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{{Redirect|シグマ}}
{{ギリシア文字|letter=sigma uc lc}}
{{el|'''Σ''', '''σ''', '''ς'''}}（シグマ、希: '''{{Lang|el|σίγμα}}''' / '''{{Lang|el|σῖγμα}}''', 英: ''{{Lang|en|sigma}}''）は、[[ギリシア文字]]の一つ。伝統的な配列では 18 番目にくる。数価<ref>文字に当てはめられた数値のこと。[[ギリシアの数字]]を参照。</ref>は200で、現代ギリシア語では語末形の "ς" を 6を表す "ϛ" （[[スティグマ (ギリシア文字)|スティグマ]]）の代用として用いる。[[ラテン文字|ラテンアルファベット]]の[[S]]、[[キリル文字]]の[[С]]はこの文字に由来する。

==歴史==
シグマの字形とギリシア・アルファベット上の位置は、[[フェニキア文字]]のシン({{Unicode|𐤔}}、[[Image:Phoenician sin.svg|20px]])に由来する。

===語源===
「シグマ」という名前は、ひとつの仮説によると<ref name="jeffery25">{{cite book|last=Jeffery|first=Lilian H.|title=The local scripts of archaic Greece|place=Oxford|publisher=Clarendon|year=1961|pages=25–27}}</ref>、フェニキア文字のサメクから来ている。別の理論によると<ref name="woodard">{{cite encyclopedia|encyclopedia=Encyclopedia of ancient Greece|editor-first=Nigel Guy|editor-last= Wilson|title=Alphabet|first=Roger D.| last=Woodard|year=2006| publisher=Routldedge| place=London| page=38}}</ref>、この字の本来の名前は'''[[Ϻ|サン]]''' (現在は別の、今は使われなくなった字を指す名前になっている)であっただろうとし、「シグマ」は、ギリシャ人が新たにつけた名前で「シーという音」を意味するという。動詞 {{lang|grc|σίζω}} <small>シッゾー</small> < {{unicode|*sig-yō}} 「シーという音を出す」の名詞化に由来する。

===エシュの大文字===
シグマの大文字は、現代においては'''エシュ''' (小文字は {{unicode|ʃ}}) の大文字として[[ラテン文字]]に再導入された。

=== 三日月形のシグマ ===
[[File:Madaba Jerusalem Mosaic.jpg|thumb|left|モザイクによる6世紀の[[マダバ地図]]では、[[エルサレム]] ("Η ΑΓΙΑ ПОΛΙΣ" 「神聖都市」) に三日月形のシグマを使う]]
[[File:Metochion Gethsimanis, Jerusalem.jpg|thumb|right|upright|
エルサレムにある飾り板に {{lang|grc|Μετόχιον Γεθσημανῆς}} ([[ゲッセマネ]]の[[ポドヴォリエ|メトヒオン]]) という語が語中・語末ともに三日月形のシグマを使って記されている]]
ヘレニズム時代(紀元前4-3世紀)の手書きのギリシャ語では、碑文体の「{{lang|grc|Σ}}」は簡易化して '''C''' に似た形になった<ref>Edward M. Thompson (1912), ''Introduction to Greek and Latin paleography'', Oxford: Clarendon. p.&nbsp;108, 144</ref>。同じ字形は紀元前4世紀以降の硬貨にも見える<ref>[http://www.parthia.com/fonts/letterforms_usage.htm Parthia.com]: ''Numismatica Font Projects''</ref>。この字形が古代末期から中世にかけての国際的標準になった。このシグマは現代では三日月に似ているために「三日月形のシグマ」(lunate sigma) と呼ばれる(大文字 {{Unicode|Ϲ}}、小文字 {{Unicode|ϲ}})。

現在でもギリシャではこの形が装飾目的に広く使われる。特に宗教的・教会においてよく使われ、また古典ギリシャ語のテキストの現代における活字版にも用いられる。[[キリル文字]]の'''{{unicode|[[С]]}}''' ({{ipa|s}}) や、[[コプト文字]]の {{coptic|Ⲥ}} (シマ) も三日月形のシグマに由来する。

