はり師

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はり師(はりし、テンプレート:Lang-en-short)は、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律によるはり師国家試験に合格した者をいう。はり師、きゆう師、両方を取得している者を一般的に鍼灸師という。

概説

日本古来からの東洋医学体系に根ざした物理療法の専門家資格。戦前は「鍼医」と呼ばれた。昭和22年の法律217号により「はり師」という資格名が定められた。同法には「きゆう師」と「あん摩マッサージ指圧師」という資格を定めている。三者とも、疾病への治療的介入技法の専門資格であるが、これら技法の疾病に対する作用機序は現在の科学レベルで解明できるところまでは解明されているが、[1][2][3]未だ不明な点も残る。そのため、古来より効果は知られているが、作用機序の一部不明なこれらの技術の専門資格に関しては、業務内容についての明確な規定がなされていない。つまり、古来活用されてきた鍼灸術に関する医療行為に関して、はり師は「はり業」について、きゆう師は「きゆう業」について、あん摩マッサージ指圧師は「あん摩マッサージ指圧業」について、という形での業務独占が規定されており、はり業、きゆう業、あんまマッサージ指圧業に関する内容の厳密な規定は棚上げ状態である[4]。はり師・きゆう師の資格取得のためには、医療者としての基本的な医学知識に加えて、東洋医学漢方経穴)についての履修が必要である[5]

上記のように、法制度上の資格の規定も資格者の養成に関しても、「はり師」は未だ過渡的な状況にある資格であり、この状況の改善が各方面より求められているが、千数百年に渡って構築されてきた経験的技法を解析し、法令の単純な文言に載せるのは容易でなく、この過渡的な状況には見通しが立たないのが現状と言える[6]

はり師の実際

はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧は、日本古来からの医学体系に古代中国(漢時代)や蘭学からの医学体系が加わって、独自の継承と発展を遂げてきている(鍼灸参照)。 はり師の治療業務は、一般には疼痛病変(腰痛、頸部痛、膝痛など)への対応が主体と認識されているが、実際の鍼灸臨床において対応している疾病や症状には多くの内科疾患が含まれており、これらの疾患に対する費用対効果を考えても患者の満足度は高く、これが明治の医制改革後も、鍼灸が連綿と業として成立して来た背景をなしている。

我が国における「鍼」は、「灸(きゅう)」、「あん摩マッサージ指圧」および生薬方である「湯液(とうえき)」とともに、「東洋医学」、「漢方医学」と呼び習わされてきた、医療技術の一つである。湯液も、鍼灸も、我が国においては江戸期に独自の発展を遂げており、大陸における湯液や鍼灸と趣を異にするものに進化している。特に鍼灸は、鍼管(しんかん)の発明により、非常に細い鍼をほぼ無痛で刺入することを可能にし、極細い鍼を使った治療技法として、日本の鍼灸は大陸の技法を大きく越える体系に脱皮したと言われる。日本における「はり師」は、この鍼管を使用した日本の鍼を主体に学習し、指導要綱においても国家試験における実技(実技試験は各養成施設に委託されているが)においても、この鍼管の扱い習熟は必須とされている[7][8]

免許取得者の進路状況アンケート調査報告書 平成23年(東洋療法学校協会が実施・回答率26%)の結果では、 開業した、はき施術所の平均報酬または給与は14,7万円となっており、調査の開始以降、給与は減少傾向にある。[9]

就職ができたとしても自身の生活がやっとの給与しか稼ぐことができず、数年経っても一般企業の大卒初任給に満たない者がほとんどで、結果はり師として廃業を選ぶ者も多い。柔道整復師の免許も取得、または接骨院に勤務し保険診療を主として鍼治療を追加サービスとして提供し生活を維持する形が増加し、純粋な鍼治療院は減少してきている。

