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のぞみ (探査機)
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{{宇宙機 | 名称 = 火星探査機「のぞみ(PLANET-B)」 | 画像 = | 画像の注釈 = 火星周回軌道の「のぞみ」想像図(サーマルブランケットの材質等が実際とは異なる) | 所属 = [[宇宙科学研究所|ISAS]]/[[宇宙航空研究開発機構|JAXA]] | 主製造業者 = [[日本電気]] | 公式ページ = [http://www.stp.isas.jaxa.jp/nozomi/ Planet-B HOME PAGE] | 国際標識番号 = 1998-041A | NORAD_NO = 25383 | 状態 = 運用終了 | 目的 = 太陽風による火星大気との相互作用の探査<br />火星磁場の探査<br />地表のリモートセンシング 等 | 観測対象 = 火星 | 計画の期間 = 5年 | 設計寿命 = 3年 | 打上げ機 = [[M-Vロケット]] 3号機 | 打上げ日時 = [[1998年]][[7月4日]]3時12分 (JST) | 軌道投入日 = | 最接近日 = [[2003年]][[12月14日]]3時42分 (JST) | ランデブー日 = | 軟着陸日 = | 衝突日 = | 機能停止日 = | 通信途絶日 = 2003年[[7月9日]] | 運用終了日 = | 停波日 = 2003年[[12月31日]] | 消滅日時 = | 物理的特長 = 物理的特長 | 本体寸法 = 1.6m x 1.6m x 0.58m | 最大寸法 = 太陽電池パネル展開幅 6.22m<br />ワイヤアンテナ伸展幅 52m | 質量 = 541kg(打ち上げ時重量)<br />258kg(ドライ重量) | 発生電力 = | 主な推進器 = 二液式500Nスラスタ<br />ヒドラジン3Nスラスタ | 姿勢制御方式 = スピン安定制御(7.5rpm) | 軌道要素 = 軌道要素 | 周回対象 = 太陽 | 軌道 = 火星とほぼ同じ軌道 | 静止経度 = | 高度 = | 近点高度 = | 遠点高度 = | 軌道半長径 = | 離心率 = | 軌道傾斜角 = | 軌道周期 = | 回帰日数 = | サブサイクル = | 回帰精度 = | 降交点通過地方時 = | 搭載機器 = 観測機器 | 搭載機器名称1 = MIC | 搭載機器説明1 = 火星撮像カメラ<br />Mars Imaging Camera | 搭載機器名称2 = UVS | 搭載機器説明2 = 紫外光撮像器<br />Ultraviolet Imaging Spectrometer | 搭載機器名称3 = XUV | 搭載機器説明3 = 極端紫外光撮像器<br />Extra Ultraviolet Scanner | 搭載機器名称4 = MDC | 搭載機器説明4 = ダストカウンター<br />Mars Dust Counter | 搭載機器名称5 = EIS | 搭載機器説明5 = 高エネルギー粒子計測器<br />Electron and Ion Spectrometer | 搭載機器名称6 = ESA | 搭載機器説明6 = 電子エネルギー分析器<br />Electron Spectrum Analyzer | 搭載機器名称7 = ISA | 搭載機器説明7 = イオンエネルギー分析器<br />Ion Spectrum Analyzer | 搭載機器名称8 = IMI | 搭載機器説明8 = イオン質量分析器<br />Ion Mass Imager | 搭載機器名称9 = MGF | 搭載機器説明9 = 磁場計測器<br />Magnetic Field Measurement | 搭載機器名称10 = PWS | 搭載機器説明10 = プラズマ波動サウンダー<br />Plasma Waves and Sounder | 搭載機器名称11 = LFA | 搭載機器説明11 = 低周波波動観測器<br />Low Frequency Plasma Wave Analyzer | 搭載機器名称12 = PET | 搭載機器説明12 = 電子温度プローブ<br />Probe for Electron Temperature | 搭載機器名称13 = NMS | 搭載機器説明13 = 中性粒子質量分析器<br />Neutral Mass Spectrometer | 搭載機器名称14 = TPA | 搭載機器説明14 = 熱プラズマ分析器<br />Thermal Plasma Analyzer | 搭載機器名称15 = | 搭載機器説明15 = 電波科学観測 }} '''のぞみ'''(第18号科学衛星:計画名'''[[PLANET計画|PLANET]]-B''')は、[[宇宙科学研究所]] (ISAS) によって打ち上げられた[[日本]]初の[[火星探査機]]。