接ぎ木

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ファイル:Zweijährige-Geißfußveredelu.jpg
V字に接ぎ木し固定された林檎の木

接ぎ木(つぎき)とは、2個以上の植物体を、人為的に作った切断面で接着して、1つの個体とすることである。このとき、上部にする植物体を穂木、下部にする植物体を台木という。通常、遺伝的に異なる部分から構成されている個体を作る技術として用いられるが、果樹等の育種年限の短縮化、接ぎ木雑種の育成などの目的で行われる場合もある。

概説

ファイル:Grafting of Dekopon.jpg
柑橘類の台木にデコポンを接ぎ木した例(左は接ぎ木後に新たな葉が成長、右上は接ぎ木に失敗し枝が枯れる)

接ぎ木は、挿し木取り木と同じく有用植物を枝単位で栄養生殖させる方法である。他の方法と根本的に異なるのは、目的とする植物の枝から根を出させるのではなく、別の植物の根の上に目的の植物の枝をつなぐことである。接ぎ穂と台木は近縁な方が定着しやすいが、実際には同種ではない組合せもよく使われる。うまくいけばつないだ部分で互いの組織が癒合し、一見は一つの植物のような姿で成長する。勿論実際にはこの接触させた位置より上は目的の植物の枝から生長したものであり、それより下は台木の植物のものであり、遺伝的に異なっている。但しまれにこれらが混じり合ってキメラや、更に遺伝子のやりとりが行われることもある(後述)。

接ぎ木の目的は接ぎ穂とする植物の増殖であることが多い。挿し木とは異なってはじめから根があることが有利な点となる。欠点は、台木となる成長した植物を準備する必要があるために、挿し木ほど効率がよい繁殖が出来ない。

接ぎ木の目的としては、このほかに接ぎ穂にする植物の根を台木の植物に置き換えることそのものである例もある。改良された農業品種は性質が弱い場合がままあり、例えば根の病害虫に対して弱い場合もある。このようなとき、より強健な野生種の根を台木にしてその品種を接ぎ木するのが有効であることがある。更に特殊な例では、葉緑体を持たなくなった品種を野生種の上に接いで育てる、というサボテンの例もある。コニファーでは、根張りの悪い品種の欠点を補うために接ぎ木での繁殖が行われることがある。

よくある失敗としては、台木の方から新芽が出た場合、こちらが元気になっていつの間にか接ぎ穂の方がなくなってしまう、というのがある。たとえばライラックを植えていたのに花が咲くと何故かイボタノキだった、というのがこれにあたる。

国際花と緑の博覧会で展示されたトマピーナも接ぎ木により作られた。

目的と実例

新品種の増殖、保存および収穫までの期間の短縮

  • 果樹一般
    • 穂木:新品種
    • 果樹の枝変わりや新品種は遺伝的に固定していないので、増殖には接ぎ木を利用する。

病害虫被害の回避

経済的価値(品質・収穫数)の向上

植物体の矮化

接ぎ木手法の種類

枝接ぎ切接ぎ腹接ぎ割接ぎ
を持った枝を穂木にして接ぐ。穂木と接触する台木の面の切り方で3方法に分けられる。切接ぎは、台木上端から側面を切り下げてできた形成層断面の間に穂木を挿入する接ぎ方。腹接ぎは、台木途中から側面を切り下げてできた形成層断面の間に穂木を挿入する接ぎ方で、やり直し可能。割接ぎは、台木上端から中央を切り下げてできた形成層断面の間に穂木を挿入する接ぎ方。
芽接ぎ
台木の樹皮を剥ぎ、そこに芽を接ぐ。成功・失敗が早く判定でき、やり直しも可能。
根接ぎ
台木の根を穂木に接ぐ。樹勢回復のため用いられることもある。
呼び接ぎ
穂木を元の植物から切り離さない状態で接ぐ方法。台木と穂木を削ぎ、両者の形成層を密着させ、活着を確認した後で、穂木下部を切り除く。
高接ぎ
穂木の状態とは関係なく、台木に接ぐ位置で分けた呼び方。植物の高い位置で接ぐ方法。枝接ぎ・芽接ぎなどで行われる。
刺し接ぎ
サボテン科で用いられる高接ぎの一種で、木の葉サボテンを台木にする場合台木先端を尖らせて、玉サボテンなどの穂木に刺して接ぐ方法がある。

備考

  • 花成ホルモン(フロリゲン)の生成についての研究で、接ぎ木を用いた実験が広く知られている。
  • 接ぎ木による周縁キメラの作成[2]。2種類のトマト属(Lycopersicon、現在はナス属Solanumに分類される)植物を材料に使って接ぎ木した後、接ぎ木の接合面を横切る形で切断した。その切断面から生じた新芽は周縁キメラであることが確認された。
  • 有毒植物を台木とし食用植物を穂木とする接ぎ木は、チョウセンアサガオナスにおいて食中毒例の報告がある。有毒成分の移動に関しては研究結果を待つ必要があるが、避けるべきであると考えられる。

接木雑種

接木雑種(つぎきざっしゅ)とは、異なる品種の作物を接ぎ木した結果、変異などにより、生じた新種。栄養雑種(えいようざっしゅ) ともいう。

古代ギリシア人は接ぎ木によって果実の香りや色を改良するよう試みた[3]。ソ連のルイセンコは接木のみで雑種ができると主張し、遺伝的な性質までも変化させるという学説を流布した。スターリン、ソ連政府のお墨付きによって絶対的な学説とされたが、科学的な実証性のない学説であったため、その後、接木によって新しい品種はできないとされた。

ルイセンコ理論が否定された後も、接ぎ木によって、新しい品種をつくろうとする農業生産者の取り組みは独自にすすめられた。最近では、佐賀県武雄市の生産者が温州ミカンの木にレモンの苗木を接ぎ木することで、味が甘く形が丸いレモンをつくることに成功している[4]。現代の正確なDNA分析によって確認されている[5]接木雑種としてトウガラシとピーマンの接ぎ木で生まれた「ピートン」がある[3]。 「サイエンス」の2009年5月1日号には、ドイツのマックス・プランク研究所の研究者が接ぎ木で細胞間の遺伝物質の交換が生じることを示唆する論文が発表された[6][7]

脚注

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関連項目

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  3. 3.0 3.1 テンプレート:Cite web
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