三日月形のシグマに点を付した字(U+03FE {{unicode|Ͼ}}、{{lang|el|σίγμα περιεστιγμένον}} <small>シグマ・ペリエスティグメノン</small>) は、[[サモトラケのアリスタルコス]]によって校正記号として使われ、この記号を付した行が正しくない場所にあることを示した。同様に、左右逆のシグマ({{unicode|Ͻ}}、{{lang|grc|ἀντίσιγμα}} <small>アンティシグマ</small>)も正しくない場所にある行を示すことがあった。アンティシグマに点をつけた字({{unicode|Ͽ}}、{{lang|grc|ἀντίσιγμα περιεστιγμένον}} <small>アンティシグマ・ペリエスティグメノン</small>)は、その後ろにある行を並べ直す必要があるか、または優先度の明らかでない異読があることを示すことがあった。

== 文字としての用法 ==
[[音価]]は /s/、有声子音({{lang|el|μ, ν}})が続く場合は /z/。

小文字は、単語の終わりでは {{lang|el|'''ς'''}}、それ以外では {{lang|el|'''σ'''}} のように書かれる。{{lang|el|'''ς'''}} は'''ファイナルシグマ'''と呼ぶ。

== 記号としての用法 ==
* 大文字の 「Σ」は、
** [[素粒子物理学]]で[[アイソスピン]]が1、[[ストレンジネス]]が-1の[[ハイペロン]]（<math>uus</math>, <math>uds</math>, <math>dds</math>）を表す。
** 数学で、数列の和（[[総和]]）を表す（Σ は英字の [[S]] に対応し、和は英語で Summation と言う）。<br><math>
  \sum_{i=m}^{n} a_i = a_m + a_{m+1} + \cdots + a_n
</math>(定義)
***[[Microsoft Excel]]などの表計算ソフトでは、合計を計算する関数を登録するボタンの表記にΣを使用している。
**[[物理学]]において、[[座標|座標系]](''s''ystem)を表す記号として用いる。

* 小文字の「σ」は、
** [[統計学]]で、[[標準偏差]]を表す。
** 「[[σ結合]] ([[化学]])」
** [[数学]]で可算和を意味する接頭辞。σ-コンパクト、[[完全加法族|σ-algebra]] など。
** [[Τ|τ]]とともに[[対称群|置換]]を表す記号。
** [[パウリ行列]] (数学、[[物理学]])
** [[材料工学]]の式では[[応力]](''s''tress)を表す。
** [[電気工学]]の式では[[電気伝導度]]を表す。
** [[音韻論]]で、[[音節]]を表す。
** [[対称操作]]のひとつである[[鏡映|鏡映操作]]を表現する記号。具体的な使用例は[[分子対称性]]を参照。

== 符号位置 ==
{| class="wikitable"
|- style="text-align: center;"
!大文字!![[Unicode]]!![[JIS X 0213]]!![[文字参照]]!!小文字!!Unicode!!JIS X 0213!!文字参照!!備考
{{ULu|03A3|931|&amp;Sigma;|1-6-18|03C3|963|&amp;sigma;|1-6-50|}}
{{ULu|03F9|1017||&#45;|03F2|1010||&#45;|三日月形のシグマ}}
{{ULu|03FD|1021||&#45;|037B|891||&#45;|アンティシグマ}}
{{ULu|03FE|1022||&#45;|037C|892||&#45;|シグマ・ペリエスティグメノン}}
{{ULu|03FF|1023||&#45;|037D|893||&#45;|アンティシグマ・ペリエスティグメノン}}
|}
{| class="wikitable" style="text-align:center;"
!記号!![[Unicode]]!![[JIS X 0213]]!![[文字参照]]!!名称
{{CharCode|962|03C2|1-6-57|GREEK SMALL LETTER FINAL SIGMA|sigmaf|font=Unicode}}
{{CharCode|8721|2211|-|（数学記号）|sum|font=Unicode}}
|}

== 脚注 ==
<div class="references-small"><references /></div>

[[Category:ギリシア文字|しくま]]