[[1998年]]([[平成]]10年)[[7月4日]]午前3時26分(日本時間)に、[[M-Vロケット]]3号機により打ち上げられた。小中学校の教科書に取り上げられるなど広く国民の期待を集め、火星へ約1,000 kmまで接近したものの、最終的には[[火星周回軌道]]への投入を断念した。 == 概要 == [[火星]]の上層大気などを観測することを目的としていた。観測機器としては、カメラのほか、磁場探査機、電子エネルギー分析器など14種類の機器を搭載しているが、小型の探査機においてこの搭載量は他に類を見ない。この機器類で15項目の観測を行うことを目的とした。アメリカなどが推し進めていた火星の地形観測よりも、火星の磁気圏や、上層大気の調査を主要な目的としていることが特徴である。 PLANET-Bの研究は[[1980年代]]から始まり、当初は[[金星]]を目指す予定だった。しかし、[[1988年]]に打ち上げられた[[ソビエト連邦|ソ連]]の[[フォボス2号]]が通信途絶の直前に、火星から太陽と反対側に向かって酸素が流れ出していることを観測し、火星の科学調査の気運が高まった。そのため、PLANET-Bの目標も火星へと変更された。 == ミッションの経過 == [[1992年]](平成4年)から開発がはじまり、[[1996年]](平成8年)の打ち上げを予定していたが、[[M-Vロケット]]の開発が一年遅れることが分かり、火星と地球が再接近する1998年に打ち上げが延期された。1998年という打ち上げ時期は火星と地球の位置条件が初期予定より悪いため、[[スイングバイ]]によって加速を得る軌道を設計した。1998年(平成10年)7月4日に、[[鹿児島県]][[内之浦宇宙空間観測所|鹿児島宇宙空間観測所]]より打ち上げられ、2度の[[月]]スイングバイと[[地球]][[スイングバイ#パワードスイングバイ|パワードスイングバイ]]により、火星を目指した。 飛行中、[[月の裏|月の裏側]]の写真を撮影している。月の裏側を撮影した国はそれまで[[ソビエト連邦|旧ソ連]]と[[アメリカ合衆国|米国]]しかなく、日本は月の裏側を撮影した3番目の国になったという成果もあった。ところが、完全な自律制御によって行われたパワードスイングバイで予定の速度を得られていなかったことが判明。燃料の逆流を防止するバルブの開放不良によるものであった。ひとまず火星周回軌道に達するのに必要な速度をスラスター噴射により確保し、これに対応するため軌道の再検討を行った。そして、地球と火星の間の空間を3周させ、さらに2度の地球スイングバイによって火星に届けると言う、過去に例の無い軌道をとった。結果、予定より5年遅れで[[2004年]](平成16年)の火星到着を目指すこととなった。 === 火星への飛行 === 予定外の長期間飛行中を続ける間、のぞみは深刻な故障に見舞われた。通信機能の大部分は使用不可能となり、現在位置を送信する[[ビーコン]]と受信機能しか動作しないという状態にまで陥った。また、[[2002年]](平成14年)[[4月25日]]から26日の間に、何らかの原因で電源にブレーカーが作動し、ヒーターが作動しなくなったことから推進剤が凍結、軌道変換の噴射ができなくなった。ISASは十数年に一度に起こる強力な[[太陽フレア]]の直撃によって電源系統の一部がショート、保護回路が動作し一部システムに対する電源投入が不可能となったと報じた。しかし太陽フレアが起こったのは21日、のぞみに届いたのは22日で、この時にノイズが確認されたが、25日には全て正常に作動していた。そのため、最終的にはフレアが直接的な原因であることは否定された。 通信途絶寸前となったのぞみの状態を知るため、後に「1ビット通信」と呼ばれる通信方法が発案され実行された。それは、のぞみの状態をイエスかノーでのぞみ自身に判定させるコマンドを地上から送信し、それに対してのぞみがビーコンのオンオフだけで回答するという通信方法である。これは一度の通信に30分を要する作業であったが、一応はのぞみの状態を把握することが可能であった。また、ヒーターが作動せず、噴射ができない可能性があったが、のぞみが地球に接近し、温度があがったため推進剤が融けた。そこでスイングバイを行うための長いやりとりの末、[[2002年]](平成14年)[[12月21日]]と[[2003年]](平成15年)[[6月19日]]の2回にわたる地球スイングバイを成功させた。2回目のスイングバイ後にのぞみの軌道を推定した結果、2003年[[12月14日]]に火星から 894 kmの地点を通過することが確定した。 === 火星フライバイ === のぞみは火星へ接近する軌道に投入されたが、電源系統は回復しないままだった。電源を入れ続けることでショート箇所を焼き切るという復旧案が計画された。そのため高速で電源をONにするプログラムが作成され、[[7月5日]]にのぞみへ送信された。この連続電源ONのコマンドは、1億2000万回実行されたといわれている。[[7月9日]]にはのぞみからの電波が途切れた。これは電源をONにした際に発生するノイズによる誤動作であり、予期されたものだった。