アルカトラズ島のソースを表示

{{Otheruses|サンフランシスコの監獄島|[[グラハム・ボネット]]を中心に結成されたバンド|アルカトラス}}
{{Infobox Protected area
| name = Alcatraz Island
| iucn_category = V
| photo = Alcatraz dawn 2005-01-07.jpg
| photo_caption = 夜明けのアルカトラズ島（2005年）
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}}{{Infobox nrhp
| name =アルカトラズ島
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| built =1847年
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| architecture= ミッション/スパニッシュ・リバイバル
| designated_nrhp_type=1986年1月17日<ref name="nhlsum">{{cite web|url=http://tps.cr.nps.gov/nhl/detail.cfm?ResourceId=1595&ResourceType=District | title = Alcatraz Island |accessdate=2007-10-22|work=National Historic Landmark summary listing|publisher=National Park Service}}</ref> 
| added =1976年6月23日<ref name="nris">{{cite web|url=http://www.nr.nps.gov/|title=National Register Information System|date=2007-01-23|work=National Register of Historic Places|publisher=National Park Service|accessdate=2010-02-27}}</ref>
| governing_body = アメリカ合衆国国立公園局
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}}
''' アルカトラズ島'''（アルカトラズとう、{{Lang-en-short|Alcatraz Island}}）は、[[アメリカ合衆国]][[カリフォルニア州]]の[[サンフランシスコ湾]]内、[[サンフランシスコ]]市から2.4kmのところに浮かぶ、面積0.076km&sup2;の小島である。昔は[[灯台]]、軍事要塞、軍事監獄、そして1963年まで連邦刑務所として使用され、'''ザ・ロック'''、'''監獄島'''とも呼ばれている。1972年、国立レクリエーション地域となり、1976年及び1986年にランドマークの指定を受けた。

現在、この島は、[[アメリカ合衆国国立公園局]]が運営する[[ゴールデンゲート国立レクリエーション地域]]の歴史地区となっており、一般観光客に公開されている。観光客は、サンフランシスコの[[フィッシャーマンズワーフ (サンフランシスコ)|フィッシャーマンズワーフ]]近くのピア33からフェリーで島に渡ることができる。

[[カモメ]]を始めとした海鳥の生息地としても知られる。

== 歴史 ==
=== 前史・軍事要塞時代 ===

[[1775年]]、スペイン人のフアン・デ・アヤラがこの島を発見し、サンフランシスコ湾の海図を作るときにこの島に "La Isla de los Alcatraces" と名づけた。スペイン語で「ペリカンの島」という意味である<ref>{{Cite web |url=http://www.alcatrazhistory.com/rs1.htm |title=Alcatraz History |publisher=Ocean View Publishing Company |accessdate=2010-02-05 }}</ref>。これがやがて英語風に短縮されて "Alcatraz" となった<ref name="nps_post">{{Cite web |url=http://www.nps.gov/alca/historyculture/the-post-on-alcatraces.htm |title=The Post on Alcatraces |date=2007-10-18 |accessdate=2010-02-06 }}</ref>。

[[メキシコ]]による[[カリフォルニア]]統治時代の終わりころ、メキシコ政府から、ジュリアン・ワークマンという帰化メキシコ人に、島に灯台を建設する条件で島の所有名義が譲渡された記録がある。[[米墨戦争]]（1846年 - 1848年）中にアメリカがカリフォルニアの支配権を得ると、[[ジョン・C・フレモント]]が、「カリフォルニア総督」としての資格でこの無人島を購入した。しかし、1850年、[[ミラード・フィルモア]]米大統領の命により、メキシコ政府の所有物はアメリカ政府に承継されたとの根拠に基づき、島は軍事目的のために取り上げられた。このため、フレモントによる島の購入は無意味になってしまい、フレモント及びその相続人から政府に対して何度も訴訟が起こされ、法的紛争は1890年代まで続いた<ref name="nps_SFBay">{{Cite web |title=Alcatraz |url=http://www.nps.gov/history/Nr/travel/wwIIbayarea/alc.htm |publisher=National Park Service |accessdate=2010-02-05 }}</ref>。

