オリバー・クロムウェルのソースを表示

{{Otheruses|イングランドの護国卿|小説『ゼロの使い魔』の登場人物、オリヴァー・クロムウェル|ゼロの使い魔の登場人物#アルビオン王国の王族・関係者}}
{{大統領
| 人名=オリバー・クロムウェル
| 各国語表記=Oliver Cromwell
| 画像=Cooper, Oliver Cromwell.jpg
| 代数=
| 職名=護国卿（Lord Protector）
| 国名={{ENG1649}}
| 副大統領職=
| 副大統領=
| 就任日=[[1653年]][[12月16日]]
| 退任日=[[1658年]][[9月3日]]
| 出生日=[[1599年]][[4月25日]] 
| 生地={{ENG927}}、{{仮リンク|ハンティンドンシャー|en|Huntingdonshire}}[[ハンティンドン]]
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| 死亡日={{死亡年月日と没年齢|1599|4|25|1658|9|3}}
| 没地={{ENG1649}}、[[ホワイトホール (ロンドン)|ホワイトホール]]
| 配偶者=エリザベス・バウチャー
| 政党=独立派
| サイン=Oliver Cromwell Signature.svg
}}
'''オリバー・クロムウェル'''（{{lang-en|Oliver Cromwell}}, [[1599年]][[4月25日]] - [[1658年]][[9月3日]]）は、[[イングランド]]の[[政治家]]、[[軍人]]、[[イングランド共和国]]初代[[護国卿]]。[[鉄騎隊]]を指揮して[[エッジヒルの戦い]]や[[マーストン・ムーアの戦い]]で活躍し、'''{{仮リンク|ニューモデル軍|en|New Model Army}}'''（'''新模範軍'''）の副司令官となる。[[ネイズビーの戦い]]で国王[[チャールズ1世 (イングランド王)|チャールズ1世]]をスコットランドに追い、議会派を勝利に導いた。護国卿時代には独裁体制をしいた。

== 生涯 ==
[[イングランド]]東部・{{仮リンク|ハンティンドンシャー|en|Huntingdonshire}}の[[ピューリタン]]であり[[ジェントリ]]階級の地主の家庭に生まれる。大伯父に[[ヘンリー8世_(イングランド王)|ヘンリー8世]]の元で「行政革命」を実施した政治家[[トマス・クロムウェル]]を持つ名家であった。[[ケンブリッジ大学]]で学び、[[1628年]]に[[庶民院]]議員となる。[[1629年]]の議会解散後、また故郷に帰って[[治安判事]]となり、[[1631年]]に土地を売って[[セント・アイヴズ]]に移り牧場を経営したが、[[1638年]]に[[エリー]]に移った。

===議会軍の鉄騎隊===
[[File:Elizabeth Bourchier.jpg|thumb|180px|クロムウェルの妻エリザベス<br />1620年に結婚した。]]
クロムウェルは[[1640年]]の[[短期議会]]及び[[長期議会]]には[[ケンブリッジ]]から選出された。[[清教徒革命]]では[[円頂党|議会派]]に属した。

*1642年10月23日、[[エッジヒルの戦い]]での敗戦直後、クロムウェルは議会軍の大佐[[ジョン・ハンプデン]]に「酒場の給仕や職人の軍隊で上流人士の騎士たちと戦を続けることは難しい。これからは信者の軍をつくらなければならない」と語った。王軍に対抗してノーフォーク、ケンブリッジなど5州が連合した東部連合にクロムウェルは手勢1,000名余を引き連れて参加した。この連隊はクロムウェルが私財1,100～1,200ポンドを投じてつくった。教派にこだわらず、キリスト教徒であれば誰でも連隊で用いられた。[[ジェントリ]]、[[ヨーマン]]が中心であった。このクロムウェルの連隊は、[[鉄騎隊]]とよばれた。これは後の{{仮リンク|ニューモデル軍|en|New Model Army}}（新模範軍）の中核となった。エッジヒルの戦い後、国王軍は[[オックスフォード]]に本拠をおき北部・西部を抑え、議会軍はロンドンを拠点に南部・東部を支持基盤とした。

