Oゲージ

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ファイル:Golden State Model Railroad 01.jpg
アメリカのOゲージのジオラマ
ファイル:Dreileiter-Geleise01wiki.jpg
イギリスのOゲージのレイアウト
ファイル:Züricher Spielzeugmuseum 1000749.jpg
チューリッヒおもちゃ博物館のメルクリン製Oゲージ列車模型

Oゲージ (オーゲージ) とは鉄道模型の縮尺と軌間を表す規格呼称のひとつ。

概要

縮尺1/43 - 1/48 ・軌間32mm (ミリメートル) の鉄道模型規格の総称である。スケールモデルにも、ティンプレートにも用いられる。

日本ではオーゲージ、零番と呼称される。アメリカでは「Oスケール」 (オースケール) と呼称し、イギリスでは縮尺が1/43.5なので「7mmスケール」とも呼称される。

国や地域、車種やメーカーによって縮尺が異なり、日本では主に縮尺1/45を用いる、アメリカでは縮尺1/48が主流で、イギリスでは主に縮尺1/43.5を用いる。

軌間は実物の標準軌 (1435mm) を縮尺1/45で縮小して32mmとしたものであるが、1/43.5や1/48の縮尺を用いる国でも軌間は原則として32mmである。したがって、これらの国では厳密に縮尺通りの軌間になっていない。

歴史

1900年頃、ドイツのメルクリンが導入した。同じ頃、イギリスでも1番ゲージより小型の「0番」ゲージとして規格が出来て製品が発売された。アメリカでは1930年代から1960年代初頭までは、交流三線式のOゲージが最も普及していた鉄道模型であった。ヨーロッパでは第二次大戦の前まではOゲージが一般的であったものの、戦後はより小型の直流二線式HOゲージが普及した。

日本では湯山一郎が雑誌『模型鉄道』1938年3月号でOゲージの日本型車輛は1/45サイズを採用すべしと提唱し、それを「零番」と称したことから、一貫して縮尺1/45が採用されている。ただし狭軌蒸気機関車はシリンダー間隔が広くなりすぎるのを嫌って縮尺1/43で作るという二通りの基準を持っていた。

このサイズの提唱は、「アメリカ型の大きな断面の機関車も、日本型・イギリス型の小さな断面の機関車も、見かけ上似た大きさにして、同じ線路の上を走らせて、国際的な模型鉄道を作る」という思想から生まれたものである。当時は列車としての鉄道模型を所有し運転することができた日本人は極めて少なく、ほとんどの愛好者は機関車のみを製作した。客車や貨車は複数の愛好者が持ち寄り、「何台牽いた」ということが話題になる時代であった。したがってこの提唱には賛同者が多かった。

第二次世界大戦後、既製品が容易に入手できるようになり、「同じサイズの模型を揃えたい」や、「実物の編成の通りの運転を楽しみたい」などの考え方が広まったため、各国の車両を混在させて走らせることはほとんど無くなった。すなわち「零番」の当初の思想は完全に失われたが、日本型の縮尺1/45という規格は定着した。

1950年頃、日本で主流の狭軌 (1067mm ) の機関車が標準軌 (1435mm ) の線路を走るように見えるのを嫌う愛好者が、縮尺1/45で24ミリゲージを採用し、日本独自のOJゲージが登場した。これは後にメーカーから製品が発売され、Oゲージの中の一大勢力となった。

ライオネルでは今尚、鉄道模型黎明期の流れを汲む三線式を供給しており、フランジの高さにより「O」、「O27」がある。三線式Oゲージと電関は当時の少年達にとって憧れであり、古くからの愛好者はこれにより鉄道模型に入門した者も多い。

規格

国や地域、愛好者団体の定める規格・規定によって相違がある。

軌間

ヨーロッパのNEM規格などメートル法採用国では32mm である。ヤード・ポンド法を慣用するアメリカのNMRA規格では1.252インチ (≒31.8mm ) である。

縮尺

アメリカ

アメリカでは、1フィートを1/4インチに縮小する1/4インチスケール、すなわち縮尺1/48である。実際にはこの縮尺での標準軌は29.9mmとなりOゲージの基準となる32mmでは広すぎる。

