Hi8

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Hi8 (ハイエイト) は、ソニー社が提唱、製品化した家庭用ビデオの規格である。8ミリビデオ上位互換VHSS-VHSの関係と全く同じ)。

概要

ファイル:Hi8 3CCD-camcorder Sony EVW-300.jpg
業務用一体型Hi8機: Sony EVW-300

メタルテープの特性を向上させることによって、8ミリビデオと同じ大きさのカセットで輝度信号ハイバンド化を図り、規格上はS-VHS並みの水平解像度約400TV本を実現させた。製品化されたテープの最大長は180分(SPモード時)。記録帯域幅については8ミリビデオ参照。

もともとHi8は正式な規格ではなく、8ミリビデオ規格の「オプション規格」として見切り発車的に登場した。しかし、当時は家庭用ビデオの高画質化競争の最中であったためHi8の画質のよさが注目され、瞬く間にそれまでの8ミリビデオを押し退けて主流となった。Hi8の登場以降、区別のために、従来の記録方式は「スタンダード8ミリ」と呼ばれるようになった。

Hi8にはテープの特性により、塗布型テープを前提としたMPポジションと、蒸着テープを前提としたMEポジションとがあり、デッキ及びカムコーダ本体に切り替えスイッチはなく、検出孔で自動検出されていた。MEポジションのほうが高画質とされるが、ドロップアウトなどの問題もあった。富士フイルムTDKから塗布型でありながら性能向上させ、MEポジション用とした物が発売されていた。

当初、Hi8方式で記録したテープはスタンダード8ミリ専用の機器では再生が出来なかったが、後に、VHSでいうSQPB(S-VHS Quasi Playback = S-VHS簡易再生機能)に相当する「Hi8簡易再生機能」が搭載され、Hi8対応機器と従来の記録方式専用の機器との間で相互互換性が実現した。もちろん、簡易再生なので、その画質はスタンダード8ミリ並みである。ただ簡易再生機能つきの機器が登場した頃から、徐々にスタンダード8ミリの機器の製造は先細りとなっていき、ほとんどHi8へと移行していったため、製品数としては非常に少ない。なお、VHS専用機にS-VHSテープを録再に使うとある程度の高画質・保存性を得ることが可能だがスタンダード8ミリ専用機にHi8テープを録画に使ってもやや逆効果となってしまうため、各メーカーのカムコーダのカタログに載っている別売り品のテープのページにそうした注意書きがなされていた。

上述の通り、Hi8規格が登場した頃から、徐々にスタンダード8ミリからHi8へと置き換わっていき、90年代にはほぼHi8規格へと推移している。これはS-VHSへの移行が進まず、スタンダードVHSが長きに渡って生産されたVHSとは対照的である。これはテレビ録画ではS-VHSが真価を十分に発揮できず、またビデオソフトのタイトル数が揃わなかった一方で、カムコーダーとしてはHi8規格は十分に真価を発揮できたからである(VHS陣営でも、カムコーダー分野では8ミリ陣営よりは少数派であったものの、ほとんどがVHS-CからS-VHS-Cへと移行している)。

製品群としてはカムコーダーが圧倒的だが、かつては据置型ビデオデッキも生産されていた。当初は編集用途を主なターゲットとした単体デッキがソニーや東芝日立製作所から製品化されていたが、S-VHS機などよりも高価な機種も多くメーカー側の思惑ほどには需要がなかった。そのためSONYは、VHSやS-VHSとの一体型デッキを発売し、こちらはカムコーダーで撮ったテープの再生用、VHSへのダビング用(実際にワンボタンでダビングできる)として、ある程度の普及をみた。またポータブルデッキ「ビデオウォークマン」の製品の発売されたが、カムコーダーの安価な機種の特売商品と比すると高額となってしまいこちらもあまり売れなかった。

また、Hi8方式の高画質技術として、1998年に輝度信号の周波数帯域を拡張するXR規格(公称水平解像度440TV本)が発表され、対応のカムコーダーが国内・海外で発売された。XR規格対応の機種として国内向けにCCD-TRV95Kなどがある。

1999年には、Hi8のテープを共用する規格としてDigital8が登場する。Digital8ではHi8の倍速でテープを使用することによって、DV規格のデジタル動画を記録する事ができる。Hi8方式で録画されたテープも再生可能。なお、Hi8用としては蒸着テープよりも劣るとされる塗布型テープが推奨されている。

なお、その後はDV規格への移行に伴い、カムコーダー、据置デッキの生産は終了した。過去の録画テープの再生用として、Digital8規格のビデオウォークマンの生産だけが続いていたが、これも2011年9月をもって終了した[1]

音声等の記録媒体として

8mm、Hi8にはマルチトラックPCMという、映像トラックを音声用に割り当てて6チャンネル(サンプリング周波数31.5kHz、量子化数8ビット)のPCM録音ができる規格もあった(Digital Audio Video)。過去に一部の民生用デッキ(ソニー「EV-S900」・「EV-A300」+「PCM-EV10」、東芝「E-800BS」等)に搭載されたが、ラジオ放送の長時間エアチェック等、用途が極めて限られた事から、現在民生向け製品での搭載機種は殆ど無い。

これと別にティアック社はHi8テープを用いた業務用マルチトラックレコーダを提唱し、DTRSとして規格化。広く用いられた。またデータレコーダとしても応用された。

注釈

  1. ソニー、8mmビデオカセットレコーダ出荷を9月に終了 AV Watch(2011年7月21日)

関連項目

テンプレート:Audio-visual-stuben:8 mm video format#Hi8