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アブラゼミ
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{{生物分類表 | 名称 = アブラゼミ | 画像 = [[画像:Graptopsaltria nigrofuscata1.jpg|250px]] <!-- | 画像キャプション = ### --> |省略 = 昆虫綱 | 亜綱 = [[有翅昆虫亜綱]] [[:w:Pterygota|Pterygota]] | 目 = [[カメムシ目]](半翅目) [[:w:Hemiptera|Hemiptera]] | 亜目 = [[ヨコバイ亜目]](同翅亜目) [[:w:Homoptera|Homoptera]] | 上科 = [[セミ上科]] [[:w:Cicadoidea|Cicadoidea]] | 科 = [[セミ科]] [[:w:Cicadidae|Cicadidae]] | 亜科 = [[セミ亜科]] [[:w:Cicadinae|Cicadinae]] | 族 = [[アブラゼミ族]] [[:w:Polyneurini|Polyneurini]] | 属 = [[アブラゼミ属]] ''[[:w:Graptopsaltria|Graptopsaltria]]'' | 種 = '''アブラゼミ''' ''G. nigrofuscata'' | 学名 = ''Graptopsaltria nigrofuscata'' <br />([[ヴィクトル・モチュルスキー|Motschulsky]], [[1866年|1866]]) | 和名 = アブラゼミ(油蝉) | 英名 = [[:en:Large Brown Cicada|Large Brown Cicada]] }} '''アブラゼミ'''(油蟬、鳴蜩、[[学名]] ''Graptopsaltria nigrofuscata'')は、[[カメムシ目]](半翅目)・[[ヨコバイ亜目]](同翅亜目)・[[セミ科]]に[[生物の分類|分類]]される[[セミ]]の一種。褐色の不透明な翅をもつ大型のセミである。 == 特徴 == 『アブラゼミ』という名前の由来は、鳴き声が油を鍋で熱したときに撥ねる「ジリジリ」という音に似ているため、「油が撥ねる音の様に鳴く蝉」から『油蝉(アブラゼミ)』と名付けられたとされている。 体長は 56-60[[ミリメートル|mm]] で、[[クマゼミ]]より少し小さい。[[頭部]]は[[胸部]]より幅が狭く、上から見ると頭部は丸っこい。体は黒褐色-紺色をしていて、前胸の背中には大きな褐色の斑点が2つ並ぶ。セミの多くは透明の[[翅]]をもつが、アブラゼミの翅は前後とも不透明の褐色をしていて、世界でも珍しい翅全体が不透明のセミである。なお、この翅は羽化の際は不透明の白色をしている。 抜け殻はクマゼミとよく似ているが、わずかに小さく、全身につやがある。また、抜け殻に泥がつかないのも特徴である。 == 分布 == [[日本列島|日本]]([[北海道]]から[[九州]]、[[屋久島]])、[[朝鮮半島]]、[[中国]]北部に分布する。 人里から山地まで幅広く生息し、[[都市]]部や[[果樹園]]でも多く見ることができる。 [[南西諸島]]にはアブラゼミと近縁な[[#リュウキュウアブラゼミ|リュウキュウアブラゼミ]]が生息する(後述)が、このセミも成虫・幼虫ともにやや湿度の高い環境を好むため、市街地にはあまり生息しない。 === 日本における生息環境 === アブラゼミは北海道・[[本州]]・[[四国]]・九州の広い範囲に生息しており、都心部でも最も多いセミであったが関東以西の大都市や北日本の一部都市では環境の変化や[[ヒートアイランド現象]]等により生息数が減少している。一方で本州日本海側や九州の多くの地域ではアブラゼミが減少しておらず、むしろ優勢な地域が多い。東京都内でも全体的にはアブラゼミが最も多い。特に[[北陸地方]]のほとんどの地域では近年アブラゼミの勢力が著しく強くなっており、[[ミンミンゼミ]]の生息場所は[[低山帯]]に押しやられている。