第二次世界大戦までのアメリカでは、軌間と縮尺の関係が正しくなる17/64インチスケール(縮尺1/45) も採用されていたが、その縮尺がなじみのないものであったことと、「モデルレイルローダー」誌 (Model Railroader) の図面が1/4インチスケールであったため、第二次世界大戦後17/64インチスケールは廃れ、1/48の製品しか製造されていない。


イギリス

イギリスでは1フィートを7ミリメートルに縮小する7mmスケール、すなわち縮尺1/43.5である。

ヨーロッパ諸国

MOROPの定めるNEM規格においては縮尺1/45である。メルクリンが製造した最初のOゲージ製品が、標準軌 (1435mm) を1-1/4インチに縮小した縮尺1/45を採用したためヨーロッパ諸国にこの縮尺が広がった。フランスにおいては7mmスケール・1/43.5も併用されている。

日本

日本では、模型鉄道誌による「零番」に則り、日本型車輛は縮尺1/45を基準としている。

規格詳細

アメリカNMRA S-1.2 規格[1](縮尺1/48)
呼称 軌間 換算軌間 実軌間 備考
O (オー) 32mm (31.75 - 32.64mm) 1536mm 1435mm 標準軌
On3 19.1mm (19.05 - 19.65mm) 917mm 914mm 3フィートゲージ
On30 16.5mm (16.50 - 17.07mm) 792mm 762mm 30インチ(2フィート半)ゲージ
On2 12.7mm (12.70 - 13.26mm) 610mm 610mm 2フィートゲージ

縮尺1/48では標準軌の軌間は計算上29.9mmとなるが、軌間32mmを採用しているため、ややスケール感が損なわれる。

On30

ナローゲージ鉄道の再現のために、従来からあるHOゲージの線路を流用することを目的にアメリカで作られた規格で、縮尺1/48 ・軌間16.5mmである[2][3]。近年、大手メーカーが参入したことにより製品が増えている。毎年「On30 Annual」[4]が発行されている。近年ではナローゲージの模型の分野において一大勢力となった。

ヨーロッパNEM 010 規格[5] (縮尺1/45)
呼称 軌間 換算軌間 実軌間 備考
0 (ゼロ) 32mm 1440mm 1250 - 1700mm 1435mmゲージ(標準軌)など
0m 22.5mm 1012mm 850 - 1250mm未満 1000mmゲージ(メーターゲージ)など
0e 16.5mm 743mm 650 - 850mm未満 750mmゲージ、760mmゲージ、800mmゲージなど
0i 12mm 540mm 400 - 650mm未満 500mmゲージ、600mmゲージなど
イギリスBRMSB式 (縮尺1/43.5)
呼称 軌間 換算軌間 実軌間 備考
O (オー・ゼロ) 32mm 1392mm 1435mm 標準軌
O-22.5 22.5mm 979mm 1067mm 3フィート半(ケープ)ゲージ
O-18 18mm 783mm 762mm 2フィート半ゲージ
O-16.5 16.5mm 718mm 686mm、711mm 2フィート3インチゲージ、2フィート4インチゲージ
O-14 14mm 609mm 610mm 2フィートゲージ
日本

規格としては零番OJがある。ナローゲージモデルではアメリカのNMRA規格に倣い縮尺1/48を採用する製品もある。

零番
プロトタイプ 軌間 縮尺 換算軌間 実軌間 備考
日本型 32mm 1/45 1440mm (1067mm-1435mm )
アメリカ型 32mm 1/48
(1/4インチスケール)
1536mm 1435mm
イギリス型 32mm 1/43.5
(7mmスケール)
1392mm 1435mm
(ヨーロッパ型) (32mm) (1/45) (1440mm) (1435mm)

