon}} - 3種、東アフリカ

=== カメレオン亜科　Chamaeleoninae ===
* {{Snamei||Nadzikambia}} - 2種、東アフリカ
* {{Snamei||Kinyongia}} - 18種、主にケニア・タンザニア<!-- ハチノスカメレオン属にフィッシャーが含まれることになっていたが、ハチノスカメレオン属内の系統が異なると考えられていた東アフリカに分布する種が別属になったのならばフィッシャーカメレオンが含まれるのはこの新属 -->
* {{Snamei||Archaius}} - 1種、セイシェル<!-- トラフカメレオン -->
* [[ハチノスカメレオン属]] {{Snamei||Bradypodion}} - 17種、南アフリカ
* [[カルンマカメレオン属]] {{Snamei||Calumma}} - 32種、マダガスカル
* [[カメレオン属]] {{Snamei||Chamaeleo}}
** [[カメレオン亜属]] {{Snamei||Chamaeleo}} - 14種。アフリカ・南欧・アラビア半島。
** [[ミツヅノカメレオン亜属]] {{Snamei||Trioceros}} - 42種、熱帯アフリカ
* [[フサエカメレオン属]] {{Snamei||Furcifer}} - 21種、マダガスカル

== 分布 ==
[[アフリカ大陸]]、[[ユーラシア大陸]]南西部、[[コモロ]]、[[スリランカ]]、[[セーシェル]]（トラフカメレオン）、[[マダガスカル]]<ref name="fn1">千石正一「カメレオンの分類 第1回」、『クリーパー』第8号、クリーパー社、2001年、32-33頁。</ref><ref name="fn2">千石正一「カメレオンの分類 第2回」、『クリーパー』第9号、クリーパー社、2001年、24-30頁。</ref><ref name="fn3">千石正一「カメレオンの分類 第3回」、『クリーパー』第12号、クリーパー社、2002年、4-11頁。</ref><ref name="fn4">千石正一「カメレオンの分類 第4回 ～ミツヅノカメレオン亜属(Triceros)～」、『クリーパー』第16号、クリーパー社、2003年、48-51頁。</ref><ref name="fn5">深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、[[平凡社]]、[[1986年]]、109-110、122頁。</ref>

== 生態 ==
主に[[森林]]に生息する<ref name="fn5"/>。ほとんどは樹上性で、地上を歩行するのはうまくない。しかし[[ヒメカメレオン亜科]]や[[ナマクアカメレオン]]は地表棲で、後者は[[砂漠]]に生息する<ref name="fn1"/><ref name="fn2"/>。動きは緩怠で木の葉などに擬態する効果もあると考えられ、驚いた際に四肢を樹上から離し自ら下の樹上や地表に落下する種もいる<ref name="fn5"/>。オス同士では角を突き合わせる、噛みつくなどして争う<ref name="fn5"/>。

[[食性]]は動物食で、主に[[昆虫]]を食べるが、大型種は[[鳥類]]、[[哺乳類]]も食べる<ref name="fn5"/>。[[エボシカメレオン]]は補助的に[[葉]]や[[果実]]などの植物質も摂取する。

繁殖形態は主に卵生だが、カメレオン属やヒメカメレオン属には[[胎生]]の種もいる<ref name="fn4"/><ref name="fn5"/>。

[[ラボードカメレオン]]は、約9か月間を卵で過ごした後、孵化して2か月で成熟して繁殖し、4-5か月で死ぬ<ref>Kristopher B. Karsten, Laza N. Andriamandimbiarisoa, Stanley F. Fox, and Christopher J. Raxworthy, "A unique life history among tetrapods: An annual chameleon living mostly as an egg", ''PNAS'' '''105''', 8980-8984 (2008). {{doi|10.1073/pnas.0802468105}}</ref>。これは2008年時点で知られている[[四肢動物]]としては最も短い[[寿命]]といわれる。

== 人間との関係 ==
開発による生息地の破壊、[[ペット]]用の乱獲などにより生息数が減少している種もいる。[[コノハカメレオン属]]を除いた全ての属が属単位で[[絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約|ワシントン条約]]に掲載され、[[ロゼッタカメレオン]]はワシントン条約附属書Iに掲載されている。

