Sega R-360

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テンプレート:出典の明記 R-360(アールさんろくまる)は1990年11月に発表された、セガ体感型ゲーム筐体である。

概要

x軸とz軸方向に360度の回転機構を持つ体感ゲーム用筐体である。筐体価格が1600万円もする為か、当時の通常のビデオゲームは100円、既存の体感ゲームは200円だったのに対して、標準のプレイ料金は500円と高くついたが、体感ゲームブームと、それまでに無い可動機構により、高額な筐体の割に出回りは悪くなかった。

実運用はそれほど華々しいものではなかったが、高額なプレイ料金にしては都心繁華街の設置店で平日夕方以降引っ切り無しの稼働率だった。一方で立地条件的に稼働率があまり良くなかった店もあった模様である。

安全機構として周囲をセンサーで張り巡らせる事はもちろん、当機はプレイヤーが逆さまになる状況があり得る為、従来のシートベルトに相当する固定機構(①セーフティーバーを下ろす、②左右のシートベルトをセーフティーバーの腹にあたる部分に差し込む、③自動車のサイドブレーキ状のレバーを引く(これでセーフティーバーが固定される))を活用しないと、ゲームが開始しない様になっていた。(当時の体感ゲームではシートベルトが装備されていても活用されていないのが実情だった。)

筐体内、搭乗者の右壁面には停止ボタンが設けられ、気分が悪くなった搭乗者が筐体の動きを止める事が出来た。

なお画像表示の滲みから、当機の画面はRGBで映しているのではない模様。(アテンダントの場所にあるモニターは滲み無しなのでRGBの模様)回転の状況(向き、角度)によっては地磁気の影響を受け、画面が変色する現象も見られた。

使用ソフトウェア

R360とは筐体の名称であり、R360用に開発されたいくつかのゲームソフトが存在した。

  • G-LOC 標準搭載のソフト。ゲームプレイの「実戦コース」と、鑑賞モードの「体験コース」が選択可能だが、実戦コースしか選択出来ない設定の店が少なくなかった。
  • ストライクファイター 上記のG-LOCのマイナーチェンジ版。
  • ラッドモビール 登場後しばらくして、アミューズメントマシンショーで参考出展された。
  • ウィングウォー 発売時には既に日本国内では大半の筐体が撤去されていたため、国内での稼動実績は少ない。このソフトのみ筐体間通信プレイが可能な模様である。

運用

よく究極の体感ゲームと称されるが、実運用はそれほど華々しいものではなかった。 初期は、設計強度の不足、センサーの誤作動等で、たびたび運用停止する不都合などがあり、致命的な事故こそおきていないが、不注意な運用によるトラブルは時折起きていた。

また1600万円という高額で巨大な筐体は、搬入搬出や設置に多大な手間を要し、仕様上アテンダントが常時1名つくことが指示されていることから運用コストも高かった。 プレイヤーも、手荷物はもちろん、飛散・落下防止のため、ポケットの中身をすべてアテンダントに預けなければならず、プレイの前に私物の確認が面倒だった。

これらの要素のほか、ゲームが単調な上にプレイ時間が短いという負の要素ともあいまって、殆どの店舗では、単に坪単価の悪い機械という印象を抱かれていた。 実際、この機種を境に、セガはゲームセンター向けの大掛かりなムービング筐体の製作を徐々に控えるようになり、汎用のものをデコレートする方式に変化した。

エピソード

  • R-360の制作時、データを取る為に中裕司ら数名の幹部社員をR-360のコクピットに乗せ、社屋の屋上で人力で転がした。中はデータ取りだということを下ろされた後に聞かされたと言う。
  • 筐体価格は1600万円ともいわれ、これは当時のフェラーリの8気筒モデルである348の国内定価(コーンズ価格)と同程度のものである。この事からも当機がゲームセンターに設置される機材として、破格の筐体価格である事が伺い知れる。[1]
  • G-LOCの体験コースは最初に「エースパイロットの操縦をお楽しみ下さい」という趣旨の表示がなされるが、必ず撃墜される鑑賞ストーリーになっている。
  • G-LOCの実戦コースは「TIME 120.00」と画面に表示され、プレイ時間は2分間と錯覚しがちだが90秒程で終わってしまう。[2]
  • G-LOCで空母着艦時にミサイル、バルカン、スタートの3ボタンを押しっ放しにしていると、着艦正否後の撃墜数結果表示の代わりにメッセージを出す事が出来た。
  • 国内に稼動している筐体はない。オーストラリアゴールドコーストのショッピングモール内のゲームコーナーに完全稼動する物が現存する模様。アメリカのSEGAファンの一部が個人的にコレクションしている物も一定数存在している。
  • 国内最後の筐体はSEGA神戸かもめ館(神戸ハーバーランド)。8Fに有る為、解体時にはチェーンソーにて分解。エレベーターにも入らず、非常階段にて社員10人以上での搬出となった。
  • 本ハードウェアのチラシには、「サイバードーム スーパーシューティングシステム」、「CCDカート」、「8人乗りシミュレーター」といった開発・稼動予定のハードウェアが掲載されていたおり、「サイバードーム スーパーシューティングシステム」、「CCDカート」はそのまま名前で稼働し、「8人乗りシミュレーター」は「AS-1」という名前で稼働していた。

関連項目

  • D3BOS - ほぼ同時期にタイトーよりリリースされた360度回転筐体。R-360がxzの2軸機構だったのに対して、xyzの3軸機構だったので全方位の360度回転を楽しめた…が搭乗者が操作不能。
  • マイケル・ジャクソン - 来日の際、セガに来社し体感プレイ後すぐに購入した逸話がある。購入された筐体は遺品として公開された。

脚注

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  1. しかしながら、フェラーリの方は348の後継車種から基本性能の向上はもちろんの事、F1テクノロジー(セミATTCS等)を積極的に取り込む事により定価がせり上がったので、現行車種では既に同水準の価格からかけ離れている。
  2. 実機で確認するのがてっとり早いが、設置店も既に無さそうなので、もう1つの手がかりとしてR-360版G-LOCのBGM「Earth Frame G」(両コース共通)から伺いとる事が出来る。このBGMの全長は2分10秒程度のもので、空母(上空から見下ろし)→秒読み→発艦→「敵部隊を全力で撃破せよ」という趣旨の表示(正確表記の情報募集)後、コクピット視点になって持ち時間のカウントダウン開始(ゲーム開始)→持ち時間0到達(ゲーム終了)→空母着艦開始→着艦成否のシーンまで流れ続ける。このうち空母~ゲーム開始までと、ゲーム終了~着艦成否のシーンの所要時間が合計で10秒であるか?というと体験コースと同じくそれほど短いものではないため、プレイ時間の正味が2分以内に時短されている事が分かる。