このようなセミ類の動向は、主にその土地ごとの気候条件によって左右される。 [[札幌市|札幌]]では、昔は中心部([[大通公園]]など)でもたくさんの鳴き声が聞かれたが、現在はほとんど全く聞かれなくなっている(ただし[[2010年]]以降、市内の[[中島公園]]等の都市公園ではやや復活傾向にあることも報告されている)。また、[[青森市]]や[[函館市]]でも近年はアブラゼミがほぼ消滅し、鳴き声が聞かれることはまずなくなっており(札幌市のような復活傾向もない)、[[盛岡市|盛岡]]・[[仙台市|仙台]]・[[長野市|長野]]などでもアブラゼミは激減している。アブラゼミは[[郊外]]・[[山地]]では全国的に普通に見られ(北海道・南西諸島を除く)都心部の市街地でも最も多いセミであったが、近年、夏の暑さが厳しくない都市では市街地を中心に軒並み数を減らしている。一方、同じ北日本でも[[秋田市]]や[[山形県]][[庄内地方]]では夏の暑さが比較的厳しく、さらにミンミンゼミが市街地に全く生息しないという原因もあり、アブラゼミは減少していない。さらに[[山形市]]は夏の暑さが厳しいものの、市街地で近年ミンミンゼミが急増しているためかアブラゼミは激減している。このように北日本では地域によってアブラゼミの生息状況に偏りがある。 なお、札幌や青森では、昔から市街地ではアブラゼミしか生息していなかった([[エゾゼミ]]や[[コエゾゼミ]]は森林性なので森や山の中に限って生息)ので、近年{{いつ|date=2012年8月}}は夏になっても街中ではセミの声が全くといってよいほど聞こえなくなっている。また、仙台や長野は気候的にミンミンゼミの生息条件に合っている(夏が比較的涼しい・冬の湿度があまり高くないなど)ため、市街地ではアブラゼミを凌駕する勢いで増加している。 ===アブラゼミ減少の原因=== ====都市部の温暖化・乾燥化説==== アブラゼミは幼虫・成虫とも、[[クマゼミ]]やミンミンゼミと比べると湿度のやや高い環境を好むという仮説がある。実際、都市化の進んだ地域では[[ヒートアイランド]]現象による乾燥化によってアブラゼミにとっては非常に生息しにくい環境となっており、乾燥に強い種類のセミが優勢となっている。つまり、[[東京]]都心部ではミンミンゼミに、[[大阪市]]など西日本太平洋側の大都市中心部ではクマゼミに置き換わっているという説もある。 しかしながら、この仮説に一見従わないように思われるデータも多数存在する。たとえば、比較的温暖(大阪市よりは寒冷)なはずの山口大学キャンパス内でクマゼミがほとんど発生せず、大多数がアブラゼミという報告がある。また、現在よりも寒冷であった100年ほど前の京都で、クマゼミの目撃証言がある。さらに、[[京都市]]中心部において土壌含水率とセミ種を調査したところ、全く相関がなく、樹種と相関があるという報告がなされている。(下記外部リンク「[[#米蝉ナール|米蝉ナール]]」参照) 一方、[[大阪市立自然史博物館]]の調査によれば、大阪市内のクマゼミは主に乾いた土壌から発生し、アブラゼミはやや湿った土壌のみから発生するという、京都市の調査とは全く異なった結果が示された。これらの調査から、アブラゼミは都市によって異なった発生の仕方をしており、その原因は各都市の気候の違いに求められる、という仮説が導き出されたのである。 また、アブラゼミは[[気温]]のみならず[[湿度]]からも多大な影響を受ける。たとえば、年間にわたって湿度が比較的高い九州南部よりも、[[瀬戸内地方]]の都市部や[[静岡県]]の市街地のほうがアブラゼミの減少ペースが早い。特に静岡県では、冬の激しい乾燥が大きな原因となっているとみられる。この現状を考慮した場合、上述の仮説は正しいということになるが、それを明確に立証する研究結果はまだ出ていない。 なお、一部の地域の話であり都内23区や都市部の市街地でもアブラゼミが最も多く生息している場所が多い。夏場の高温で知られる埼玉県内は減少しておらず一番アブラゼミを多く見る機会が多く東京都内でも全体的にはアブラゼミが最も多い。。 ====野鳥の捕食説==== 本種が[[都市]]で減少した直接の要因として[[野鳥]]による[[捕食]]が重要であることが[[アメリカ合衆国|アメリカ]]昆虫学会誌に報告されている<ref>[http://esa.publisher.ingentaconnect.com/content/esa/aesa/2007/00000100/00000005/art00015 Takakura & Yamazaki, 2007, Annals of the Entomological Society of America, 100(5): 729-735]</ref>。アブラゼミ成虫の[[天敵]]は主に野鳥であるが、都市での捕食圧は極めて高く、ほとんどのアブラゼミが捕食される。逆にクマゼミへの捕食圧は、都市では低くなる。この差は、それぞれのセミが天敵から逃げる方法(捕食回避[[戦略]])による。天敵に気付いたアブラゼミは周辺の樹木に隠れるので、都市など樹木が粗な環境では隠れるのに手間取り捕食されやすくなるが、クマゼミは木に隠れず飛んで逃げるので周囲の[[空間]]が開けているほど効率がよくなるためである。 ===クマゼミとの関係=== 上述のように、都市部においては「湿った所にアブラゼミ、乾いたところにクマゼミがいる」との説が唱えられている。これに対し京都成安高等学校教諭・米沢信道と生物部の生徒は10年間の調査を行い「アブラゼミ、クマゼミはそれぞれ好む木、嫌いな木があり(樹種嗜好性)乾湿によってきまるものではない」と解明された。(下記外部リンク「[[#米蝉ナール|米蝉ナール]]」参照) ただし、この研究結果はあくまで京都市街地のみの研究結果にすぎず、大阪市内では上述のとおり異なった結果が出ていることに注意を要する。 == 生態 == [[成虫]]は[[サクラ]]、[[ナシ]]、[[リンゴ]]など[[バラ科]]樹木に多い。成虫も[[幼虫]]もこれらの木に口吻を差しこんで[[樹液]]を吸う。そのため、ナシやリンゴについては[[害虫]]として扱われることもある。 成虫は7月から9月上旬くらいまで多く発生するが、10月や11月でもたまに鳴き声が聞こえることがある。オスがよく鳴くのは午後の日が傾いてきた時間帯から日没後の薄明までの時間帯である<ref>夜遅くなっても気温が高いと鳴いていることもある。</ref>。 {{Sound|Aburazemi_07z7315.ogg|鳴き声|合唱の一部分、1分33秒、861[[キロバイト|KB]]}} 鳴き声は「ジー…」と鳴き始めたあと「ジジジジジ…」とも「ジリジリジリ…」とも聞こえる大声が15-20秒ほど続き「ジジジジジー…」と尻すぼみで鳴き終わる。この鳴き声は昼下がりの暑さを増幅するような響きがあり「[[油]]で[[揚げる]]ような」という形容を使われることが多い。「アブラゼミ」という和名もここに由来する。 ===夜鳴き=== このセミは「夜鳴き」をすることで有名である。もともとこのセミは薄暗く[[湿度]]の比較的高い時間帯を好むため、最も盛んに発声活動をするのが夕刻時である。深夜の発声活動はその延長であるが、生息密度がある程度高い時期にしか普通は鳴かない。また、クマゼミ・ミンミンゼミ・エゾゼミも、生息密度が高い時期は夜中に鳴いていることも多い。しかし、これらのセミと比較してもアブラゼミは特に夜鳴きをしやすいセミであるため、少しでも生息密度が高くなればすぐに夜鳴きをする傾向がある。 == 近縁種 == ; {{Anchor|リュウキュウアブラゼミ|}}リュウキュウアブラゼミ ''Graptopsaltria bimaculata'' Kato, [[1925年|1925]] : 成虫の体長は53-66mm。前胸の褐色部がアブラゼミより広く、後胸部も褐色である。[[奄美大島]]、[[加計呂麻島]]、[[請島]]、[[与路島]]、[[徳之島]]、[[沖縄本島]]、[[渡嘉敷島]]、[[久米島]]に分布する。オスは「ジュクジュクジュクジーーイッ」という数秒ほどの鳴き声を繰り返す。ジュクジュクジュクと声を大きくしながら鳴き始めるが、ジーイッと突然鳴き止んでしまうように鳴き終わる。アブラゼミとはかなり異なった鳴き声である。沖縄本島では森林・低山帯ではごく普通に生息するが、市街地では生息数が少ない。