AIX

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AIXAdvanced Interactive Executive、エーアイエックス[1])は、IBMUNIX オペレーティングシステムのブランド名である。

概要

AIX は UNIX System V Release 3 (SVR3) ベースの IBMオペレーティングシステムで、The Open Group の UNIX認証を受けている[2]。最新版の AIX 7.1 では、カーネル64-bit で、POWER 系の CPUPOWER4POWER5POWER6PowerPC 970、POWER7)をサポートする[3]。AIXは、IBM の RT-PCRS/6000pSeriesSystem pPower Systems シリーズの他、フランスBull や、日立製作所EP8000 シリーズやSR16000で採用されており、主に信頼性・可用性・高速性が求められる用途に使われている[4]

特徴

コマンド体系

AIX は System V Release 3 (SVR3) をベースに、更に BSDSystem V Release 4 (SVR4) などのコマンド等を追加したものである。このため SVR4 ベースの他の商用 UNIX(Solaris など)や、UNIX 互換 OS である Linux OS などとはコマンド体系が多少異なる。AIX V3 までは Bourne Shell をデフォルトのシェルとしていたが、AIX V4 以降はXPG4POSIXに準拠するため Korn Shell (ksh88) をデフォルトのシェルとするようになった[5]

なお LM (Loadable Module) のオブジェクトフォーマット形式は、Power チップ間の非互換部分の吸収幅を残すため、ELF ではなく COFF の拡張である XCOFF(拡張共通オブジェクト・ファイル形式、XCOFF32 および XCOFF64)を使用している。

論理ボリュームマネージャ

論理ボリュームマネージャ (LVM) を比較的早く採用している。AIX では更にディスク装置のミラーリングやストライピングをサポートし、AIX 5L 5.2 以降では稼働中のバックアップ機能 (split copy)、AIX 5L V5.3 以降ではスケーラブル・ボリュームグループ、AIX V6.1 ではログ収集機能が強化された。

ジャーナルファイルシステム

ジャーナルファイルシステムである JFS/JFS2 を実装している。JFS は、ディスク障害時の回復時間を短縮するファイルシステムである。JFS では最大 64 GiB のファイル、最大 1 TiB のファイルシステムを作成できる。JFS2 では最大1 TiB(AIX 5L V5.2 以降では、最大 16 TiB)のファイルおよびファイルシステムを作成できる。また AIX 5L V5.2 以降の JFS2 は snapshot コマンドによるスナップショットバックアップ、AIX 5L V5.3 以降の JFS2 ではファイルシステムサイズの動的縮小、AIX V6.1 の JFS2 では暗号化ファイルシステムがサポートされた。

デスクトップ環境

標準のデスクトップ環境CDE である。COSE で採用されてから一貫して標準搭載している。なお AIX Toolbox for Linux Applications(後述)には KDEGNOME も含まれている。

管理ツール

他の UNIX および UNIX 互換 OS と比較して特徴的な点として、主要なシステム設定を階層型の管理画面である SMIT から行う(HP-UX の SAM に相当する)。また主要なシステム設定情報は ODM という /etc ディレクトリ配下のデータベースにバイナリ形式で格納される。このためコマンドの知識が少ないユーザーでも操作を行え履歴も残り、システム設定ファイルの誤編集による問題も発生しにくいが、仮にデータベース情報の不整合などが発生した場合は専用の知識が必要である。

大規模ワークロードサポート

AIX7の時点で、最大256プロセッサー・コア、1024スレッドをサポートする。

仮想化

テンプレート:Main ハードウェアの機能と連係し、商用UNIXとしては早い時期から各種の仮想化をサポートしており実績も多い。物理分割(PPAR)よりも柔軟性の高い論理区画(LPAR)、LPARへの動的なリソースの割当変更が可能なDynamic Logical Partitioning、LPARへCPUを 1/100 単位で割当可能なMicro-Partitioning、1つの AIX インスタンス内で複数の AIX 環境を作成できるWorkload Partition (WPAR) 、稼働中のLPARを別の物理マシン(別筐体)へ移動できるLive Partition Mobilityx86 32ビット Linuxアプリケーションのバイナリを無修正で実行できるLx86などである。これらはPowerVMとして総称されている。

Linux との親和性

AIX 4.3.3 以降から付属する CD-ROM の AIX Toolbox for Linux Applications には、GNU およびオープンソースの AIX 用ツールが含まれている。またAIXバージョン5は「AIX 5L」とネーミングされたが、"L" はLinuxとの親和性(Linux Affinity)を意味し、Linux のプログラムソースの移植性を高めた。

パッチ

累積フィックスであるフィックスパック (Fix Pack) は、IBM のサイト (Fix Central) よりダウンロードできる。従来は ML (Maintenance Level)、SP (Service Pack)、CSP(Concluding Service Pack、各 ML レベルでの最終の SP)の組み合わせだったが、2006年2月より TL(Technology Level、年2回、通常は2月と8月)、SP、CSP の組み合わせに変更され、更に2007年に CSP は廃止された。ML は過去の ML および SP を含む。SP は過去の SP を含む。2月の TL は安定性重視(フィックスおよび新ハードウェアのサポート中心)だが、8月の TL は更に機能拡張を含む。

単体フィックス (PTF) は現在は原則として提供されないが、緊急性・重要度が高いものは暫定フィックス(Interim fix、iFix、i-fix、IF。従来の緊急フィックス、e-fix)として暫定提供される。これらも最終的には TL、SP 等に含まれる。

現状の確認は AIX 4.3 では instfix、AIX 5L 以降では更に oslevel -r または -s などで行う。暫定フィックスは fixmgr で管理する。