1848年、[[シエラネバダ山脈 (アメリカ合衆国)|シエラネバダ山脈]]の麓で金が発見されて[[ゴールドラッシュ]]が始まり、[[サンフランシスコ]]は多くの船が寄港する重要な地となり、[[灯台]]が至急必要になった。1850年の[[アメリカ合衆国議会|連邦議会]]予算に、アルカトラズ島を含む太平洋岸の八つの灯台建設が盛り込まれた。1852年に、島で最初の恒久的建造物となる灯台ができた。1853年には、ゼラス・B・タワー中尉が、アルカトラズ島をサンフランシスコ湾の守りとするための要塞化工事に着手した。[[南北戦争]]（1861年 - 1865年）の直前までに、86門の大砲が島を巡らすように設置された。南北戦争中は、アルカトラズ島は[[南部連合]]のサンフランシスコ湾への侵入を防ぐ役割を果たした<ref name="nps_SFBay" />。

南北戦争が終わると、島に設置された旧式の大砲は時代遅れになってしまったため、徐々に撤去された。それに代わって、防弾壁が島を取り囲むように建てられた。内部には弾薬庫などが設けられていた<ref name="nps_post" />。

=== 軍事刑務所化 ===
南北戦争の前後から、島は[[監獄]]としての役割も果たすようになった。地下の留置場に、島内や周囲の砦から送られた脱走兵、窃盗犯、酔っ払いなどが収容された。1861年、アルカトラズ島は太平洋省の軍事刑務所として正式に指定された。南北戦争中には、反逆罪で捕らえられた南部連合派のカリフォルニア市民もここに収監された。収容者は増加し、1863年ころロウアー・プリズン (Lower Prison) と呼ばれる刑務所棟が建てられ、19世紀末ころまで平均100人を収容していた。アメリカの西部開発に伴って、アメリカ政府と[[アメリカン・インディアン]]との紛争が多発し、反乱罪などでアルカトラズ島に送られたアメリカン・インディアンも多かった<ref name="nps_post" />。

[[File:AlcatrazIsland-1895.jpg |thumb|right|1895年当時のアルカトラズ島]]
[[米西戦争]]（1898年）の時は、[[フィリピン]]への遠征で熱帯病に罹患した帰還兵がアルカトラズ島の病院に収容されたり、身柄を拘束された兵士が多数収監されたりした。新たな刑務所棟が必要となり、1900年、閲兵場にアッパー・プリズン (Upper Prison) が建設された。ロウアー・プリズンは囚人の運動場となったが、1902年の火事でロウアー・プリズンは危うく焼けるところであった<ref name="nps_post" />。

[[1906年]]、[[サンフランシスコ地震]]で街が壊滅し、市内の刑務所に火災の危険が迫ると、そこにいた一般の受刑者176人が急遽アルカトラズ島に移された。このころから島は本格的な刑務所へ転換することとなり、今までの歩兵に代わり軍看守が配置され、1907年には島は「アルカトラズ島・合衆国軍事刑務所太平洋支所」との指定を受けた。砦は取り壊され、1912年に3階建ての大型監房棟が島中央にでき、合計600の監房、厨房、食堂、病院、運動場、管理事務所などを備えた大刑務所となった。[[発電所]]も建設された<ref name="nps_post" />。

1915年、島は「合衆国矯正兵舎太平洋支所」と改名され、教育と更生に力点が置かれるようになった。受刑者は、軍事訓練、矯正教育、職業補導などを受けた上、刑期満了後は、多くは軍務に復帰した。処遇は開放的で、夜間は監房に収容されるが、昼間は各自の仕事、授業、レクリエーションで時間を過ごした。規律違反の場合は独房に収監されたり鎖につながれたりした。しかし、立地上、島内への水と食糧の供給にコストがかかったため、1930年代初頭の[[大恐慌]]もあって、軍は1933年、アルカトラズ島の刑務所を閉鎖することとなった<ref name="nps_post" />。