しかし、これ以降のぞみからの電波は途絶えたままとなり、地球から一方的に電波を送るだけとなってしまった。 火星到達の半月前になる11月半ば、一部ではまさしく火星に衝突するかのような報道がなされたが、このまま進むと予測通り12月14日に火星から 894 kmの地点を通過することになっていた。復旧のタイムリミットは、火星周回軌道への軌道変更の準備時間を見積もって[[12月9日]]とされていた。この時点でのぞみからの電波が回復していなければ、スラスターを噴射して火星への接近距離を少し離す処置が検討された。これは[[国際宇宙空間研究委員会|宇宙空間研究連絡会議]]による世界的な取り決めに従って、「殺菌消毒を施していない機器は打ち上げ20年以内に火星に衝突する確率を1パーセント以内に抑える」ためであった。軌道設計チームは12月14日の火星最接近後ものぞみを生かす軌道を検討したが、どの軌道でも衝突確率が1パーセントをわずかに上回る計算となった。タイムリミットである12月9日、最後までのぞみからの電波は届かなかった。その日、衝突回避のための弱い噴射を行うコマンドが送信された。 12月14日午前3時42分、のぞみは火星から約1,000km上空を通過したと推測されている。このとき、機器類が正常に作動していれば、火星表面の写真を自動的に撮影したはずである。無論、それはのぞみに記録されるだけで地球には送信できない。[[12月19日]]にのぞみは軌道のずれが地球から観測できる領域を超えたため、[[12月31日]]にのぞみの方向へ電波発信を停止させるプログラムを送信し、のぞみは観測機としての一切の機能を停止、ミッションは終了した。のぞみは今後、数億年にわたって火星とほぼ同じ軌道をまわり続けると考えられている。 == 失敗原因 == {{独自研究|section=1|date=2010年6月}} 当初、火星軌道投入の直接の原因は、十数年に一度といわれる強力な太陽フレアによる電気系統のショートと保護回路の作動とされたが、前段にて記述されているように、後に否定されている。実際の原因は、ISASにも分からないのが現状のようである。 最初のパワースイングバイにおいて、燃料逆流防止バルブが正常に開放されない動作障害が確認されている。このバルブは[[1992年]]打ち上げの「[[マーズ・オブザーバー]]」(米、失敗)が燃料の逆流によって爆発したと考えられたことで、設計後期に追加されたものだった。バルブの追加が本当に必要だったのかについて検討がなされたものの、明確な結論は出ていない。 また、小型の機体に14種類もの観測機器を積んだ基本設計そのものに無理があったとも考えられる。日本初の本格的惑星探査であるからこそ、観測機器を減らした分の重量を燃料や予備の制御装置に振り分け、信頼性を向上させるべきではなかったのか、あるいはハレー彗星を観測した「[[さきがけ (探査機)|さきがけ]]」「[[すいせい]]」のように2機同時に打ち上げて探査自体の成功率を上げるべきだったのではないか、といった意見もある(実際、アメリカやソ連でも初期の惑星探査で2機同時に打ち上げられることが多かった)。 一方で、当時の状況では一機に多数の観測機器を積まざるをえない面もあった。宇宙科学研究所の予算では[[M-Vロケット]]の打ち上げは1年に1度で限界で、スケジュールは数年先まで埋まっている。火星探査の機会は計画が進んでいる「のぞみ」しかなく、次の計画はいつになるかわからなかった(事実、「再び火星探査を」という声は[[PLANET計画#計画・構想段階のミッション|MELOS]]<ref>{{cite web|url=http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/science/249998/|title=JAXA構想 日本の火星着陸機 2018年打ち上げ|publisher=iza|date=2009-05-04|accessdate=2009-07-12}}</ref>などその後も何度か上がっているが、2010年代初頭において正式なプロジェクトとして認められたものはない)。仮にそのような計画が認められたとしても、実際の打ち上げまで最低でも10年近くかかってしまう。そのような状況から、様々な研究団体が次々にのぞみへの観測機器の搭載を求め、それに応えた結果、小型の機体に14種類もの観測機器を積む事態になってしまったといえる。 大型の[[H-IIロケット]]を使用すればよかったという意見もある。小さなM-Vを使用したことで、探査機に過剰な小型化、軽量化を強いたのではないかという意見である。しかし、計画の始まった[[1992年]]の時点でH-IIを打ち上げていたのは[[宇宙開発事業団]]で、ISASとはまだ別組織だった。仮に組織の壁を超えて使えたとしても、H-IIの打ち上げ費用は1992年当時で1機180億 - 200億円で、予算が年200億円程度のISASがH-IIを使用するのは現実的ではなかった。<!-- また、H-IIは静止衛星軌道までの地球周辺軌道への衛星打ち上げを目的としたロケットで、惑星間軌道への探査機投入能力はM-Vと比べて高くはない。