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'''エッチング''' (etching) とは、[[化学薬品]]などの[[腐食]]作用を利用した[[塑形]]ないし[[表面処理|表面加工]]の技法。使用する素材表面の必要部分にのみ[[防食]]処理を施し、腐食剤によって不要部分を溶解侵食・食刻することで目的形状のものを得る。 銅版による[[版画]]・[[印刷]]技法として発展してきた歴史が長いため、[[銅]]や[[亜鉛]]などの金属加工に用いられることが多いが、腐食性のあるものであれば様々な素材の塑形・表面加工に応用可能である。 金属の試験片を腐食液([[ナイタール]]など)によって表面を腐食することで、金属組織の観察や検査などに用いられている。 == フォトエッチング == [[光硬化樹脂]]にパターンを露光する事でマスキングする。現在、大半のマスキングに用いられる。 == 版画・印刷 == 防食処理を施した銅板の表面を針で削り、その後腐食させることで[[凹版]]を得るのに使用する。腐食作用を通じて間接的に版を加工するので、凹版画技法のなかではさらに、[[版画#エッチングとアクアチント(間接法)|間接法]]に分類される。直接銅板に線を彫っていく[[版画#エングレービングとドライポイント(直接法)|直接法]]よりも線を意のままに描きやすい。詳しくは[[版画]]を参照。 == 電子回路 == [[プリント基板]](Printed Circuit Board)の作成に用いられる。近年は細密化多層化している。銅箔のエッチング時の化学反応は以下のとおりである。 塩化鉄(III)の3価の鉄イオンが銅に電子を与えられて2価になり、銅は最終的に銅(Ⅱ)イオンになる。塩化鉄(III)は塩化鉄(II)になる。 :<math>\rm FeCl_3 + Cu \longrightarrow FeCl_2 + CuCl</math> :<math>\rm FeCl_3 + CuCl \longrightarrow FeCl_2 + CuCl_2</math> == 金属加工 == [[プレス加工|プレス]]などでは難しい複雑な加工のためにエッチングが応用されている。携帯電話等、電子機器に使用されている[[プリント基板]]、[[集積回路|IC]]のリードフレームや電気カミソリの網刃、カラー[[ブラウン管|CRT]]の[[シャドーマスク]]などの厚さ数十から数百μmの金属板材部品などを製造する技術もある。この方法で作製される模型のパーツは[[エッチングパーツ]]と呼ばれる。銅合金のエッチングには[[塩化第二鉄]]水溶液を使用する。塩化第二鉄が電子を銅に与える事によって銅をイオン化する。塩化第二鉄は塩化第一鉄になる。プレスで打ち抜くと加工工程で塑性変形する為に残留応力が残るが、エッチングであれば残留応力が残らない。但し、[[圧延]]工程において板金内部に残留応力が残っている場合は片面がエッチングされた場合、内部の残留応力バランスが崩れて反る場合がある。対策としては加熱して焼き鈍し等によって残留応力を事前に除去する。 [[JIS規格]]では[[熱処理]]した鉄鋼材料のエッチングによる組織試験法が規定されている。 == 半導体工学 == [[半導体工学]]分野では、[[フォトリソグラフィ]]として[[ウェハー]]などの[[半導体]]上の薄膜を形状加工する技術に応用されている。半導体ウェハー上に酸化膜等の薄膜を形成し、[[フォトレジスト]]を塗布してパターンを露光した後にエッチングにより不要な薄膜を除去する。エッチングの手法としては、[[フッ化水素|弗酸]]などの液体を使用する[[ウェットエッチング]]と、[[四フッ化炭素]]などのガスを使用する[[ドライエッチング]]が有る。半導体の微細化において結晶構造による特性を利用して異方性エッチングを用いる場合もある。近年では[[MEMS]]の製造にも用いられる。 同様に[[プリント基板]]の配線形成のため導体(主に銅箔)を除去するための工程として用いられる。エッチング液としては[[塩化鉄(III)|塩化第二鉄]]などが用いられる。 ==異方性エッチング== 結晶構造の違いによる縦横の反応性の違いを利用して縦横比の大きい構造を形成する技術である。反応に用いる薬剤は反応性が弱い種類を使用する為、処理に時間がかかる。綿密に濃度、温度の管理をする必要がある。 == その他 == [[ガラス]]へのエッチングを利用した装飾技法として[[エッチンググラス]]がある。日本ではこの技法は明治時代に国費留学生の宇野澤辰美がステンドグラス技法と共に持ち帰った技術がその始まり。その後、昭和初期から大阪や東京で板ガラスへの作品が作られ、百貨店等に施工される事例が多く見られるようになった。1933年(昭和8年)建築の村野藤吾設計のそごう百貨店本店(大阪・心斎橋)の1階正面欄間・エントランスドアーが有名で平成12年に建て替えられるまで60余年使われていた。戦前では高島屋グランドフロアや丸物百貨店や大阪証券取引所ビルでも使用された。今日では公共建築物やホテル・住宅等あらゆる建築物を飾るようになりガラス装飾技法の中心となっている。 一方、1960年代頃から欧米のアーツアンドクラフト運動の影響で日本でもクラフトブームが到来し、趣味の分野でのエッチングのガラスへの応用も多く 見られるようになっている。 歯面の[[脱灰処理]]も[[エッチング]]という。歯科領域におけるエッチングの目的は、 # [[窩洞]]形成後の[[窩洞]]表面に付着した汚染物の除去 # 切削により形成される[[スミヤー層]]の除去 である。 == 廃液処理 == エッチング後の廃液には[[重金属]]が含まれており、処理剤や[[電気分解]]によって回収する。 == シミュレーションソフトウェア == * SUGAR * MCROCAD * AnisE (IntelliSense社)[http://www.ad-tech.co.jp/modules/tinyd0/content/index.php?id=62] * IntelliEtch (IntelliSense社) {{DEFAULTSORT:えつちんく}} [[Category:版画]] [[Category:半導体製造]] [[Category:表面処理]]
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