ペットとして飼育されることもあり、[[日本]]にも輸入されている。主に野生個体が流通するが、一部の種では飼育下繁殖個体も流通する。
=== ペットとして ===
カメレオンは珍奇な姿、興味深い習性などもあってペットとしての需要はかなり高い。しかしながら、飼育はかなり困難であり、その配慮すべきポイントはかなり独特である<ref>以下海老沼(2011)</ref>。

かつては飼育がきわめて困難であるとの認識があり、『「飼うべき生き物でない」「繁殖はおろか長期飼育すら難しい」と言われてきた』ものである<ref>海老沼(2011),p.215</ref>が、その後飼育法が次第に確立し、現在ではそこまで言われることはない。

カメレオン飼育の困難さは、一般の爬虫類飼育の苦労とはかなり異なるところにある。以下にその幾つかを紹介する。

*生き餌しか食べないこと。生きた昆虫を常時確保する必要がある。慣れれば肉等を食ってくれるものもおり、またエボシカメレオンなどは植物質も食べるが、ほとんどのものは生きて動くものを与える必要がある。しかも、同一のものだけを与えていると飽きて食べなくなったり栄養バランスが崩れたりしやすい。これは[[ヨーロッパイエコオロギ]]などが餌昆虫として導入されたことで大きく解消されてはいる。

*容器から水を飲まない。動くものしか認識しないのは水にも適用され、葉の表面できらめく水滴や水面が揺らめいているものからしか飲まない。従って、水を与えるためには霧吹きするか、しずくが常時垂れるような装置をつけるか、あるいは水を入れた容器にエアレーションをしかけ、動かすなどの工夫が必要となる。これらは樹上性爬虫類広範の飼育する際に共通する部分もあるが、カメレオンは水不足になると舌を伸ばし、餌を捕らえるのが難しくなるので、他の爬虫類より水不足が深刻となりやすい。

*環境の管理が難しい。熱帯性の動物であるため、耐寒性が低いのは当然であるが高温にも弱いものが多い。さらに高地に生息する種の場合、多湿かつ通風性を確保し、なおかつ低温で飼育することが求められる。いずれにせよ、日本の気候では年間を通じてエアコン稼働が望ましい。また、上から見下ろされるとストレスを感じるので飼育者の目の高さ以上に設置する必要がある。またカメレオンから見えるところに他の個体、別のペット、餌昆虫などが見えるとそれもストレスになる。

=== 名称について ===
カメレオンという語はギリシャ語の khamai （小さな）と leon （[[ライオン]]）とされ、おそらく頭部周辺の発達した形状や体を膨らませて威嚇する様子をライオンに見立てたものとされる<ref>海老沼(2011)p.4</ref>。

漢字では「'''避役'''」と書く。これは、古代[[中国]]でカメレオンと同じく姿を消すことができるとされた幻獣の「避役」が由来となっている。なお、中国では「避役」の他に「'''変色竜'''」（{{繁体字|變色龍}}、{{簡体字|变色龙}}）とも呼ばれる。

===文化的側面===
目立つ特徴があること、それに１種はヨーロッパにも分布することから古くから広く知られ、関心を持たれてきた。枝の上でじっと動かず、目だけを動かして周囲を観察する様から[[賢者]]に喩えられることもある。[[錬金術]]等では熟慮や賢者のシンボルとされた。体色が大きく変化することから、変幻著しいことをカメレオンに喩えることもある。

== 参考文献 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
*海老沼剛、『爬虫・両生類パーフェクトガイド　カメレオン』、(2011)、誠文堂新光社

== 関連項目 ==
{{Wikispecies|Chamaeleonidae}}
{{Commonscat|Chamaeleonidae}}
* [[トカゲ]]

==  外部リンク==
; カメレオンの生態
* [http://www.nationalgeographic.co.jp/video/video_title.php?category=1&embedCode=tnZDExOlKlSsD42H7-XWE8TwJ9V01s86　（動画）出産から捕食まで] - ナショナルジオグラフィック （日本語）
; カメレオンの捕食
*{{youtube|jFAWiXduDNU|（動画）スロー撮影の餌取り}} - 製作：[[安倍吉俊]]（イラストレーター、漫画家）

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[[Category:カメレオン科|*]]

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