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[[ファイル:Funazushi.jpg|thumb|300px|right|[[鮒寿司]]]] '''なれずし'''(熟れ鮨(鮓)、馴れ鮨(鮓))は、主に[[魚]]を[[塩]]と[[飯|米飯]]で[[乳酸発酵]]させた食品である。現在の[[寿司]]は[[酢飯]]を用いるが、なれずしは乳酸発酵により酸味を生じさせるもので、これが本来の鮨(鮨)の形態である。現在でも各地でつくられている。現在の主流である[[寿司#握り寿司|にぎり寿司]]を中心とした[[早ずし]]([[江戸前寿司]])とは全く違う鮨(鮓)である。 == 概要 == [[冷蔵庫]]などなかった[[古代]]に動物性[[タンパク質]]を保存するための知恵として生まれた。魚貝や獣肉、[[野菜]]や[[山菜]]を飯に漬け、重石をして数日から数ヶ月、或いは数年間[[乳酸発酵]]させる。[[雑菌]]の繁殖を抑え、また、[[嫌気性発酵]]を促すために[[日本酒]]が加えられることもある<ref name=itou2006>{{cite journal | author = Kouji ITOU, Shinsuke KOBAYASHI, Tooru OOIZUMI, Yoshiaki AKAHANE | year = 2006 | title = Changes of proximate composition and extractive components in narezushi, a fermented mackerel product, during processing | journal = Fisheries Science | volume = 72 | issue = 6 | pages = 1269–1276 | doi = 10.1111/j.1444-2906.2006.01285.x}}</ref>。[[嫌気呼吸#嫌気的解糖|乳酸発酵]]作用によって酸っぱくなり、[[pH]]の低下により雑菌の繁殖を抑えつつタンパク質の分解に伴う[[アミノ酸]]系エキス成分による[[うま味]]が増加する<ref name=itou2006 />。しかし、嫌気性発酵を行うため[[ボツリヌス菌]]による食中毒が報告されることがある<ref>[http://dx.doi.org/10.14840/jsfm1984.9.177 1991年青森県内で発生した2事例のE型ボツリヌス食中毒] 食品と微生物 Vol.9 (1992) No.3 P177-181</ref><ref>[http://idsc.nih.go.jp/iasr/CD-ROM/records/14/16206.htm (秋田県)県内初のA型ボツリヌス食中毒の概要と当所の検査対応 1993/8] 秋田県</ref>。 == 日本のなれずし == 日本のなれずしは、[[弥生時代]]に[[稲作]]が渡来したのと同時期にもたらされたものとする見解がある<ref>篠田統『すしの本』、柴田書店、[[1966年]](昭和41年)。石毛直道・ケネス=ラドル『魚醬とナレズシの研究』、岩波書店、[[1990年]](平成2年)。</ref>が、これは、飯に漬けて発酵させるという製法から米に結び付けて説明されているもので、明証があるわけではない。[[平安時代]]中期に制定された[[延喜式]]には[[西日本]]各地の[[租庸調|調]]として様々ななれずしが記載されている。[[アユ]]や[[フナ]]、[[アワビ]]などが多いが、[[イノシシ]]、[[シカ]]といった獣肉のものも記述されている<ref>{{Cite journal|和書 |author=櫻井信也 |year=2002 |title=日本古代の鮨(鮓) |journal=続日本紀研究 |volume= |issue=339 |pages= |publisher= |naid= |issn= }}</ref>。従来の見解では、[[室町時代]]に発酵期間を数日に短縮し、「漬け床」の飯も食する「生成(ナマナレ)」が始まり、[[江戸時代]]になると[[酢]]が出回るようになり、発酵によらずに[[酢飯]]を使用した寿司が作られてそれが主流となるとされていた<ref>篠田統『すしの本』、柴田書店、[[1966年]](昭和41年)。</ref>。 しかし、「生成(ナマナリ、ナマナレ)の鮨(鮓)」というのは、十分に完成していない鮨(鮓)という意味ではあるが、その種類は[[フナ]]に限られており、[[ふなずし]]の食べ方を指す言葉であると考えられる<ref>{{Cite journal|和書 |author=櫻井信也 |year=2013 |title=室町時代から織豊時代の鮨(鮓) |journal=栗東歴史民俗博物館紀要 |volume= |issue=19 |pages= |publisher= |naid= |issn= }}</ref>。