=== 連邦刑務所時代 ===
{{Infobox prison
| prison_name    = アルカトラズ島刑務所
| image          = [[File:Alcatraz cell.JPG|The interior of a regular cell in the row known as ''Broadway''|220px]]
| location       = [[カリフォルニア州]][[サンフランシスコ湾]]
| coordinates    = {{Coord|37.8266|-122.4233|region:US-CA_type:landmark_source:wikimapia| display=inline}}
| status         = '''閉鎖'''（現在は博物館）
| classification = Maximum
| capacity       = 312人
| opened         = 1934年1月1日
| closed         = 1963年3月21日
| managed_by     = [[アメリカ合衆国司法省]][[:en:Federal Bureau of Prisons|連邦刑務所局]]
| director       = <center>'''刑務所長'''<ref>{{cite web | author=Ron Filion; Pamela Storm  | title= Escapes from Alcatraz Image Gallery: Federal Penitentiary Wardens: | url=http://www.sfgenealogy.com/sf/history/sfoeat00.htm | work=San Franciso History | publisher=SF Genealogy | date=22 January 2006 | accessdate=2009-08-20}}</ref></center>ジェームス・A・ジョンストン（1934年–1948年）<br />エドウィン・B・スロープ（1948年–1955年）<br />ポール・J・マディガン（1955年–1961年）<br />オーリン・G・ブラックウェル（1961年–1963年）
}}
{{multiple image
 | align     = right
 | direction = vertical
 | footer    = 1962年の脱獄事件で壁に開けられていた穴（上）と、ベッドに置かれていたダミーの頭（下）。
 | width     = 180
 | image1    = Alcatraz cell vent.JPG
 | image2    = Dummy head.jpg
}}
島は軍から[[アメリカ合衆国司法省|連邦司法省]]刑務所局に移管され、刑務所局は[[1934年]]7月1日、アルカトラズ連邦刑務所を開設した。大恐慌や[[アメリカ合衆国における禁酒法|禁酒法]]により1920年代末から1930年代にかけて組織犯罪が激化し、治安当局は、犯罪に対する強い姿勢を打ち出す必要があり、アルカトラズ島はそのために「社会の敵」である凶悪犯を収容する施設という役割を担った<ref name="prison">{{Cite web |url=http://www.alcatrazhistory.com/rs1.htm |title=Alcatraz History: Welcome to Alcatraz...  |publisher=Ocean View Publishing Company |accessdate=2010-02-07 }}</ref>。

1934年4月から、脱走対策を万全にするため、軍事刑務所の設備に手が加えられた。格子は柔らかい素材から、道具を使っても破壊できないものに取り替えられ、受刑者が逃げ隠れできる可能性のあるトンネル等はすべてセメントで埋められた。監房を取り巻くように、看守が武器を持って監視できるガン・ギャラリーが、受刑者の手が届かないよう高いところに設けられた。ガン・ギャラリーは鉄柵で保護され、すべての鍵はその中で管理されていた。食堂の天井には催涙ガスの噴射装置が取り付けられ、ガン・ギャラリー又は外部の監視場所からの遠隔操作で噴射できるようになっていた。全部で600近くの監房があったが、どの監房も建物の外壁とは接しないようになっていた<ref name="prison" />。
[[File:Zellentrakt in Alcatraz.jpg|thumb|left|3階建ての監房の並び。]]
[[File:Alcatraz Gun Gallery.JPG |thumb|left|看守が監視に立ったガン・ギャラリー。]]
この刑務所に収容されていた人員は、常時およそ260人から275人であり、連邦刑務所全体の収容人員から見れば1%にも満たなかった。受刑者にとっては、必ず1人につき一つの監房が与えられることなど、ここの収容環境は他の連邦刑務所と比べて悪くなかったため、アルカトラズ刑務所への移送を希望する受刑者すらいた<ref name="BOP">{{Cite web |url=http://www.bop.gov/about/history/alcatraz.jsp |title=A Brief History of Alcatraz |publisher=Federal Bureau of Prisons |accessdate=2010-02-08 }}</ref>。

アルカトラズ島に服役した受刑者の中には、有名な者も多い。[[ロバート・フランクリン・ストラウド]]は、殺人罪で[[カンザス州]][[レブンワース (カンザス州)|レブンワース]]の刑務所に服役中に看守を殺して死刑判決を受けた後、嘆願により1920年終身刑に減刑され、1942年アルカトラズ連邦刑務所に移送され、1959年他所へ移送されるまでの17年間をここで過ごした。レブンワース刑務所でカナリアを飼ってその病気について研究し、本も書いていたことから「バードマン」（鳥人間）というあだ名で知られたが、同刑務所で、研究の名目で手に入れた道具を酒の密造に使おうとしていたことが発覚するなどしてカナリアの飼育が禁止され、アルカトラズ時代には鳥を飼ってはいなかった。著名なギャング[[アル・カポネ]]、[[マシンガン・ケリー|ジョージ・“マシンガン”・ケリー]]などもここに収容されていた。そのほか、他の刑務所で規則を遵守しない者、暴力的行為を行った者、脱走の危険があると考えられた者などがここに送られた<ref name="BOP" />。

