数字付き低音

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テンプレート:出典の明記 数字付き低音とは通奏低音和音楽器の演奏(リアライズ)のために、音符の上または下に和音を指定する数字を付けた楽譜をいう。普通、バス記号(ヘ音記号)で書かれる。

数字は、低音からの音程の度数を表すもので、「3」とあれば、低音の上3度の所に音があることを示す。ただし、実際にそれらの音をどのオクターヴに置くかは演奏者に任され、演奏者は和声的に正しくなるように、4声や3声で演奏する。当然、和声的な正しさだけでなく、音楽的に優れたものであることが要求され、自由な装飾を付けることも行われる。

記号の意味

以下の譜例において、それぞれ上の五線は数字付き低音、下は数字付き低音が示す和音である。

  • 譜例a)は何も数字が付いていないが、これは<math>\ \!^{\ 5}_{\ 3}\ </math>を示す。すなわち、低音の3度上と5度上に音を置く。b)c)d)は同じである。
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  • 譜例e)のように6がある時は、<math>\ \!^{\ 5}_{\ 3}\ </math>の5の代わりに6度の音を置くことを示す。すなわち、<math>\ \!^{\ 6}_{\ 3}\ </math>で、f)と同じである。六の和音と呼ぶ。
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  • 譜例g)のように4がある時は、3の代わりに4度の音を置くことを示す。すなわち、<math>\ \!^{\ 5}_{\ 4}\ </math>で、h)と同じである。
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  • 譜例i)のように<math>\ \!^{\ 6}_{\ 4}\ </math>がある時は、3と5の代わりに4度と6度の音を置くことを示す。四六の和音と呼ぶ。
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  • 譜例j)のように7がある時は、<math>\ \!^{\ 5}_{\ 3}\ </math>に7を加えることを示す。すなわち<math>\ \!^{\,_7}_{\,^5_3}\ </math>で、7の和音である。
    • フランス式では、属七の和音に限り、譜例k)のように「 + 」を加える。この+は、属七の第3音を示し、本来「+3」と書かれるべきものであるが、後述の3度の音の臨時記号の場合と同じように3を省略する。またこの書き方の場合には、後述のような臨時記号は常に不要である。
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  • 譜例l)のように<math>\ \!^{\ 6}_{\ 5}\ </math>がある時は、前述のe)のように6だけが書かれた場合と異なり、5度の音を残しながら6度の音を加えることになる。すなわち<math>\ \!^{\,_6}_{\,^5_3}\ </math>である。五六の和音と呼ぶ。
    • フランス式では、属七の第1転回の和音のような場合、5度が減5度となるため、譜例m)のように5に斜線を引く。
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  • 譜例n)のように<math>\ \!^{\ 4}_{\ 3}\ </math>がある時は、g)のように4だけが書かれた場合と異なり、3度の音を残しながら4度の音を加え、さらに5を6度に変えることを示す。<math>\ \!^{\,_6}_{\,^4_3}\ </math>とも書かれる。三四の和音と呼ぶ。
    • フランス式では、属七の和音の第2転回の和音の場合、6度の所に第3音が来るため、譜例o)のように「 +6 」と書く。臨時記号は常に不要である。
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  • 譜例p)のように2がある時は<math>\ \!^{\,_6}_{\,^4_2}\ </math>を示す。二の和音と呼ぶ。<math>\ \!^{\ 4}_{\ 2}\ </math>と書かれることが多い。
    • フランス式では、属七の和音の第3転回の和音の場合、4度の所に第3音が来るため、譜例q)のように「 +4 」と書く。臨時記号は常に不要である。
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  • 和音の中に臨時記号がある場合には、譜例r)のように数字の左または右に添える。
    • 省略される数字の場合にも、譜例s)のようにその数字が明示される。ただし、「 3 」は省略される。すなわち、譜例t)のように♭や♯だけが書かれた場合には、それが3度の音に付くことを示す。
    • 譜例u)は、本来書かれるべき3を♭で代用してしまっている例で、v)と同じである。
    • 半音上げる意味で「 + 」が使われることがある(フランス式とは別である)。譜例w)の場合、譜例x)の♯と同じ意味であるが、譜例y)のように調号の付くような場合には意味が違ってくる。この場合、z)のナチュラルと同じある。
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リアライズの実例

実際のリアライズ(数字等を読んで演奏すること)では、上の音のオクターブの選択は演奏者に任される。リアライズにおいては和声的に正しく、また美しくあることが求められる。次は例である。2段の5線の内、下の段とその下の数字が数字付き低音である。上の段は、そのリアライズであり、上下の段を一緒に演奏する。

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譜例中、最初の和音は数字がないので、<math>\ \!^{\ 5}_{\ 3}\ </math>である。ニ/D音の3度上の音(ヘ/F音)と5度上の音(イ/A音)が加えられ、これら3音が右手で任意のオクターブで弾かれる。以下、和声的に続けられる。黄色部分の横線は、上声において同じ音が保持されることを示す。緑部のように、低音はそのままで上声が変化することもある。ピンク色部分では自由な装飾がなされており、最初の音を除いて数字では示されていない(和音外音)。

コードネームとの類似点、相違点

数字付き低音は、和音の音符をすべて書かずに和音を示すという点で、コードネームと似ている。また、数字の意味もその意味自体は同じであって、コードネームのG7の7と、数字付き低音でト/G音に7を付けたときの7の数字が示す音は、ハ長調の場合同じで、それが示す和音も全く同じである。C6とハ長調でハ/C音に<math>\ \!^{\ 6}_{\ 5}\ </math>を付けた時の和音は同じで、6の数字が示す音も同じである。

決定的な相違点は、数字付き低音が調号に依存しているのに対し、コードネームは調号に依存していないことである。すなわち、コードネームでG7はどの調でもG-B-D-Fであるが、数字付き低音の場合は調号によって異なる和音になる。また、たとえば数字付き低音で♭があればリアライズした楽譜上で♭になるということであるが、コードネームでは減音程や短音程を表す。

また、コードネームが和音のルート(根音)から度数を数えるのに対し、数字付き低音では根音に関係なく低音から数える。だから、G7のコードの第1転回形はコードネームではG7/Bであるのに対し、数字付き低音ではロ/B/H音に<math>\ \!^{\ 6}_{\ 5}\ </math>と、全く違ってくる。