飯を共に食することはなく、発酵が不十分であることから、酢に浸けて食べるものである。さらに、室町時代以降に「なれずし」の発酵期間が短縮され、「漬け床」の飯も食用とされたということを史料で確認することもできない<ref>{{Cite journal|和書 |author=櫻井信也 |year=2013 |title=室町時代から織豊時代の鮨(鮓) |journal=栗東歴史民俗博物館紀要 |volume= |issue=19 |pages= |publisher= |naid= |issn= }}</ref>。 戦国、織豊時代以降には、新たに[[ドジョウ]]や[[ナマズ]]、[[ウナギ]]など魚の種類が増加し、[[ナス]]や[[ミョウガ]]、それに[[タケノコ]]などの野菜類を材料としたものが現れる<ref>{{Cite journal|和書 |author=櫻井信也 |year=2013 |title=室町時代から織豊時代の鮨(鮓) |journal=栗東歴史民俗博物館紀要 |volume= |issue=19 |pages= |publisher= |naid= |issn= }}</ref>。 日本各地にはなれずしが[[郷土料理]]として残っている。主なものを列挙すると、 * 日本海側各地に[[アジ]]、[[ニシン]]などを使ったなれずしが多く、 * [[滋賀県]]の[[ふなずし]]、[[アユ]]や[[ハス_(魚)]]や[[オイカワ]]など。 * [[和歌山県]]南部の[[サンマ]]、和歌山県北部の[[サバ]]。 * [[福井県]][[小浜市]]の[[へしこ]]、[[勝山市]]の塩サバ。 * [[岐阜県]]の[[アユ]]。 * [[石川県]]・[[富山県]]には冬の寒さを利用して徐々に熟成させる[[カブ|かぶら]]と[[ブリ]]を使った[[かぶら寿司]]。 * [[北海道]]のニシン、[[サケ]]<ref>[http://dx.doi.org/10.3358/shokueishi.37.5_J246 サケのいずしによるボツリヌス菌食中毒] 食品衛生学雑誌 Vol.37 (1996) No.5 P J246</ref>。 * 東北地方の[[イワナ]]、[[ウグイ]]など<ref>[http://dx.doi.org/10.3358/shokueishi.39.J196 いわなのいずしによるボツリヌス中毒] 食品衛生学雑誌 Vol.39 (1998) No.2 P J196-J197</ref>。 また[[麹|米麹]]を併用するものには、 * [[北海道]]・[[東北地方|東北]]の[[飯寿司]]。 * [[秋田県]]の[[ハタハタ寿司]]。 * 秋田県には、[[アケビ]]と[[ヤマブドウ]]。 === 分類 === 「漬け床」の飯を食べないものを「ホンナレ」、飯を食べるものを「ナマナレ」と名付ける見解がある<ref>日比野光敏『すしの貌』、大巧社、[[1997年]](平成9年)。同『すしの歴史を訪ねる』〈岩波新書 新赤版六四一〉、岩波書店、[[1999年]](平成11年)。同『すしの事典』、東京堂出版、[[2001年]](平成18年)。</ref>が、「ナマナレ」、すなわち「生成の鮨(鮓)」とは、十分な熟成を経ない半熟の鮨(鮓)ではあるが、飯を共に食べるものではなく、また、フナのすしの食方を表す言葉であり、それまでの「なれずし」が室町時代以降に「生成(ナマナリ、ナマナレ)」になるという見解は誤りである<ref>{{Cite journal|和書 |author=櫻井信也 |year=2013 |title=室町時代から織豊時代の鮨(鮓) |journal=栗東歴史民俗博物館紀要 |volume= |issue=19 |pages= |publisher= |naid= |issn= }}</ref>。篠田統は、数箇月間以上の「飯漬け」を行う現在の滋賀県の「ふなずし」を奈良時代以来の「なれずし」、これよりも「飯漬け」期間が遙かに短い和歌山県のサバの「なれずし」などを「生成」であるとしたが、そもそも、和歌山県のサバの「なれずし」は、サバを「開き」にして骨を抜いており、魚を一尾そのまま飯に漬け、骨が柔らかくなるまで長期間の「飯漬け」を行う滋賀県の「ふなずし」と比較すれば、醱酵期間が短くなることは当然ということになる。[[茄子]]の「なれずし」は、数日で食されているが、これも同じである<ref>{{Cite journal|和書 |author=櫻井信也 |year=2013 |title=室町時代から織豊時代の鮨(鮓) |journal=栗東歴史民俗博物館紀要 |volume= |issue=19 |pages= |publisher= |naid= |issn= }}</ref>。