*[[1643年]][[10月11日]]{{仮リンク|ウィンスビーの戦い|en|Battle of Winceby}}では「[[詩篇]]を歌い感謝しつつ」突撃し、[[リンカンシャー]]から王党を一掃した。その後ヨークシャーやニューベリーなどで中小規模の戦いが続いたが、[[1643年]]の間は大勢としては国王軍有利に進み、国王軍は何度もロンドンを窺う情勢にあった。

====国王軍と議会軍の比較====
議会軍が劣勢だった理由は、その編成にあったといわれる。国王軍は正式に令状が出されて集められ、訓練・戦闘経験を積んだ者も多かったいっぽう、議会軍は民兵を主力とする混成部隊だった。民兵は地方意識が強く、国全体のこととなると士気を高くもてなかった。また、装備・訓練・実戦経験において貴族の率いる国王軍に及ばなかった。特に[[アドウォルトン・ムーアの戦い]]ではその弱体さが際立った。後にクロムウェルは当時を顧みて、民兵の混成部隊だった議会軍を「よぼよぼの召使いや給仕やそんな連中」と述懐している。

===ニューモデル・アーミーの創設まで===
[[1644年]][[7月2日]][[マーストン・ムーアの戦い]]で[[カンバーランド公]][[ルパート (カンバーランド公)|ルパート]]の騎兵と直面し、潰走させて武名をあげた。しかし議会軍全体はまだ弱く、全面攻勢をかけるほどの力はなかった。
{{Main|マーストン・ムーアの戦い}}

はかばかしくない戦況に議会派は軍の再編を急いで進めた。東部の諸州が連合してつくられた東部連合軍をはじめ、西部連合軍なども編成され、議会軍の組織化が進んだ。これらの再編によってただちに議会軍が精強になったわけではなく、軍の内外で様々な問題をかかえていた。議会内の見解の一致がとれていないことや、革命の目指す方向がないことなどがその主な理由であった。クロムウェルは当時、東部連合軍の騎兵隊長であった。

1645年頃には、議会軍は、軍隊の編成改革を行い、新編成軍をニューモデル・アーミーとした。クロムウェルはニューモデル軍結成にあたって副司令官となった。[[:en:New Model Army|New Model Army]]を参照。

1645年6月14日の[[ネイズビーの戦い]]では、議会軍は左翼に[[ヘンリー・アイアトン]]少将、右翼にクロムウェル中将が布陣した。クロムウェル[[鉄騎隊]]は、激しい攻撃によってじりじりと国王軍を押し返した。鉄騎隊が国王本隊に迫りつつあり、チャールズは親衛隊を割いて鉄騎隊を追い払おうとした。ところがこの命令が誤って伝わり、親衛隊は後退してしまった。クロムウェルはこの隙を見逃さず、チャールズの歩兵連隊を壊滅させた。いっぽう左翼でもアイアトンの部隊が攻め、国王軍は左右から挟撃され、国王軍は総崩れとなった。この戦いによって、国王軍は壊滅的な損害を被った。議会派はこの勝利をイングランド中に宣伝し、勝利を印象づけた。兵糧や大砲は議会軍に接収され、国王軍の再建は事実上不可能となった。内戦はさらに1年続いたが、国王軍は劣勢を逆転することはできず、チャールズはスコットランドに亡命を余儀なくされた。
{{Main|ネイズビーの戦い|イングランド内戦}}

===コモンウェルス成立===
[[ファイル:Oliver Cromwell by Robert Walker.jpg|thumb|180px|ロバート・ウォーカーによる肖像画（1649年）]]
内乱の終結後議会は軍の解散を求めるが、クロムウェルは議会派の中でも国王との妥協を赦さない{{仮リンク|独立派 (宗教)|en|Independent (religion)|label=独立派}}に属し、妥協を求める[[長老派教会|長老派]]と対立しており、長老派を追放したクロムウェルは独立派議員による議会を主導、[[1648年]]に再び決起したチャールズ1世を処刑し、[[1649年]]5月に[[イングランド共和国]]（コモンウェルス）を成立させた。

共和国の指導者となったクロムウェルは、急進的な{{仮リンク|平等派|en|Levellers}}（水平派とも）を弾圧、中産市民の権益を擁護する姿勢を取るようになる。[[重商主義]]に基づいた政策を示し、同時に貴族や教会から没収した土地の再分配を行った。

