JR貨物EF510形電気機関車

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テンプレート:鉄道車両 EF510形電気機関車(EF510がたでんききかんしゃ)とは、日本貨物鉄道(JR貨物)が2002年平成14年)から製作している交流直流両用電気機関車である。

東日本旅客鉄道(JR東日本)においても、2009年(平成21年)から同形機(EF510形500番台)を導入しており、同番台機についても本項で記述する。

概要

日本海縦貫線常磐線などで1968年昭和43年)から使用されてきた交直両用電気機関車EF81形の取替えを目的に開発された。

日本海縦貫線は区間内が直流・交流 (60 Hz) ・交流 (50 Hz) の異なる方式で電化され、これまで同区間を通して運転される機関車牽引列車はEF81形を使用してきた。JR移行直後から後継機の開発が開始され、同区間用として1990年(平成2年)にEF500形が試作された。定格出力 6,000 kW の同形式は輸送量に比べ過大な出力や技術上の問題などで量産に至らず、輸送量に適合した性能を有する新型機関車の開発が以後の課題とされた。

東海道山陽本線を主とする直流電化区間用としては、運用コストを適正化した形式として同時期にEF210形が製作された。同形式の設計を基にして交直両用機の開発が進められ、2002年(平成14年)2月[1]三菱電機川崎重工業で先行量産車の1号機が完成した。これがEF510形である。

本形式は2003年(平成15年)から量産を開始し、老朽化の進むEF81形を徐々に淘汰しつつある。愛称は公募によって「ECO-POWER レッドサンダー」とされた(0番台のみ)。

構造

車体は高運転台式非貫通の前面形状を有し、正面窓上に短い庇を設けた意匠はEF500形に類似する。前照灯は運転台下部のほか、上部中央の屋根上にも設ける。外部塗色は、車体上部が朱赤色、車体裾部が灰色、塗り分けの境界部と前照灯の位置に白色の帯を配する。

機械室内の機器配置はZ形通路形式とし、車体中央で通路配置が逆転する。これは機器室内の通路幅を確保し、整備性の向上に配慮したもので、このため側面の窓配置は向かって左側に採光窓が並び、向かって右側に通風孔を設ける配置となる。

室内に設置する補助電源装置の冷却方式は夏季と冬季で異なり、夏季は外気を直接取り入れ換気を促し、冬季は内部で空気を循環させ、機器室を密閉する。これは冬季にの侵入を防止するための機構である。

屋根上の特別高圧機器類は寒冷な気候条件と塩害への対策として、パンタグラフと保護接地スイッチのみを屋根上に設置し、従来機では屋根上に設けていた断路器遮断器などは室内に配置する。パンタグラフは上昇動作時の鉤外し機構を空気式としたシングルアーム式の FPS5 形[2]で、関節部を車体中心に向けて搭載する。

制御装置は、EH500形から採用された高速トルク制御機能を有する三菱電機製のVVVFインバータシステムで、制御素子IGBTを用いる[3]。主電動機はEF210形と同一のかご形三相誘導電動機 FMT4 形を6基装備し、1台のインバータで1台の主電動機を個別に制御する 1C1M 方式である。定格出力はEF210形と同等の 3,390 kW(1時間)・3,540 kW(30分)で、12 の勾配上で 1,300 t の列車を1両で牽引することが可能である。

台車はEF210形と同様の軸梁式ボルスタレス台車 FD7N 形(両端)・FD8A 形(中間)[2]である。軸距は2,500 mm、車輪径は1,120 mmであり、台車間距離6,200 mmで配置される[4]。ブレーキ装置は単機ブレーキが発電制動併用の電気指令式ブレーキ、編成ブレーキが電磁自動空気ブレーキである。基礎ブレーキ装置は耐雪ブレーキ機能を装備し、車輪と制輪子の間に雪を侵入させない構造としている。

運転室は気密性を高め、空調装置を配置した。運転席周囲の機器配置は既存の新型機とほぼ共通の構成とされ、運転中の各種情報や、点検時の自己診断結果などを集中して表示するモニタ装置を設ける。

形態区分

0番台

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先行量産機(1号機)

2002年(平成14年)2月[1]に製作された。既に実用段階にあった直流電気機関車EF210形の基本設計を踏襲したことから試作機とはされず、量産を前提とした仕様の「先行量産機」とされている。新鶴見機関区に配置され、各種試験に供された。

