ドルビーデジタル

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テンプレート:Infobox file format ドルビーデジタルDolby DigitalAC-3:Audio Code number 3)とはドルビーラボラトリーズ(Dolby Laboratories, Inc.)が開発した、音声のデジタル符号化方式

映画の音声やDVDビデオBDビデオ、XboxXbox 360用ゲームソフト、プレイステーション3用ゲームソフト、PC用ゲームソフト、BDレコーダーやDVDレコーダー、HDDレコーダー、ハイビジョンビデオカメラ等の幅広い規格媒体での音声記録に利用される。

概要

ドルビーデジタルは1.0chモノラル[1]から5.1chサラウンドまでの音をデジタル的に圧縮してデータ量を減らし、フィルムやDVDビデオなどに記録するのに用いられる。

映画の場合、音声をエンコード処理しフィルムのパーフォレーションの間(フィルムの両端に等間隔であいている穴と穴の間)に信号を光学的に記録している。ほとんどの映画作品には5.1chサラウンドを使ったサウンド方式(センター、左、右、リア左、リア右、サブウーファー)を採用しており、これをドルビーデジタルでエンコーディングする事が多い。一般的にはドルビーデジタルそのものがAC-3を指しているわけであるが、5.1chサウンドを示しているわけではない[2]

映画館シネマコンプレックスでは、設備が規格に対応しているかを表記している場合も多く、日本国内の映画館においては、9割以上の劇場で再生が可能なデジタル音響システムである。

映画では『バットマン・リターンズ』(1992年(平成4年))で世界初採用。日本においては『ゴジラvsメカゴジラ』(1993年(平成5年))での試験採用を経て、『耳をすませば』(1995年(平成7年))で本格導入された。

音質の評価は一般に悪くはないが、コアユーザーには高音質を謳う競合規格の「DTS」の方が好まれる場合が多い。それはドルビーデジタルの量子化ビット深度が16bitであるのに対し、DTSの量子化ビット深度は24bitであるためである。そしてドルビーデジタル 5.1chサラウンド(48kHz/16bit)の場合、リニアPCM 5.1chサラウンド(48kHz/16bit)を約1/10の640kbpsに圧縮するのに対し、DTS 5.1chサラウンド(48kHz/24bit)の場合はリニアPCM 5.1chサラウンド(48kHz/24bit)を約1/4の1.5Mbpsに圧縮する。つまり圧縮率が低く量子化ビット深度が大きい為、高音質というわけである。しかしDTSは後発の規格であるため、初期の再生機や安価な機器では非対応のものもあり、普及率の点からもドルビーデジタルが現在テンプレート:いつデファクトスタンダードとなっている。また、後発の規格であるDTSは、DVDビデオにおいてオプションで扱われており規格上"DTS音声のみを収録することが出来ない"[3][4]という制約があり、収録データ量が嵩む為、DVDビデオにおいてもドルビーデジタルのみの収録が多い。

近年は家庭用ゲーム機XboxXbox 360プレイステーション3)やPCゲームでもドルビーデジタルが採用されている。ハードウェアまたはソフトウェアによるリアルタイムデコードで、効果音などを5.1chサラウンドで出力できるゲームソフトが多い。

拡張規格

ドルビーデジタルサラウンドEX
リアセンターを加えた6.1chサラウンド形式。ドルビーデジタルと上位互換性があり、EX非対応の環境で使用すると5.1chサラウンドで再生される。初の規格採用作品は映画『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年(平成11年))である。
ドルビーデジタルライブ
PC用で採用されているサラウンド規格。これまでのサウンドカードはDVDではサラウンド信号をS/PDIFで出力する事は可能だが、サラウンド対応のPCゲームにおいてはS/PDIFで接続してもサラウンド信号を出す事が出来ない。その場合はアナログオーディオケーブルを3本接続しなければならず配線が煩雑になってしまう欠点があった。この規格を採用したサウンドカードを使用する事により、DVDでもPCゲーム[5]でもS/PDIFでサラウンド信号の出力が可能になる。採用されている製品は、クリエイティブ・テクノロジーの「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium Professional Audio」等がある。
ドルビーデジタルプラス (Enhanced AC-3またはE-AC-3)
次世代DVD規格(Blu-ray DiscHD DVD)やアマゾンKindle Fire HDなどのタブレット富士通ARROWS NX F-06E、および京セラDIGNO M KYL22などのスマートフォンなどで採用されている次世代サラウンド規格。BDでは最大7.1chまで収録できる。BDに収録されるドルビーデジタルプラスでは、5.1chまではドルビーデジタル音声しか認められていないという制約がある。これにより、ドルビーデジタルプラスが再生できない機器では、ドルビーデジタル(5.1chサラウンド)に変換することができる。ドルビーデジタルプラスのデジタル転送(ビットストリーム出力)にはHDMI ver.1.3以降が必要となる[6][7]
ドルビーTrueHD(Dolby TrueHD, ドルビートゥルーエイチディー)
BDビデオやHD DVDに採用された音声技術で、DVDオーディオで採用されている「MLPロスレス」の機能拡張版。HD DVDでは必須となるほか、BDビデオではオプションとなる。最大7.1chサラウンド(96kHz/24bit)形式をサポート。なお、MLPロスレスの呼称は今後もDVDオーディオには使われる。ドルビーTrueHDはDVDオーディオフォーマットでは使用不可。BDビデオやHD DVDに使用される場合にのみドルビーTrueHDが使われる[8]

記録用音声技術

ドルビーデジタルレコーディング
DVDレコーダーやHDD内蔵ビデオカメラで、2.0chステレオを「ドルビーデジタル」の圧縮信号で記録出来るフォーマット。
ドルビーデジタルステレオクリエーター
2.0chステレオを圧縮信号で記録できるフォーマットで、音声トラックを編集可能。
ドルビーデジタル5.1クリエーター
5.1chサラウンドを比較的容易に記録できるフォーマット。DVDオーサリングソフト、DVD・ブルーレイレコーダー、5.1チャンネル記録対応ビデオカメラ等に採用されている。

テンプレート:脚注ヘルプ

  1. 1980年代頃までに制作された古いテレビアニメなど1.0chモノラルで制作された作品の場合、DVDビデオ化の際には2.0chステレオとして収録される場合が多い。
  2. 2007年(平成19年)までに発売されたXbox 360用ソフトでは、ドルビーデジタルのロゴの横に5.1chであることを示すために四角形の四隅・上辺の中央・四角形の中央に点が打たれたロゴマークが表記されていた
  3. ドルビーデジタルを収録した上でDTSを追加収録する形態になる。
  4. ただし、『ターミネータ2 劇場公開版 dts T3劇場公開記念バージョン』など、デフォルト再生音声がDTSになっている物は存在する。 パイオニアLDC、DVD「ターミネーター2」の音声再生で告知 - AV Watch
  5. 対応ゲームが必要。
  6. HDオーディオ対応AVセンター総括特集:HDオーディオとは?HiVi WEB
  7. ドルビーデジタルにエンコードすれば、S/PDIFでのサラウンド出力も可能。
  8. 正確性の為に記述すると、ドルビーTrueHDはMLPの拡張技術であり、ドルビーデジタルの拡張技術ではない。ドルビーデジタルにエンコードすることで、S/PDIFでのサラウンド出力が可能になる。

関連項目

外部リンク

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