===アイルランド併合とスコットランド侵攻===
[[カトリック教会|カトリック]]の[[アイルランド]]や[[スコットランド]]は1649年から[[1651年]]にかけて反議会派の拠点であった。クロムウェルは総司令官兼総督に任ぜられて侵攻を始め、1649年[[ダブリン]]に上陸、続いて[[ドラハダ]]、[[ウェックスフォード]]を攻め、各地で住民の虐殺を行う（[[クロムウェルのアイルランド侵略]]）。アイルランドはクロムウェルの征服により、以後はイングランドの植民地的性格が強い土地となる。

[[1650年]]に後事を婿の[[ヘンリー・アイアトン]]に託して帰英し、チャールズ1世の皇太子チャールズ（後の[[チャールズ2世 (イングランド王)|チャールズ2世]]）がスコットランドに上陸したのを討つため、7月に[[トーマス・フェアファクス|フェアファックス]]に代わり総司令官としてスコットランドに遠征、1650年[[9月3日]]の{{仮リンク|ダンバーの戦い (1650年)|en|Battle of Dunbar (1650)|label=ダンバーの戦い}}で王党派を蹴散らし、翌1651年9月3日の{{仮リンク|ウスターの戦い|en|Battle of Worcester}}でチャールズ率いるスコットランド軍も撃破、チャールズを大陸に追いやった。

[[ファイル:Oliver Cromwell - Statue - Palace of Westminster - London - 240404.jpg|thumb|120px|[[ウェストミンスター宮殿]]前のクロムウェル像]]
1651年の「クロムウェル航海法」とよばれる[[航海条例]]の制定には、クロムウェル自身は関わっていない。しかしこれが議会を通過したことによって[[ネーデルラント連邦共和国|オランダ]]の[[中継貿易]]を制限することになり、[[1652年]]の{{仮リンク|第一次英蘭戦争 (英蘭戦争)|en|First Anglo-Dutch War|label=第一次英蘭戦争}}（[[英蘭戦争]]）の引き金になった。

===護国卿として===
中産市民は[[騎士党|王党派]]による[[反革命]]の可能性もあったため、クロムウェルの事実上の独裁を支持した。クロムウェルは[[1653年]]に議会を解散させて終身[[護国卿]]（護民官）となり、次のような対外政策を展開した。[[1654年]]にオランダと講和し（{{仮リンク|ウェストミンスター条約 (1654年)|en|Treaty of Westminster (1654)|label=ウェストミンスター条約}}）、[[スウェーデン]]、[[デンマーク]]、[[ポルトガル]]と通商条約を結ぶとともに、[[スペイン]]に対する攻撃を開始し（{{仮リンク|英西戦争 (1654年-1660年)|en|Anglo-Spanish War (1654–1660)|label=英西戦争}}）、[[ウィリアム・ペン (イングランド海軍)|ウィリアム・ペン]]率いる艦隊を[[イスパニョーラ島]]に派遣、[[1655年]]に[[ジャマイカ]]を占領し、同年[[フランス王国|フランス]]と和親通商条約を結び、[[1657年]]に同盟条約に発展させ、[[1658年]]の{{仮リンク|フランス・スペイン戦争 (1635年-1659年)|en|Franco-Spanish War (1635–1659)|label=フランス・スペイン戦争}}（西仏戦争）では、{{仮リンク|砂丘の戦い (1658年)|en|Battle of the Dunes (1658)|label=砂丘の戦い}}で英仏連合軍がスペインに勝利、[[ダンケルク]]を占領した。

一方、国内においては成文憲法である「{{仮リンク|統治章典|en|Instrument of Government}}」に基づき1654年に招集した{{仮リンク|第一議会|en|First Protectorate Parliament}}を1655年1月には解散させ、全国を11軍区に分けて軍政長官を派遣し、純然たる軍事的独裁を行った。[[1656年]][[9月17日]]、{{仮リンク|第二議会|en|Second Protectorate Parliament}}。議会によって国王への就任を2度にわたって望まれるが、これを拒否して護国卿の地位のまま統治にあたった。[[1657年]]に[[ユダヤ人]]の追放を解除し、これによって[[1290年]][[7月18日]]の[[エドワード1世 (イングランド王)|エドワード1世]]による{{仮リンク|追放布告|en|Edict of Expulsion}}以来350年ぶりにユダヤ人が帰還した。