刑務所の中では、食糧、衣服、居住、医療の四つは権利として与えられていたが、それ以外のもの――仕事、面会、図書室の利用、レクリエーションなど――はすべて「特典」であって、努力によって獲得するものとされた<ref name="BOP" />。

連邦刑務所時代には、14回の[[脱獄]]事件が起き、それに関与した受刑者は36人である（うち2人は2回脱走を試みた者）。このうち23人は身柄を確保され、6人は射殺され、2人は溺死した。5人は行方不明であるが、溺死したものと推測されている。[[1946年]]3月に起きた脱獄事件は「アルカトラズの戦闘」として知られる。6人の受刑者が看守を襲って武器と監房の鍵を手に入れたが、運動場への鍵を見付けることができず脱出に失敗し、当局との銃撃戦の末、2日後に制圧された。6人のうち3人は死体で発見され、残り3人は裁判にかけられてうち2人はガス室に送られた。この事件で看守も2人が死亡し、約18人が負傷した。[[1962年]]6月11日、[[フランク・モリス]]とアングリン兄弟が監房から消えるという有名な脱獄事件が発生した。手製のドリルで通気孔が広げられており、夜の見回り時に気付かれないよう、ベッドには作り物の人間の頭が置かれていた。壁の後ろのパイプなどを伝って建物から脱出し、島の北東部から泳ぎ出したと見られているが、島外にたどり着いたかは不明である。この脱獄劇は、後に[[クリント・イーストウッド]]主演の映画『[[アルカトラズからの脱出]]』に描かれた<ref name="BOP"/>。

[[1963年]]3月21日、財政的理由により連邦刑務所は閉鎖された。修繕・維持費用だけで300万ドルから500万ドルかかったとされ、それに加え日々の運営費用も他の連邦刑務所と比べ高額であった（1959年当時、1人当たりのコストはアトランタ刑務所で3.00ドルであったのに対しアルカトラズでは10.10ドルに上った）。これは、食糧や水の輸送供給に費用がかかったためである<ref name="BOP" />。
{{-}}

=== インディアンによる占拠事件 ===
[[File:Alcatraz Island 01 Prison sign.jpg|thumb|right|旧連邦刑務所の建物に、インディアン占拠中に書かれた文字。]]
[[ファイル:Alcatraz Island Flowers.jpg|thumb|right|占拠中の火災で焼けた建物。]]
{{Main|アルカトラズ島占拠事件}}
連邦刑務所閉鎖後、この島はうち捨てられていたが、[[1969年]]11月20日から[[1971年]]6月11日までの約1年半、[[アメリカン・インディアン]]たちがこの島を占拠してアメリカ政府に対する抗議活動を行った。それに先立つ[[1964年]]、[[スー族]]のリチャード・マッケンジー率いる5人がこの島に渡り、インディアンの権利を訴えた。この時の滞留時間はわずか4時間であったが、この島をインディアンのための文化センター及び大学を建てる場所としてほしいという彼らの要求は、後の1969年の占拠事件で復活することとなった<ref name="HoldRock">{{Cite web |url=http://www.nps.gov/alca/historyculture/we-hold-the-rock.htm |title=We Hold the Rock |author=Troy Johnson |publisher=National Park Service |date=2007-10-02 |accessdate=2010-02-12 }}</ref>。

1969年、[[モホーク族]]のリチャード・オークスと、それを支持する様々な部族のインディアンたちが、「全部族のインディアンたち」(Indians of All Tribes) というグループを結成し、モンテ・クリスト号に乗って島に渡り、この土地がインディアンのものであることを宣言した。彼らがこの島の占拠にあたって法的根拠としたのは、[[スー族]]や[[ラコタ族]]などの諸部族と[[アメリカ合衆国連邦政府|連邦政府]]との間で[[1868年]]に結ばれた{{仮リンク|フォート・ララミー条約|en|Treaty of Fort Laramie (1868)}}であった。この条約の中には、連邦政府の所有する土地のうち放棄された土地や使われていない土地は、その土地の元の所有者であった先住民が取り戻すことができる、という条文があった<ref>[http://www.pbs.org/weta/thewest/resources/archives/four/ftlaram.htm "Fort Laramie Treaty, 1868."] Archives of the West. 2012年7月1日閲覧</ref>。