H-IIより打ち上げ能力が優れている[[H-IIAロケット]]ですら、惑星探査用キックモーターが存在しないため、2006年の時点で金星探査機打ち上げ能力が600kg(M-Vの金星探査機打ち上げ能力は500kg)だった<ref>{{cite web|url=http://www.stp.isas.jaxa.jp/nakamura/lecture/PlanetInquiry2_2006/0118/ExpRoadmap.pdf|format=PDF|title=太陽系探査科学のロードマップ|publisher=ISAS|accessdate=2009-07-10}}</ref>。 - コメントアウトします。ノート参照。--> 当初の計画目的を果たすことは適わなかったが、「のぞみ」の失敗からISASは数多くの深宇宙探査の教訓を得た。[[川口淳一郎]]を始めとした軌道計算チームの粘り強い軌道検討、「1ビット通信」という極限での通信確保のノウハウなど、これらの経験は小惑星探査機「[[はやぶさ (探査機)|はやぶさ]]」に生かされ、将来の惑星探査にも活用される。のぞみの失敗当時は、ぎりぎりまで運用が続けられたことに対して予算の無駄遣いだったという批判もあった。その運用実績がはやぶさに生かされるというISASの主張についても「論点のすり替え」だと批判する宇宙アナリストもいた<ref>[[中冨信夫]]『日本の衛星はなぜ落ちるのか』 ([[光文社]][[ペーパーバック]]ス) 2004年</ref>。しかし結果としてはやぶさは通信途絶など度重なるトラブルを経ながら、いつ壊れてもおかしくないぎりぎりの状態で地球帰還を果たしており、のぞみの極限状態の運用経験は十二分に活かされる形となった。 == メッセージ == 「のぞみ」には、日本全国から寄せられた名前が搭載されていた。これは多額の費用を必要とする火星探査に国民の理解を深めてもらおうと、[[宇宙科学研究所]]の広報を担当していた[[的川泰宣]]教授が「あなたの名前を火星へ」というキャンペーンとして提案したものである。2 cm×6 cmに書き込まれた各人の名前を縮小コピーして、アルミ板に焼き付けてのぞみに載せるのである。1万人分も集まればよいだろうと見込んでいたが(実際はそれより少ないと予想していた)、応募は実に27万694人分(動物も含む)にも及んだ。応募のはがきは打ち上げ直前の[[1998年]]の年明けから1日平均500通、多いときで4000通が宇宙科学研究所に届いた。宇宙科学研究所では全職員に協力を要請し、連日連夜、はがきから名前を切り抜く事態となった。 応募された名前の全ては 4 cm×3 cmのアルミ板20枚に焼き付けられた。このアルミ板はのぞみの回転バランスを調整するおもりとして組み込まれ、宇宙へ送られた。はがきには名前のみならず、宇宙科学研究所やのぞみへの応援であったり、名前にこめた応募者の想いなどが書かれていた。また、このアルミ板には、のぞみの科学主任で打ち上げを前にして亡くなった[[山本達人]][[宇宙科学研究所]][[助教授]]の遺影も焼き付けられた。火星探査機としての役割を終えたのぞみは、この27万人の名前とともに宇宙空間を飛び続けている。 == 出典 == {{reflist}} == 関連項目 == * [[PLANET計画]] * [[宇宙探査機]] * [[はやぶさ (探査機)]] * [[あかつき (探査機)]] == 関連書籍 == * [[松浦晋也]] 『恐るべき旅路:火星探査機「のぞみ」のたどった12年』 [[朝日ソノラマ]]、2005年5月。ISBN 4-257-03700-8。 ** 前記再出版 — [[朝日新聞社]]、2007年10月。ISBN 978-4-02-213809-5。 ==外部リンク== * [http://www.stp.isas.jaxa.jp/nozomi/ のぞみのページ] * [http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/nozomi/index.shtml のぞみ(JAXA宇宙科学研究所)] * [http://moon.jaxa.jp/ja/mars/exploration/nozomi/index.html のぞみ(月探査情報ステーション)] * [http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/uchuu/reports/04061101.pdf 第18号科学衛星 (PLANET-B)「のぞみ」の火星周回軌道への投入失敗に係る原因究明及び今後の対策について(宇宙開発委員会)(PDF)] {{日本の宇宙探査機・人工衛星}} {{失敗した火星ミッション}} {{DEFAULTSORT:のそみ}} [[Category:火星探査機]] [[Category:日本の宇宙探査機]] [[Category:1998年の宇宙飛行]]
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