各国のOゲージ規格と同じ32mm軌間で日本型車輛を走らせる規格。狭軌の鉄道省(国鉄)軌間の車輛も32mm軌間で模型化する。ナローゲージに関する規定は無い。


OJ (縮尺1/45)
呼称 軌間 換算軌間 実軌間 備考
OJ (オージェー) 24mm 1080mm 1067mm 3フィート半(ケープ)ゲージ

日本で主流の狭軌 (1067mm ) の機関車が標準軌 (1435mm ) の線路を走るように見えるのを嫌う愛好者が作った規格。縮尺は零番と同じ1/45で軌間を24mmとして、日本で主流の軌間1067mm (狭軌、ケープゲージ) を正確に模型化している。

派生規格・関連規格

Qゲージ

かつてアメリカにおいて、Oゲージの線路幅を32mmから29.9mmに狭めたQゲージを採用した愛好者がきわめて少数であるが存在した。Qゲージでは、ただ線路幅を狭くしただけでタイヤ厚さを変更しなかったため、蒸気機関車での動輪間隔、ロッドの収まりなどの不都合の解消にはつながらなかった。

プロト48

プロト48はアメリカのOスケールの規格で、標準軌の軌道を1/48に縮小した軌間29.9mmの規格である[6]。1980年代に入り車輪形状をAARの規格の1/48とし、実物を正確に1/48とした模型を作ろうという動きが出てきた。提唱者達はProto48、PROTO:48と自らのグループを呼び、一部のメーカーは29.9ミリゲージの車両の供給を開始した。しかし既製品は少なく、主にOゲージ製品の車輪を交換して台車の幅を縮めるといった改造が主流で、改造作業を専業とするメーカーや愛好者も存在する。

実物に忠実に再現しようとしたため、車輪の幅は狭くなり、模型では実物より遥かに急な曲線を通すことになるため、ボギー台車の車両では急曲線に追随しやすいものの、大型の蒸気機関車では急曲線の通過は困難である。


駆動・制御方式

Oゲージの車両の多くは、交流三線式と呼ばれる方式を採用している。この方式は最大電圧18ボルトの交流を3本あるレールのうち両側レールを正極、中央レールを負極として流し、レールと接する金属車輪やコレクターを通じて集電し、モーターを駆動して模型車両を走行させる。また、正極または負極のどちらかを架線に流し、パンタグラフなどにより電力を取得する架線集電システムも存在する。

速度の加減は、正極・負極間の電位差を0ボルトから18ボルトまで変化させて行う。

DCC:デジタルコマンドコントロール

2000年代以降、エレクトロニクス技術の応用で新しい制御方式が誕生している。デジタルコマンドコントロール (DCC) と呼ばれる制御方式は、線路上にデジタル信号を送信して車両ごとの運転操作やライトの制御、サウンド制御を行うことができる。また、線路に流れる電圧は一定なので、ライトの明るさは模型列車の速度の影響を受けない。

製品

車両から線路、電源装置、ストラクチャー、アクセサリーまで一手に生産する大手メーカーがある一方、車両やストラクチャー等、単一分野のみ生産する中小メーカーや個人が生産するガレージキットメーカーなど数多くのメーカーが存在する。大手メーカーからは初心者や入門者向けとして、車両、線路、電源装置等をまとめて入れたスタートセット (入門セット) が発売されており、初心者でも簡単にOゲージを始められるようになっている。

これらの製品は、百貨店、量販店、玩具店、鉄道模型専門店や通信販売で購入することができる。ただし日本ではOゲージは主流ではないため、個々の製品をそれぞれ購入するか、日本国外から輸入することになる。