彼らは、その日のうちに島から引き揚げたが、その後長期間の占拠を計画し、[[カリフォルニア大学ロサンゼルス校]] (UCLA) の学生約80人を含むインディアン約100人が島に渡り、同月20日から占拠を始めた。島内では評議会が組織され、治安、公衆衛生、学校、住居など、様々な事柄が占拠メンバー全員で決められた。連邦政府に対しては、インディアンの大学、文化センター、博物館の建設を求めたが、連邦政府側は要求は受け入れられないとし、立ち退きを求めた<ref name="HoldRock" />。

そうした中、占拠メンバーの中にもリチャード・オークスと対立するグループが現れて内部分裂が生じたり、学生が島から引き揚げるのに代わって都市や[[インディアン居留地]]から新たなメンバーが加わったりし、さらにはインディアンでない[[サンフランシスコ]]の[[ヒッピー]]やドラッグ使用者まで島に住むようになった。[[1970年]]に入ってオークスは義娘の事故死をきっかけに島を去り、派閥争いは激化した。こうした状況に対し、連邦政府は当初不干渉の態度で臨み、[[FBI]]や[[アメリカ沿岸警備隊|沿岸警備隊]]も手を出さなかったが、これは自然に占拠メンバーらの大勢が撤退に向かうのを待つ意図であった。しかし、占拠メンバーは島の所有権と大学等の建設を主張して譲らなかった<ref name="HoldRock" />。

1970年中頃、連邦政府側は電力の供給を止め、水を供給していた輸送船も撤去した。その3日後、火災が発生していくつかの古い建物は焼けてしまった。[[1971年]]に入り、派閥争いなどの内部の混乱が続く中、連邦所有建物からの金属材の窃取や暴力事件が伝えられるにしたがって、当初は占拠側に好意的だった世論の支持も失われていった。[[リチャード・ニクソン]]大統領が立ち退き計画にゴーサインを出し、1971年6月10日、在島者の少ない時を狙って、武装した[[連邦保安官]]、FBIエージェント及び警察[[特殊部隊]]が島を急襲し、5人の女性、4人の子ども、6人の非武装の男性を立ち退かせ、これによって占拠は終了した<ref name="HoldRock" />。

この占拠事件は、インディアンの土地を取り上げ、その文化を絶やそうとする連邦政府の政策に対する、部族を超えた初めての抗議活動という意味を持っていた。島の利用についての占拠メンバーの要求は受け入れられずに終わったものの、インディアンの置かれた状況を世に訴えるとともに、その後のインディアンの抗議運動の引き金となり、連邦政府にインディアンの権利を尊重した政策へ転換させるきっかけとなったと評価されている<ref name="HoldRock" /><ref>{{Cite web |url=http://www.nps.gov/goga/historyculture/alcatraz-occupation.htm |title=Alcatraz Occupation |publisher=National Park Service |date=2009-03-10 |accessdate=2010-02-12 }}</ref>。

=== 国立公園化 ===
[[File:San Francisco Bay aerial view.jpg|thumb|right|右がサンフランシスコ市街、下が[[ゴールデンゲートブリッジ]]、そして[[トレジャー島]]の下にある船のような形をした小さな島がアルカトラズ島である。]]
[[1971年]]、[[アメリカ合衆国国立公園局]]がこの島を取得し<ref name="significance" />、[[1972年]]10月27日に設立された[[ゴールデンゲート国立レクリエーション地域]]の一部となった<ref name="About">{{Cite web |url=http://usparks.about.com/library/miniplanner/blgoldengatenra.htm |title=Golden Gate National Recreation Area |publisher=About.com (The New York Times Company) |year=2010 |accessdate=2010-02-11 }}</ref>。