側面通風孔の配置が異なる他、車体裾の白線は幅が広い。車体側面にはJRFのロゴマークのみが描かれる。

量産機(2号機 - )

2003年(平成15年)から製作された。先行量産機の運用成果を基に、各部に改良が見られる。

側面右側の通風孔は配置が横一列に揃えられ、車体裾の白線は幅が狭い。車体側面にはJRFのロゴマークのほか、"RED THUNDER"のロゴマークが描かれる。 テンプレート:-

500番台

テンプレート:Triple image aside 2009年から製作された。0番台を基本にATS-P・ATS-Psとデジタル無線およびブレーキ設定器に尾久駅 - 上野駅間での客車推進運転用のスイッチを設置している。また、東北本線黒磯駅交直セクションを通過するための自動列車選別装置も装備する。

501 - 508・511 - 515号機は青い車体に流星をあしらい金色の帯を巻いた「北斗星色」塗装で落成している。

2010年7月に甲種輸送された509[5]・510号機[6]は、E26系客車に準じたシルバーメタリックの車体に流星と五本帯を入れた「カシオペア色」で落成している。

2011年5月20日、震災および原発事故で運転を中止していた「北斗星」「カシオペア」の運行再開にあたり、東北・上越・長野の各新幹線車両と同様の復興推進キャンペーンのステッカーを貼付している。


2013年度にJR貨物へ譲渡されたものは貨物対応保安装置に変更され、表記が変更されている。

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現況と動向

JR貨物

JR貨物の新製実績
年度 両数
2001年度 1両
2002年度 0両
2003年度 2両
2004年度 3両
2005年度 1両
2006年度 4両
2007年度 2両[7]
2008年度 3両[8]
2009年度 4両[9]
2010年度 0両[10]
2011年度 0両
2012年度 2両

JR貨物においては本形式は全機が富山機関区に配置される。

日本海縦貫線の全区間で使用することを想定した形式で、吹田貨物ターミナル大阪貨物ターミナル - 青森信号場間の大多数の貨物列車に運用されるようになったが、一部は百済貨物ターミナルまで運用されている。

製作当初より日本海縦貫線に集中して投入され、専ら貨物列車の牽引に使用されているが、2007年(平成19年)には24系客車「夢空間」の旅客列車牽引に6号機が使用された事例もある。

2013年度には、貨物列車受託解消で余剰となったJR東日本所属の501-508・511号機を購入している[11]テンプレート:-

JR東日本

JR東日本の新製実績
年度 両数
2009年度 2両[12]
2010年度 13両[12]

JR東日本においても、田端運転所に在籍するEF81形の置換用として本形式を15両新製し使用することとなった[13]。2009年12月に1両目となる501号機が登場したのち[14]、各使用線区での試運転や乗務員訓練と並行して製造が続けられ、2010年10月までに全15両が出揃った。

500番台は、2010年6月25日から上野駅発札幌駅行「カシオペア」より運用を開始した[15][16]。さらに、同年7月14日からは同区間の「北斗星」での運用を開始した[17]。また、同年11月17日には新小岩操駅 - 金町駅 - 田端操駅間の工事臨時列車[18]、さらに同年12月1日からは常磐線貨物列車牽引を開始した[19][20]

2013年時点では「北斗星」、「カシオペア」を中心に、臨時列車や配給列車にも使用されている。 2012年には東北地方太平洋沖地震東日本大震災)の復興支援を目的として四国旅客鉄道(JR四国)、JR東日本、JR貨物3社共同により、「アンパンマントロッコ」を岩手・宮城・福島・茨城・千葉の各県で運行することとなった。その運行線区の一つである常磐線では唯一電気機関車による牽引となり、この500番台がキクハ32-502(「アンパンマントロッコ」)と控車であるキハ185-26を牽引した[21]

なお、2013年3月16日ダイヤ改正で田端運転所の貨物輸送受託が終了したため、常磐線を中心とした貨物列車の運用はEH500形に変更されている[22]。これにより車両に余剰が発生し、501 - 508・511号機は運用から外されて保留車となった[23]。これら保留車は同年7月23日から26日にかけてJR東日本での車籍を失い[24]、2013年7月26日からJR貨物高崎機関区配給輸送され[25]、その後JR貨物東新潟機関区、JR貨物富山機関区へと順次輸送された[26]。2013年9月24日に吹田機関区に入場していた511号機がJR貨物仕様の保安装置への換装等の整備を受け、富山機関区に無動力回送された。外装は側面の流星マークと「EAST JAPAN RAILWAY COMPANY」のロゴが消され、東日本大震災復興キャンペーンのステッカーが外された以外は青地に金色のストライプもそのままで、車両番号の改変も行われていない[27]