そのため、「ホンナレ」と「ナマナレ」という分類は誤りということになる。 米飯のみを用いて発酵させ乳酸などの[[有機酸]]の風味が豊富な「なれずし系」と、寒冷地で考案された製法で、[[麹]]を添加することで発酵を促しつつ糖化により甘みが付加される「[[飯寿司]](いずし)系」に分類する見解もある<ref name=ishikawa>石川県水産総合センター [http://www.pref.ishikawa.jp/suisan/center/gijyutukaihatu/narezusi.pdf 奥能登のなれずし調査報告書], 石川水総資料第32号, 平成19年10月、</ref>。。なれずし系には、[[琵琶湖]]周辺の[[鮒寿司]]、[[和歌山県]]、[[富山県]]のサバのなれずし、[[岐阜県]]、[[兵庫県]]のアユのなれずしなどがあり、いずし系には、[[秋田県]]の[[ハタハタ寿司]]、[[北海道]]の[[サケ]]のいずし、[[石川県]]の[[かぶら寿司]]などがある。 == 東南アジアのなれずし == [[魚肉]]の貯蔵形態としてのなれずし(鮓)は[[東南アジア]]に点々と見られ、中国では鮓(サ)、[[台湾]]の[[高砂族]]ではトマメ、トワメ、[[カンボジア]]ではファーク(phaak)、[[タイ王国|タイ]]では[[プラ・ハー]]、プラ・ラー、[[ボルネオ]]の[[イバン族]]ではカサム(kassam)、[[陸ダヤク]]族ではトバ(tobah)と呼ばれる。この他にも[[ラオス]]や[[フィリピン]]・[[ルソン島]]の一部、中国南部の[[ミャオ族|苗族]]などのものが知られている<ref>石毛直道・ケネス=ラドル『魚醬とナレズシの研究』、岩波書店、[[1990年]](平成2年)。</ref>。。中国では[[河南省|河南]]の非[[漢人]]文化に発し、徐々に[[華北]]地方にも広がり[[南宋]]時代に大流行したが、[[元 (王朝)|元朝]]時代に急激に衰え、[[明|明朝]]、[[清|清朝]]にかけて消滅していき、中国南部の[[中国の少数民族|少数民族]]の中にだけ残ったとされる。元の支配層が魚に興味を示さなかったことに加え、米や酒などの乳酸発酵原料が不足していたため、鮓が[[膾]]や[[塩辛]]に近いものに変化していき、そちらに吸収されていったためと考えられる。明代の記録には、[[広西省]]の蛮族が飯を手で丸めたものに魚酢を乗せて食べるのをご馳走とした、という記録がある<ref>篠田統『すしの本』、柴田書店、[[1966年]](昭和41年)。</ref>。 そのままで食べる場合もあるが、むしろ料理の材料として、[[スープ]](独特の酸味が出る)や[[炒め物]]の具などに用いられる。 == 出典 == * [http://hdl.handle.net/10083/11575 中澤佳子:郷土料理の地理学的研究 : かぶらずし・大根ずしを例として] お茶の水女子大学紀要論文 お茶の水地理 1984-5-15 Vol.25 p.45-50 == 脚注 == {{Reflist|2}} == 関連項目 == * [[鮒寿司]] * [[発酵食品]] * [[寿司]] == 外部リンク == * [http://hdl.handle.net/10623/17707 東西の食文化の日本海側の接点に関する研究(II) : いずし系すし及びなれずし系すし] 県立新潟女子短期大学研究紀要 1989-3,26,41,510 ISSN:0288-3686 * [http://dx.doi.org/10.11428/jhej.62.633 16SリボソームRNA遺伝子クローンライブラリー法による三重県産コノシロなれずし中の細菌群集構造解析] 日本家政学会誌 Vol.62 (2011) No.10 p.633-637 * [http://dx.doi.org/10.2740/jisdh.10.2_70 北海道の自家製いずしの諸成分および微生物について] 日本食生活学会誌 Vol.10 (1999-2000) No.2 P70-74 {{Food-stub|なれすし}} {{DEFAULTSORT:なれすし}} [[Category:寿司]] [[Category:日本の水産加工品]] [[Category:水産加工品]] [[Category:日本の発酵食品]] [[Category:発酵食品]] [[Category:中国の米料理]] [[Category:日本の米料理]]
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