[[1973年]]から現在に至るまで一般公開されている。

[[1976年]]、[[軍事史]]及び[[社会史]]（行刑学）の領域で国家的歴史的重要性を有するとして[[アメリカ合衆国国家歴史登録財|国家歴史登録財]] (NRHP) の登録を受け、[[1986年]]、[[アメリカ合衆国国定歴史建造物|国定歴史建造物]] (NHL) に指定された<ref name="significance">{{Cite web |url=http://www.nps.gov/goga/historyculture/upload/Statement%20of%20Significance.pdf |title=Statement of Significance |format=PDF |publisher=National Park Service |accessdate=2010-02-11 }}</ref><ref>{{Cite web |url=http://tps.cr.nps.gov/nhl/detail.cfm?ResourceId=1595&ResourceType=District |title=National Historic Landmarks Program: Alcatraz Island |publisher=National Park Service |accessdate=2010-02-10 }}</ref>。

== 現在 ==
=== 観光 ===
[[File:Alcatraz Cruises ferry on Pier 33.jpg|thumb|left|ピア33からアルカトラズ島に向かうフェリー。]]
アルカトラズ島に行くには、サンフランシスコ市[[フィッシャーマンズワーフ (サンフランシスコ)|フィッシャーマンズワーフ]]のやや南東、[[エンバーカデロ]]にあるピア33（第33埠頭）から、国立公園局と契約しているアルカトラズ・クルーズLLC社の運航する[[フェリー]]に乗る<ref>{{Cite web |url=http://www.nps.gov/alca/planyourvisit/directions.htm |title=Directions |publisher=National Park Service |date=2007-10-02 |accessdate=2010-02-09 }}</ref>。フェリーは毎日午前9時から30分ごとに出発しており、同社のウェブサイトで事前にチケットを購入することができる<ref>{{Cite web |url=http://www.nps.gov/alca/planyourvisit/hours.htm |title=Operating Hours & Seasons |publisher=National Park Service |date=2009-10-05 |accessdate=2010-02-09 }}</ref>。フェリーは島の船着き場（ドック）に着き、そこから頂上の刑務所棟までの道のりは約0.4キロメートル、また高度差は約40メートルである<ref>{{Cite web |url=http://www.nps.gov/alca/planyourvisit/accessibility.htm |title=Accessibility |publisher=National Park Service |date=2007-06-25 |accessdate=2010-02-11 }}</ref>。なお、島そのものへの入場は無料である<ref name="fees">{{Cite web |url=http://www.nps.gov/alca/planyourvisit/feesandreservations.htm |title=Fees & Reservations |publisher=National Park Service |accessdate=2012-04-25}}</ref>。

島内では、ガイドの案内に従って回ることも、パンフレットを見ながら自分で歩き回ることもできる。アルカトラズ島の歴史に関するビデオも上映されている<ref name="About" />。刑務所棟の内部では、[[英語]]、[[スペイン語]]、[[ドイツ語]]、[[フランス語]]、[[イタリア語]]、[[日本語]]、[[オランダ語]]、[[中国語]]によるオーディオガイドを利用できる<ref>{{Cite web |url=http://www.alcatrazcruises.com/website/audio-tour.aspx |title=Cellhouse Audio Tour |publisher=Alcatraz Cruises, LLC. |year=2006 |accessdate=2010-02-09 }}</ref>。このオーディオガイドに従って棟内を移動すると、臨場感ある説明とともに各見所を巡回することができる。オーディオガイド料金はフェリー料金に含まれているが、オーディオガイドを希望しない場合はブックストア（みやげ物売場）でその分の払い戻しを受けることができる<ref name="fees"/>。

[[2012年]]1月にテレビドラマ『[[ALCATRAZ/アルカトラズ]]』が放送開始となって以来、同ドラマに登場する地下制御室を見つけようとして閉鎖区域に立ち入る観光客が続出したため、国立公園局は「テレビ番組『アルカトラズ』は架空であり、そこで描かれている区域の多くは実在しません。閉鎖区域は貴方と歴史的構築物と巣作りしている鳥たちを護るためにあります」という注意書きを掲示した<ref>{{Cite web |url=http://www.tmz.com/2012/01/26/alcatraz-fox-show-tourists-warning/ |title="Alcatraz" TV Show - Delusional Fans Trying to Break In to Prison |publisher=TMZ |date=2012-01-26 |accessdate=2012-04-25 }}</ref>。