西日本太平洋側(特に京阪神や静岡県)におけるアブラゼミの生息状況とよく似ている。 == 画像 == <gallery> ファイル:Graptopsaltria nigrofuscata_larva1.jpg|[[羽化]]のため地上に出ようとしている幼虫 ファイル:Graptopsaltria nigrofuscata_larva2.jpg|木を登る ファイル:Aburazemi-uka.JPG|羽化中(前2者とは別個体) ファイル:Graptopsaltria nigrofuscata_emergence.jpg|羽化直後(前3者とは別個体) ファイル:Aburazemi-06.Sep.JPG|成体。黒い体と褐色の翅が樹皮への擬態に役立っている。 ファイル:Argiope amoena captured Graptopsaltria nigrofuscata.JPG|[[コガネグモ]]に捕獲された成体 </gallery> == 脚注 == {{脚注ヘルプ}} {{Reflist}} ==参考文献== <!-- 書式は[[Wikipedia:出典を明記する]]に従う --> *{{Cite book|和書|others=[[白水隆]]・[[奥谷禎一]]・[[中根猛彦]]ほか監修|year=1999|month=5|title=学生版 日本昆虫図鑑|series=学生版 図鑑シリーズ|publisher=[[北隆館]]|isbn=4-8326-0040-0|url=http://hokuryukan-ns.co.jp/books/archives/2005/09/post_14.html|ref=白水&奥谷&中根1999}} *{{Cite book|和書|author=中尾舜一|authorlink=中尾舜一|year=1990|month=7|title=セミの自然誌 鳴き声に聞く種分化のドラマ|series=中公新書|publisher=[[中央公論社]]|isbn=4-12-100979-7|ref=中尾1990}} *{{Cite book|和書|author=[[林正美]]|coauthors=[[税所康正]]編著|date=2011-02-28|title=日本産セミ科図鑑 詳細解説、形態・生態写真、鳴き声分析図|publisher=[[誠文堂新光社]]|isbn=978-4-416-81114-6|ref=林&税所2011}} - 附録:CD1枚。 *{{Cite book|和書|author=[[福田晴夫]]ほか|year=2005|month=8|title=昆虫の図鑑 採集と標本の作り方 野山の宝石たち|publisher=[[南方新社]]|isbn=4-86124-057-3|ref=福田ほか2005}} *{{Cite book|和書|author=[[宮武頼夫]]|coauthors=[[加納康嗣]]編著|year=1992|month=5|title=検索入門 セミ・バッタ|publisher=[[保育社]]|isbn=4-586-31038-3|ref=宮武&加納1992}} == 関連項目 == == 外部リンク == <!-- {{Wikispecies|Graptopsaltria nigrofuscata}} --> {{Commons|Graptopsaltria nigrofuscata}} * [http://homepage2.nifty.com/saisho/zukan/abura/ アブラゼミ](セミの家) * {{Anchor|米蝉ナール|}}[http://outdoor.geocities.jp/kawasemisou/index.html 米蝉ナール] - 1997年から現在に至るまでの、毎年のアブラゼミの調査結果を公開している。 *{{Yahoo!百科事典|アブラゼミ|author=[[立川周二]]}} *{{Kotobank|アブラゼミ|2=世界大百科事典 第2版}} [[Category:セミ|あふらせみ]]
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