車両
Oゲージの製品は、射出成形による主にABS樹脂などのプラスチック製完成品が主流である。これらはプラモデルとは異なり、塗装が施された上で組み立て済となっている。前照灯や尾灯、室内灯が点灯もしくは点灯可能な製品も多い。
また、プラモデル同様に自分で接着剤を使って組み立て、塗装するプラスチック製キットや、金属製 (主に真鍮) 、射出成形によらないウレタン樹脂製のキットや完成品も発売されている。
動力は基本的にはモーターで、主に金属製の線路から電力を取得して動く。
線路
構造上では、「道床なし線路」と「道床つき線路」に分けられる。両者の違いは、道床なし線路がレール (軌条) とはしご状に作られた枕木部分だけで構成されているのに対し、道床つき線路は枕木の下の砂利部分も土台のような形で一体となっている点である。
使用上では、「組み立て式線路」と「フレキシブル線路」に分けられる。両者の違いは、組み立て式線路があらかじめ曲線半径と円弧の角度や、長さが決まっているのに対し、フレキシブル線路は長尺であり水平方向へ自在に曲げることが出来る点である。
一般的には道床なし・組み立て式線路が普及している。
電源装置
パワーパック、パワーユニット、トランスとも呼ばれる制御機器で、入門向けの低価格品から大容量の高級機種にいたるまで豊富な種類が発売されている。
近年、DCC用の機器も多く製品化されるようになってきている。
ストラクチャー
レイアウト・ジオラマ上に置く建築物を指す。射出成形によるプラスチック製完成品や、金属製キットやペーパーキット (通称カードキット) 、射出成形によらないウレタン樹脂製の完成品やキットなどさまざまな素材により、さまざまな種類の建物が製品化されている。
アクセサリー
自動車、人形など鉄道車両・ストラクチャー以外のOスケールの模型製品全般を指し、主にレイアウト・ジオラマの製作に使われる。自動車はバス、トラックから自転車まで、人形は鉄道員、一般の通行人から牛、犬など動物まで製品化されているほか、電柱、自動販売機、ドラム缶、ポリバケツなど様々なものが模型化されている。
シーナリー用品
レイアウト・ジオラマ製作に使用する部材のことで、地形植生などのシーンを表現するために用いられる。木や草、芝生、ライケン、コルクブロックなどが発売されている。

楽しみ方

Oゲージ鉄道模型には様々な楽しみ方があるが、大きく分けると次のようになる。

運転を楽しむ
鉄道模型を楽しむ上で外せないのが、運転する楽しみである。Oゲージでは組み立て式線路を使うことにより、テーブル上や床上でも手軽に運転を楽しむことができる。このように線路を仮設して楽しむ運転を「お座敷運転」「フロアーレイアウト」などと呼ぶ。
情景のついたレイアウト・ジオラマ上で車両を走らせれば、さらなる満足感を味わうことができる。レイアウトは愛好者自身が製作・保有する場合が多いが、模型店や博物館の中には、サービスの一環として備え付けのレイアウト・ジオラマを来店客に開放している店もあり、レイアウトを有料で時間貸しするレンタルレイアウトもある。
車両を収集する
Oゲージで製品化された車両は数多くにのぼる。これをミニカーのように収集する楽しみ方もある。人によって集め方は様々で、自分の好きな国、地域、年代、鉄道会社、模型メーカー、車種、列車、形式などテーマを決めて車両を集める。収集やコレクションというと、完成品を購入して観賞するというイメージがあるが、鉄道模型の場合、欲しい車両を改造・自作する場合もあり、テーマにあわせたレイアウト・ジオラマを作り、コレクションを走らせる楽しみ方もある。
車両工作を楽しむ
鉄道模型も含めた模型趣味の楽しみ方の基本的なものとして、模型工作がある。車両工作といっても多種多様であるが、模型車両をより実車に即した形態になるよう手を加える細密化加工、元の車両から別の形式や仕様を作り出す車両改造、プラスチック等の素材と部品 (パーツ) から車両をつくりあげるスクラッチビルド (全自作) に大別される。
レイアウト・ジオラマを製作する
鉄道模型においてもう一つの模型工作として、レイアウト・ジオラマの製作がある。鉄道模型クラブの中にはメンバー共同で集合式 (モジュールレイアウト) や分割式のレイアウト・ジオラマを製作しているところもある。個人では実現が難しい長大編成列車でも、このような方法をとれば実現が可能である。

このほかにも、メーカーやクラブなどが開催するイベントや運転会を見学したり、製品について出来栄えや使い勝手などの感想を交換したり、スワップミートと呼ばれる交換会・中古市に参加するといった楽しみ方もある。

主なOゲージメーカー・ブランド

日本

脚注

  1. NMRA S-1.2規格表
  2. On30 Coalition Module
  3. 解説
  4. On30 Annual
  5. NEM 010規格表
  6. Proto48 Modeler

関連項目

外部リンク

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