歴史

いくつかの異なるバージョンの AIX がかつて存在していたが、不人気なものは消えていった。

1986年に登場した AIX V1 は IBM RT-PC で動作した。このバージョンは UNIX System V Release 3 をベースにしていた。

1989年、AIX は RS/6000 シリーズのワークステーションとサーバ用 OS となった。AIX は開発の過程で 4.2BSD や 4.3BSD の機能を IBM と INTERACTIVE Systems Corporation がマージした。

UNIX 戦争の際には、AIX は OSF 陣営の OSF/1 のカーネルとして採用された。OSF/1 は普及しなかったが、論理ボリュームマネージャ (LVM) はこの際に HP-UX などに移植された。

1994年には SMP 対応を行っていたが、SMP によるスケールアップ型の性能向上よりも、RS6000-SP (Scallable parallel) に代表されるスケールアウト型による並列処理性能の拡充を目指していた。世界のチェス王者を破ったシステムも、AIXが稼動するRS/6000-SP であった。2001年、AIX 5L の登場と共に、1チップでSMP構成が可能な POWER4 プロセッサーを複数接続した大規模 SMP 構成のサーバを発表し、真の意味でエンタープライズ領域での必要な可用性と、Linux との先端的な親和性などを加え、基幹系 UNIX ベンダーとして疾走を始めた。

この2001年の AIX 5L の登場以降、可用性の圧倒的な向上とスケーラビリティの向上、CPU 性能の強化による性能の大幅向上を武器に IBM 社による強力なセールスによりライセンス数を伸ばし、基幹系システムにおける商用 UNIX としては HP-UX と並んで主流であり、基幹系適用に際して必須とされる高信頼性・高可用性がある。

さらに IBM 製 UNIX および Linux OS の基幹系への圧倒的な傾注と、やっと基幹系向けとして認知された Itanium 系への不人気もあり、現状として基幹系ではトップの伸び率を誇る。

AIX 5L 5.3 でのスケーラビリティは以下の通りである。

サポートするアーキテクチャ

メインフレームでの AIX

1988年、IBM は AIX/370 を発表した。System/370 で UNIX 風の機能を提供するものである。AIX/370 は 1990年にリリースされ、System V Release 2 と 4.3BSD の機能に IBM 独自の機能拡張がされたものとなっていた。System/390 のアーキテクチャ (ESA/390) が登場すると、1991年には AIX/370 を AIX/ESA とし、OSF/1 のコードをベースとしたカーネルで System/390 上で動作させた。AIX/ESA はネイティブ OS としても VM 上のゲスト OS としても動作する。しかし、商業的には成功とは言い難く、現在では Linux on System z にその座を譲っている。

アップル製ハードでの AIX

アップルコンピュータは、PowerPC ベースの Apple Network Server を最上位機種として開発し、他の機種にはない様々な拡張を施した。このシステムでは AIX が標準 OS として動作した。しかし、アップルではこの機種以外に AIX を採用した例はない。

日立製ハードでの AIX

日立製ハードである EP8000 シリーズは Power Systems と互換性が高いハードウェア(ファームウェアなども同一)であり、AIX をサポートしている。また、同社のスーパーテクニカルサーバ SR16000 でも AIX をサポートしている。

バージョン

  • AIX v1, 1986年
  • AIX v2, 1987年
  • AIX v3, 1990年
  • AIX v3.1
  • AIX 4.1, 1994年
    • SMP をサポート
  • AIX 4.2.1, 1997年4月
    • NFS Version 3 をサポート
  • AIX 4.3, 1997年10月
    • 64ビットCPU をサポート
    • UNIX98 認証
    • IPv6
  • AIX 4.3.3, 1999年9月
    • オンラインバックアップ機能追加
    • ワークロード管理 (WLM)
  • AIX 5L 5.1, 2001年5月(“5L” の L は Linux との相互運用性を高めたことを示す。)
    • カーネルの64ビット化
    • POWER4 をサポート
    • ロジカルパーティション(LPAR。マルチプロセッサシステムを論理的に複数に分割して、CPU・メモリー・I/O などのリソースを割当できる。物理分割 [PPAR] と異なり、CPU は1プロセッサを0.1単位で、I/O ならば PCI スロット単位で、配分できる。)
    • JFS2
  • AIX 5L 5.2, 2002年10月
    • POWER4+ をサポート
    • マルチパス I/O ファイバーチャネルディスクをサポート
    • iSCSI
    • ダイナミック・ロジカルパーティション(D-LPAR。LPAR の拡張。パーティション内で AIX が稼動中に、CPU などのリソース割当を自動または手動で変更できる。)
  • AIX 5L 5.3, 2004年8月
    • POWER5 をサポート
    • マイクロパーティションをサポート(LPAR・D-LPAR より更に細かいリソース配分が可能。CPU は1プロセッサを100分の1単位で配分できる。)
    • 仮想 I/O サーバ(VIOS。仮想 SCSI、仮想イーサネットなど。)
    • NFS Version 4 をサポート
    • 拡張アカウンティング
    • 同時マルチスレッディング (SMT) をサポート
    • JFS2 クォータサポート
    • JFS2 ファイルシステム縮小をサポート
  • AIX 6.1 2007年11月[8]
  • AIX 7.1 2010年8月発表[9]
    • Express、Standard、Enterprise の3エディション化

脚注

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関連項目

外部リンク

テンプレート:Unix-like

テンプレート:IBM operating systems
  1. Unix Pronounciation
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. テンプレート:Cite web
  5. テンプレート:Cite book
  6. Unigroup's April 2004 Meeting Announcement
  7. テンプレート:Cite web
  8. テンプレート:Cite web
  9. IBM AIX V7およびPowerVM V2機能拡張の発表