=== 自然 ===
[[File:Brandt's Cormorant Alcatraz.JPG|thumb|right|170px|島に棲息する[[鵜]] (Brandt's Cormorant)。]]
アルカトラズ島には、多くの鳥が棲息している。ヨーロッパ人によって島が発見されるまでにも、アメリカインディアンが鳥や卵を採取していたと考えられる。今日、アルカトラズ島は、[[鵜]]、[[ウミバト]]のような海鳥や、[[ユキコサギ]]、[[ゴイサギ]]のような水鳥の[[自然保護区]]（サンクチュアリ）となっている。棲息数については毎年統計が取られており、2月から9月にかけて鳥たちが過敏になる時期には管理業務も控えられている<ref>{{Cite web |url=http://www.nps.gov/alca/naturescience/index.htm |title=Nature & Science |publisher=National Park Service |date=2008-01-10 |accessdate=2010-02-10 }}</ref>。

また、島では花々を楽しむこともできる。人間が入るまでは、島には薄い土壌にまばらな草と灌木が生えているだけであった。軍事要塞ができると、生活を少しでも改善するために、軍当局が島外から土壌を持ち込み、1865年には頂上の砦のそばにビクトリア様式の庭園ができた。1920年代、全島的な美化計画が行われ、受刑者らの手によって多くの木々、[[灌木]]、種子が植えられた。連邦刑務所時代になると、所長補佐官のフレッド・レイチェルが庭園の整備を計画し、受刑者らが庭園造りに参加した。庭園造りに才能を発揮した受刑者もいた。1963年に連邦刑務所が閉鎖され、島が打ち捨てられていた約40年間、島の厳しい環境に耐えられずに枯れてしまった花もあったが、そのような中咲き続けた花もあった。[[2003年]]から、ガーデン・コンサーバンシー、ゴールデンゲート国立公園コンサーバンシーといった非営利団体が、国立公園局と提携して、庭園の修復・保存に取り組んでいる<ref>{{Cite web |url=http://www.alcatrazgardens.org/history.php |title=History of Gardening on the Island |publisher=The Garden Conservancy |accessdate=2010-02-10 }}</ref>。
{{ - }}

== 脚注 ==
[[File:Alcatraz aerial.jpg|thumb|right|上空からの写真]]
{{Reflist}}
{{ - }}
== 関連項目 ==
* [[ザ・ロック (映画)]]
* [[アルカトラズからの脱出]] - [[クリント・イーストウッド]]主演の映画
* [[ルパン三世 アルカトラズコネクション]]
* [[告発 (映画)]]
* [[奪還 DAKKAN -アルカトラズ-]] - [[スティーヴン・セガール]]主演の映画
* [[奪還2.0]] - [[ビル・ゴールドバーグ]]主演の映画
* [[ザ・ウォーカー]]
* [[アルカトラス]] - [[グラハム・ボネット]]を中心に結成されたロックバンド
* [[ALCATRAZ/アルカトラズ]] - [[J・J・エイブラムス]]製作のテレビドラマ
* [[魁!!男塾]] 七牙冥界闘（バトルオブセブンタスクス）の第3の牙の舞台

== 外部リンク ==
{{Commons&cat|Alcatraz|Alcatraz Island|アルカトラズ島}}
* [http://www.nps.gov/alca/index.htm アルカトラズ島]{{en icon}}（アメリカ合衆国国立公園局）
* [http://www.bop.gov/about/history/alcatraz.jsp アルカトラズ島の歴史]{{en icon}}（アメリカ合衆国刑務所局）
* [http://www.alcatrazhistory.com/mainpg.htm アルカトラズ・ヒストリー]{{en icon}}
* [http://www.alcatrazcruises.com/ アルカトラズ・クルーズ社]{{en icon}}
* [http://www.alcatrazgardens.org/index.php アルカトラズの庭園]{{en icon}}

{{Wide image|Alcatraz03182006.jpg|1000px|島の西側を写したパノラマ写真。[[カリフォルニア大学バークレー校]]も画面の右に写っている。}}

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[[Category:アメリカ合衆国の島]]
[[Category:アメリカ合衆国の刑務所]]
[[Category:サンフランシスコ・ベイエリアの地理‎]]
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[[Category:アルカトラズ|*]]

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