法規、資格制度

現在は、厚生労働大臣の指定をうけた財団法人東洋療法研修試験財団がその事務を行っている。
  • その施術の特性から、きゅう師と組み合わせて鍼灸師と呼称したり、きゅう師あん摩マッサージ指圧師と組み合わせて鍼灸マッサージ師もしくは三療師などと呼ばれることもあるが、それぞれに別の資格である。実際には、「はり師」と「きゅう師」に関しては、養成施設(専門学校や盲学校等)において完全に単位の互換がなされており、二つの資格試験受験に必要な単位を取得できる。また、課程によっては、あん摩マッサージ指圧師の受験資格も取得できるものもある。
  • はり師の養成を行う教員は、医師の他、はり師教員、理療科教員の資格取得者などとされている。
  • はり師の国家資格をもって治療の対価を健康保険の療養費として申請する場合、医師の同意書が必要とされているが法的な根拠のあるものではない。往療の判断は、はり師が行う。ただし、医科との健康保険の併給は認められない。
  • あん摩マツサージ指圧師免許、はり師免許及びきゅう師の免許の取得者は、教育職員検定により特別支援学校自立教科助教諭の臨時免許状が与えられる(教育職員免許法施行規則第65条。臨時免許状取得者は定められた経験、単位修得により普通免許状が与えられる)。

はり師の養成

現在のはり師養成は、以下の施設によりなされる。

文部科学省管轄
  • 鍼灸大学(4年制) - 国立1校、私立数校がある。
  • 鍼灸短期大学(3年制)
  • 特別支援学校(旧盲学校)理療科 - 視覚障害の術者はほとんどこちら出身。授業料は無料。
厚生労働省管轄
  • 鍼灸専門学校(3年制) - 全て私立。全国に81校存在する。ほとんどの晴眼免許者はこちら出身。

養成施設毎の受験可能資格の詳細は以下。

はり師の養成を行う教員は、医師の他、はり師教員、理療科教員の資格取得者などとされている。

さらに詳細は、鍼灸養成施設を参照

注釈

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関連団体

関連項目

備考

異なるもの

外部リンク

  • http://acupuncture.jp/dspace/bitstream/10592/17594/1/0904.pdf
  • https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/63/1/63_2/_pdf
  • https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/61/3/61_3_218/_pdf
  • はり師、きゆう師の職掌に関して、骨折脱臼に対する施術を例にとると、あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師は、継続して施術するには医師の同意を必要とするが、はり師・きゅう師に関しては、これらの法令による規定はなされていない。つまり、あんまマッサージ指圧師柔道整復師が、他のパラメディカル資格同様医師のもとにおける現行医学の体系に属するのに対し、はり師・きゅう師は、法制度上、現行医療の範疇に入らない東洋医学(経絡・経穴など)の専門職種と規定され、その範囲での独立性を保持しているとされている。これらの規定を明文化した「鍼灸師法」の成立にむけて、業団を主体とした働きかけは行なわれているが、動きは良くない。
  • あん摩マッサージ指圧師については、これら東洋医学科目について履修はするが、国家試験科目とはなっていない。
  • 現在では、WHO(世界保健機関)を初め、各国において鍼灸が注目され、その効果の検討がなされている。特に欧米における鍼灸研究は大規模なものが多数なされており、今後の鍼灸の作用機序解明に期待がかかる。しかし、歴史的に見てもイニシアティブを発揮するべき我が国の鍼灸研究は、体制が非常に貧弱であり、各方面から批判を浴びている現状もある。また、近年の規制緩和に伴う鍼灸養成校の乱立により、はり師、きゆう師の定員急増と過当競争が問題となったが、近年は入学者自体の減少により小康を保っている。
  • 当然であるが、日本における鍼灸治療において、日本のはり師が他の技法(中国鍼法など)を行なうことに支障は無い。「はり師」は、我が国における医療の中で、「鍼法」として伝承され活用されている技法に関する医療行為を認められた専門職種とされている。
  • 現在、薬剤師とのダブルライセンスが多くなってきている。現行法のもとで、薬剤師は「調剤」として湯液を作成することが可能であり、はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師の資格取得により、東洋医学本来の治療形態の実現が事実上可能になるからと考えられる。
  • http://www.toyoryoho.or.jp/book/an_04.pdf