1658年にクロムウェルは[[インフルエンザ]]で死亡し、ウエストミンスター寺院に葬られた。跡を継いだ息子の[[リチャード・クロムウェル]]はまもなく引退し、護国卿政は短い歴史に幕をおろした。

===死後の評価===
[[File:WarwickCastle CromwellDeathmask.JPG|thumb|160px|クロムウェルの[[デスマスク]]]]
その後、長老派が1660年にチャールズ2世を国王に迎えて[[王政復古 (ヨーロッパ)|王政復古]]を行うと、クロムウェルはすでに死亡していたアイアトンや国王裁判において裁判長を務めた{{仮リンク|ジョン・ブラッドショー|en|John Bradshaw (judge)}}とともに反逆者として墓を暴かれ、遺体はタイバーン刑場で絞首刑ののち斬首され、首は[[ウェストミンスター宮殿|ウェストミンスター・ホール]]の屋根に掲げられて四半世紀晒された。その後、クロムウェルの首は何人かの所有者を経て、現在では母校であるケンブリッジ大学の{{仮リンク|シドニー・サセックス・カレッジ|en|Sidney Sussex College, Cambridge}}に葬られている。

リチャードは亡命し、1680年ごろにこっそりと帰国している。クロムウェルの死後、数百年経った今も、類稀な優れた指導者か強大な独裁者か、歴史的評価は分かれている。

[[ウェストミンスター宮殿]]正門前に、鎧姿で剣と聖書を持ったクロムウェルの銅像がある。

== 家族 ==
[[1620年]]、ロンドンで[[w:Elizabeth Cromwell|エリザベス・バウチャー]]と結婚、9人の子を儲けた。
#ロバート（1621年 - 1639年）
#オリバー（1622年 - 1644年）
#ブリジット（1624年 - 1681年） - [[ヘンリー・アイアトン]]と結婚、次いで{{仮リンク|チャールズ・フリートウッド|en|Charles Fleetwood}}と再婚
#[[リチャード・クロムウェル|リチャード]]（1626年 - 1712年） - 国会議員、[[護国卿]]
#ヘンリー（1628年 - 1674年） - [[アイルランド]]軍最高司令官
#エリザベス（1629年 - 1658年） - {{仮リンク|ジョン・クレイポール|en|John Claypole}}と結婚
#ジェームズ（1632年）
#メアリー（1637年 - 1713年）- {{仮リンク|トマス・ベラシス(初代フォーコンバーグ卿)|en|Thomas Belasyse, 1st Earl Fauconberg}}と結婚
#フランシス（1638年 - 1720年） - {{仮リンク|ロバート・リッチ (第3代ウォーウィク卿)|en|Robert Rich, 3rd Earl of Warwick}}と結婚、次いで{{仮リンク|ジョン・ラッセル (準男爵)|en|Sir John Russell, 3rd Baronet|label=ジョン・ラッセル}}と再婚

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== 関連項目 ==
*[[ジョージ・フォックス]]
*[[サミュエル・モーランド]]
*[[ロイヤルメール]]
*[[クロムウェル (映画)]] （[[1970年]] 監督：[[ケン・ヒューズ]]）
*[[クロムウェル〜英国王への挑戦〜]] （[[2003年]] 監督：[[マイク・バーカー]]）

{{先代次代|[[File:Flag of The Commonwealth.svg|25px]] [[護国卿]]|初代：1653年 - 1658年|新設|[[リチャード・クロムウェル|リチャード・クロムウェル]]}}
{{先代次代|[[File:Flag of The Commonwealth.svg|25px]] [[イギリス君主一覧|元首]]|1653年 - 1658年|[[チャールズ1世 (イングランド王)|チャールズ1世]]|[[リチャード・クロムウェル|リチャード・クロムウェル]]}}

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[[Category:イングランド史の人物]]
[[Category:スコットランド史の人物]]
[[Category:アイルランド史の人物]]
[[Category:ピューリタン]]
[[Category:重商主義の人物]]
[[Category:郵便に関する人物]]
[[Category:革命家]]
[[Category:清教徒革命]]
[[Category:ケンブリッジシャー出身の人物]]
[[Category:1599年生]]
[[Category:1658年没]]
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