脚注

テンプレート:脚注ヘルプ テンプレート:Reflist

参考文献

  • 電気車研究会 『鉄道ピクトリアル
    • 『鉄道車両年鑑 2002年版』 2002年10月臨時増刊号 No.723
    • 『鉄道車両年鑑 2003年版』 2003年10月臨時増刊号 No.738
  • 鉄道ジャーナル社 『鉄道ジャーナル』 2005年5月号 No.463 特集:鉄道貨物輸送の現状
  • 誠文堂新光社 『鉄道画報』 2005年夏季号 No.2 特集:JRFの機関車たち
  • 鉄道貨物協会 『2008 JR貨物時刻表』 2008年
  • 交通新聞社『鉄道ダイヤ情報』 2010年2月号「新車トピックス JR東日本 EF510形500番代交直流電気機関車」
  • 交友社 『鉄道ファン』 2010年5月号「新車ガイド EF510形500番台」
  • イカロス出版『Jトレイン』vol.49 「常磐線EF510-500番代徹底追跡」

外部リンク

テンプレート:Sister テンプレート:Sister

テンプレート:JR貨物の車両リスト テンプレート:JR東日本の車両リスト

テンプレート:リダイレクトの所属カテゴリ
  1. 1.0 1.1 「2001年度 車両動向」 - 『年鑑2002年版』 III - 1. (1) p171
  2. 2.0 2.1 菅野 崇 「JR貨物 EF510形」 - 『年鑑2003年版』 II - 1. 25 pp.96 - 98
  3. テンプレート:PDFlink(三菱電機技報・2004年12月号)
  4. 鉄道ジャーナル』2012年7月号、鉄道ジャーナル社、2012年、p.31
  5. 【JR貨+JR東】〈カシオペア〉色EF510-509 甲種輸送 ネコ・パブリッシング『鉄道ホビダス』 RMニュース、2010年7月5日
  6. EF510-510が甲種輸送される」 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース、2010年7月16日
  7. テンプレート:PDFlink
  8. テンプレート:PDFlink
  9. テンプレート:PDFlink
  10. テンプレート:PDFlink
  11. 『JR貨物時刻表』2014年 機関車配置表(2014年2月15日現在) - 鉄道貨物協会
  12. 12.0 12.1 テンプレート:Cite journal
  13. テンプレート:PDFlink
  14. JR東日本のEF510-501,登場」交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース、2009年12月18日
  15. 交通新聞社 『鉄道ダイヤ情報』 2010年7月号
  16. 【JR東】EF510 500番代による〈カシオペア〉牽引開始ネコ・パブリッシング『鉄道ホビダス』 RMニュース、2010年6月25日
  17. 寝台特急北斗星をEF510-501がけん引」交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース、2010年7月15日
  18. EF510-510がチキ工臨をけん引 - 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース、2010年11月17日
  19. EF510形500番台が常磐線貨物運用に - 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース、2010年12月2日
  20. EF510-501が安中貨物をけん引 - 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース、2010年12月5日
  21. 『アンパンマントロッコ』が常磐線で運転開始 - railf.jp 鉄道ニュース(交友社)、2011年6月11日
  22. 安中貨物のけん引機はEH500に - railf.jp 鉄道ニュース(交友社) 2013年3月17日
  23. イカロス出版「j-train」Vol.51 2013年秋号、p.100
  24. 『JR電車編成表』2014冬 ジェー・アール・アール、交通新聞社、2013年、p.357。ISBN 9784330424132。
  25. EF510形500番台2両が高崎(操)へ - railf.jp 鉄道ニュース(交友社)2013年8月1日
  26. EF510-502が東新潟へ - railf.jp 鉄道ニュース(交友社)2013年9月1日
  27. JR貨物機仕様となったEF510-511が姿を現す ネコ・パブリッシング『鉄道ホビダス RMニュース:2013年9月25日